ラグナロクオンラインの世界に転生した。―歪な愛の行方― 作:和泉終夜
苦手な方は読み飛ばしてください。
リリアとエルネスト、そして道中で合流したレイの三人は、湿地帯での激戦とこれまでの緊張をほぐすため、ゲフェンの街にある宿の大浴場へと足を運んでいた。
しかし、宿の主人が申し訳なさそうに告げたところによると、あいにく内風呂の魔導回路が故障しており、現在は男女兼用の大浴場しか稼働していないという。
「……仕方ない。奥の仕切りまで男は立ち入るなと主人には伝えてある。リリア、行くぞ」
「はい……! すっきり汗を流せるのは嬉しいですけど、なんだかちょっとドキドキしますね」
エルネストに付き添われ、脱衣所を抜けて湯煙立ち込める大浴場へと足を踏み入れるリリア。
その少し後ろを、レイは複雑な表情でついてきていた。
(……よりによって、こんな状況でお風呂かよ)
元は男でありながら、今は見目麗しい「黒髪ショートボブの美女」の肉体を持つレイ。
極力余計なところを見ないように視線を泳がせつつも、リリアと共に同じ湯船のエリアへと向かう。
だが、運悪く(あるいは必然か)、その日の大浴場の床は湯気と湿気でひどく滑りやすくなっていた。
「あっ……!」
案の定というか、何もない平らな場所で、リリアが派手に足を滑らせた。
「きゃっ……!?」
「っ、リリア……!」
バランスを崩したリリアが前のめりに転倒し、身にまとっていた湯あみ着がはだける。
その衝撃で、レイの目の前に、彼女の破壊力抜群の豊満な胸元と白磁のような太腿の付け根が無防備に飛び込んできた。
ツルッとレイの目の前で転んだリリアは、上から下まですべてをレイに見られてしまう。
「ひゃうっ……!? れ、レイちゃん……っ!?」
「う、おい……っ!」
顔を真っ赤にしてパニックになるリリアと、想定外すぎる至近距離での眼福(そして刺激の強すぎる光景)に頭がクラクラするレイ。
リリアは恥ずかしさのあまり両手で胸を隠しつつ、申し訳なさそうに上目遣いで謝罪した。
「ご、ごめんね……!? 女子同士でよかった……あ、こんな変なところ見せちゃって、恥ずかしい……っ」
「だ、だだいじょうぶ……? 気にするなよ……」
そう答えながらも、レイの内心は別の意味で大変なことになっていた。
頭では「自分は女の身体なんだから落ち着け」と言い聞かせているものの、目の前で赤面するリリアの無防備すぎる可愛さに、内面の男性としての本能(アレ)が反応し、すっかり勃起しっぱなしになっていたのだ。
(くそっ……! 身体は女なのに、こんな時だけ反応しやがって……っ! バレたら終わりだぞ、俺……!)
湯気と動揺で顔を真っ赤に染めるレイと、天然全開で恥ずかしがるリリア。
一歩間違えれば正体がバレかねないスリリングな湯煙の中、過保護なエルネストが壁の向こうから「どうした、何かあったか?」と声をかけてくるのだった――。
「ご、ごめんね……!? 本当に……っ!」
「だ、だだいじょうぶ……っ! 気にするなよ、仕方のないことだし……!きっ気を付けろよ……!」
レイは必死に顔の赤みを湯気と照明のせいにしながら、プルプルと震える手でリリアから視線を逸らした。
しかし、目の前で申し訳なさそうに潤んだ瞳を向けてくるリリアの無防備すぎる姿は、一度火がついたレイの男性としての理性を完全に狂わせるのに十分すぎた。
(くそっ……! なんで俺は女の身体でこんなことに……! 頭の中は完全に男のままなのに、身体だけが女子風呂のハプニングの当事者になってやがる……っ!)
心の中で盛大に絶叫しながら、レイはこれ以上見たらマジで理性が吹き飛ぶと本能的に察知し、そっと視線を天井へと向けた。
だが、湯船から上がって体を拭き、髪をタオルで拭うリリアのしなやかな動きや、ふわりと漂う甘いシャンプーの香りが容赦なく鼻腔をくすぐる。
「うう、それにしても……レイちゃん、肌すごく綺麗だよね……。スタイルもモデルさんみたいだし……」
リリアはそう呟きながら、トコトコとレイに歩み寄り、その滑らかな二の腕からスルスルと脇腹にかけて、確かめるようにピタリと手肌を這わせた。
「わっ、すっごくスベスベ……! おまけにウエストもキュッとしてて、同じ女子なのに羨ましすぎます……って、あれ?」
リリアはふと視線を上に彷徨わせ、レイのスマートですっきりとした胸元にコテンと首を傾げた。
「うそ、レイちゃんって意外と控えめ……っていうか、すっごくスレンダーで可愛い形……。ねえ、ちょっと触ってもいい……?」
「ちょっ、リリア、そこは――っ!?」
レイが制止する間もなく、リリアの柔らかい指先が、レイの小さな胸の頂点にふわりと触れ――その瞬間、レイの全身の産毛が逆立つような、電撃が走る以上の激しい衝撃が駆け抜けた。
(ひっ……!? あ、そこは……っ! 体は貧乳で控えめなくせに、女になったせいで変に神経だけがバカみたいに過敏になってやがる……っ! 童貞だからか……!?こんな初歩的なスキンシップで一発で頭真っ白になって感じちまうとか、聞いてねえぞバカ!!)
「わぁ、すごく綺麗なお胸……って、レイちゃん? なんだかものすごく体がビクッて跳ねたけど……」
天然無自覚なリリアが純粋に感嘆の声を上げる一方、レイは顔を限界以上に真っ赤に染め上げ、耳まで火照らせながらその場でガタガタと震えていた。
「そ、そうか? まあ、日頃のケア……というか、こういう身体になっちまったからな……」
引きつった笑顔で返すレイの内心は冷や汗でびっしょりだった。
(頼むからこれ以上俺の近くに来るな……! お前がそんな純真な顔でボディタッチしてくると、俺のなにかが本当に決壊しそうなんだよ……!)
しかも、脱衣所の向こうの壁の向こうからは、エルネストの低い声が聞こえてくる。
『おい、リリア。そろそろのぼせるぞ。問題ないか?』
「は、はい! エルネストさん、今上がります……!」
外にいる過保護なエルネストに万が一この修羅場を見られた日には、「なぜレイがリリアの裸を見て硬直しているのか」という不条理な理由で、間違いなく一発で射殺される。
(あぶねぇ……! ここを無事に切り抜けて、絶対に男だなんて死んでもバレないように立ち回らなきゃ……! でも、こんな可愛いリリアの隣のポジションを、他の野郎どもには絶対に渡してたまるか……っ!)
湯上がりの火照りと冷や汗が入り混じった複雑な表情を浮かべながら、レイは「女としてのプライド(?)」と「元男としての葛藤」を胸の奥で必死に飲み込み、脱衣所へと足を踏み出すのだった――。
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