神狐への変容と新たな神の誕生 作:匿名希望
月日は流れ、幾夜が過ぎたのか、あるいは人の時間の尺度ですら測れぬほどの一瞬が過ぎ去ったのか、蓮――いまやその名を奪われ、神狐と同じ「白銀の神」として生きることを強制された少女にとって、日々の営みは過酷な変質の連続だった。
昼の静寂に包まれた境内では、厳かな修行の日々が待っていた。
荒れ果てた社殿の床を拭い、霊泉の水を汲み、風を読み、神としての理を体に叩き込む。
かつてはただの男子高校生だった肉体と精神は、神狐の血肉を分け与えられたことで、底知れぬ霊力を宿す器へと強制的に調律されていく。
だが、どれほど気高く神聖な所作を学ぼうとも、夜の帳が下りるや否や、その神格はまったく異なる熱情によって泥のようにかき乱されることになるのだった。
夜陰、漆黒の闇が社殿を包み込み、周囲の杉木立がざわめく頃。
人間の体温をとうに失ったはずの白磁の肌に、ねっとりと纏り付くような濃厚な甘い香気が漂う。
それはあの雌の神狐――蓮をこの姿に変えた「母にして師」の気配だった。
「おや、今日も熱心に修行に励んでいたようだな、我が可愛い後継者よ」
気配もなく背後から忍び寄る影。逃れようと身じろぎした瞬間、ふわりと広がる九尾のしなやかな毛並みが蓮の体を優しく、そして逃れられないほど強烈に包み込む。
鈴を転がすような艶やかな声が、敏感に尖った白銀の獣耳に直接這いずるように囁かれた。
「神の力に馴染むには、経文を読むだけでは足りぬ。……お前のその新しい肉体が、いかに神聖で、そして快楽に溺れやすいかを教えてやろう」
拒絶の言葉を紡ごうとした唇は、神狐のしなやかな指先と、不意に塞がれた口づけによってかき消される。
人間だった頃の羞恥や戸惑いは、神狐の圧倒的な神気と妖力の前にはあまりにも無力だった。
紅い小袖の合わせが荒々しく、しかしどこか慈しむように引き裂かれ、月光を浴びた白磁の素肌が夜気に晒される。
男でも女でもない、神としての「器」へと造り替えられたその肉体は、神狐の指先が触れるだけで、まるで電流が走ったかのように激しく震えた。
胸元を這う鋭い爪の先が、敏感に発達した乳頭を軽く弾くたび、喉の奥から人間だった頃には絶対に漏らさないような、甘ったるい嬌声が零れ落ちる。
「あぁ……っ、やっ……、こんなの、神の修行では……っ!」
「ふふ、これこそが神の交わりだ。私の力をその身の髄まで刻み込み、私なしでは生きられない体にしてやるのだよ」
神狐は妖艶に微笑みながら、蓮の華奢な腰を引き寄せ、自身の持つ濃密な霊力をその内部へと容赦なく注ぎ込んでいく。
肉体の結合と霊的な融合が同時に訪れ、頭が白く焼けただれるような強烈な快楽が脳髄を駆け巡った。
背中に生えた二対の白い尾がビクリと激しく跳ね上がり、夜風に乱れて絡み合う。
男としての記憶、かつて人間だった頃のちっぽけなプライド、そのすべてが毎夜の容赦ない愛撫と神気によってすり潰されていく。
拒もうとしても、その体は神狐の熱に酔いしれ、より強い快感を求めて自ら身をすり寄せてしまうのだった。
夜が白み始めるまで続く愛欲の宴。
すべてを奪われ、甘い疲労感のなかで神狐の腕の中に抱きすくめられるたび、蓮は悟る。
自分はもう二度と人間の世界へは戻れない。
この朽ちない美しさと、終わりのない快楽の夜のなかに永遠に囚われたのだと――。