ラグナロクオンラインの世界に転生した。―歪な愛の行方― 作:和泉終夜
賑やかな夕食が終わり、自室のベッドに潜り込んだリリアは、枕に顔をうずめたまま、昼からの出来事を思い出してひとり体をよじらせていた。
(……あ、あんなことになっちゃうなんて……っ)
昼間、大人の店でレイと交わした濃密で甘い時間。
そして、個室に出る直前に自分から「夜もしようね」なんて言っておきながら、いざ夜になると恥ずかしさが押し寄せてきて、今夜は大人しくベッドに入ったのだ。
しかし、目を閉じると、先ほどレベッカとアリシアから聞いた刺激的すぎる話が、頭から離れなくなってしまう。
(……さっき、レベッカさんとアリシアさん……ふたりでしてるのを、イオンさんに見てもらってから本番するって言ってたな……)
ぽっ、と顔が熱くなり、掛け布団をぎゅっと胸元まで引き上げる。
(レイちゃんと私と……エルネストさん……。もし、あの三人でそんなことをしたら……どれだけ気持ちいいのかな……っ)
一度膨らんだ妄想は、もう止められなかった。
目の前に浮かぶのは、自分とレイが互いに甘い体温を重ね合わせ、喘ぎ声を漏らしている光景。
そして、それをすぐ近くで、どこか呆れたように、けれど熱っぽい瞳で見つめているエルネストの姿だ。
『……おい、いつまでふたりでしている。俺も入れろ』
冷静でクールなはずのエルネストが、耐えかねたように割り込んできて、レイと自分の二人を力強い腕で抱きかかえてくる。
『リリア……そんなにレイと気持ちよくなっていたのか? 俺のことも、ちゃんと見てくれ』
『んあっ……エルネストさん……っ、ダメ……そんな風に触られたら……っ!』
『ダメじゃないだろ。レイだけじゃなく、俺のことも満足させてみろ』
レイの甘い吐息と指先に溶かされながら、同時にエルネストからの激しい愛撫と熱い視線に晒される——そんな夢のような、けれどあまりにも淫靡で刺激的なプレイ。
(あ、あはは……っ! こんなはしたない妄想をしてるなんて知られたら、絶対エルネストさんに嫌われちゃうかな……? でも……でもっ……!)
過激で甘美な想像に胸の鼓動は早まり、身体の奥がじんわりと熱を帯びていく。
リリアは真っ赤な顔で枕をぎゅーっと抱きしめ、「ううぅ……っ」と恥ずかしさと興奮のあまり身をもだえさせるのだった。
一方、同じ宿屋の別のベッドの上で、レイは仰向けになったまま天井の一点を凝視し、絶望的な顔で頭を抱えていた。
(……だ、だめだ。脳味噌がパンクしそうだ……っ)
どれだけ忘れようとしても、昼間に「大人の店」でリリアと交わした濃密な熱と体温、そして己の口から漏れ出た情けないほどの甘い声が、鮮明な映像として脳裏を駆け巡る。
(まさか……リリアのやつに身体の奥まで甘やかされて、自分からあんな女みたいな声上げるなんて……。元・男としての俺の誇りはどこへ行ったんだよ……っ!?)
顔から火が出るほどの羞恥心に悶絶しながらも、思考はさらに底なしの混乱へと落ち込んでいく。
レベッカとアリシアが事もなげに言っていた、あの衝撃的な発言。
『二人でしてるところをイオンに見てもらって、それから本番……』
(……いやいやいや! おかしくねぇか!? 『二人でしてるところをイオンに見てもらってから』ってどういう状況だよ!? なんでそんな歪んだプレイが当たり前みたいに成立してんだよあの三人組は……っ!?)
知れば知るほど理解が追いつかない、この異世界の女同士(+観賞者)の未知なる深淵。
そして何より、レイを一番追い詰めているのは——個室を出る直前にリリアが見せた、あの小悪魔のような笑顔と悪戯っぽい囁きだった。
『……えへへ、夜もしようね……レイちゃん』
(神様……俺に何の試練を与えてるんだよ……?!)
布団を引っ掴んでぎゅっと握りしめ、レイは心の中で叫んだ。
(リリアのやつ……本気で言ってたのか……? それともただの冗談……? いや、あの目といい顔の赤さといい、本気だったらどうすんだよ!? 宿の自室で夜にあんなこと始めたら、廊下を挟んだ向かいの部屋にはあの過保護なエルネストがいるんだぞ……!? バレたら一発で射殺されるわ!!)
リリアの無邪気で可憐な誘惑と、背後に立ち塞がるエルネストの冷酷な殺気。その挟み撃ちに遭い、レイの脳内アラートは鳴り止まない。
(リリアは……っ! リリアは俺をどうしたいんだよ……!? 俺を試してるのか!? それとも、ただ純粋に楽しんでるだけなのか……っ!?)
葛藤と妄想の暴走で心臓は激しく鼓動し、顔は真っ赤に熟しきっている。
(あああああー! もうダメだ、今夜は絶対眠れねぇ……っ!!)
レイは自暴自棄になって枕に顔をぐいぐいと押し当て、眠れぬ王都の夜にひとり身をもだえさせ続けた。
(……待て、待て待て待て! 落ち着け俺……っ!)
頭を抱えたまま、レイの脳内シミュレーションは歯止めの効かない悪夢のような領域へと突入していた。
もし仮に、リリアのあの無邪気で恐ろしい思いつきが本気だったとしたらどうなる?
『レイちゃんとエルネストさんと3人でエッチしたらどれだけ気持ちいいのかな……』
(……だめだ、想像しただけで鳥肌と変な汗が止まらねぇ……っ!)
頭の中で勝手に再生され始める、あまりにもリアルで凄惨な(? )未来予想図。
暗く落とされた宿の部屋。
可憐な下着姿のリリアが、上目遣いで「二人とも……大好きだから……」と甘く微笑み、自分とエルネストの手を同時に引き寄せる。
その隣に立つのは——普段の冷静沈着な仮面を完全に剥ぎ取られ、ギラついた眼光で自分を睨みつけてくるエルネストの姿だ。
『……おいレイ。リリアがこう望んでいるんだ。お前だけ逃げられると思うなよ』
『っ……!? ちょ、待てエルネスト! 俺は元・男で……ッ!』
『黙れ。男だろうが女だろうが知るか。……リリアを満足させるのが、俺たちの役目だろ』
影の弓手の絶対的な逃げ場のないプレッシャー。
そして、リリアとエルネストの二人から同時に挟み込まれ、熱い体温と容赦ない手つきで身体のあちこちをなぞり回される感触——。
『んあぁっ……ッ!? エ、エルネスト……そこっ……ダメだって……っ!』
『……ふん、口では嫌がりながら、女の身体は正直だな。リリアを見ろ、お前がそんな声を出すから興奮しているぞ』
『えへへ、レイちゃん……すごく可愛い……っ。エルネストさん、もっとレイちゃんをいじめてあげて……!』
『ああ、任せろ』
二人掛かりで徹底的に甘やかされ、身体の奥底までトロトロに溶かされながら、自分でも聞いたこともないような淫らな喘ぎ声を部屋中に響かせてしまう己の姿。
(〜〜〜〜〜〜ッッッっ!!!)
「ぶはっ……!?」
あまりのリアルさと破壊力に、レイはベッドの上で飛び起き、激しく吐血する勢いで胸を押さえた。
心臓が早鐘のように鳴り響き、顔面は熱病に冒されたように真っ赤に熟しきっている。
(あ、あり得る……! あの過保護で一途なエルネストのことだ、『リリアの願い』とあっちゃあ、どんなイカれた提案だろうと絶対に拒否しねぇ……! それどころか『リリアを喜ばせるためならお前(レイ)も抱く』くらいの覚悟で本気で参戦してくるぞあの男は……ッ!!)
知れば知るほど、想像すればするほど、現実味を帯びて迫ってくる「三人での情事」という名の底なし沼。
(え……?? そうなったら……俺。俺はどうしたらいいんだ……!? 拒否したらリリアを傷つけるし、受け入れたら俺の精神と身体が色んな意味で終わるぞ……!?)
「……っ、神様……助けてくれ……っ」
レイは真っ赤な顔のまま、冷や汗で濡れた前髪をぐしゃぐしゃと掻きむしり、暗い天井に向かって届かぬ悲鳴を静かに上げ続けるのだった。
あともう少しで4章が終わります。
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