鋼鉄のグリプス ~悪党貴族の孕ませハーレム日記~【パイロット版】 作:種をまく者
「坊っちゃん、今夜はここでおじさんたちと遊んでこっかぁ?」
公都アガドの貧民窟で、俺は3人のチンピラに絡まれていた。
相手の立場になって考えてみる。
俺は見た目にはただの子供にしか見えないだろう。
しかも貧民窟には不似合いな、裕福な商家のボンボンのような格好。
カモ丸出しである。
だが、実のところ俺はこの街の支配者である大貴族の直系男児であり、莫大な魔力を持っている。
魔力を
静かに魔力を練りこんでおく。
これで万一このチンピラたちが魔力を隠していたとしても、怪我をすることはない。
一人が胸ぐらを掴んでくる。
「チビっちまって何も言えねーかぁ?」
ニヤニヤ笑いながら、顔を近付けてくる。
息が臭かった。
「気安く触るな、下郎」
「あァん……?」
チンピラの顔色が変わる。
掴まれた手を掴み返す。
「いででででッ!」
一瞬でチンピラがうずくまった。
ミシミシと男の骨がきしむ。
「は、放せ! 放しやがれ!」
もう一人が殴りかかってこようとしたので、ちょっとだけ魔力を放出した。
その瞬間、殴りかかってこようとしたチンピラが「えっ」と驚いた顔をして吹っ飛んだ。
リーダー格の男が立ち上がっており、震えていた。
「その魔力……あんた、貴族か……!?」
他の二人にも怯えが伝播し始めていた。
「おっ、お貴族様とは知らず! 許してください!」
そう叫んだチンピラの首を掴んで、片手で持ち上げた。
相手は大人だが、魔力によって強化された身体ならなんなく持ち上がる。
「どうした? 遊んでくれるんじゃなかったのか?」
「ぐ……ッ! が……ッ! ゆ 許し……」
俺に吹き飛ばされた別のチンピラが一人で逃げ出してしまった。
リーダー格らしき男も今にも逃げ出しそうな顔をしていたが、かろうじてその場にとどまって膝をついた。
「ご……ッ! ご勘弁を……! ふっ、服! 普通の服を着てたから、わからなかったんです…!」
半べそをかいてビビリちらかす男たちを見て、俺は既に気が済んでしまっていた。
こんな小悪党ども、殺すまでもないし、どうしたものか……。
悩んでいると、遠くの方で「こっちだ!」「若様ァ!」という声が聞こえてきた。
武装した兵士の武具のこすれる金属音が近付いてくる。
魔力を放ったことで、俺を探す護衛たちに見つかってしまったらしい。
持ち上げていたチンピラをその場に放り投げ、素早くその場を離れた。
再び魔力を切って物陰に隠れる。
だが、兵士たちの気配は輪を縮めるようにじりじりと近付いてくる。
こりゃ鬼ごっこも終わりかな……。
「坊や、こっち!」
背後のボロ屋の窓が開いており、女がこちらを見ていた。
「早くおいで。見つかっちゃうよ!」
再び抑制された声で呼びかけてくる。
若い女だった。貧民窟にいる女らしく、頭に巻いている布はボロボロだった。
兵士たちの「こっちだ!」という声と鎧の音が聞こえる。
「中に入りな! 早く!」
一瞬迷ったが、その女が割と好みの顔をしていたので言う通りにした。
部屋の中に体を滑り込ませてから、しばらく息を殺して兵士たちが過ぎ去るのを待った。
視線を走らせ、部屋の中を観察する。
その部屋は狭く、細々とした生活必需品が乱雑に置かれていた。
見るからに貧しい生活をしているのが見て取れた。
兵士たちが去ったのを確認すると、女が「そこ座りな」とベッドの端を指さした。
俺は木製の小さなベッドの端に腰掛けて、女が部屋の片付けをするのを眺めていた。
作りかけの縫い物や、様々な布の生地、そして裁縫道具が置いてあった。
ふと、部屋の隅に転がっている赤ん坊の玩具らしきものが目に入った。
部屋の中が少しだけ片付き、女は温めた山羊のミルクを出してくれた。
「あんた、ガラの悪い三人組に絡まれてただろ?」
「ええ、まあ……」
「あいつら、川向うから迷い込んでくる人間を見つけては金目の物取ったり誘拐したりしてるんだ。逃げられてよかったね」
女は俺が誰から追われているのか勘違いしているようだった。
チンピラ共は返り討ちにしたし、逃げていたのは警護役の兵士たちからだったが、あえて説明はしなかった。
「坊や、なんでこんなとこにいるんだい? 子供が一人でうろついてたら危ないじゃないか」
身分を隠しながら、何故貧民窟にいたのか適当に言い訳をした。
その場のでっち上げ話だったが、女は納得したようだった。
「私はリーファ。お針子やってるんだ。坊やの名前は?」
「……アーグ、です」
「アンタ、金持ちの商人の家の子だろ?」
「……わかりますか?」
「雰囲気でわかるよ。言葉遣いも綺麗だしね」
リーファからは何の魔力も感じられない。
何も知らない世間知らずボンボンのフリを続けた方が何かと話が早いだろう。
「今いくつだい?」
正直に答えると、リーファは納得したように頷いた。
リーファに年齢を聞いていいものかどうか迷った。
「アタシのことはリーファお姉さんって呼びなね。おばさんなんて言ったら針で刺しちゃうよ?」
リーファは眉を寄せてこちらをじろっと睨んでみせてから、すぐにくすっと笑った。
結局年齢は教えてくれなかったが、見たところ二十代前半ぐらいだろう。
頭に巻いていた布を取ると、暗めの青く長い髪が現れた。
顔にところどころ煤がついており、髪もバサバサだったが、よく見ると顔立ちはなかなかに整っていた。
前世でたとえると、元ヤンの美人お姉さんが今は落ち着いて服屋で働いている……そんなイメージだ。
ふと、リーファがそわそわしていることに気付いた。
「ちょっと失礼するよ」
リーファがおもむろに上着をたくし上げて、乳房が露になった。
「あ……!」
反射的に顔を逸らす。
リーファは俺を気にせずに何かの作業の準備を続けているようだった。
しばらくすると、リーファの方からシャーッ、シャーッと水音のようなものが聞こえてきた。
「悪いね、一日に何度かやんないと、おっぱいが張って痛いんだよ」
ちら……と横目で盗み見ると、リーファが自分の乳房を押し潰して、タライに乳白色の液体を絞り出していた。
搾乳しているのだ。
興味深くその様子を見ていると、すぐに咎めるようなリーファと視線がかち合う。
「こら。何見てんだい」
「ご、ごめんなさい!」
慌ててそっぽを向くと、リーファがくすくす笑う声が聞こえた。
「怒っちゃいないさ」
どれぐらい出るものなのか気になったが、また盗み見たら流石に怒るかも知れない。俺は立ち上がって部屋の中を見ながら、搾乳が終わるのを待つことにした。
なんとはなしに、先ほどみつけた玩具を拾って、軽く振ってみる。
カランカランと乾いた音を立てる。やはり赤ん坊向けの玩具だ。
搾乳をしているところから見ても、出産からさほど時間が経っていないのだろう。
だが、この狭い部屋のどこにも赤ん坊はいない。
俺の疑問を察したようにリーファが言った。
「赤ん坊は親戚に預けてるんだ。お世話しながらじゃ、仕事もできないし」
「そうなんですね……でも、寂しくないですか?」
そう聞くと、突然リーファが黙り込んだ。
しばしの沈黙の後、リーファは憂鬱な目をしてつぶやくように言った。
「こんな環境にいるより……あっちの方がいくぶんマシさ」
生活が厳しく、出産後すぐに働かねばならなかったのだろう。
「……すみません。余計なことを言っちゃいましたね」
生まれたばかりの赤子に会えなくて、寂しくないわけがない。
我ながら愚かな質問をしてしまった。
反省していると、リーファが再び明るい声で言った。
「アーグって言ったかい。アンタ、世間のこと何も知らないんだねぇ。どうせ難しいお勉強ばっかりしてるんだろ?」
「どうでしょう……勉強はしているけど」
「ふふ。素直で可愛い子だね。せっかく知り合ったんだ。世間のこと、お姉さんが色々教えてあげるよ」
「でも、もう帰らないと……」
外からは時折兵士たちが俺を探し回る足音が聞こえている。
「絶対ダメだよ! この辺は日が落ちたら危ないんだから。今日は泊まっていきな。明日の朝に安全な道を教えてあげる」
強引に拉致された上に次は監禁か……?
主犯が元ヤン風美人お姉さんであれば、意外と悪くないかも知れない。
クルルたちは心配しているだろうが、これも貴重な社会勉強の機会と捉えよう。
明日適当に謝ればいい。
それから、リーファが軽い食事を用意してくれた。
硬いパンと、野菜クズの入ったスープ。
貴族の食事に慣れた俺には物足りなかったが、それを口にしないだけの分別はあった。
他愛もない話をしながら二人で食事を済ませ、リーファは再び搾乳を始めた。
「さっきしたばかりなのに……そんなに出るものなんですね」
「1日に何度も絞らないと痛くなっちまうんだよ。知らなかった? ま、アタシは特別お乳が沢山出る体質みたいだけどね」
今度は咎められないのをいいことに、ぼーっと搾乳の様子を見続けていた。
あの母乳捨てちゃうのかな。なんだか勿体ないなあ……。
そんなことを考えながら眺めていると、リーファがフフッと笑った。
「そんなに気になるなら、飲んでみるかい?」
「え、いやその――――あだッ!」
突然の言葉に驚き、つい舌を噛んでしまった。
「ちょっとアンタ、大丈夫かい!?」
リーファが慌てて近寄ってきた。
「舌見せてごらん。べーってするんだよ。ほら早く!」
リーファがあまりに心配するので、舌を噛んだことよりそちらに面食らってしまった。
確かに痛いは痛いが、ただ舌を噛んだだけのこと。どうってことないに決まっているのだが……大人しく従うことにした。
医師の診察を受ける時のように、べーっと舌を出したまま待つ。
リーファは俺の舌がなんともないのを確認し、一瞬ほっとした顔になった。
そして、何かを言いたそうな微妙な表情で俺を見つめ続けていた。
「……リーファさん? どうしました?」
「もう一度……もう一度ちゃんと見せて」
「……?」
放っておけば痛みは収まるとわかっていたが、リーファの言う通り再びべーっとして見せた。
「あー……こりゃあれだね」
リーファは何か言いにくそうにしており、視線が泳いでいる。
「あんたは知らないだろうけど、このままじゃバイ菌が入って病気になっちまうよ」
「病気……?」
そんなわけはない。ヒリヒリするが血が出るほど強く噛んだわけでもなし、痛みは少しずつ引いている。
だが……リーファがどうしてそんなことを言い出すのか気になった。
「舌が取れちまうかもね」
「ええっ? 本当ですか……?」
民衆の間でそういう迷信でもあるのだろうか?
リーファの不可解な言葉に困惑していると、彼女が俺の隣に座って頭をそっと撫でた。
「心配しないでいいよ。ちゃんとお薬濡れば治るからね」
リーファが戸棚から小瓶を取り出した。
中には軟膏が入っているようだった。
「アタシが薬塗ってあげるからね。口開けてじっとしてな」
一瞬だけ魔力探知をしたが、その薬から魔力成分は感じられなかった。
怪しい薬などではなさそうだ。
「……怖がらなくていいから目を閉じな」
怖がっているのではなく不審がっていたのだが……言われた通りにする。
「舌を出しな。ほら、べーって……そう。薬を塗るから、お姉さんがいいっていうまでじっとしてるんだよ。わかった?」
軽く頷いてから、ほんの少しだけ薄目を開けてリーファの行動を観察することにした。
リーファは薬を指にとり、それを自分の舌に塗るようにぺろりと舐め取った。
両手で俺の顔を挟み、おもむろに顔を近付けてくる。
そして――――俺の舌を舐めた。
「……ッ」
俺は舌を伸ばしたまま固まった。
リーファが舌の先を尖らせて、俺の舌をちろりちろりと舐めている。
舐めながら、リーファの息遣いが段々激しくなるのが伝わってきた。
口全体を押し付けてきて、噛んでしまった箇所だけでなく俺の舌全体を舐め回してくる。
「はぁ……はぁ……んちゅ……んッ」
しまいには俺の舌全体を吸い込んで、ちゅばちゅばと音を立てながら顔を前後させベロフェラのようなことを始めた。
身体を抱え込むように強く抱きしめられており、俺はどうしていいかわからないまま、じっとリーファの身体に手を添えてされるがままになっていた。
しばらくしてからリーファは顔を離し、二人分の唾液でべちゃべちゃになった口を手の甲でぬぐった。
「……ふう。舌を怪我した時は、こうやって塗るのがいいんだよ。知らなかった……?」
リーファの瞳孔は完全に開いている。
なんというか……すさまじい犯罪臭がする。
俺も舌を長い間ねぶられて、少し頭がぼーっとし始めていた。
お針子女が俺に覆いかぶさってきて、ベッドに押し倒される。
「リーファさん……?」
リーファは再び両手で俺の顔を挟みこみ、まじまじと俺の目を見詰めていた。
そして、ため息をついた。
「アンタ、本当に可愛いねぇ」
リーファは俺に馬乗りになったまま、着ているものを荒々しく脱ぎ始めた。
「いいかい。誰にも言っちゃダメだからね……」
俺を見下ろすリーファの目が、爛々と輝いていた。
次回は明日日曜投稿予定です!