鋼鉄のグリプス ~悪党貴族の孕ませハーレム日記~【パイロット版】 作:種をまく者
「とりあえず300人ほどでしょうか」
プルは事も無げに言った。
思わず聞き返した。
「300?」
「はい。若様の場合、300人の赤子を産ませてようやく一人の男児が得られるとお考えください」
300……。
しばらくその数字を反芻してから、木製カップの水に口をつける。
覚悟していたつもりだったが、その数にたじろいでしまった。
プルが口にした「とりあえず」という枕言葉が気になるが、一旦気にしないことにしよう。
「若様の愛妾となる女性の数で言えば長期的には100人、最低でも50人程度の腹が必要になるとお考えください。今すぐというわけではありませんし、裏邸に住まわせる人員は常に入れ替わるでしょうが、若様が孕ませたくなるような美女は少なくともそれぐらい集めねばなりません」
「そんなに沢山は無理じゃない? 父上の花の城にいたのは、20、30人ぐらいじゃなかった?」
「若様は公子様より沢山のお子を作って頂かねばならないのです」
「それはわかってるけど……」
血の濃縮。
帝国貴族が背負っている法則が正しいのならば、俺は父よりも魔力が強い代わりに男児が一段とできにくい体質のはずだ。
「最初はキーラ様やドロシィ様のように、ご家中で縁ある女性を増やしていくのがよいでしょう。城下でお好みの平民女性を探すのもお勧めでございます。また、若様の身体が整った噂は自然とご領地内外に広まってゆくかと思いますので、募集をかければいくらでも女中志望の娘が集まることでしょう。周辺の貴族家からも、年頃の令嬢たちとの面会を申し込まれる事案も増えていくかと存じます」
「女性を確保するにも様々な手段があるんだな」
「はい。自由都市に行ってお好みの性奴隷を購入するのもお勧めでございます」
性奴隷。
その言葉にドキッとする。異世界ならではのパワーワードだ。
「奴隷は……禁止されてるんじゃなかったっけ?」
「帝国で禁止されているのは、二級以上の帝国民を奴隷化することだけです。若様も、グリプス家の領内に鉱山が多数あるのはご存じですよね?」
「ああ」
「そこでは各地から集められた奴隷が多数働いております。帝国から独立した沿岸部の自由都市では、奴隷売買が活発に行われているのです。異教徒や亜人、戦争捕虜や身分を剥奪された犯罪者などを購入して領内に連れ帰ることは黙認されているのが実情なので、検討の余地は十分にあるかと存じます」
異教徒。
この世界では信仰する宗教が異なるだけで、人間扱いされなくなる。
俺がいる世界では、複数の宗教が存在していた。
グリプス家が所属する巨大帝国では<十二精霊教>という、前世で言う古代ギリシャのオリンポス十二神信仰とキリスト教を混ぜたような宗教が信仰されている。
元の世界同様、宗教はこちらの世界でも大きな影響力を持っていた。
異なる宗教勢力間では常に激しい争いがあるし、同じ十二精霊教の中にもいくつかの宗派や信仰心の濃淡があるようだった。
また、特殊な例として帝国内でも条件付きで異教徒の存在を認めている地域も存在する。グリプス領のある巨大半島の南側には、そうした地域が多い。
前世地球と同じように、宗教の分布には複雑なグラデーションがあるのだ。
グリプス家は当然十二精霊教を信仰しているが、さほど宗教的情熱の強い家ではない。
狂信的とも言えるほど信仰心の厚い地域だと、異教徒どころか亜人種さえも確保即処刑、が基本の扱いという場合もあるようだったが、この辺りでは異教徒や亜人、そして奴隷の存在にも比較的寛容なようだった。
「この街だと、貧民窟にいる鉱山奴隷の手配師が奴隷商人のような生業をしておりますが……」
プルが言い淀んだ。
「そこでそういう奴隷が買えるの? その……俺の相手をする種類の」
「正直申し上げて期待できません。そうした人間が取り扱っているのは鉱山労働者となる成人男性ばかりだと思われます。自由都市の奴隷商の中には、高貴な方の寝所奴隷を専門的に扱う業者も多数おりますゆえ、見聞を広めるためにも一度そうした土地を訪れてみるのがよいでしょう。近く公子様に相談してみます」
性奴隷のウィンドウショッピング。
前世では決して許されない背徳的な行為だが、正直興味がそそられた。
自由都市にはまだ一度も行ったことがないが、いずれ必ず訪問すると固く誓った。
「話を戻しますが、そうして集めた女らの月のものを記録し、孕みやすい時を見計らって若様に愛して頂くことになります。そうして初めて300人のお子が現実のものとなって参ります」
軽く計算してみる。
今から子作り活動を本格的に開始するとして、週に2~3人、月に10人程度抱くとする。本当は毎日でも全然構わないのだが、そこまで女にハマるのは禁止されそうな気配だった。
プルの話によると排卵日の女を優先的に抱くようにすればそれなりに高い確率で孕むということだったが、中出しすれば必ず妊娠するというものでもないだろう。
仮に抱いた女の半分、1ヶ月で5人妊娠させられるとして、相手さえ用意できれば年間60人は赤子が産まれる計算だ。俺の子なら男女問わず魔力が高いだろうし、最高の出産環境で産める。赤ん坊が死ぬ危険性も低い。
それを5年続ければ300人到達。
最終目的はあくまで男児を得ることであって子供の数を増やすことではないが、割と現実的な数字に思える。
女集めが上手くいかないなど、何らかの問題が起こって計画通りに事が進まず、半分の数になったとしても10年あれば1人ぐらい男児が生まれるのではないか。
3年後の15歳からそのペースに持っていくとして、それから10年で俺は25歳。更に倍の20年かかってもまだ35歳だ。
健康に気をつければそこからもう10年か20年ぐらいは子作りを継続できるだろう。
こう考えていくと、男児の一人や二人程度なんとかなりそうな気がしてくる。
だが、プルが俺の皮算用を見透かしたように言った。
「若様もご存じの通り、グリプス家は武門のお家柄。現在大公様が南方に出征なさっているように、いずれは若様も異教徒征伐のためご出陣なさるでしょう。平時であってもご領地を巡幸する機会も多いでしょうし、6年に一度は帝国会議に出席せねばなりません。帝国の大貴族、それも直系男子であらせられる以上は他にも何かと義務が発生します。常に裏邸に入浸りというわけにはいきませんので、簡単な道とは思わぬ方がよろしいかと存じます」
子作りは算数じゃねぇ、というわけか。
一つ教えられてしまった。
こちらとしても相手が誰でもいいわけじゃない。抱きたくなる女をどれだけ確保できるかもわからないし、同じ女に何人も子を産んでもらうにしたって、母体の負担を考えると毎年孕ませるわけにもいかないだろう。
確かにさっきの計算ほど簡単には事が進まないであろうことは理解できた。
問題は他にもある。
女中にせよ奴隷にせよ、100人の女を集めてその子供も含めた生活を保証するには莫大な金がかかりそうだ。
俺はまだグリプス家の財政の全体像を把握できていないし、この繁殖活動にかかる諸費用が一体どれほどになるのか皆目見当もつかない。
父やプルの様子からすると、その辺はうちの家ならなんとかなりそうな感じだが……。
財力と権力を持つ大貴族でなければ、300人の赤子を産ませることなど到底実現不可能な気がする。帝国二百年の歴史の中でいくつもの中小貴族家が途絶えていったと聞くが、こうした財政負担もその理由のひとつだろう。
もしかしたら、帝国貴族たちは近い将来大きな社会変化の波に飲み込まれるのではないか。
あるいは、その波は既に押し寄せているのかも知れない。
俺はどこか他人事のように未来に思いを巡らせた。
「人数が揃ったら俺の裏邸を用意するって言ってたけど、何人確保したら作るつもり?」
「まずは10人ほどでしょうか。同時に、若様が女性に求めるものや快適なまぐわいがどんなものかについても把握した上で、それを実現するのに最適な施設を作らねばなりません。裏邸の建設は拙速に行うべきではないのです」
家の命運がかかっているだけあって、エロ屋敷を作るだけのことでやたらと慎重なんだなあ……。
他にも疑問があった。
世の貴族家の中に、跡継ぎ男子を軟禁して完全に射精管理したセックスマシーンとして使い倒すような家はないのだろうか?
グリプス家に限らず、男系で強大な魔力を受け継いでいくことは貴族家の最優先事項だ。それに比べれば本人の満足や幸福など些末なことと言える。
この世界にはまだ、人権などという概念は存在しないのだから。
女の好みだとか興奮するシチュエーションだとか本人の贅沢な望みは無視して、薬でも飲ませて醜女だろうが何だろうが、子を産む能力のある女を次から次に抱かせて子作りさせた方が効率的なのではないか。
俺としては女の好みから何から常に意思確認をしてもらってありがたい限りだが、あまりに至れり尽くせりな現状がどうにも不思議だった。
そういう趣旨の質問をすると、プルティータがあっさり理由を教えてくれた。
「そうした極端な子作りを直系男子に強要した結果、家系断絶に至った家が過去複数例あるのです」
プルの説明はこうだ。
身体が出来上がる前から女を味わわせて、家系の後継者たる男児に「性の英才教育」を施し、ひたすら子供を作らせまくる。
そういう試みをした貴族家が、かつていくつもあったという。
その男児は最初こそ女にむしゃぶりついて盛んに子作りを始める。精通さえ済んでいれば赤ん坊がポコポコ生まれるので、大抵滑り出しは順調だ。
だが、2~3年もすればすぐに限界がやってくるのだという。
種馬のように「ただ子を産ませるだけ」の存在であることを望まれた貴族男子は、
来る日も来る日も女を抱かされる羽目になる。
性交に限らず、人間は刺激にはすぐに慣れるものだ。
始めはハーレム生活にどっぷり浸っていた少年も、過度な子作り生活を続けるうちに数年でその生活に嫌気がさしてしまうらしい。
しかし、どれだけ飽きていようが女とまぐわい続けねばならない。用意された女が好みでなかろうが、ごろごろ寝て過ごしたい日だろうが、そんな甘えは許されない。
子作りを拒否すれば家族総出でお説教が始まる。
いくら強大な魔力量を持つ器と言えど、少年時代は充分な魔力を発揮できない。
魔力結界の張られた屋敷に閉じ込められて子作りを強制されれば抵抗はできないだろう。
来る日も来る日も、好きでもない女に腰を振り続けるだけの生活。
一時的に不能になっても関係ない。媚薬草やら魔獣のペニスを煎じた怪しげな精力剤やらを飲まされて、また女を抱かされる。
そんな日々が数年も続けば、正常でいる方が難しいはずだ。
そして少年から青年に成長する頃には、すっかり性癖がねじ曲がっている。
普通のセックスでは満足できなくなり、女を虐待することに喜びを感じ始め、寝所に送られてくる女を次々に責め殺してしまうような貴族青年もいたという。
「なるほど……いかにもありそうな話だ」
「何年かは我慢していても、すっかり女嫌いになり、家督を継ぐと同時に稚児趣味に走る貴族の話もございます」
女に飽きて男に走る。
今の俺には全く理解できないが、あまりにセックス漬けになると性癖が180度変わってしまうのも無理からぬことかも知れない。
「私が聞いた話は何十年か前のことですし、その時は中位貴族の分家がひとつなくなるだけで済んだようですが……もしグリプス家のような大貴族の本家でそんな事態が起こったら、大変なことです」
「帝国が揺れる……か」
プルティータが頷いた。
「また、荒淫が祟って早く命を亡くす方の例も多数ございます。そうした数々の失敗を経て、最近は無理のない頻度に抑えておいた方が結果的に多くの子を成せるというのが帝国内での常識となっている次第でございます」
男子に無理に女の味を覚えさせず、年齢相応の性欲の発生を待つこと。
その後も常に女を侍らせるようなことはせず、普通の生活を送らせ、本人から生じる自然な性衝動を大事にすること。
逆に、本人が望んでも連日女を抱くような無理はさせず、休息を挟みながら子種が充分に濃い状態で子作りさせること。
話をまとめると、現在の帝国貴族の中で定番とされているのはこういう子作りスタイルらしい。
俺としても受け入れやすいペースなので、こういう常識が根付いた世相で子作りミッションをスタートできて実に幸運だった。
「個人差もございますので、今後数年かけて若様にとって適切な頻度を探って参りましょう。若様はまだお若いですし、裏邸で精緻に計算された子作り生活を始めるのはそれからでも十分間に合います」
俺に余計なプレッシャーを与えないためなのだろう。プルは焦る必要はないという趣旨のことを、表現を変えて何度も言ってきた。
話を聞いているうちに、何故父があれほどまでに俺の精通を喜んでいたのか理解できてきた。
苦労してもうけた息子が種無しだったり、女に興味を抱かないまま成長すれば家の存続が危ぶまれる。
俺の成長を辛抱強く待ち、家系を維持する能力があるとわかった時は感激
今当主の地位にある祖父は既に70代。正直なところ、生きているうちに曾孫の顔を見せるのは難しいだろう。
しかし、父にはなんとしても元気なうちに男の孫を抱かせてやりたい。
射精管理セックスマシーンになるのは真っ平御免だったが、プルが言うほど悠長に構えているつもりもない。
俺には早めにグリプス家後継者の地位を固めてしまいたい理由があるのだ。
このグリプス家には、俺の家督相続のライバルとなる存在がいる。
確かに俺は、父の唯一の息子である。
父は既に祖父の後継者に指名された公子であり、グリプス領の支配者にして帝国中枢にも影響力を持つ「次の大公」となることが正式に決まっている。家中だけの問題ではなく、帝国中央から承認を受けているため、父が急死したりしない限りは覆され得ぬ決定事項だ。
だが、父は祖父の唯一の息子ではない。
父には年の離れた弟がいるのだ。
俺の二代前の世代である祖父は、当然俺や父に比べて遥かに男児を得やすい。
父という息子ができた後も子作りを続けた結果、見事二人目の男児をもうけることに成功した。
当然父とは母親が異なる。当時の若い愛妾に産ませたのだ。
俺からすると叔父にあたるその人物は、現在遠く離れた別の都市で暮らしており、生まれてこの方一度も会ったことがない。
その叔父は父よりもむしろ俺に近い年齢のはずだが、世代としては父と同じだ。
つまり、魔力的な潜在能力は俺に一世代分劣るが、逆に言えば俺よりも一世代分男児を得やすいのだ。
順当に行けば分家を立ててどこかの領地を治めることになるだろう。大貴族当主の弟は、大体そういうルートを辿るはずだ。
だが、もし俺が息子作りに失敗すれば話は変わってくる。
その叔父本人、あるいはいずれ生まれてくるであろう叔父の息子がグリプス家を継ぐ可能性が出てくるのだ。
もしどこかの段階で家督を奪われるようなことがあれば、俺のハーレムの維持拡大にグリプス家の富が使われることはなくなる。帝国有数の大貴族といえど、無尽蔵に財貨を持っているわけではないからだ。
俺が望み薄なら、グリプス家の富が叔父やその息子の子作り支援に費やされる方針に切り替わる可能性は十分あるだろう。
だが、男児さえもうけることができれば俺の立場は盤石なものとなる。
父の次の公子として、やがては大公として、楽しいハーレムライフを堪能し続けるには絶対に男児が必要だ。
そのためには俺も努力しなければならない。
何でもかんでもプルティータや父に頼るばかりでなく、自分で女を探し、自分の力でものにする。
手に入れた女や生まれてくる子供を養っていくために必要な資金だって自分で稼ぎたい。
キーラ、ドロシィ。
そしてこれからもっと沢山の女たちを囲っていくことになるはずだ。
せっかく手に入れた愛妾たちを絶対に失いたくない。
俺はプルティータの目を見て言った。
「俺の息子を、グリプス家の跡継ぎを作る。そのためなら俺は何だってするつもりだ」
胸の中に、身を灼き尽くすような黒い大炎が燃え上がっていた。
ここまでが序章になります。
物語はまだまだ続きますが、書き溜めは大体放出したので、今後は週に1~2回更新を続けていきたいと考えています。
沢山読みたい方は是非評価・感想下さい!