MMORPG『ラグナロクオンライン』のいつもの日課を終えた仲間たちが、気づけば見知らぬ異世界(ROの世界)へと転生していた。
無自覚な聖女リリアと、彼女を巡る男たちの歪んだ執着や裏の顔、抗えない本能が交錯するダークロマンスを書いていきます。
独自の解釈やダークな表現(キャラクターの狂気・執着その他色々)歪んだエロティシズムや心理描写も含まれますので、苦手な方はご注意ください。
18禁になるのは大分先の予定です
白転の境界。
「ふぅ。今日のデイリーはこれで全部終わりですね! みなさんいつもお疲れ様です〜!」
Discordの通話ウィンドウのアイコンが緑色に点滅し、軽快な通知音とともに流れたのは、カーディナル・リリアの弾むような声だった。
画面の向こうで、ピンクブロンドのボブヘアをした聖職者キャラクターがハートのエモーションを出して立ったり座ったりを繰り返している。
「お疲れ様。リリア、相変わらず無詠唱バフの維持が完璧すぎて助かるよ」
「本当助かったー! 俺なんて途中で突っ込んで死にかけたし!」
「ノア、お前は毎回突っ込みすぎだ。モンスターから攻撃を食らって痛いとか言うくらいなら最初から前に出るな」
「まあまあ、全員無事に日課消化できたんだから良いじゃないか。じゃあ、今夜はこれでログアウトにしよう」
ドラム族のギルドマスター・レナードの声を最後に、リリアはシステムウィンドウを開き、「ログアウト」のボタンをクリックした。
いつも通り見慣れたパソコンのモニターが暗くなり、部屋の灯りが戻る……はずだった。
「——え?」
視界を埋め尽くしたのは、漆黒ではなく絶望的なまでの純白。
音が消え、重力が失われ、まるで世界そのものが再構築されるような強い浮遊感が全身を襲う。
脳裏に直接響くような奇妙な風切り音の中、リリアの意識はゆっくりと深い白い闇へと呑み込まれていった。
冷たい湿気と、青くさい草木の匂い。
(……あれ? 私、部屋でログアウトしたはずじゃ……)
リリアは重い瞼を開けた。
視界に飛び込んできたのは、部屋の天井でもディスプレイの光でもなく、天を覆い尽くすほどの鬱蒼とした巨木の群れだった。
枝葉の隙間から差し込む光は薄暗く、どこか不気味な静寂が周囲を支配している。
「ここ……どこ……?」
体を起こそうとして、自分の恰好に違和感を抱く。
袖口には見慣れた繊細な金糸の刺繍——それはゲーム内で愛用していたカーディナルの衣装そのものだった。
慌てて自分の髪に触れる。
視界の端に見えるのは自分の黒髪ではなく、淡いピンクブロンド髪。
「うそ……私の髪の色……? 冗談でしょ……?」
胸元に手をやると、ゲーム内のカーディナルそのままの胸の谷間まで見える服装。
服の重みも、手触りも、柔らかささえも「本物」だった。
どこかで獣の遠吠えが響き、リリアはゾクッと背筋を凍らせた。
ここが日本ではないことだけは確かだ。
鬱蒼と茂る木々、不気味に蠢く影、そして肌で感じる圧倒的な現実感。
(落ち着いて、私……まずは人がいるところを探さなきゃ……!)
自分に言い聞かせ、震える足で立ち上がる。
だが、その一歩目で悲劇は起きた。
「きゃっ!?」
何もない平らな地面だったはずなのに、足が絡まり、リリアはその場に派手に派手に転倒した。
泥が豪奢な聖職者の衣を汚す。
(うう……何もないところで躓くの、現実だけじゃなくてこの身体でも同じなの……!?)
涙目になりながら泥を払い、恐る恐る歩を進める。
どれほど歩いたろうか。
深い森の中で完全に方向感覚を失い、途方に暮れかけたその時——少し離れた木々の隙間に、人影を見つけた。
「あっ……すみません! 道に迷ってしまって——」
安堵のあまり、声をかけながら駆け寄ろうとしたリリアだったが、その足がピタリと止まった。
不定期更新ですが、マイペースに描いていきます。
ここまでお読みいただきありがとうございます!