TS剛膣娘と硬い盾役 作:笑石
と、まぁ。
そんなことがあったのが、一ヶ月前だろうか。
オレはエリックとの初めての情事を思い出して、苦笑した。それを魔法使いに見られて訝しげな目を向けられるが、まぁ、まさか……普段から男の気配と色気のカケラもないオレが、あの───『あんたとろいのよ』『盾しか能力がないんだから』『いくわよ荷物持ち』と普段から散々、女の尻に敷かれまくっているエリックと肉体関係にあるとは思わないだろう。
「まぁ聞けってお前ら、まず俺がエリックの野郎が脱童貞したと断定した理由を話していく」
今日の探索は、中々旨味があった。
デカくて甲羅が何かと便利に使えるモンスターと遭遇し、その甲羅を全くの無傷で手に入れることができたのだ。それはもう高く売れた。
というわけで、いつもより豪勢に打ち上げで使っていたところ、エリック達のパーティーと見かけたわけだ。
てかエリックの話なんてウチのパーティーの誰が興味あるんだよ。
チラリと剣士と魔法使いの方を見る。剣士はいつも通りというか、基本的に人を褒めることしかしない男なので、酒をちびちび飲みながら「まぁ確かに背中が広くなったよな」とか言っている。
魔法使いは「てかあんたがあのハプニングバー? に連れてった時じゃないの?」と普通に大当たりを引いていた。てか肉体関係があるのは知ってるけど、魔法使いとそこまでの話してるのか…….。いやおっさんの風俗話じゃないんだから、若い女である魔法使いにそんな話するなよ。
とにかく弓使いは話がしたいらしく、勝手に喋り始めた。
「まずは髪型だな。すげえスッキリした。明らかに適当だった前とは違う……美容院に行ったなあれ」
まぁ、オレが行かせたしな。もさかったし。
「次に服装だ。明らかに小綺麗になった。全て、一度新調したな……そして前と違い、探索の時と街にいる時で服を分けてる」
まぁ、オレがそうしろって言ったな。探索用の服は汚くなりがちだし。
「爪の手入れが明らかに行き届いている。あいつはそんな丁寧なやつじゃなかった」
まぁ、オレがやれって言ったね、エチケットだぞと。
「匂いだ。香水を僅かにつけてる……なんか、嗅いだことがある気はするが」
まぁ、オレがあげたやつだね。つけすぎは嫌だけど、ほんのり香ると……こう、スイッチが入る。
「あとムダ毛がめっちゃ減った。今度浴場で見てみるが、多分チン毛も剃ってる」
まぁ……他はともかく、そこはオレが剃った。毛深くてもいいんだけどない方が、エロいんだよな……。
「もうそれ、女できてるじゃん……っ!」
魔法使いが目を見開く。剣士は「あいつの魅力がわかる女が居たって事だ」と頷いていた。
しかし魔法使いは、次に眉を寄せ、少し声を小さくした。
「い、いやでもさ、もしかしてだけど、パーティー内とかだと、ヤバいことにならない?」
みんなでエリックのパーティーを見る。そこで、多分オレが一番驚愕した。
最近、小綺麗になった影響か、他の三人からの扱いが少しよくなっている気がする……!?
『あれ? あんた、こんなとこ怪我してたっけ……なに、このアザ?』
あ、それはオレが……あの、勢い余って、力入れちゃったやつ。回復忘れ……かな?
『鈍臭いやつね』
『……でも最近、動き良くなってきたよねー。なんか自信ついた? 生意気ー』
「うーん。なんか、あの三人ではない気がするんだよな……。エリックも、そういう色気のある目線をしてない……それに、あいつの好みは多分……」
チラリと弓使いがオレを見てすぐ逸らした。魔法使いもチラリと見てくる。剣士だけはエリックパーティーを見ていた。「あいつらも絆を増したな。良い傾向だ。また合同探索をしたいものだな」と一人別方向の話をしている。
弓使いと魔法使いはそれ以上何も言わなかった。多分、オレがそういう話題にあまり興味ないとか、まぁ掘り下げても盛り上がらないと思っているからだろう。
オレも、エリックとの関係がバレるのはあまり本意ではない。恥ずかしいからだ。オレは自分で言うのもなんだが、丁寧な口調を外では心掛けていても、周りには粗野なところが全然バレてる。
なんていうか、そのバレてる中身のせいもあって男勝りな感じのイメージはみんな持ってると思うし、そういうキャラ作りしているところもある。
なので、今更色狂いみたいに盛ってることがバレると、ただ本当に恥ずかしいのだ。キャラじゃない。
でも、まぁ、あんまり気を遣われるのも寂しいものだ。だからつい口を開いてしまった。
「エリックは、オレみたいなのがタイプだと言いたいんですか?」
「えっ」「ぅえっ?」
弓使いと魔法使いは見るからに狼狽えた。しかし剣士が予想外のところから攻撃してくる。
「いや、ミスカみたいな、ではなくミスカに憧れを抱いているところはあるだろう。前に合同探索した際、お前の背を見るあいつの顔は……英雄に憧れる少年、そうまるで御伽噺に触れた少女のような……そんな、憧憬の念を抱いた瞳だった」
……ほぉ。ふぅん。へぇ。
まんざらでもなかった。オレとて元は男の身体を持っていた。その頃は漠然と『誰かのヒーローになりたい』なんて考えたりもした。
漫画とかアニメでも、やっぱ主人公とかサブキャラが師匠キャラとか強いキャラに見惚れる展開あるじゃん。ああいうの渋いなって。
しかしそうかぁ……。そんな相手であるオレが、興奮して……こう、自省が効かなくなってる感じ見せてくるの、エリック的にはどうなんだろうね……。まぁちょっとそういう倒錯的な感情で硬くなってるのかなって時あるから、率先して利用はするけどぉ。
「いやめっちゃエロい目で見てたよこの前。ロリ体型巨乳好きなんだと思う」
「私の胸も見てきたから、普通に巨乳好きなんじゃない?」
……へぇ。
魔法使いはそこそこ背が高く、胸もでかいし尻もでかい。くびれなんて芸術的で、本人も自覚があるのか普段からラインの出る服ばかり着ていて、まぁ見るのはエリックに限らない。男どころか女でも見てしまうことは少なくない。
酒場が賑やかになってきた。
他の冒険者パーティーも増えてきて、すれ違い様に挨拶や雑談をしたり、今日の成果を話したり。
エリックの方も、他のパーティーに絡まれている。あそこは女が多いし美人揃いなので『一緒に呑もうぜ〜』と誘われては『結構よ』『エリック、酒を注ぎなさい』『私はいっこかなぁ〜』と突っぱね……まぁ、一人乗り気だが。まぁアイツは、他の二人より全然ビッチだからな……。
「……。お? またエリックの奴がアイツらにいびられてるぜ。仕方ねぇなぁ」
オレの視線の先に気付いた弓使いが、視線を追ってエリック達のパーティに目を付け、立ち上がり彼らの方へ歩いて行った。
オレは視線に気付くそのさりげない観察に少し冷や汗を流したが、平静を保つ。他の冒険者と駄弁っていた魔法使いからも、気のせいかもしれないが今のやり取りの際に視線を感じた気がした。剣士は他のパーティーの話を真剣に聞きに行っている。
……いや、変に気付いてないフリする方が怪しいな。ここは一つ、弓使いの話に乗っておこう。
「確かにアル(弓使い)の言う通り、エリックは垢抜けした気がしますね」
「……ミスカですら、そう思うってこと〜? まぁ私好みじゃないからあんま見てないしねぇ〜」
「まぁオレは同じ前衛ポジションの奴の身体付きにはよく注意が向きますからね。それに前の合同探索では……お腹ぶち抜いちゃったし、さ。ほら……まぁ、あの頃よりさっぱりしたなってくらいですけど」
「そういや、そんなことあったね……」
あの件は普通に外に漏れて、よく揶揄われた。てか畏れられた。チンコも潰すし、興が乗るととんでもない加虐性癖が滲み出す奴……みたいな不名誉な噂を流されたりした───いや、あながち間違いではないかもしれな──。
アルがエリックの方に腕を回し、彼のパーティーメンバーに絡み始めるのを見て、魔法使いが「うーん」と唸った。
「なんか気になってきたー私も見てこよーっと」
「ちょっと、ケイト(魔法使い)」
「俺もあいつらには少し聞きたいことがあるんだよな」
「れ、レン(剣士)まで?」
となると、オレもついていくしかない。ゾロゾロと連れ立って行く。
「おいエリック、相変わらず尻に敷かれてんなぁおい! こんな奴ら、お前のあの自慢のイチモツでよー!」
「ちょ、アルさん、やめてくださいよ」
「ふん、自慢ねぇ……」
「チンコ立ててる暇あったら盾を立てときゃいーのよあんたは」
「えー? なに? エリックってそんなデカいの!?」
到着したケイトがニヤニヤと下品な笑みを浮かべながらエリックに絡んだ。「ちょ、ケイトさんまで」と狼狽えるエリック。その様子を見て、彼のパーティーのリーダーであるアリサが大きくため息をついた。
「ちょっと、下品な話題はやめてちょうだい。というよりアル、貴方なんでエリックのチンコのデカさ知ってんのよ。ホモなの?」
ピクリ、ともう一人のパーティーメンバーが反応した。オレは前世にもいた、いわゆる腐った人か……? と一瞬疑う。
「え、ちょ、エリック……あんたそういう趣味だったの? 最近、なんか洒落ついてるなと思ったら……ウッソ、マジ?」
「それは、ないです! から! マリーさん! 僕、普通に! 普通なんで!」
「マジかよ、エリック……ごめん、俺はそっちの気はないんだ」
肩に手を置き、申し訳なさそうにするアルにエリックは目を見開いた。
「アルさん! 普通に女の子好きですから! 普通に浴場で見ただけでしょ!」
「えー? 自慢の〜っていうくらいだし、臨戦状態の見たんじゃないの?」
すかさずケイトの追撃。いやまぁ、男同士で膨張状態は普通見ないだろ……いや一緒にハプバー来てたし、そういう風俗みたいなの一緒に行くことがあれば、見かけるのか? でもエリックの経験はオレだけのはずだし……。
「いやいや、元がデカけりゃ、本気もデカいだろ」
「膨張率次第じゃな───いやまって、元がよっぽどすごいって、コト!?」
腐女子疑惑をオレにかけられているマリーは、アルとケイトのやり取りを興味津々に聞いているが、リーダーのアリサの方は心底めんどくさそうにため息を吐いた。
「あぁもう……ほんと、下品だわ。エリック、盛《さか》るのはやめなさい」
「ぼ、僕はなにも、喋ってないでしょ」
まぁ確かに、かなりデカいとは思う。オレもこの世界の奴らというか、このあたりの冒険者のチンコはいくつか見たが、その中では一番だった。
「ところで今日は、中々の活躍だったと聞くが、エリック」
突然、話を遮るようにウチの剣士レンがそんなことを言い出した。「え? あ、いや活躍なんて……」と、チンコの話から話題をそらせることにホッとしながらエリックはレンに顔を向ける。
「何が活躍ゥ? まぁ確かに? あのドラゴンの尻尾を何度も耐えたのは、中々だったかもね」
スン、としているアリサはともかく、マリーの方も素直に認めるつもりはないらしいが、珍しく褒めていた。しかしドラゴンか、今日どこかのパーティーが討伐したとは聞いたが、エリック達のとこだったんだな。流石レンは耳が早い。
「ほぉ、ドラゴンの、しかも地竜タイプだったんだろう? その尾の一撃を何度も耐えたとは……」
「ふんっ。まぁ、それがそいつの仕事なのよ。ようやく、マシになってきたってとこね」
つれない言葉を吐くアリサと違いレンは本気で感心した声を出し、エリックの胸板に拳をトンと置いた。
「大分、鍛えたな。今ならミスカの拳にも負けないかもしれん」
「「「それは無理でしょ」」」
「なんでハモるんだよ……」
ここでようやくオレが口を開いた。流石に、もうあんな事やらないよ……。エリックがチラ、とこちらを見る。視線を返すと、グッと口を引き締めてた。……なんだ?
「ま、まぁ……『あれ』以来、しっかり鍛えてますから」
あれとは、腹をぶち抜かれた事なのか。それとも、初めての日からのことなのかどっちだ?
オレは周囲に頭の中を悟らせないよう、表情を変えずそんなことを考えた。
実は、初めての日以来、オレとエリックはセックスをしていない。まぁそれ以外はちょこちょこやってる……いや、やらせてるけど……。
なぜかというと、エリックのチンコが負傷したからだ。オレのせいだけど、最後の絶頂で締め付けすぎたらしい。それを知ったオレは、別の日にヤろうとしておあずけされた怒りから乳首を捻り上げながらこう言ったのだ。
『お前! もっと鍛えろ! チンコも身体もッ!』
八つ当たりである。しかしオレも口に出した以上、引けないのでトレーニングを手伝ったりもしている。たまに。あんま男といるところ見られたくないから隠れてだけど。
「ふっ……。最近はミスカにも『鍛えて』もらっているようだしな」
「なっ! なんでそれをっ!?」
なので、レンの口から出た爆弾発言にオレは大いに動揺した。『鍛える』だなんて! どこまでバレてる!? てかいつ知ったんだよ!
他の皆も、ギョッとしている。
「確かにミスカの超回復と合わせた耐久上げトレーニングは効果が高いよな」
あ、そっちか。やらしい意味かと思った。
オレは動揺を悟られぬよう、言葉を考える。
「お、そ、そうそう。ほら、あの日結構やらかしたなって思って、責任感じてたんですよ。あ、まぁでも回復魔術と併用するトレーニングは万能じゃないので、加減間違えれば逆効果だし、まぁ多くて週一? ってとこかな」
「へー。最近、ちょっと硬くなった印象はあったけど、ミスカのおかげか」
マリーが合点が言ったと頷く。
……硬くなったか。彼女の言葉を聞いて、真っ先に脳裏に浮かんだのは、恥ずかしながらチンコのことだった。
頑強度がパーティーメンバーから見ても上がっているなら、あっちも……。
「へぇ、知らないとこでお前らそんなことしてたんだな。どうりでエリックがやらしい目でミスカのこと見るわけだよ」
「え!? ちょ、アルさん何を!」
アルの発言に、今度はエリックが顔を真っ赤にして慌て始めた。動揺しすぎだろ…….。じろり、とアリサやマリーに睨まれ、彼はひくりと頬を震わせる。
「エリック、あんたいつからよそ様のパーティーの女性に……」
「なんか生意気じゃね?」
「い、いや、そんなことは……いや、あの」
はぁ、とオレはため息をついた。しかしここで変にオレが庇い立てるのもなぁ。まぁエロい目で見られているのはもうしょうがないけど、それを悟られてるのはどうなんだよという気持ちもある。
あまり男として見られていないとはいえ、女性三人の中一人男というハーレムパーティーで、その男が色欲を剥き出しというのは中々問題に発展しそうなものだ。
でも、同じパーティーメンバーに色目使うよりはマシ……か?
「エリック……ミスカはやめとけ」
アルが真剣な顔で彼の肩をグッと掴み言った。
「あいつが、男のチンコを潰したって噂、ほんとだからさ……」
「え、マジ?」
マリーがオレの顔を見てくるが、オレは腕を組み、ノーコメントを貫いた。
「ミスカ、実際何人の男のブツをその股で潰したわけ?」
「……股じゃなくて、手で、ね」
「今思い出してもゾッとするぜ───」
普段、シモの話題を嫌がるアリサにすら真顔で聞かれたので、一応訂正する。アルはオレが潰した例を何度も見ているので、それを思い出してか股を抑えて顔を青ざめさせる。
同じ男だったので、アルの気持ちもわかる。というかオレ自身、自分でやったことなのに今の人生で一番血の気が引いた事件だった。
「じゃああんた、まだ処女なの?」
「えっ、あ、えー」
アルの様子を見て苦笑していたら、アリサから追撃を受けた。まさか彼女からそんな質問が来るとは思わず、返事に困ってしまう。
「まぁミスカ挿れたらタダでは済まないしね、鋼鉄で出来た張り型をひしゃげさせ「ケイトッ!!? なんで知ってるの!?」」
あわててケイトの口を塞ぐ。ムグムグと手の中で彼女の口が動いているが、指すら突っ込んで黙らせる。
自分でも、顔が真っ赤になっていくのがわかった。ちらり、と他の皆を見れば、アルは顔面蒼白どころか真っ白で引いていて、マリーは流石に信じきれないのか半笑い、アリサは真顔のままで、レンは訳知り顔で腕を組んでいた。なんだよお前のその反応は。
最後にエリックを見ると「あー納得」みたいな顔をしていた。お前迂闊だぞ、察しのいいやつだと気付くだろうが。
「あんた、一応、男に興味あったのね」
「……もうやめてください」
アリサの真顔は、普通にオレにそっちの興味があったことに対する驚きだったのか。この世界の冒険者は今のやり取りのように下世話な会話が多い、確かに考えてみると、そういう話をアリサは好まないし、オレも相槌は打つが話にノるようなことはほぼなかった。
まぁそういう『キャラ』でやってるので、今更エリックと関係を持ったことがバレるのは本当に気恥ずかしい。
てかパーティー間の仲も悪くないし、なんていうか友人関係同士で付き合ってるわけでもなくヤッてる(一回だけ)関係って、こう、淫らじゃん!
「ミスカ、肉体の強化には指向性を付けるべきだ。正直不必要な場所にそれほどの強化をしても……」
「わざとじゃないの! 不可抗力だよ!」
レンは迷宮狂いなので、基本的な価値観が探索に有用か否かに準拠している。
「というわけだ、エリック。ミスカは危険だ。去勢されたくなければ、諦めろ」
「ちょ、その、ミスカさんの前で、あのっ」
既に手を出した後だしな……。アリサにジッと見られている気がしたので、視線を向けるとスッと自然に外された。
うーむ。なんか、勘付かれた……か?
いや別に、問題はないはずだし……ない、よな?