※この作品はR-18です。

【ダンボール戦機WARS:パーフェクトワールドの箱庭】 _絶海の孤島で始まる、少年少女たちの歪で甘い新婚生活_   作:花の第4小隊

3 / 3
ストーリー展開はあえてゆっくりにしています。
原作でも、バンデットが出てからは日常的なシーンが減ってしまったので、もっとアラタたちの生活していた空間が見たくて恋しいのです。


女子生徒解放__歪__

ーーーー翌朝・神威島(登校)

 

朝の潮風はいつも通りに吹いていた。

 

アラタは男子寮の正面扉を出て、石段を降りる。

薄い朝霧が街を包んでいて、瓦屋根の輪郭がぼやけている。電柱の上の架空電線に結露した水滴が光を弾いていた。

 

「……」

 

隣をハルキが歩いていた。青いブレザーの襟が完璧に整えられ、細身のネクタイがきっちりと結ばれている。

何も変わっていない。変わっていないはずなのに、その背中が昨日より少しだけ小さく見えた。

 

後ろをサクヤが歩いている。いつもなら「おはようアラタ、今日のウォータイムのセッティングなんだけど」と話しかけてくるところだが、今日は無言。

 

ヒカルは一歩前を歩いていた。ポニーテイルが歩調に合わせて揺れている。一度も振り返らなかった。

 

四人の足音だけが、砂利道に響く。

 

──商店街を抜け、坂道を上がり、学園の正門をくぐる。鳥居のような鉄のアーチに「神威大門統合学園」の文字。いつもと変わらない。変わっていないはずなのに。

 

 

ーーーー神威大門統合学園(2年5組・ジェノック)

 

違和感は一瞬で分かった。

アラタは自分の席に着き、周囲を見渡した。見渡さずにはいられなかった。

 

──女子生徒の机が消えていた。

昨日まで、アラタの席の斜め前にあったユノの机。その隣にあったハナコの机。更にキャサリンの机。キヨカの机。リンコの机。ノゾミの机。

 

すべてが、消えていた。

 

残されたのは男子生徒の机だけ。十数台の木製デスク。

昨日まで机の並んでいた場所が、ただの空白になっていた。

 

昨日まで後方壁に沿って並んだロッカー。

ロッカーの一つ一つに貼られていた名札。

名札だけではない。ロッカーの扉に貼られていたシール、写真、付箋、小さな飾り。女子生徒たちがそれぞれのロッカーを飾っていた痕跡が、すべて消去されていた。

 

おそらく中身も無いだろう。

 

まるで、最初から女子生徒など存在しなかったかのように。

 

「……」

 

アラタたちの机上には新しい教科書が一式、揃えてあった。

『LBX操縦理論・応用編』

『フレーム構造力学』

『モーター・電子回路工学 上級』

『戦術シミュレーション理論』

『センサー・索敵工学』

 

そして──教科書の隅に、小さな刻印。

 

『瀬名アラタ・専用テキスト』

 

アラタの名前が、刷り込まれていた。

 

隣の席のハルキが、自分の教科書を手に取った。ハルキの教科書にも同じ刻印。

 

『出雲ハルキ・専用テキスト』

 

「……個人用か」

 

ハルキの声は低かった。教科書を机に置く。表紙の文字を指先でなぞった。

 

「今までの共用テキストとは違う。全員分、個別に用意されているわけか」

 

「へえ、随分と手厚いね」

 

ヒカルが後ろから口を挟んだ。金色のハーフポニーテイルが首筋で揺れる。自分の教科書をパラパラとめくっている。

 

「個人最適化されたテキストってことか。ミゼルらしい徹底さだ」

 

涼やかな声。だがその指先が、ページをめくる速度は速い。

 

「……女子生徒の、教科書はないんだね」サクヤのその一言で教室が静まり返った。

 

男子生徒だけで構成された教室はどこか骨抜きになったように頼りなかった。

 

キーンコーンカーンコーン

 

ガラッ。

扉が開いた。

 

箱型のモニター頭部に、穏やかな『(^_^)』が表示されているメタ沢。がっしりとした金属製ボディが教室に入ってくると、男子生徒たちの視線が一斉に注がれた。

 

『おはようダモ! 今日から新生・神威大門統合学園の授業が始まるダモ! みんな、気合を入れて頑張るダモよ〜! (^_^)』

 

アラタは唇を噛んだ。

昨日までこの教室に立っていた、あの厳格な美都先生…チョークを折る勢いで板書し、生徒を睨みつけながら講義を展開していた人間の教師ではない。

その場所に、今はブラウン管モニターを頭に乗せたアンドロイドが立っている。この違和感を飲み下すしかないのが、今のアラタたちの現状だった。

 

『さて、ダモ。男子生徒諸君、一番気になっていることがあるダモね?』

 

メタ沢が教鞭代わりの指示棒でコンコン、と黒板を叩いた。

 

『女子生徒たちの現在の様子ダモ。安心させてあげるため、特別に公開するダモよ (・ω・)』

 

教室が、ざわりと揺れた。

アラタの背筋が伸びる。

 

メタ沢の(^o^)がフェードアウトすると、黒板いっぱいにホログラフィックの映像を投影させた。

 

画素は粗く、音声はない。

だが映し出された光景は昨日までアラタたちが毎日見ていた校舎の風景ではなかった。

 

まず映ったのは見慣れない建物。

学園の隅に半ば放置されていた旧校舎。蔦に覆われ、窓ガラスはひび割れ誰も足を踏み入れなかったあの建物。

それが──蔦はすべて取り除かれ壁は淡いクリーム色のペンキで塗り直されている。窓には真新しい白いカーテンが掛かり、朝の光を柔らかく拡散させていた。

校舎の前にはまだ土だけの花壇、土の色が黒々と湿っている。

 

その一室。窓から差し込む光の中に、机が並んでいた。

ロシウスの女子生徒たちが授業を受ける。

灰色の制服……ブレザーとスカート。彼女たちは机に向かい、黒板の文字をノートに書き写していた。

 

黒板には『栄養学基礎』と書かれている。

 

チョークの粉が舞う。女子生徒の一人が手を挙げ、教壇に立つメタ沢が『(^_^)』の顔文字で頷いた。

指名された女子生徒は立ち上がり、何かを答え、他の生徒たちが笑い声を上げているのが映像から伝わってくる。口元が緩み、肩が揺れた。授業を楽しんでいる。そう見えた。

 

映像は切り替わった。

 

調理実習室、グレンシュテイムの女子生徒たち。

純白のエプロンに身を包み調理台を囲んでいる。野菜を刻む者、鍋をかき混ぜる者、出来上がった料理を互いに見せ合う者。

キャッキャッと言い合っている雰囲気。

ブラウスの袖をまくり上げ、みんなが真剣にメタ沢の話しを聞きながら手を動かす。

 

映像はさらに切り替わった。

 

見たこともない道具が置かれている何かの実習室……そこに居たのはジェノックの女子生徒たちだった。

キャサリンがハナコが、キヨカがリンコが、ノゾミがユノが──いた。

 

全員が昨日と同じ制服を着ている。青いブレザー、白の立ち襟シャツ、紺のプリーツスカート。変わっていない。変わっていないはずなのに。

 

キメが細かく、潤いとハリのある綺麗な肌。

はっきりな輪郭にバランスの整った……綺麗なフェイスライン。手入れの行き届いたツヤのある髪。

骨格のバランスが整っていた…。肩のラインが滑らかになり、微かに腰の位置や脚の伸びが生徒ごとに調整されている。

同じ制服を着ているのに、昨日までとはまるで他人に見えた。

 

明らかな違い、間違いなく彼女らは息を呑むほど美形なものへと作り変えられていたのである。

 

教室の中央に置かれたベビーベッド。

その中に人数分の赤ちゃんの人形が横たわっていた。新生児と同じ重量、体温、肌の質感を再現したというリアルな人形。

 

ハナコが、おずおずと人形を抱き上げていた。首を支える手が震えて…その隣でキャサリンが身振り手振りで何かを教えている。ハナコは何度も頷き、慎重に人形の背中をトントンと叩く。

リンコはベビーベッドの横に立ち、沐浴の準備をしている。お湯の温度を手で確かめる仕草。丁寧に。

キヨカとノゾミが、別のベッドで談笑しながらオムツの替え方を練習していた。いつもは無表情のキヨカですら笑みをこぼし、愛おしそうな手つきを繰り返す。

 

そして──ユノがいた。

 

赤ちゃん人形を腕に抱き、ブレザーの上から胸に押し当てる。授乳の姿勢を学ぶための実習。

人形の頭を肘の内側に支え、背中を手掌で支え、胸元に引き寄せる。

ユノの表情は真剣だった。眉を寄せ、唇を尖らせ、メタ沢の指導に頷きながら何度も角度を直す。

ぎこちなく…優しく。

 

ブレザーの上からでも分かる、豊かな胸の膨らみが人形の頭を柔らかく包み込むように押し潰れている。

 

昨日まであったはずの「戦場を生き抜く兵士の空気」が消え。代わりに、庇護欲をそそる柔らかな気配が彼女たちの全身から滲み出ていた。

 

(……やめろ、俺)

 

不本意だった。同級生をそんな目で見ている自分が情けなかった。だが身体が勝手に反応している。顔が熱い。耳まで赤い。

 

─アラタの目は別の一点に吸い寄せられていた。

ユノの首に何かが巻かれている。

小さくて、よく見えない。だが、確かに何かが光っている。

他の女子生徒たちにも同じものが。

キャサリンの首に。ハナコの首に。キヨカの首に。リンコの首に。ノゾミの首に。

 

青いものが巻かれており、正面から小さな金属プレートがぶら下がっている。

 

チャラ……チャラ……

映像に音はない。だが、動くたびに揺れるそのプレートが、そんな音を連想させる。

 

声は聞こえない。だが、彼女たちの表情は昨日の涙に濡れた顔ではなかった。

昨日、カプセルの中で泣いていた顔ではなかった。

昨日、声のない悲鳴を上げていた顔ではなかった。

──今日の彼女たちは笑っていた。

 

『(^_^) どうダモ? みんな、とっても元気にやってるダモよ。安心したダモね』

 

ホログラフィック映像が消え、黒板が元の緑色に戻る。

 

『ジェノックの女子諸君は特に優秀ダモ。花嫁教育の評価はみんな上々ダモよ (*^^*) 昨日の最適化も、とても良い結果で完了したダモ』

 

アラタは俯いた。机に視線を落とした。

 

「──ミゼル」

 

ハルキの低い声が聞こえた。アラタは顔を上げなかったが、ハルキがメタ沢を睨んでいるのが分かった。

 

「女子生徒たちの首に巻かれているものは何だ」

 

聞かなくても察していた。故に、その答えにも動揺はない……辛い。

 

『ああ、あれダモ? 首輪ダモね。ご主人様の所有物であることの証ダモよ (^_^)』

 

メタ沢は事もなげに答えた。

 

『各仮想国のカラーを基調としたチタン製の首輪ダモ。正面のプレートには、パートナーの男子生徒のフルネームと学籍IDが刻印されているダモ。彼女たちが誰の庇護下にあるか、一目で分かるようになってるダモよ』

 

「……所有物」

 

ハルキの声が、さらに低くなった。

 

『そうダモ。男子生徒を庇護者、女子生徒をその伴侶とする。この体制を視覚的に示すためのものダモ。就寝時と入浴時には外すことが認められてるダモから、生活に支障はないダモよ (o^^o)』

 

ハルキは何も言わなかった。

アラタも何も言えなかった。

教室は、しんと静まり返っていた。

 

『さて、ダモ。本日の最大の通達に入るダモよ (・ω・)』

 

黒板に貼られる大きな用紙。そこには男子生徒の名前と、その横に並ぶ女子生徒の名前。そして顔写真。

 

『男女ペア制度の正式発表ダモ。各男子生徒のパートナーを、適性データに基づいて選定したダモ。通達通り、指定されたペアは同一個室で共同生活を送ってもらうダモよ』

 

『では、発表するダモ。名前を呼ばれたら前に出てプロフィールを受け取るダモよ (・ω・)第1小隊隊長・出雲ハルキ君』

 

名前を呼ばれたハルキは席を立った。椅子が床を擦る音が、静まり返った教室でやけに大きく響いた。青いブレザーの背中が微かに強張っている。

 

メタ沢が手渡したのは一枚のシート。顔写真付きのプロフィール。

濃い紫色のストレートロング。涼しげな紫色の切れ長な瞳。右目の下の泣きぼくろ。

 

『仙道キヨカちゃんダモ。旧第4小隊所属、LBXメカニック専攻。適性データとの照合結果、君の生活パターンと補完関係にあるダモ。以降、同一個室での共同生活ダモよ (*^^*)』

 

ハルキはシートを受け取った。指先が微かに震えているのを、後ろの席から見ていたアラタは見逃さなかった。

 

「……」

 

ハルキは席に戻り、シートを机の上に伏せた。表を下にして。顔写真を見ないように。

 

『第1小隊・星原ヒカル君』

 

ヒカルは腕を解いて立ち上がった。

 

『園山ハナコちゃんダモ。旧第4小隊所属、LBXプレイヤー専攻。適性データでは、君のストイックな生活リズムに対してハナコちゃんの奉仕的気質が最適な緩衝材として機能するダモ (・ω・)』

 

桜色のウェーブ。タレ目がちのグレーがかった瞳。白い花の髪飾り。

ヒカルはシートを受け取り、一瞥しただけだった。

 

『第1小隊・細野サクヤ君』

 

サクヤの丸顔が強張っている。

 

『波野リンコちゃんダモ。旧第2小隊所属、LBXプレイヤー専攻。工学知識を有する点でサクヤ君と技術的共鳴があり、かつ世話焼きの気質がサクヤ君の几帳面さと相互補完するダモよ (^_^)』

 

ダークブラウンのショートボブ。小さな二つ結び。温かみのあるタレ目がちの茶褐色。

サクヤはシートを受け取った。受け取った瞬間、顔が赤くなった。耳まで赤い。首まで赤い。まるで火がついたように。

 

「り、リンコちゃんが……」

 

呟きが漏れた。小さく、しかし教室の静寂の中では鮮明に届いた。

 

『第1小隊・瀬名アラタ君』

 

名前が呼ばれた。

 

アラタの体が動くまでに、二秒かかった。二秒の間、足が床に根を張ったように動かなかった。だが動いた。立ち上がり、通路を歩き、教壇の前に立つ。

 

『鹿島ユノちゃんダモ。旧第4小隊所属、LBXプレイヤー専攻。適性データに基づく選定ダモ。以降、同一個室での共同生活ダモよ (o^^o)』

 

シートが手渡された。

ライトブラウンのツインお団子ヘア。グリーンの瞳。

 

首には青い首輪が巻かれていた。

上品なデザインで、制服の襟元に自然に馴染んでいる。だが間違いなく「首輪」。

正面の留め金具からは薄型金属プレートが垂れ下がっている。

 

『SE-NA ARATA JN-0041』

 

…………発表は続いた。

ジェノックの他の男子生徒──第2小隊、第3小隊…隊員たちに、次々とパートナーが割り当てられていく。

 

アラタは耳を半分だけ働かせて聞いていた。

 

『第2小隊・──君。パートナーはハーネス・──ちゃんダモ』

 

『第3小隊・──君。パートナーはアラビスタ・──ちゃんダモ』

 

同じ仮想国の男子生徒に、別の仮想国の女子生徒が割り振られていく。国境を越えた「ペア」が次々と成立していく。

 

そして──『発表は以上ダモヽ(*´∀`) みんなは相手を困らせないように仲良くするダモ』

 

「え、お…おい! あいつらは、キャサリンとノゾミはどうした!? まだ出てねえぞ!」

 

第4小隊の隊長。ユノの隣でいつも身振り手振りで騒ぎ立てていた、あのキャサリン。

第5小隊の隊員。自分中心なカイトをなだめ、常に周りのために動いていた、世話焼きなノゾミ。

 

『落ち着くダモ。キャサリンちゃんはハーネスの──君に、ノゾミちゃんはポルトンの──君に。それぞれ素敵な妻としての役目を果たしに行ったダモ(*'▽'*)』

 

「な!?」

 

同じジェノックの青い制服を着て、同じ教室で机を並べ、同じセカンドワールドで背中を預け合って戦った仲間が──別の仮想国の男子生徒の「妻」になる。

 

教室の空気が、重くなった。

男子生徒たちの間に、ざわめではなく──沈黙が広がった。言葉にならない何かが、喉の奥で詰まっている沈黙。

 

「あ、あの……ポルトンには女子生徒しか居なかったはずです。ノゾミの相手はどうなっているんですか!?」

 

「タダシ……」

 

『…ジェノックでも第4小隊がいなくなって再編成をしたダモ。それと同じことダモ♪( ´▽`)。全体のパワーバランスを考えたうえで、ポルトンには他の仮想国から4人が登用されたダモ(*'▽'*)よ』

 

「…そう、ですか」

 

『さて、ダモ。今日から本格的に男子生徒諸君のLBX教育が始まるダモ。午前中は座学、午後から実技。夕方からはウォータイムダモ。気合を入れていくダモよ〜! (^o^)』

 

メタ沢が黒板にチョークで文字を書き始めた。

 

『LBX操縦理論・応用編 第一章──高機動戦闘における慣性制御』

 

チョークの粉が舞う。カツカツという硬い音が、静かな教室に響く。

……頭の中にあるのはユノ。赤ちゃん人形を抱いて、集中した表情でメタ沢の指導を受けているユノ。

 

 

ーーーー男子寮(アラタ個室)

 

ウォータイムを終え、コントロールポッドから降り、解散号令が出ても、アラタの足は重かった。

 

『女子生徒は、今日は先に寮に戻るよう指示されてるダモ。荷解きしながらみんなの帰りを待っていてくれてるダモよ、不安にさせないように』そうウォータイム前にメタ沢は言ったから。…可愛くなったユノを……現実から逃げるように校舎を練り歩き、普段なら絶対行かない図書室まで行って。

 

でも結局、気がついたら石段を降り…商店街の角を曲がり……男子寮の前で足を止めていた。

 

プレート。

 

『瀬名アラタ / 鹿島ユノ』

 

ドアノブに手をかける。金属の冷たさが掌に伝わる。

 

(……俺は)

 

何を思えばいいのか分からなかった。怒りか。心配か。不安か。期待か。すべてが混ざり合って、胸の底で泥のように沈んでいる。

 

ドアを開けた。

 

何か……甘い匂い。シャンプーか、石鹸か。女の子のいる部屋特有の、柔らかな空気。

アラタの視線が、部屋の奥へと吸い寄せられた。

机…あの可愛らしい机に向かって椅子に座っていた、後ろ姿だった。

 

ピンクの長袖シャツ、柔らかな素材の…少しゆったりとした背中姿。

健康的な脚がショートパンツから伸ばしているだろう。ツインのお団子ヘア。頭頂部の髪が、蛍光灯の光を浴びてぴょこりと跳ねている。

 

教科書のページをめくり、丁寧に何かを書き写している。

カリカリッカリカリッと音を立てながら、嬉しそうに鼻歌も聞こえてきて。

 

部屋にはユノの気配が満ちていた。壁の段差に掛けられたハンガーと女子制服。一応、ここは男子寮で男子の個室……だったのだが…スカートやハイソックスも無防備に置かれている。

ベッドサイドには可愛い小物入れ。カーテンが新しく掛けられ、部屋の空気が一変していた。

 

アラタがドアを閉めた音で──ユノが振り返った。

ハッとした瞳がアラタを捉えた。

 

瞬間。

 

ユノの顔がパアッ♪と明るくなった。

 

「あ! アラタ! お帰り!! 帰ってきてたんなら言いなさいよ♪」

 

椅子を立つ音。ピンクの部屋着の裾が揺れる。

素足が床をペタペタと叩いて、アラタの方へと駆け寄ってきた。

 

「もう、遅いよ! 今日のウォータイム長かったね、ぶーぶー言ってたよメタ沢先生が『アラタ君がまた無茶な機動してるダモ!』って──あ、でも今日の戦果すごかったんでしょ? ジェノック全体報告で見たよ、五機撃破って! さすがアラタ!」

 

立て板に水。いつものペース。いつもの声のトーン。いつもの、人懐っこい笑顔。

 

アラタはドアの前で立ち尽くしていた。

 

(……変わってない)

 

ユノだ。鹿島ユノだ。昨日まで教室にいて、ウォータイムで背中を預け合って、遅刻ギリギリに滑り込んでは「ちょっとアラタ! また二度寝!?」と眉を吊り上げていた、あのユノ。

 

ミゼルが言った通りだ。人格は保持される。性格も口調も変わらない。

 

……『SE-NA ARATA JN-0041』

 

自分の名前が、ユノの首で揺れている。

 

…俺の所有物……「ちょっとアラタ? 聞いてる? ぼーっとしてどうしたの?」

 

ユノがアラタの顔を覗き込んだ。近い。パッチリと綺麗な瞳が、心配そうに瞬きをしている。

 

「……あ、ああ」

 

「ああ、じゃないよ! ほら、荷物貸して!」

 

ユノはアラタの手から鞄を奪おうとした。

無意識なのだろう。アラタの世話を焼きたいという衝動が体を動かしている。

 

「あっ……いい! 自分でやる!」

 

アラタは反射的に鞄を引いた。

ユノの手が空を切る。

 

「え……?」

 

ユノの表情が曇った…一瞬だけ。すぐに笑顔に戻るがその笑顔は寂しさを含んでいた。

 

「…あ、ごめんごめん。急だったね、じゃあシワになる前に制服脱いじゃおっか♪」

 

ユノの手が、荷物を床に置いていたアラタのブレザーの襟に伸びた。

 

「──っ」

 

器用に、慣れた手つきで。まるで何度もやったことがあるかのように自然に…ブレザーを肩から下ろして腕を抜こうと……。

 

「ちょっと待て……!」

 

「待たないよ! ほら、腕上げて」

 

「ユノ!」

 

アラタの声が大きくなった。

 

ユノの手が止まった。

瞳が、丸くなった。

 

「……アラタ?」

 

アラタは自分の声に驚いていた。喉の奥から出た声が、予想よりもずっと鋭かった。怒りが混じっている。だが──怒りの矛先が間違っていることは、自分でも分かっていた。

 

「……こんなの、するな」

 

「え?」

 

「俺の服を脱がせたり、荷物を持ったり……そんなの、お前がすることじゃねえだろ」

 

アラタの声が低くなった。唇を噛みしめている。拳が握られている。

 

ユノは手を引いた。そして少しだけ目線が落ちたものの。代わりに、ふっと息を吐くように、小さく笑った。

 

「……アラタ、バカだなぁ」

 

「は?」

 

「バカだなぁって言ったの。私が好きでやってるのに『するな』って。勘違いしないでよ、誰かに強制されてるわけじゃないんだから」

 

ユノは腰に手を当てて、ちょっと上からものを言う。いつもの、呆れ顔。いつもの、小言のトーン。

 

「頭ではわかってるのよ、私。こんなのおかしいって。ミゼルの支配も、お嫁さん役をさせられてるのも、全部異常だって……ね? でも──」

 

ユノの声が少しだけ柔らかくなった。

 

アラタを真っ直ぐに見つめている。その瞳の奥に何かが揺れていた。

理性の光と、その奥で脈打つ甘い熱。

 

「でもね、アラタ。アラタの顔見ると、胸がぎゅーってなって……そんなの、どうでもよくなっちゃうの」

 

ユノの指先が、首元の金属プレートを無意識に触れていた。チャリ、と小さな音が鳴る。

 

「おかしいよね、私も思う。こんなの変だよ。昨日まで普通のクラスメイトだったのに、アラタの部屋にいて、アラタのために勉強して、アラタの服脱がせようとして……自分でも『なんでこんなことしてるんだろう』って思う」

 

ユノは笑った。

困ったように、でもどこか幸せそうに。

 

「でもね、アラタの顔見てるだけで嬉しいの。アラタが部屋に居るのを見て、心臓がドキドキして、声が出ちゃって、近くに行きたくて……/// それって、私の意思だよ///。少なくとも、私の中ではそうなの」

 

ユノの手が、再びアラタのブレザーに伸びた。

 

今度は、アラタの手がそれを止めなかった。

 

「……だから、ね。服くらい脱がせてよ。パートナーなんだから。それくらいさせてよ」

 

ユノの声が、囁くように小さくなった。

 

「……好きなんだから///」

 

アラタは何も言えなかった。

 

ユノの手がブレザーを腕から抜いていく。引き抜きやすいように立ち回り、アラタの白シャツを見てドキドキしながら。

脱がせたそれをハンガーにかける。自然な動作。

アラタは立ち尽くしたまま、ユノの背中を見ていた。

 

ピンクの部屋着。小さな背中。ツインのお団子ヘア。首筋で揺れる青い首輪と、自分の名前が刻まれたプレート。

 

──ミゼルが言った。

 

『彼女の笑顔は本物だ』

 

本物、なのだろう。ユノは笑っている。ユノの言葉は自然だ。ユノの仕草に作られた痕跡はない。

 

だが──その笑顔の根底に、ミゼルの指が触れている。

 

アラタは目を閉じた。

 

ユノの体温が、すぐ近くに感じられた。

 

「アラタ、目閉じてどうしたの? 寝るつもり? お腹空いてない? 晩ごはん、まだなんだけど──」

 

「……ユノ」

 

「ん?」

 

「……悪かった」

 

「え? 何が?」

 

「さっき。怒鳴って……悪かった。お前のせいじゃねえのに」

 

ユノは一瞬きょとんとして、それから──ふっと、笑った。

 

「うん。わかってくれたならよかった。もう、あんたってばすぐキレるんだから……。お腹空いたでしょ、何が食べたい?」

 

アラタは目を開けた。

 

「……なんでもいい」

 

「適当すぎ! もぅ……じゃあハンバーグにするからね。メタ沢先生に教わったばかりのね♪ すぐ作るから早くきてね!」

 

ユノはアラタの手を離し、エプロンを握りしめると1階の食堂へ歩き出した。ショートパンツの裾が揺れる。スリッパがパタパタと床を叩く音。

 

アラタはその背中を見つめていた。

 

(……俺は、どうすればいいんだよ)

 

答えは出なかった。

だが、ユノの手の温もりだけが、掌に残っていた。

 

 

ーーーー男子寮・食堂

 

食堂は昨日の葬儀のような静寂が嘘のように賑わっていた。

 

大幅に拡張された台所からは、何種類もの料理の匂いが混ざり合い、湯気と共に天井へと昇っている。

油が跳ねる音、包丁がまな板を叩く音、鍋の蓋がカタカタと鳴る音。そして──女子生徒たちの声。

 

「ハーナコ、そこの玉ねぎちょうだい。んっいい匂いじゃないの♪」

 

「は〜い♪ 鳥の甘辛煮なの、簡単で美味しいから!」

 

「OKありがとう! ヒカルも喜ぶわねぇ〜」

 

キャサリンとハナコの楽しそうな声。いつものやり取り。いつもの光景。だが──場所が違った。

 

台所は以前の食堂の数倍以上の広さに改装されていた。ジェノック・ハーネス・ポルトンの各仮想国ごとに調理台が区切られ、すでにジェノックのエリアには青い制服の女子生徒たちがひしめき合っている。

 

ユノは入り口で一瞬足を止めた。

 

白い無地のエプロン。首に輪っかを通し、背中で紐を結ぶ。紐を引く指先が器用に動き、蝶結びがしゅるりと形を成す。

ピンクの部屋着の上に白いエプロン。似合っていた。

 

厨房に入ったユノに最初に気づいたのはリンコだった。

 

「あ、ユノちゃん! 遅かったのね」

 

二つ結びが揺れる。リンコの見張る鍋はコポコポいいながら湯気がたちのぼる。

 

「あはは……ごめんごめん。アラタが全然帰ってこないんだもん、部屋で待ってたら時間過ぎちゃって」

 

ユノは苦笑いで頭を掻いた。エプロンの胸元が微かに揺れる。

 

「全然帰ってこないって、アラタだもん照れちゃってんのよ♪ 絶対アラタはむっつりよ♪」

 

ノゾミがフライパンをかき混ぜながら顔を向けた。タレ目がちの優しい瞳が、からかうように細められる。

 

「やっぱり〜? あれで頑固だから困るのよねー、もっと素直になってくれればいいのに」

 

ユノはコンロに向かった。

 

「さてと……ハンバーグ作ろ!」

 

ミンチ肉のパックを開け、ボウルに空ける。手際が良い。昨日まではLBXとCCMを握っていた指が、今日はひき肉をこねている。

 

ひき肉が指の間で粘り気を帯びてくる感触。

ユノは玉ねぎのみじん切りをボウルに加えながら、卵を割り入れた。黄身が白身の中に浮かび、溶かされてミンチの山に混ざっていく。

 

「ねえねえ、みんなのとこどう?」

 

ユノが手を動かしたまま聞いた。何気ない口調。雑談のトーン。

 

「どうって……何が?」

 

ハナコがおずおずと聞き返す。木ベラを扱う手つきがまだぎこちない。

 

「決まってるでしょ。旦那様との進捗!」

 

ユノがニヤリと笑った。ひき肉をこねる手が止まらない。

 

「進捗って……ユノ、ミッションのこと思い出すわね」

 

キヨカの涼やかな声が滑り込んだ。彼女は出汁巻き卵を焼きながら、表情を変えずに言った。

 

「ミッションでいいの! ここは戦場なんだから♪」

 

「……戦場」

 

「恋愛の戦場!」

 

ユノがニコニコと言い切った。

キヨカの切れ長な瞳が、一瞬だけ調理台の向こう──テーブル席に座る黒髪の背中へ流れた。

 

「……『女帝』の正位置。豊かさと母性のカード。でも今はまだ……正位置の前段階ね」

 

「なにそれ! 要するに何もないってこと?」

 

「……何もない」

 

キヨカの声が一ミリだけ低くなった。卵を巻く手が僅かに速くなる。

 

「そっか〜。ハルキだもんねぇ。真面目すぎて手も出せないタイプだもんね」

 

ユノが呆れたように笑った。

 

「ハナコは? ヒカルとは?」

 

「ひ、ヒカル君は……」

 

ハナコの頬がさくらんぼのように赤くなった。

 

「……本を読んでる。全然話しかけてくれない…」

 

「お〜〜〜〜〜〜〜、いるわ〜そういうタイプ!」

 

キャサリンが大袈裟に天を仰いだ。

もう料理はほぼ完了しているみたいで、道具を洗っている。

 

「ほーそういうキャサリンは何かあったの〜?」

 

「は! 私の旦那? こっちが話しかけても『ふむ』とか『そうか』とかそれだけよ! 軍人かっての!」

 

キャサリンが包丁をガシャンと水切りラックに立てかける。ツンツンした声。だがその視線がテーブル席のハーネスの男子生徒の方へ一瞬だけ流れた。

 

「あいつハーネスのくせに日本刀みたいに硬いのよ! 私の魅力が通じないわけ?」

 

「キャサリンの魅力……?」

 

「ちょっとノゾミ!? あるに決まってるでしょ!!」

 

「……『悪魔』の逆位置。束縛と執着」

 

「キヨカ! それどういう意味!?」

 

「……事実」

 

「むーーーーーー!!」

 

キャサリンが暴れる。ノゾミが苦笑いでそれをなだめる。

 

「まあまあ。うちも……似たようなものだから」

 

ノゾミが苦い笑みを浮かべた。フライパンのソースをお皿に盛り付けていく。

 

「ポルトンの彼、すごく優しいんだけど……優しすぎて逆に壁があるっていうか……」

 

「あ〜〜わかるそれ〜〜」

 

ユノが同意した。テーブル席の方にはアラタが座っている。ぼんやりと天井を見上げている。

 

「うちのアラタもさぁ……部屋で怒鳴っちゃったんだよね私に。私が服脱がせようとしたら『するな』って」

 

「えっ!?」

 

ハナコが目を丸くした。

 

「なんで? 優しくないの?」

 

「いや、優しくは……ないけど。でも怒ってるっていうか、困惑してるっていうか……自分でも何したらいいか分かんないんだと思う。ミゼルのこと怒ってるのに矛先が私に向いちゃったっていうか……」

 

ユノの声が少し柔らかくなった。

 

「でもね、あとで謝ってくれた。『悪かった』って。あのアラタが素直に謝るんだから珍しいよ」

 

「へぇ〜……素直に謝るんだ」

 

「うん。だからまあ……まだ全然何もないけど……」

 

ユノが丸めたハンバーグのタネをフライパンに並べた。

 

油が弾ける音。ジュワァ。肉の香りが立ち昇る。

 

「正直さ、私もどうしていいか分かんないんだよね。頭では分かってるのに……アラタが近くにいるだけで胸がいっぱいになって……」

 

「……ユノ」

 

リンコの声が、静かに差し込んだ。

 

リンコは味噌汁の鍋の蓋を取った。湯気がふわりと立ち昇る。具沢山の味噌汁。大根、豆腐、油揚げ、わかめ。基本に忠実な、温かい汁物。

 

「……みんな、あんまり進んでないみたいだね」

 

リンコの声は控えめ。だがその調子に、どこか艶めいた響きが混じっていた。

 

「うん、まあね……」

 

ユノがフライパンを見つめながら答えた。

 

「ん、今のなんかおかしくない? リンコ!サクヤとはどうなの!?」

 

リンコの頬が明らかに赤く染まっている。

 

「……」

「え、何? 何何? その顔!」

 

フライパンから手を離して振り返った。キャサリンもハナコもキヨカもノゾミも、一斉にリンコを見た。

 

「……サクヤにね///」

 

リンコの小さい声とは裏腹に、芯が甘く震えていた。

 

「……求められちゃったの///」

 

食堂の調理台が、一瞬で静まり返った。

 

五人の視線がリンコに突き刺さる。

 

「……え?」

 

ユノの声が裏返った。

 

「求められたって……すーっ…どんな…?」

 

「……さっきまで///。サクヤが整備から戻ってきて…疲れてそうだったから私がお茶を淹れようと部屋からでようとしたら、手首を掴まれて……♡」

 

リンコの指先がエプロンの胸元を握りしめていた、無意識に。

その仕草が言葉以上に物語った。

 

「ベッドに……押し倒されて……」

 

「「「「「!!」」」」」

 

キャサリンの喉から空気が漏れた。

 

「サクヤが!? あのサクヤが!? 細野サクヤが!?」

「……うん♡」

 

リンコの顔が真っ赤。耳まで赤い。首まで赤い。だが瞳は──嬉しそうだった。隠しきれない幸福感が、潤んだ瞳の奥で揺れる。

 

五人の少女は包丁もフライパンも鍋も放り出してリンコに殺到していた。

 

「ちょっとリンコ! 最初から! 順番に!」

 

キャサリンがリンコの肩を掴んで揺すった。

 

「じ、順番って……そんな……」

「いいから! ベッドに押し倒されたところから!」

 

ユノの目が輝いている。ハンバーグがフライパンでジュワジュワ言っているが構っていられない。

湯気と油の匂いの中で、ひそかな声が交わされる。

 

「……じゃあ、ベッドに押し倒されてから」

 

リンコの声が震えていた。だがその震えは羞恥だけではない。

唇の端が微かに吊り上がっている、自慢だ。自分が一番乗りという優越感を感じていた。

 

「サクヤがね……『リンコ…リンコ…』って名前を呼ぶの///」

 

瞳が潤んだ。とろりと溶けそうに揺れる。

 

「いつものサクヤじゃないみたいだった。優しいサクヤじゃなくて……なんていうか…雄、なの。雄の本能っていうの///?」

 

「おっぱい……触られたの?」

 

「……うん」

 

リンコの頬の赤みが、さらに深くなった。

 

「……優しく揉まれて…先端も…口で♡」

 

「えええええええ!??」

 

キャサリンの叫び声が調理台に響いた。

 

「サクヤの野郎! 堅物の顔して何やってんの!」

 

リンコの手が自分の胸元を無意識に押さえた。エプロンの上からでも分かる柔らかな膨らみを、指先が辿る。

 

「シャツの裾から手が入ってきて……背中を撫でられて…/// そのまま上から脱がされたの♡」

 

指先が布地をぎゅっと掴んでいる。

 

「サクヤの手がね……すごく熱いの。ゴツくてデカいのに…私の肌に触れる時だけすごく優しくて…でも、止まらなくて♡」

 

「……っ」

 

ユノの喉から空気が漏れた。

フライパンのハンバーグが焦げ始めている。

 

「背中から腰…お尻まで撫でられて……/// 私、声が出ちゃって♡。サクヤに『可愛いよリンコ』って言われながら耳の裏をキスされちゃったの♡」

 

リンコの太ももが無意識に擦り合わされた。

 

「……っ」

 

誰もが集中して耳を澄ます。その耳には鍋やフライパンの音よりも優先されるものが届く。

 

「それで……キス、されたの?」

 

ハナコが消え入りそうな声で聞いた。桜色のウェーブが小刻みに揺れている。

 

「うん、両手をベッドに押し付けられたの。ギュッて。そしたらサクヤが上から覆い被さってきて…/// そのまま……キスをされた♡」

 

リンコの指先が自分の唇を撫でた。

 

「き、キス……///」

 

ハナコの声が蚊の鳴くように小さかった。両手で自分の唇を覆っている。桜色の髪が小刻みに震えている。

 

「キスって……口と口?」

 

「口と口♡」

 

リンコの頬が薔薇色に染まっている。瞳が潤んでいる。

 

「頭がホワホワするの……とっっても気持ちいい♡/// 舌を絡ませるとサクヤの味がするの♡ 呼吸もできなくて…私、何がなんだか分かんなくなっちゃった♡♡」

 

「「「「「…………っっ」」」」」

 

五人の呼吸が揃って荒くなった。

 

「それで……サクヤの手がね……」

 

声はさらに小さく。だが却って鮮明に届く。

 

「サクヤが『見せて』って……すごく恥ずかしかったのに、サクヤの手が太腿の内側を撫でてきて/// だんだん上に上がってきて……♡ いつの間にか脱がされちゃってて♡」

 

太ももが再び擦り合わされた。今度は強く。

 

「指が入ってきたの♡/// 私の中を探るみたいに動いて……声が抑えられな……い♡」

 

リンコの腰が揺れている。ヘコヘコと。

エプロンの下、ショートパンツの中で何が起きているかは──見なくても分かった。

 

「サクヤがね……『リンコの中、すごく熱いよ』って言ってくれて嬉しくて……♡ あの…サクヤの……」

 

リンコが俯いた。赤い耳が湯気の中で光っている。

 

「お、オチンポ♡に身体の奥底まで……サクヤを感じさせられたの♡ 何度も何度も…奥まで突かれて……子宮に出してもらった♡/// すっっごく嬉しい♡」

 

「……っ!!」

 

フライパンの油が跳ねて手首に当たったが痛みを感じない。そんな事どうでもいい。

 

「……何度もって……何回……?」

 

キャサリンの声が裏返っていた。

 

「……数えてない♡ いっぱい♡」

 

「いっぱいって…リンコ」

 

「私も無我夢中だったから記憶も飛び飛びで/// …あ、最後はフェラで終わったかな♡」

「「フェラ!!?」」

 

ハナコとキャサリンの声が重なった。

 

「……フェラって……リンコ、そこまで……」

 

ユノの声が震えていた。フライパンのハンバーグから聞こえる悲鳴は無視。

 

「だって……サクヤがね♡」

 

潤んだ瞳が遠くを見つめるように細められた。

思い出している。身体の奥から温かいものが込み上げてくるのが、伝わってくる。

 

「たっぷり出してもらって……んぅ♡ 私、グッタリと快感に浸ってたの♡ 仰向けのまま…サクヤの重みを感じながら、身体の中が全部満たされて……幸せすぎて動けなくて♡」

 

リンコの腰が隠す様子もなくヘコヘコと動いた。いや、むしろ見せつけるように少し捩りながら。

 

「それで、サクヤがね……私を引っ張るように起こしたの。『リンコ……』って苦しそうな声で……ごそっと体勢を変えられて♡」

 

リンコの吐息がその深さを物語る。

 

「サクヤのあそこに頭を……力強く鎮められて♡」

 

「……え」

 

ハナコの声が空気のように漏れた。

 

「そしたらね……目の前にサクヤの……オチンポが……♡ 視界いっぱいに広がったの///」

 

「「……っっ!!」」

 

五人の呼吸が止まった。

 

「すごく…勃ってて……♡♡ 血管とか浮き出て形がはっきり分かるの。熱さが顔にかかって……匂いが……♡」

 

リンコの頬が薔薇色を超えて、熟れた果実のような色に染まっていた。

 

「精子と……私の愛液が、混ざって塗れてて……テラテラしてて♡ 勝手に頬擦りしちゃった♡」

 

リンコの顔が微かに動く。頬を擦り寄せる仕草を、空中で再現していた。

 

「サクヤがね…『お願い……リンコ……』って。『大好き……大好き……』って……苦しそうな声で♡ 後頭部を押さえられて…逃げないのに逃げられないように♡」

 

「……っく」

 

キャサリンが唇を噛みしめた。腰が揺れている。ヘコヘコと。無意識のリズム。

 

「それで……リンコはどうしたの……?」

 

瞳が異様な光を帯びている。

 

「講義で……ほら、習ったでしょメタ沢先生に。お、お掃除フェラ♡」

 

「「「「「お掃除フェラ……♡」」」」」

 

五人の声が重なった。囁きのように。

 

「必死に思い出しながら……慎重に♡ まず先端をペロリとして……♡」

 

無意識の仕草。言葉と同じ動きを、舌が記憶している。

 

「……美味しそうに根元まで…♡♡」

 

リンコの喉が動いた。嚥下の動き。実際の感覚を身体が覚えている。

 

「サクヤがまた大きくなって……私の口の中で……♡ そのまま出してくれたの…あっつい子種を♡」

 

「口の中に……!?」

 

ハナコのタレ目がちの瞳が見開かれ、桜色のウェーブが小刻みに震える。

 

「うん♡」

 

リンコが頷いた。そして──

 

「ちゃんと教わった通りに上目で…サクヤの目を見つめながら……味わうように飲み干した…んぁ♡」

 

リンコの声はうっとりと溶けた。

 

「今まで食べたものの中で……一番美味しかったぁ♡///」

 

「……っあ」

 

誰かの喘ぎが漏れた。誰の声か分からない。分からないが──全員が同じ状態だった。

 

騒がしいキャサリンも、クールなキヨカも、おとなしいハナコも、余裕のあるノゾミも、全員が今は個性を捨てて雌を身体いっぱいに嗜む。

腰をヘコヘコと揺らしている。唇を噛みしめて、荒く短い吐息を繰り返している。エプロンの上から胸や股を擦る。

それぞれが、リンコの素敵な体験談に自身を投影させて……瞳に『♡』を浮かばせてしまう。

 

そしてユノ。

 

ユノの脳裏に、映像が広がっていた。

 

──リンコの子宮にはサクヤの種が宿っている。サクヤの子種がリンコの中でたぷたぷと揺れている。粘り気のある白い液体が、奥底で満ちている。歩くたびに揺れる。動くたびに溢れる。サクヤの匂いが身体の芯から滲み出る。

 

(……っ///)

 

ヘコヘコと。周囲の目を気にすることなく、空気に浮気する。

 

(……アラタは……)

 

想像が勝手に膨らんだ。アラタに押し倒される。アラタの熱い手が肌を這う。アラタの匂い。アラタの──

 

「……っ//」

 

ユノは歯を食いしばった。頬が燃えるように熱い。エプロンの下で心臓が暴れている。

 

「……リンコ」

 

ユノの声が掠れていた。

 

「ん♡?」

 

「……サクヤって……その後どうしたの」

 

「んっとね……♡ 私がね……『完食しました』って言って……空っぽの口を開けて舌を出したの♡」

 

実際に舌をチロリと出してみせた。

 

「そしたらサクヤがね……すっごく興奮しちゃって♡ また……押し倒されて♡」

 

「「……っっっ!!」」

 

もはや誰も調理をしていない。フライパンが一つ焦げている。鍋が二つ吹きこぼれている。

それでもリンコを羨む目は止まなかった。

 

リンコが抱かれているベッドの中に、自分が横たわっている幻影……それを脳裏で鮮明に再生される。

 

「……リンコ」

 

ユノの声が掠れていた。

 

「……羨ましい」

 

「え……?」

 

「羨ましいの。私」

 

ユノの瞳がリンコを真っ直ぐに見ていた。瞳の奥で、何かが揺れている。理性の光と、その奥で脈打つ甘い熱。

 

「アラタには怒鳴られたし、服脱がせようとしたら止められたし……全然触ってもらえないし! リンコは最後まで抱かれてるなんて……ずるい……ずるいよ……///」

 

リンコの話が脳裏で映像を描くたびに、身体が勝手に反応する。

 

「……ユノちゃん……」

 

リンコが少し申し訳なさそうに──だがやはり隠しきれない優越感を滲ませて微笑んだ。

 

「大丈夫だよ。アラタもきっと……そのうち……♡」

 

「そのうちっていつよ〜〜〜〜!!」

 

ユノが天を仰いだ。

 

「……あっ!! ハンバーグ!!」

 

焦げ臭い匂い。フライパンの中でハンバーグが黒く焦げている。油が煙を上げている。

 

「やばやばやばーー!!」

 

ユノが慌てて火を止めた。だが顔は真っ赤のまま。耳も首も赤い。

 

六人は次第に正位置に戻った。エプロンを整え、髪を直し、調理を再開する。

だが──誰の頬も、赤いままだった。

そして誰の腰も、必死な様子で揺れていた。

 

 

大半の小隊が料理を受け取り、テーブルを囲んでいる。箸と皿が触れる音、抑えられた話し声、時折漏れる笑い声。日常の食事風景──に見えなくもなかった。だが、昨日までとは明らかに異なっていた。

 

アラタたちは第1小隊のテーブルに座っていた。ハルキが正面、ヒカルが斜め右、サクヤが隣。

 

四人とも特に話さなかった。ハルキは教科書を開いている。ヒカルは腕を組んで目を閉じている。サクヤは工具を拭いている。アラタは──天井を見ていた。

 

「お待たせダモ! そろそろ料理の受け取りに来ていいダモよ (・ω・)」

 

四人はほぼ同時に立ち上がり、受け取り口でお盆を用意している女の子たちに向かって歩き出す。

……アラタの目は一番手前のユノを捉えた。

 

──すぐに、何かがおかしいと気づいた。

ユノの頬が赤い。熱を持った目つきをしている。

呼吸が浅い。肩の上下が速い。

ユノは俺にお盆を手渡すと、自分の分のお盆を持って跳ね上げ天板を通って近づく。

 

歩き方が──揺れている?

左右に微かに揺れてて、なんか不思議な歩き方。

 

アラタの近くに来た瞬間、ユノの鼻が微かに動いた。

匂いを嗅いでいる。

アラタの匂いを。無意識に、彼は気づいていない。

 

「は、ハンバーグ……作ったから……」

 

ユノの声が少し高い。無理やり平静を作っている。

 

──焦げていた。

表面が黒い。端の方が炭化している。ソースで隠そうとしているが隠しきれていない。

 

「……あの、焦げちゃったの……ごめんね」

しょんぼり

 

アラタの隣でハルキが皿を受け取っていた。

出汁巻き卵。焼き魚。ほうれん草のおひたし。味噌汁。

 

完璧だった。盛り付けも温度も色彩も、食堂の定食レベルを超えている。

 

キヨカの表情は変わらない。涼しげな紫色の瞳がハルキを一瞥しただけ。だが──その頬が、微かに赤い。呼吸が一拍だけ速い。

 

「……ありがとう」

 

ハルキが皿を受け取った。指先が触れそうで触れない距離。キヨカの手が引かれる……。

 

「ハルキ、髪の毛が服に」

 

取ろうとする手。ハルキが一歩下がった。

 

「……自分で取る」

 

キヨカの手が空中で止まった。一瞬、そして引かれた。

 

「……そう」

 

無表情。だがその手が、エプロンの裾をぎゅっと握りしめていた。

 

ハナコの皿は──味噌汁の豆腐が崩れていた。炒め物の色が濃い。

 

「ひ、ヒカル君……ごめんなさい……味、濃いかも……」

 

ハナコの声が震えていた。タレ目がちの瞳が潤んでいる。ただし料理の失敗で潤んでいるのか、それ以外の理由で潤んでいるのかは判別できない。

頬が赤い。歩く時に揺れている。ユノと同じだ。

 

ヒカルは皿を受け取ると、行儀悪く一掴み。

 

「……食べられない味じゃないよ」

 

短い。冷淡とも優しいとも取れない。だがハナコの顔がパッと明るくなった。

 

「ほ、本当!? えへへ……よかったぁ……」

 

リンコの皿は──温かい肉じゃが。出汁の色が黄金色。具が大きくしっかり煮込まれている。

 

「サクヤ、お疲れ様……♡ 温かいうちに食べてね」

 

リンコの声が甘い。側に急いで駆け、頬にキスを落とす。

サクヤの顔が真っ赤になった。耳まで赤い。

 

「り、リンコ……! ここ食堂だから……!」

 

「いいじゃない♪ 夫婦なんだから♡」

 

四人が皿を持ってテーブルに戻る。

 

そして──女子生徒たちが、男子生徒たちの横に座った。

 

ユノがアラタの隣。キヨカがハルキの隣。ハナコがヒカルの隣。リンコがサクヤの隣。

 

配置は自然だった。メタ沢が指定したわけではない。各自が、自然とパートナーの隣に腰を下ろした。

だが──距離感はそれぞれ大きく違った。

 

サクヤとリンコの距離はゼロに近い。

リンコがサクヤの右腕に自分の左腕を絡ませるほど密着させる。

 

「サクヤ、肉じゃが熱いかも。ふーふーしてあげるから、あーんして♡」

 

「り、リンコ……! 自分で食べられるから……!」

 

「だーめ♡ 花嫁教育で習ったの。疲れて帰ってきた旦那様には甲斐甲斐しくって♡」

 

「そそ、そう……」

 

サクヤの顔がさらに赤くなる。だが拒否しきれていない。リンコの差し出す肉じゃがを、おずおずと口で受け取る。

 

「……あ、美味しい」

 

「でしょ♡」

 

リンコの笑顔が輝く。サクヤの腕を強く抱きしめる。

 

その隣で──アラタはその光景を見ていた。

 

(……サクヤ、お前)

 

昨日までの「仲間の距離感」が、明らかに一段階深いものに移行している。腕を絡ませ、声を交わし、体温を共有する。夫婦の距離感。それが目の前にある。

 

ハルキとキヨカの距離は遠かった。

 

キヨカはハルキの隣に座った。だが肘が触れる距離にはない。一拳分の空白。ハルキは出汁巻き卵を箸で掴み、黙って口に運んでいる。

 

「……ハルキ」

 

「ん?」

 

「味は……どう」

 

「……美味しい」

 

「……そう」

 

会話が途切れた。キヨカの手が、テーブルの下でショートパンツの裾を握りしめている。ハルキは箸を動かし続ける。二人の間に、見えない壁がある。

 

ハナコとヒカルの距離も遠い。

ハナコはヒカルの隣に座ったが、体が縮こまっていて……それを横目で見ながらもヒカルは料理を黙々と食べている。

 

「……あの、ヒカル君……味、濃くなかったですか……?」

 

「……濃い。でも食べられる」

 

「あ、あの……次は薄くするから……」

 

「……うん」

 

ハナコの肩が縮んだ。白い花の髪飾りが震えている。

 

そして──ユノとアラタの距離は。

ユノはアラタの隣に座った。肩を寄せている。おとなしく、いつもの快活なユノとは思えないほど。

ツッコミがない。軽口がない。ただ隣に座って、焦げたハンバーグを挟み、小さく口に運んでいる。

 

アラタは箸を持ったまま、焦げたハンバーグを見ていた。

黒い表面。ソースで隠そうとした痕跡。

 

一口、食べた。

 

「……うめぇ」

 

ユノが顔を上げ、瞳が丸くなる。

 

「……え? 焦げてるのに?」

 

「焦げてるけど…うまいよ。中はちゃんと火が通ってるし、ソースも」

 

「……ほんとに?」

 

「…ほんとに」

 

ユノの頬が、さらに赤くなった。だが今度は──料理の褒め言葉に対する赤さだ。嬉しそうなのが分かる。

 

「……そ、そう…///」

 

ユノは俯いた。ツインのお団子ヘアが揺れ、無意識にアラタの肩へと自分の肩を少し近づけた。

 

……嘘をついているのは分かっていた。表面はカチカチだし、苦いし……悪食でも『美味しい』とは言わないだろう。

それでも気を遣ってくれた、美味いって言ってくれた…嬉しい。

 

その後はしばらく沈黙が落ちた、箸と皿の音だけが響く…。

 

「……あのさ」

 

アラタが不器用に話題を探すように、視線が泳ぐ。

 

「今日のウォータイムさ……ロシウスの前衛がさ、いつもと違うルートで攻めてきて」

 

「あ、それ! 私も報告で見た! いつもの平原ルートじゃなくて峽谷沿いに迂回してたでしょ?」

 

ユノが即座に反応した。声が一段高くなる。瞳に光が戻る。

 

「そうそうそれ! あれサクヤが事前に予測してたんだよな。峽谷の風向きで敵の進路が変わるって」

 

「え、そうなのサクヤ?」

 

アラタがサクヤを見た。

 

「あ、うん……峽谷の気流データが前の日と違ったから……もしかしたら迂回するかもって……」

 

「すげえなサクヤ。お前の分析のおかげでフラッグ防衛が成立したようなもんだ」

 

「そ、そんなことないよ……! アラタの反応が良かったからであって!」

 

「アラタは相変わらず無茶な動きをする。あの斜面からの空中斬り、着地計算してないだろ」

 

ハルキの声が低く、しかし確かに会話に参加した。箸を止めてアラタを見ている。

 

「あれは……まあ、なんとなく」

 

「なんとなくで五機落とすなよ」

 

ヒカルの涼やかな声。腕を組んだまま、冷ややかに言う。だがその口元が微かに緩んでいる。

 

「君の『なんとなく』が通用するのは今のうちだけだ。次の実技では僕が一位を取る」

 

「お前なぁ……そういうのは実戦で言えよ」

 

「言ってるよ、常に。君に負けてばかりではいられない」

 

「まあ落ち着け、ヒカルの援護があったからこその成果でもあるからな」

 

「22%……。さっき、データ見た感じだと着地時の脚部負荷…22%超えてる計算」

 

「さすがキヨカ! 22%は僕も計算した! 脚部ショックアブソーバーの油圧を2番から3番に変えれば18%まで下がるよね」

 

サクヤがリンコの腕を解いて、身を乗り出した。メカニックのスイッチが入った顔だ。

隣では『私だってわかるもん』と言いたげな表情。

 

「……あの、ヒカル君」

 

ハナコが小さな声で言った。おずおずと。

 

「今日の炒め物…次は薄くするから……また食べてくれる……?」

 

ヒカルは箸を止め、一瞬だけハナコを見た。

 

「……明日も作ってくれるなら」

 

「え……?」

 

「明日も。食べるよ」

 

ハナコのタレ目がちの瞳が見開かれた。桜色のウェーブがぱっと弾む。

 

「ほ、ほんと!? えへへ……頑張る……!」

 

ハナコの顔が明るくなった。

周りもホッとした雰囲気。

 

「……ハルキ。完食したのね」

 

「ああ。美味かった」

 

「……おかわり、いる?」

 

「いや、十分だ」

 

「……そう」

 

「今日のレポートを纏めなくてはいけない。手伝ってくれるか?」

 

「っ…わかった」

 

テーブルの下で、タロットアプリを開く指先が震えていた。

 

『太陽の正位置』

 

画面に浮かんだカードを、キヨカは誰にも見せずに閉じた。

 

「……ねえアラタ」

 

ユノがアラタの肩に自分の肩を寄せた。さっきより少しだけ強く。

 

「次は焦げさないからね。絶対」

 

「……おう。楽しみにしてる」

 

アラタの声が、少しだけ柔らかくなっていた。

食堂の灯りが暖色に変わる。外はもう暗い。潮風が窓の隙間から微かに漏れ入る。

箸と皿の音。話し声。笑い声。

──日常が、少しずつ形を変えて、ここにあった。




見切り発車なので、この先にどんな展開を作るか私自身楽しみにしています。
ミゼルを打ち倒すのか、恭順するのか

感想ください!たくさん欲しいです!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。