「――テラドライブ!!」
レイが掲げた杖から解き放たれた膨大な地属性魔力が、湿地帯のぬかるみごと大地を激しく激震させた。
——ドガガガガガガッ!!
「な……ぬわああああっ!?」
暗闇の中で爆散する泥水と岩片。
不可視のスキル『クローキングエキシード』で完全に気配を絶っていたシャドウクロスだったが、足元の広域全方位攻撃までは回避しきれず、激しい衝撃波に巻き込まれて姿を露わにした。
「そこか!!」
エルネストの鋭い瞳が、泥を浴びて姿を現した暗殺者を逃さず捉える。
彼は左腕でしっかりとリリアを抱きかかえ、彼女の可憐な頭を己の胸板へと強く押し付けたまま、右手一本で大型弓を引き絞った。
——シューーッ!!
「グアッ……!?」
寸分の狂いもなく解き放たれた矢が、体制を崩したシャドウクロスの右肩を深く穿つ。
「きゃああっ! す、すごいです、二人とも……っ!」
エルネストの胸の中で、リリアは恐怖に震えながらも、目の前で繰り広げられる見知らぬ美女魔導士との息の合った連携に目を輝かせた。
「——『ディレクティオヒール!!ブレッシング・速度増加・レリギオ』!!」
リリアは間髪入れずに聖なる祈りを捧げ、エルネストの疲弊した体力を全回復させると同時に、加勢してくれたレイへも攻撃力と詠唱速度を高める支援魔法(バフ)を高速で付与した。
「……おっ、支援完璧かよ! あんた……! 良い支援ありがとな!」
魔法の威力が一気に跳ね上がったのを肌で感じ、レイは口元を不敵に歪めた。
「手傷を負わせたなら逃がすな! 空間ごと氷結させる……『ダイヤモンドストーム』!!」
レイの手元から解き放たれた極寒の吹雪が、湿地帯の一角を一瞬で絶対零度の氷の世界へと変貌させる。
「くそっ……! 覚えていろ、お前たち……っ!!」
肩を射抜かれ、脚を氷漬けにされかけたシャドウクロスは、死の危険を察知して懐から転移の魔石を取り出すと、必死の面持ちで砕いた。
——シュンッ!
暗殺者の身体が歪み、間一髪で空間の彼方へと逃げ去っていく。
湿地帯に、再び静寂が戻ってきた。
「逃げたか。だけど、追う必要はないな。」
レイは深々と息を吐き、杖を下ろすと、警戒を解いて二人へと歩み寄った。
「怪我はないか? ……そっちの女の子も」
エルネストは抱え込んでいたリリアをゆっくりと地面へ下ろすと、自らの体で覆うように庇いながら、突如現れた見知らぬ魔導士——レイを鋭く、だが少し警戒を込めた眼差しで見つめた。
「助かった。……俺はウインドホークのエルネスト。こちらはカーディナルのリリアだ」
「俺はエレメンタルマスターのレイだ。……それにしても」
(レンジャーとカーディナルのペアなんているのか——って、ウインドホーク!? おいおい、見た目はすっかり三次職だと思って油断してたらガッツリ四次職じゃねえか……! そりゃああの状況であの猛攻をしのぎ切るわけだわ……って、待てよ? レンジャーの服を着てるウインドホークのエルネスト……?)
レイの視線が、エルネストの腕の中で顔を真っ赤にしている可憐な桃色髪の少女——リリアへと注がれる。
その圧倒的に惹きつけられる可憐な童顔と、豪奢な法衣越しでも主張する豊満すぎる胸元に思わず目を奪われつつ、レイはふと、引っかかりを覚えた。
(――あの回復魔法とバフの入れ方といい、この髪の色と髪型に装備……カーディナルのリリアって……)
レイの脳裏に、かつて画面越しで何度も目にしたキャラクターの姿がフラッシュバックする。
(……え……? 嘘だろ……? リリアとエルネスト……!?)
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