粗末な藁敷きのベッド。
薄い麻布が一枚敷かれているだけのその場所に、俺はゆっくりと膝を乗せた。
ぎし、と木枠が軋む。
二人の間に滑り込むようにして腰を下ろすと、左右から押し寄せてきたのは、眩暈がするほどの熱気だった。
熱い。まるで高熱を出した病人の肌のように、二人の柔らかな肉体が脈打ち、他人の男から注ぎ込まれた生体魔力の残り火を噴き上げている。
そして――圧倒的な、雄の匂い。
俺のものではない、見知らぬ荒くれ者たちの体臭と精液の臭気が、彼女たちの甘美な肌の香りと混ざり合い、濃厚な毒となって俺の肺を満たしていく。
「……リュージ」
ヒカリが、潤んだ金色の瞳を向け、細い腕を伸ばして俺の膝にすがってきた。
その指先は微かに震えている。
「戻ってきたよ……。ちゃんと、君の元に……」
「……ああ。よく無事で戻ってくれた」
俺は震える手で、ヒカリの乱れた金髪を撫でた。
サラリとした絹のような感触の奥に、男たちの汗と精液で固まった束が指に引っかかる。その感触が、俺の胸を鋭利な刃物で抉る。
反対側から、ホムラが豊満な胸を俺の腕に押し付けるようにして身を寄せてきた。
熱い。肌と肌が触れ合った瞬間、焼けつくような熱が服越しに伝わってくる。彼女の熟れた果実のような胸の先端が、擦り切れそうなほど赤く尖り、俺の二の腕に擦れ合っているのが分かった。
「リュージ君……冷たいですね、あなたの手。お布団に入らずに、ずっと待っていてくれたんですね……。私たちが、温めてあげますから……」
ホムラが熱い吐息を俺の首筋に吹きかける。
その息さえも、男たちの魔力を孕んで微かに甘く、饐えた匂いが混じっていた。
俺の胸の奥底で、ドス黒い炎が渦を巻いていた。
激しい罪悪感と、自らの無力さに対する吐き気。
だが――それと同時に、俺の意識の底を狂わせるような、歪で醜悪な興奮が首をもたげていた。
俺の魔脈は死んでいる。
転移のあの日、彼女たちと強制接続した瞬間に焼き切れ、下腹部の中枢神経は完全に炭化した。
どれだけ美女を前にしようと、二度と立ち上がることのない死んだ肉茎。
それなのに――男としての機能が完全に奪われているからこそ、頭の中の性欲だけが純粋な狂気となって暴れ回っていた。
俺が一度も抱いたことのない、神話とやらの精霊。
俺が一度も貫いたことのない、その美しく可愛らしい肉体。
それを、スラムの薄汚れたチンピラどもが、先に味わったのだ。これからも味われるのだ。
どんな風に抱かれたのか。
どんな風に暴かれ、どんな声で啼かされたのか。
知りたい。
聞きたくないはずなのに、その細部をつまびらかにして、自らの不能という傷口に塩を塗りたくりたいという、倒錯した渇望が喉を焼いた。
俺もまた、自傷でもって安堵し癒されるこの二人を笑えないらしい。
「……ヒカリ。ホムラ」
俺は掠れた声で、二人の名を呼んだ。
二柱の精霊が、ベッドの上で身じろぎし、熱っぽい視線を俺に向ける。
「……向こうで、何があった。お前たちが……どんな風に使われたのか、話してくれ」
残酷な問いだった。
自分の弱さゆえに身を売らせておきながら、その凌辱の一部始終を報告させようというのだから、人間の屑以外の何物でもない。
だが、ヒカリは責めるどころか、痛ましそうに瞳を揺らし、自嘲気味に口元を歪めた。
「……聞きたいの? 主への、業務報告ってやつ?」
「……そうだ。マネージャーとして、把握しておく必要がある」
冷徹な仮面を貼り繕う俺の言葉の嘘を、ヒカリは見抜いていたはずだ。
それでも、彼女は俺の太ももに頬を寄せ、熱い息を漏らしながら、ぽつり、ぽつりと語り始めた。
「……あのバラック、ドブとカビの臭いが酷かったわ。部屋の真ん中に、汚い毛布が一枚敷いてあってね。連れて行かれた瞬間、男が二人……いや、最初は三人だったかしら。私たちを取り囲んで、下品に笑いながら、魔力が抜けて弱った衣服を力任せに引きちぎってきたの」
ヒカリの細い指が、俺のズボンをぎゅっと掴む。
「『まずは魔力を込めなきゃ、武器にならねえんだろ?』って……。私が睨みつけたら、一番ガタイのいい男が、いきなり私の髪を引っ掴んで、床に押し倒したわ。そのまま、顔の横に太い脚を割り込ませて……」
ヒカリの呼吸が乱れ、金色の瞳が遠い記憶をなぞるように妖しく光る。
「私、本当はあれ以上、君以外の男になんて触られたくなかったのに……。その男、脂ぎった手で私の胸を、潰れるくらい乱暴に揉みしだいて……『すげえ弾力だ、さすが上等な精霊様だぜ』って、唾を垂らしながら笑うのよ。乳首を、指で千切れるくらい抓られて……痛くて、声が出そうになったわ」
「ヒカリ……」
「それだけじゃないわよ……。男は、ズボンを下ろして、いきなり……私の口の中に、その汚らしいモノを突っ込んできたの」
生々しい告白に、俺の心臓が激しく跳ねた。
「喉の奥まで、何度も、何度も突き刺されて……息ができなくて、涙が止まらなくて。吐きそうになるのに、頭を押さえつけられて逃げられなくて……。そしたら、男が唸り声をあげて、私の喉の奥に、熱くて苦い精子を、ドクドクって……大量に吐き出したのよ」
ヒカリの唇が、微かに震える。
その唇の端には、男の剛毛で擦れたような赤い鬱血が残っていた。
「胃の腑まで男の精子で満たされて、頭が真っ白になったわ。でも、それで終わりじゃなかった。もう一人の男が、私の脚を大きく広げて……濡れてもいない、硬いままの私のアソコに、無理やり割って入ってきたの」
くち、と濡れた音が狭い小屋に響いたような錯覚を覚えた。
ヒカリが身を縮め、俺の太ももに爪を立てる。
「痛かった……。引き裂かれるかと思ったわ。でもね、リュージ……。男の剛直が、私の奥の、一番深いところを突き崩した瞬間……ドッと、汚い生体魔力が体内に流れてきたの。君の魔脈が焼き切れてから、ずっと干からび続けている私の核が……他人の、下劣な男の魔力で、無理やりに満たされていくのよ……」
ヒカリの顔が、羞恥と熱情で真っ赤に染まる。
「『ほら見ろ、光の剣が光り出しやがった!』って、男たちが下品に叫んでたわ。男が腰を打ちつけるたびに、私の体の中で光が明滅して……私、悔しいのに……あんな汚い男に乱暴に突かれてるだけなのに、魔力が満ちていく感覚に、体が勝手に震えて……、情けない声を、あげちゃったのよ……っ」
耐えかねたように、ヒカリが俺の膝に顔を埋めて咽び泣いた。
その背中は小刻みに震え、露出した白い肌からは、男たちの精が発する熱が陽炎のように立ち上っている。
俺は息を呑み、言葉を失っていた。
俺の不能のせいで、この誇り高き光の精霊が、スラムの獣たちに犯され、魔力の充足という抗えない快楽の誤認に晒されたのだ。
「……ヒカリちゃんだけでは、ありませんよ」
今度は、ホムラが静かに、だが熱を孕んだ声で口を開いた。
彼女は俺の首に柔らかい腕を回し、耳元へと唇を寄せてくる。吐息が耳朶を焼き、甘い痺れが脳髄を駆け巡る。
「私は……三人同時に、相手をさせられました」
「……っ、三人……!?」
「はい……。一人は私の口を塞ぎ、もう一人は私の背後から手で……そして最後の一人は、私の正面から、胸の谷間に体を擦り付けていました」
ホムラの豊満な肢体が、微かに波打つ。
彼女の指先が、自らの赤く腫れ上がった乳房を愛撫するように這い、その谷間に残る白い乾いた痕跡をなぞった。
「弱い彼らが下水道の魔獣を倒すには、私の『炎の剣』の火力がどうしても必要だったのです。だから男たちは、競うようにして、私の中に魔力を注ぎ込もうとしました。……『おい、こっちの赤い奴の方が締まりがいいぞ』『精霊の穴は名器だな、吸い付きやがる』って……獣のような言葉を浴びせられながら、代わる代わる、奥の奥まで……乱暴に貫かれました」
ホムラの瞳が、とろりと蕩けたように濁っている。
聖女のような穏やかな微笑みをたたえながら、その口から紡ぎ出されるのは、あまりにも淫靡で残酷な事実だった。
「男たちの逸物が、私の最深部を何度も突き上げるたびに、子宮が押し潰されるような激痛が走りました。でも……彼らが中で果てるたび、ドク、ドク、と、煮えたぎるような生体魔力が、私の胎内に直接注ぎ込まれるのです。……リュージ君、信じられますか? 他人の放った精液の熱で、私のお腹が、内側からポカポカと温かくなっていくんです……」
ホムラが、俺の手を取り、自らの下腹部へと導いた。
薄い麻布越しに触れたその下腹は、異常なほど熱く、微かに脈打っていた。下卑た男たちの魔力が、未だに彼女の胎内で渦巻いているのだ。
「触ってください……ここです。ここに、男たちの精子が、まだタプタプに溜まっています。……彼らは、私が気絶しそうになっても腰を止めず、何度も、何度も、私の中に注ぎ続けました。『もう出ねえよ』って言いながら、三人ともが二度、三度と……私を苗床にして、己の男らしさを誇示するように……」
「ホムラ……もういい。俺が悪かった、もう喋るな……!」
俺は耐えかねて叫びそうになった。
だが、ホムラは首を横に振った。その瞳には深い情愛が宿っていた。
「いいえ、聞いてください、リュージ君。これが……あなたの精霊の現実です。……彼らが私の中で激しく脈打ち、最後の魔力を搾り出した時、私の『炎の剣』は、昔の力を一部取り戻し、紅蓮の輝きを放ちました。その炎で、私たちは下水道の巨大鼠の群れを、一瞬で消し炭にしたのです」
ホムラは恍惚とした表情で、自らの太ももを擦り合わせた。
くちゅ、と粘膜の擦れ合う淫らな音が、俺の鼓膜を激しく震わせる。
「男たちは、恐怖と興奮でさらに昂ぶり……戦いが終わったあとも、下水道の泥濘の中で、私とヒカリちゃんを組み敷きました。『よくやった、ご褒美だ』と言いながら、泥まみれの体で、また私たちを貪ったのです……。私は、その時……痛みに耐えながら、リュージ君の顔を思い浮かべていました」
ホムラの熱い唇が、俺の唇の端に触れた。
ほんの少し触れただけで、彼女の口内に残る男の魔力の残り香が、俺の口内へと移り込んでくる。
「リュージ君……。あんな汚らわしい男たちに抱かれながら、私は、あなたを感じていました。この屈辱も、この胎内の熱も、すべてはリュージ君を生かすためのもの。そう思えば……男たちの乱暴な突き上げさえも、あなたへの想いを証明する歓びのように思えてしまったのです……」
俺は呻いた。
悪いのは全て、彼女たちをこんな境遇に追い込み、その生々しい凌辱の記録を聞いて、胸を締め付けられながらも、激しい興奮を覚えてしまっている俺自身だ。
ヒカリが、俺の膝から這い上がり、俺の胸元に両手を置いた。
はだけた胸の先端が、俺のシャツを押し戻す。
「……ねえ、リュージ。君、本当は興奮してるんでしょ?」
ヒカリが、挑発するように、だが哀願するように囁いた。
その瞳には、主の視線を求める雌の熱が爛々と灯っている。
「わかるわよ。君の心臓、壊れそうなくらい激しく脈打ってる。……悔しい? 私たちの初めてを奪ったのが、君じゃなくて、ギルドのデブで、その次がスラムの薄汚い男たちだったのが、そんなに悔しい?」
「ヒカリ……」
「だったら……私たちを抱きなさいよ! 男のモノが立たなくたっていい! 指でも、舌でも、何だっていいから……! あいつらの残した汚れを、君の手で上書きしてよ……っ!」
ヒカリが叫び、俺の首にしがみついてきた。
そのまま、強引に唇を重ねてくる。
奪われた唇から、ヒカリの熱い舌が滑り込んできた。
唾液とともに混ざり合ってくるのは、微かな鉄の味と、男の精の匂い、そして弾けるような光の魔力の粒子。
30を過ぎても恋人がいなくて、童貞だった俺。
ファーストキスは、他の男の精液の味がした。
俺は頭が真っ白になりながら、ヒカリの細い腰を抱き寄せた。手のひらに触れる肌は汗ばんでいて、男たちが掴んだ痣の感触が生々しく伝わってくる。
ヒカリは目を見開くと、嬉しそうに頬を染めた。
「んむ……っ、ふ……ちゅ、る……っ。キスふぁね、守ってたの……やっと……渡せた……」
ヒカリが狂ったように俺の口内を貪る。
その体は激しく震え、俺の胸に押し付けられた双躯が、押し潰されながら熱を放つ。
「リュージ君……私も、私にも触れてください……」
背後から、ホムラが俺の背中に組み付いてきた。
豊かな胸が背中に押し当てられ、柔らかな弾力が俺を包み込む。彼女の手が、俺の首筋から胸元、そして動かない下腹部へと這い下りてくる。
炭化した男性器の残骸が眠る、冷え切った場所。
ホムラの熱い掌が、その上から優しく包み込む。
「可哀想な、リュージ君……。おててだけじゃなくて、『ここ』もこんなに冷たくなって……。でも、大丈夫です。私たちが、何度でも男たちから魔力を奪ってきますから……。その魔力で、あなたを温めて、あなたを養ってあげます……」
ホムラが俺の耳たぶを甘噛みし、濡れた吐息を吹き込む。
「見てください……ヒカリちゃんのここも、私のここも……まだ、男たちの注いだモノで溢れています。……でも、私たちの魂は、心は、すべてあなたのものです。……さあ、リュージ君。あなたの指で、私たちの中を確かめてください……。汚い欲望に晒された私たちを、優しく触ってください……」
ホムラが、俺の右手を取った。
そして、躊躇う俺の指を、自らの濡れそぼった秘所へと導いていく。
指先が、信じられないほどの高熱と、ぬめる液体に触れた。
男たちの精液と、彼女自身の体液が混ざり合い、泡立つように熱気を帯びている。
指先をわずかに沈めただけで、きゅう、と吸い付くような熱い肉壁が、俺の指を締め上げてきた。
「あ、ぁんっ……! リュージ君の……指……っ!」
ホムラが甲高い嬌声をあげて背を反らせる。
その胎内からは、どろりとした白濁した液体が、俺の指を伝って溢れ出してきた。
男たちが残していった、濃厚な生の痕跡。
それを、俺の指が掻き分け、汚し、暴いていく。
「リュージ……私のことも、触りなさいよ……!」
ヒカリが嫉妬したような甘えた顔で、俺の左手を掴み、自らの股間へと押し付けた。
こちらの秘所もまた、乱暴に貫かれたせいで熱く腫れ上がり、だくだくと男たちの残滓を垂れ流していた。
二人の神聖な精霊の肉体が、他人の男たちの欲望で満たされ、その汚れをまとったまま、俺の両手に縋り付いている。
俺は動かない股間の痛みを抱えながら、狂ったように二人の肉体をまさぐった。
唇を奪い、指を突き入れ、男たちの体液を掻き出し、胸を揉みしだき、首筋に歯を立てて新たな鬱血痕を刻みつける。
「ああっ! リュージ、もっと……もっと強くして……っ!」
「はい、リュージ君……! 汚してください、あなたの色で……私たちを、塗り潰してください……っ!」
二人の嬌声が、スラムの掘っ建て小屋の闇に木霊する。
男たちの注ぎ込んだ生体魔力が、俺の乱暴な愛撫によって刺激され、赤と白の閃光となって室内を妖しく照らし出した。
俺が一度も使ったことのない武器。
俺が一度も抱いたことのない女たち。
それを他人が先に使い、蹂躙したという耐え難い屈辱。
だが今、その泥水のような現実を呑み込み、他人の残した熱にまみれながら、俺たちは確かに一つになっていた。
歪みきった絆。
贖罪と依存、そして不能の主と傷ついた精霊たちの、底なしの依存関係。
男たちの汗の脂。
泥濘と錆の匂い。
そして――二柱の天の精霊の体内に無理やり注ぎ込まれ、今なお彼女たちの粘膜の奥底で燻り続けている、見知らぬ荒くれどもが生み出した白濁の汚汁と、揮発しかけた濃厚な魔力の熱。
ホムラは横になって目を瞑っている。寝ているのか、寝ていないのか。こちらからは窺い知れない。
藁を敷いただけの粗末な寝台の上で、カンテラの頼りない灯芯がチリチリと爆ぜ、影を揺らす。
「はぁ……っ、ぁ……っ、ん……っ」
俺の膝の上に跨がったヒカリの口から、熱い呼気が断続的に零れ落ちていた。
金色の豊かな髪は汗と男たちの体液で無残に束ねられ、つまびやかにされた全身は、月明かりとランプの赤光を浴びて艶めかしく浮き彫りになっている。
滑らかな白い肌の至る所に、力任せに鷲掴みにされた青紫色の手形がくっきりと残っていた。
特に、豊かに実った乳房の柔らかな傾斜には、荒くれ者の無骨な指先がめり込んだ痕が赤黒く鬱血し、その先端――ピンと張り詰めた淡紅色の突起の周りには、下卑た唾液の乾いた跡が白く輪を描いている。
「ヒカリ、もういい……。無理をするな。横になって身体を休めろ」
俺は掠れた声で制止しようとした。
だが、ヒカリは俺の制止など聞こえていないかのように、激しく首を横に振った。
金色の切れ長の瞳には、爛々とした異様な執着と、今にも零れ落ちそうな大粒の涙が同時に宿っていた。
一度、安らぎを思い出してしまった今、眠れば、また過酷な現実に戻される。その思いが、ヒカリを頑なにさせているようだった。
「嫌……っ、嫌よ! 休むわけないでしょ! こんな……こんな汚いモノを腹の中に溜め込んだまま、眠れるわけないじゃない!」
ヒカリの細い指が、俺の薄汚れたボロのシャツを力任せに引き裂かんばかりに掴み上げる。
その指先は小刻みに震えていた。
「もっと見て! 見てよ! ちゃんと見なさいよ! 君の精霊が……君の武器が、どんな風に汚されたのかを!」
叫びながら、ヒカリは俺の腰に絡みつけていた太ももを、さらに大きく左右へと割り開いた。
ぐちゅ、と。
狭い小屋の中に、聞くに堪えない湿った肉の擦れ合う音が響いた。
俺の視界に飛び込んできたのは、あまりにも残酷で、あまりにも淫らな、俺の男としての敗北の証だった。
俺が手で弄ったことで露わになった彼女の秘所は、幾人もの粗野な男たちに強引にこじ開けられたせいで、痛々しいほど赤く腫れ上がっていた。
そして――その割れ目の奥、きつく閉じることすらできなくなった膣口から、どろりとした生温かい白濁液が、再び泡を噛みながら溢れ出していたのだ。
男たちの欲望の滓。
魔脈を焼かれた俺が、どれほど願っても彼女たちに注ぎ込んでやることのできない、雄の生体魔力の塊。
それが、ヒカリが呼吸を乱すたび、内壁の痙攣に押し出されるようにして、たらりと太ももの内側を伝い落ちていく。
白い液体は、彼女の透き通るような肌の上を滑り、俺の粗末なズボンの布地へと染みを作っていた。
「……っ」
喉の奥が張り裂けそうだった。
吐き気と、胸を握り潰されるような激痛。
だが、その地獄のような感情の裏側で、俺の脳髄は麻薬を打ち込まれたように激しく痺れていた。
美しい。
神話に語られる天の精霊が、薄汚れたスラムのチンピラに手籠めにされ、腹の底まで他人の精で満たされて、俺の目の前で喘いでいる。
この世のどんな絵画よりも背徳的で、煽情的な光景だった。
俺が、男として正常であったなら。
今すぐにでもこの華奢な腰を掴み、彼女を組み伏せて、自分のモノで貫いてやれたはずなのだ。
男たちの痕跡をすべて塗り潰し、俺のモノだと刻みつけることができたはずなのだ。
だが――俺の股間は、冷え切った石のように沈黙していた。
どれほど脳が沸騰しようと、どれほど眼前のヒカリの淫靡な肉体に視線を奪われようと、下腹部の奥にある炭化した魔脈の残骸は、熱を一切伝えない。
ただの死んだ肉塊。
二度と起き上がることのない、嘲笑の対象でしかない突起。
「リュージ……お願い、お願いだから……」
ヒカリが、すがるように俺の首に腕を巻きつけてきた。
彼女の熱い吐息が、俺の耳朶を容赦なく灼く。
肌と肌が触れ合うたび、彼女の体内に残る男たちの魔力が、陽炎のような微熱となって俺の皮膚を刺した。
「あいつら、本当に酷かったのよ……。私が嫌がって暴れたら、腕を後ろにねじり上げて、床に顔を押し付けて……『生意気な精霊のツラを拝みながら突くのが一番抜けるぜ』って……何度も、何度も、中を引っかき回されて……っ!」
ヒカリの爪が、俺の背中に食い込む。
痛い。だが、その痛みすら、彼女が味わった地獄の爪垢ほどにも及ばない。
「私、悔しくて……君の顔ばっかり思い出してた。なのに、奥を乱暴に小突かれるたびに、頭が痺れて……あんな奴らの魔力なのに、身体が勝手にキュウキュウ締まっちゃって……! 『いい締まりだ、光の剣をもっと光らせてやるよ』って、私の奥に、何度も……ドクドクって注ぎ込まれたの……!」
「ヒカリ、言うな……もういい、分かったから……!」
「分かってない! 君は何も分かってないわよ!」
ヒカリが金切声をあげた。
彼女の大きな金の瞳から、ぽろぽろと涙が溢れ出し、男たちの体液で汚れた頬を濡らしていく。
「気持ち悪いのよ! 今も……私のここ、熱くて、疼いて……あいつらの魔力が、胃の腑の底で蠢いてるみたいで、気が狂いそうなの! 私は君の武器よ!? 君の精霊なのよ!? なんで、あんな奴らのモノで満たされてなきゃいけないのよ……っ!」
ヒカリは狂乱したように叫びながら、突然、俺の腰の帯に手をかけた。
「……ヒカリ!?」
「嫌だ……嫌、嫌! こんなの、一秒だって残しておきたくない!」
強引に帯を引きちぎるようにして解き、粗末なズボンの前を押し広げられる。
冷たい夜風が、俺の下腹部に触れた。
露わになった俺の急所。
そこには、生気を完全に失い、小さく縮こまったまま、ピクリとも動かない無惨な肉茎が横たわっていた。
転移の初日、彼女たちの強大な神威を正規の減圧なしに受け入れた結果、焼き切れた魔脈の超高熱が直撃し、生殖神経系が完全に炭化した痕跡。
皮膚の表面には、火傷のような赤黒い斑点が残り、魔力の循環が完全に途絶えていることを無慈悲に証明している。
「……っ」
俺は惨めさに顔を背けようとした。
見たくない。世界で最も愛おしく、世界で最も美しい精霊に、自らの不能の証を晒すことの屈辱に、死んでしまいたかった。
だが、ヒカリはその死んだ肉塊から、決して目を逸らさなかった。
「……嘘よ。こんなの悪い夢……。だって。だって、こんなの、最低過ぎるじゃない……。いつか仕える主に出会って、幸せに……こどもだって……」
ヒカリはうわ言のように呟きながら、震える両手で、俺の冷え切ったちんこを包み込んだ。
びくり、と俺の身体が跳ねる。
だがそれは神経が反応したのではない。ただ、ヒカリの掌があまりにも熱く、湿っていたからだ。男たちの体液を拭い切れていない彼女の手のひらから、ぬめるような感触が俺の皮膚へと移る。
「だって……君、男じゃない。私のこと、いつもあんな目で見てるじゃない……! 私の胸や、脚を見て、欲情してるの、契約の繋がりで全部伝わってきてるわよ……!」
ヒカリは必死だった。
まるで、壊れてしまった大事な玩具を直そうとする幼子のように、乱暴に、だが祈るように、俺の股間を擦り始めた。
「立ちなさいよ……! 起きなさいよ、リュージ! 私はここにいるわ! 君のヒカリが、こんなに近くにいるのよ!」
きゅ、きゅ、と皮膚が擦れる乾いた音がする。
ヒカリは可愛らしい片手で俺のモノを激しく上下に扱きながら、もう片方の手で自らの豊かな乳房を鷲掴みにし、俺の目の前に突き出した。
「ほら……見て! 君、私の胸が好きでしょ!? あの男たちに吸われて、こんなに赤くなっちゃったけど……触っていいわよ! 揉みなさいよ! あいつらみたいに、指をめり込ませて、好き放題に弄びなさいよ!」
ヒカリが自らの乳首を爪先で摘み、引っ張り上げる。
ぷるんと震える白い柔肉は、男たちの暴力的な愛撫のせいで熱を帯び、甘い香りを放っていた。
だが――動かない。
どれだけ刺激を与えられても、どれほど極上の肉体を眼前で揺らされようと、俺の股間はただ冷たく、重く垂れ下がったままだった。
快感のシグナルは脳へ届かない。
下腹部に感じるのは、ただ擦られることによる鈍い摩擦熱と、神経が死んでいることによる異様な虚無感だけだった。
「なんで……なんでよ……っ!?」
ヒカリの息が荒くなる。焦燥が彼女の表情を歪めていく。
彼女は膝立ちになり、自分の顔を俺の股間へと近づけた。
「ヒカリ、やめろ! もういい、やめるんだ!」
「やめない! 絶対に諦めないんだから……っ!」
制止する俺の手を払い除け、ヒカリは躊躇うことなく、その艶やかな唇を開いた。
温かな口腔の熱が、俺の死んだ突起を呑み込んだ。
「……っ!?」
ぬるりと、滑らかな舌が亀頭の先端を這い回る。
唾液の糸を引かせながら、ヒカリは夢中で首を前後に動かし始めた。
じゅる、じゅぷ、と、卑猥な水音が静まり返った小屋の中に響き渡る。
「ふぉうやって、あの男たちは……気持ちよくなってぇ……」
神の座に連なるはずの高貴な精霊が、薄汚れた床の上で膝をつき、男としての機能を失った人間の股間に顔を埋め、必死に舌を絡め取っている。
彼女の小さな舌先が、裏筋をなぞり、先端の窪みを穿ち、喉の奥深くまで咥え込もうと悶える。
ごくん、とヒカリの喉が鳴った。
男たちに喉の奥を犯されたばかりのその口で、今度は俺の不能を蘇らせようと、必死に熱を注ぎ込もうとしているのだ。
「んぐ……っ、ふ……ちゅぷ……じゅるる……っ!」
彼女の金色の髪が乱れ、俺の内腿をくすぐる。
時折、彼女の瞳から溢れた大粒の涙が、俺の太ももに落ちて弾けた。
冷たい涙と、熱い口腔。
だが、それでも――俺の身体は、何一つ応えることができなかった。
血が通わない。
海綿体は膨らむ気配すら見せず、ただヒカリの唾液で濡れそぼり、情けなくふやけていくだけだった。
どれだけヒカリが喉を鳴らそうと、舌を激しく動かそうと、そこにあるのは完全な『無』だった。
魔脈の全焼とは、そういうことなのだろう。
奇跡など起きない。生物としての決定的な死が、
子孫を残すことが出来ないという終焉が、そこには横たわっていた。
「……げほっ、ごほっ……!」
息が続かなくなったヒカリが、口を離した。
銀色の唾液の糸が、俺の縮こまった肉茎と彼女の濡れた唇の間に、無残に架け渡される。
ヒカリは肩で息をしながら、信じられないものを見るような目で、俺の股間を見つめていた。
これだけ尽くしても、これだけ辱めを耐えてしゃぶり尽くしても、微動だにしない死体のようなモノを。
「……なんで……?」
掠れた声が、彼女の唇から漏れた。
「なんで立たないのよ……? 私の身体じゃ、駄目なの……? 私が、あんな汚い男たちに抱かれちゃったから……汚れたから、興奮できないの……っ!?」
「違う! 違うんだ、ヒカリ!」
俺は耐えかねて、ヒカリの肩を強く掴んだ。
これ以上、彼女に自分を責めさせるわけにはいかなかった。
「お前のせいじゃない! お前は綺麗だ、世界で一番美しい! 悪いのは俺なんだ! 俺の身体が……あの日、お前たちと繋がった時に、完全に壊れちまったんだよ! 俺に力がなかったせいだ! 俺の魔脈が弱かったせいだ! もう二度と、誰相手だろうと勃つことはないんだ!」
残酷な現実を、俺は自らの口で突きつけた。
これ以上、惨めな足掻きを続けさせないために。
だが、ヒカリはその言葉を聞いた瞬間、絶望に顔を歪ませ、狂ったように俺の胸を両手で叩き始めた。
「嫌よ! 認めない、そんなの認めるわけないでしょ!」
バン、バン、と小さな拳が俺の胸板を打つ。
痛くはない。だが、その一撃一撃が、俺の魂を粉々に打ち砕いていく。
「君ので掻き出してよ……!」
秘部を両手で広げる。
ヒカリが、喉を千切らんばかりに叫んだ。
その瞳から、堰を切ったように涙が滝となって流れ落ちる。
「あいつらの汚い精液が……今も私の奥で、ドロドロに溶けてへばりついてるのよ! 気持ち悪くて、死にそうなの! お願いだから……君の硬いモノで、奥の奥まで力任せにおまんこ貫いて、全部掻き出してよ……っ!」
ヒカリは俺の足元に跪き、股間に顔を埋めながらわんわん泣き叫び懇願した。
「君の熱いので……私の中を、めちゃくちゃに掻き回して……! あいつらの残したモノを全部押し流して、君の精液で、私をいっぱいに満たしてよ……! 私を、君の色で染め直してよぉっ……! オスのちんちんの形は、他のオスから大事な相手を取り返すためにあるんでしょ……。だから……」
悲痛な叫びが、狭い掘っ建て小屋の板壁に跳ね返る。
それは、好きでもない男に処女を奪われ、泥水を啜らされた少女の、魂の底からの悲鳴だった。
自分をこんな目に遭わせた世界への憎悪と、主と運命への思慕。
他人の男に汚された身体を、想い慕う男の熱で浄化してほしいという、あまりにも切実で、あまりにも残酷な願い。
だが――俺には、それに応えるための力がない。
膣を掻き回すのに最適な形状の棒を、どんな男も持っているのに俺にはない。
俺はただ、震える両手でヒカリの頭を抱きしめることしかできなかった。
「すまない」という言葉すら、彼女の絶望の前ではあまりにも軽すぎて、喉に貼り付いて出てこない。
俺の腕の中で、ヒカリの叫び声は次第に弱まり、やがて掠れた嗚咽へと変わっていった。
激しく暴れていた彼女の身体から、急速に力が抜けていく。
彼女の視線が、だらしなく濡れたまま、ピクリとも動かない俺の股間へと落ちた。
沈黙。
永遠のように長い、凍りつくような沈黙が二人を包み込んだ。
どれだけ叫んでも。
どれだけ泣き喚いても。
現実は何一つ変わらない。
俺の魔脈は炭のままであり、彼女の胎内には、今もスラムの男たちの放った精液が冷え固まりながらへばりついている。
その絶対的な断絶が、ヒカリの心を容赦なく打ちのめしていた。
金色の瞳から、すうっと光が消えていく。熱が引き、あとに残ったのは、冷酷な現実という名の深い絶望だった。
「…………」
ヒカリは、ゆっくりと俺の胸から顔を離した。
その表情には、先ほどの激情はもはや欠片も残っていなかった。
まるで、致命的な傷を負った獣が、自らの死を悟った時のような、痛々しいほど静かな諦念。
彼女は震える指先で、自分の涙を乱暴に拭った。
そして、はだけた胸元を隠すこともせず、力なく項垂れながら、消え入りそうな声で呟いた。
「……ごめん、無理言った」
その一言が。
激しい罵倒よりも、狂った叫びよりも、何千倍も深く、俺の心臓を抉り抜いた。
無理を言った。
そうだ、無理なのだ。
彼女の願いは、この世界で最も正当で、最も純粋な救済への希求であり――そして、俺にとっては逆立ちしても叶えられない不可能な奇跡だった。
彼女はそれを、完全に理解してしまったのだ。
自分はこの現界の最中、敬愛するリュージに抱かれることはないのだと。
自分たちがどれほど男たちに手籠めにされようと、この主は、自分たちを男として浄化してやることも、抱きとめてやることもできないのだと。
「ヒカリ……」
俺が伸ばした手は、空を切った。
ヒカリは俺の膝から静かに降りると、藁の上に膝を抱えて丸まった。
開いた秘部から、冷え切った男たちの白濁液が、ぽたりと藁の上に落ちる。
彼女はその汚れを拭おうともせず、ただ背中を丸め、小さく震えていた。
「……寝るわ」
背中を向けたまま、ヒカリは毛布を引き寄せた。
その声は平坦で、感情の起伏が完全に抜け落ちていた。
「明日も……早いんでしょ。また、お金を稼がなきゃいけないんだから……」
「…………」
「大丈夫。泣いたら、また立ち上がれるから……。君を、守らなきゃいけないんだから」
俺は何も言い返せなかった。
露わになった自分の股間を、震える手でズボンの中へと仕舞い込む。
布擦れの音が、これほどまでに惨めに響いたことはなかった。
同じベッドで寝たふりをしているホムラの目の端から一粒、涙が零れ落ちた。
小屋の隅で、外の警戒を終えて戻ってきたヒバナが、静かに佇んでいた。
その琥珀色の瞳は、悲しそうに俺たちを見つめていた。いつもなら軽薄な提案をしてくるはずの機械人形すら、今は口を真一文字に結び、沈黙を守っていた。
カンテラの灯りが、微かに揺れる。
俺は横たわるヒカリの背中を見つめながら、拳を強く握りしめた。
強く強く、握りしめた。爪が掌に食い込み、血が滲む。
俺がまだ使ったことのない精霊と武器を、他の奴らが先に使っていく。
そして俺は、彼女たちの涙を拭うことすらできず、ただその汚辱の果実を受け取って、生き延びることしかできない。
夜の闇の中、ヒカリの押し殺した小さなすすり泣きだけが、いつまでも、いつまでも小屋の中に響いていた。
ストーリーがあるとエロに集中できないので、ここからは数話ほどちゃんとエロシーンだけの話が続きます。
そろそろTS転生側の、スラムではなく王都の方にいる別の章のキャラも設定したい。
エロシーンのみが三話終わったら……ニアでも出そうかな。
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同じ世界観でのTSモノの設定の草案を見直し中です。 参考までにどれが好みか教えてください。
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