ラビット族のムキムキマッチョのふたなり女王を討伐セヨ 作:江戸枕
長年、女王リリを見ている王宮執事ジジは確信していた。
女王は日々進化している。
今でも並び立つ者がいないほど強い彼女は未だ未完の大器。
このままでは婿など見つかるはずがない。
なんとかせねば…長年続いたラビット王族の血が絶えてしまう。
しかし、淫魔最強のアイオスが破れた今、事実上リリに勝てる精力を持つ男はこの世に存在しない…
ならば作れば良い…ジジは覚悟を決めて1人の男の元へ向かった。
※
帝都の王宮広場で開催されている『セーヘキ帝国最強決定戦』は遂に最終決戦を迎えていた。
この武闘大会は徒手格闘最強を決めるトーナメントであり、数多くの種族から強者たちがエントリーし鎬を削りあった。
そして、決勝に残った2人の男が今、超満員のコロシアムの中で死闘を繰り広げていた。
1人はツノの生えた男。体格は少し筋肉質と言ったところだったが、禍々しい殺気を辺りに撒き散らし、鋭い蹴りやパンチを繰り出し続けていた。
彼の名前は鬼山田。セーヘキ大陸でも絶滅危惧族に認定されている。オーガ一族の末裔である。その力は無類であり、最早神話の域に達しているとまで言われている。
対するは長身で筋肉質だが、鬼山だと違いどこか涼しげな雰囲気を全身から発している。顔つきは決して色男ではないが、どこか憎めない表情をしていた。彼の名前はサイオン。人呼んで『不可能を可能にする英雄』。
力は劣る人族の男ではあるが、不屈の精神力と努力で身につけた腕力と技術で並み居る強敵を倒し続けてきた。
下馬評を覆し続けるジャイアントキリングに人々はいつの頃からはサイオンを『英雄』と呼んでいたのだった。
鬼山田が目にも止まらぬ拳による打倒をサイオンにぶちかます。
両手でガードするサイオンだったが、ドゴドゴドゴと言う鈍い音が鳴り響く。
鬼山田が後ろに飛び退いて距離を取ると同時にサイオンはその場に倒れ込んだ。
「さっきので腕の骨が折れたろ?もうやめとけ。勝負はついた」
鬼山田が倒れるサイオンに言い放つが、サイオンは立ち上がる。その顔には笑みが溢れていた。
「勝負はまだついてねえよ」
「馬鹿だよ…アンタ…」
鬼山田は止めを刺そうと更に拳をサイオンの腹に突き立てた。その瞬間、サイオンが鬼山田の腕を両手でがっしりと押さえつける。
「腕がもう使えねえなら!!!頭使えばいいだけだ!!!」
そのまま大きく体をのけ反り、思いっきり頭突きをぶちかます。
ごっっっつーーんんん!!!!と凄まじい音が鳴り響いた後、鬼山田がぶっ倒れた。
勝者!!!サイオン!!!!
サイオンは大歓声の中、雄叫びを上げるのだった。
※
数日後、サイオンは病院にいた。
全身を包帯でぐるぐる巻きにされ、ベッドの上に横たわっていた。
少しでも動けば激痛が走る。負けた鬼山田の方が先に退院した程である。
だが、気分は悪くなかった。勝ったことよりも、何よりも良い戦いが出来たことが最高に気持ちよかった。
オーガ一族に人間が勝つなど、史上初の快挙である。市井での彼の『不可能を可能にする男』と言う二つ名は確固たるものになりつつあった。
ベッドでサイオンがまどろんでいると、1人の老紳士が近づいてきた。
長い耳が天井に向かって生えている。
「あなたがサイオン様ですか…不可能を可能にすると言うあなたにお頼みしたいことがございます…」
「いいぜ…面白い話ならな!!!」