鋼鉄のグリプス ~悪党貴族の孕ませハーレム日記~【パイロット版】 作:種をまく者
ただ初回を「プロローグ」とはしたくなかったのと、時系列が最初だけ異なるので0話としました。
あと、1日1話だとなんか物足りない気がするので、ランダムに1日2話投稿したりしてみようと思います(その代わりすぐ書き溜めが尽きてしまいますが)。
「いい夜だな」
父がグラスの中の黄金色の液体を飲みながら言った。
「父上の庭園、以前よりさらに美しくなりましたね」
「お前というやつは、その齢でもう世辞を覚えたか」
そう言いながらも父は嬉しそうだった。
明らかに機嫌が良い。
「ここに来たのは2年ぶりです」
「もうそんなに経つか……早いものだな」
ここは父以外の男は決して立ち入れない秘密の花園。
あたり一面に花が咲き誇っており、俺たち親子は軽い飲食をしながら花見を楽しんでいた。
俺が転生した世界には魔法と、厳しい階級社会があった。
社会の上に立つのは王侯貴族や神官といったごく一握りの特権階級。
中間層としては富裕な商人やギルドを形成する職人たち、そして職業軍人などが存在している。しかし、そうした階層に属す人間は決して多くはない。特権階級より少し多い程度だ。
この世にいる大半の人間は、特権階級に決して逆らえない「一般民衆」だ。
特権階級の権力の裏付けとなるのは、主に魔力の強さだ。
魔力はそのまま個人の武力となる。
さらに、特権階級の中では男女間の身分差も大きかった。
女の中で魔力を有している者は沢山いる。数だけで言えば男よりずっと多い。
だが、女児は男児に比べて親から受け継ぐ魔力量が遥かに小さいものらしく、今いる世界は前世における古代や中世の時代のように男性優位が当たり前の社会だった。
そして俺は幸運なことに、そんな世界の大貴族の男子として生まれた。
巨大帝国の中で、「大公」という王にも等しい地位を持つグリプス家の本家直系男子。
生まれガチャで言えば間違いなくSSRだ。
前世では冴えない人生を送っていたが、今となってはどうでもいい。
確か日本で平凡な会社員をしていたはずだが、いつどうやって死んだのか含めて様々な記憶が薄れてきている。
利用できる前世の知識は最大限利用していくつもりだが、それより大事なのは「こちらの世界」に適応することだ。
アーガストという名を与えられた俺は、貴族の子弟として勉学や武芸鍛錬、そして魔術の修行に必死で打ち込んだ。
そして十数年の月日が経ち、今に至る。
「少し暑いな」
父は異国から取り寄せた特別な酒に氷を入れて飲んでいる。
俺は薄めた葡萄酒をちびちびと舐めている。アルコール分はほとんどない。
ここにある花々は自然に生えたものではなく、父が財力にものを言わせてあちこちから集めたものだ。
小さい頃はよく出入りしていたが、ある時から庭園のある小城そのものへの立ち入りを堅く禁じられるようになった。
今日は父の許しもあって久しぶりに訪れたが、俺たち親子以外は遠くに控えている給仕係の侍女が二人いるだけだった。
秘密の会話をするにはうってつけの場所だろう。
酒を飲みながら庭園を眺めている父は幸せそうな顔をしていた。
「父上は、本当に花がお好きなのですね」
「花に限らず、植物というものは実に面白い」
この庭園を最後に訪れた時から、花や観葉植物の種類が大幅に増えていた。
家中にはこうした父の園芸趣味を軟弱だとして歓迎しない者もいるが、本人は意に介していない様子だった。
「あの白い花には、死者を楽園に導くという伝説がある」
父が庭園の花々を指さしながら順番に逸話を話し始めた。
薔薇、百合、スミレ、パンジー、チューリップ。
そして名前を聞いても覚えられない無数の花々。
ガラスのように透明な花弁を持つ花や、ぼんやりと光を放っている花まであった。
本来咲く場所も時期も異なるであろう花々が、この庭園では年がら年中咲いている。
土壌改良や魔法の力によるものだろう。
そうした色とりどりの花が腕利きの庭師によって幾何学的な配列に整えられており、花の色がグラデーションを成している。
無数の花々が月の光を反射し、まるで夜の庭園に虹がかかっているようだった。
花のうんちくはまったく頭に入って来なかったが、父が「帝国で最も美しい場所」と言い張るだけのことはある。
この奇跡のような庭園は、大貴族の財力あればこそ維持できるものに違いない。
「花はどれも美しいが、ひとつひとつ違う。色、形、香り、育て方……。大切にすればしただけ強く育つが、ある花では有効だった育て方が別の花では逆効果ということもある。どうだ、どこか女のようだとは思わないか?」
今日の父はよく喋る。
少し酔っているのかも知れない。
「俺は…まだ女の人についてはよくわかりません」
曖昧な答えで誤魔化したが、ひとつ知っていることもあった。
「花の城」と呼ばれるこの場所には、大庭園とは異なる別の顔がある。
父がこの城に集め、育て、愛でているのは花だけではない。
ここは、父が選りすぐりの愛妾を住まわせるための後宮だった。
「アーグはどんな花が好きだ?」
父が俺を愛称で呼んだ。
遅く生まれた男児ゆえか、俺は物心ついた時から父に溺愛されている。
どうせ溺愛されるなら美人のママの方がよかったのだが、残念ながら母親は俺が生まれてすぐに亡くなってしまったらしく、全く記憶がない。
自分が転生者だと気付いたのは、3~4歳になってからのことだった。
俺は庭園を見回し、適当な花を指さした。
「あそこの、黒い薔薇のような花が好きですね。我がグリプス家の旗と同じ色です」
そう言うと父が笑った。
「なるほどな。だが、本当のところは違うだろう?」
父が少し意地悪そうな笑顔で俺を見た。
実は花に全く興味がないことを見抜かれてしまったのだろうか。
「本当は、農村で咲いたキーラという花が好きなんじゃないか?」
「あ……そのお話でしたか」
名前まで出されたことで、俺はようやく女の好みを聞かれていていたのだと理解した。
キーラとは、俺のお気に入りのお付き侍女、つまりメイドのことだった。
「その娘を一度遠くから見せてもらった。背が高く、たわわに実っておったな。ああいうのが好みか」
「ええ、まあ……」
男親に女の好みについて詮索されるのはどうにも気まずい。
「お前ももう大人になりつつあるのだ。女に興味を持つのは自然なことだし、そうでなくては困る。これからたくさんの花に“受粉”させてもらわねばなるまい」
受粉……。上手いこと言ったつもりだろうか。
黙っていると、父は大きく口を開けて笑い、俺の肩をばんばん叩いた。
「そう怒るな、今日だけは許してくれ! 父は嬉しいのだ!」
「……怒ってなどいません」
父の上品ぶった中年ギャグを聞かされて、恥ずかしくなっただけだ。
正直なところ、俺は前世での女性経験がどうだったかよく覚えていない。
恐らくは大してモテなかったのだろう。それだけはなんとなくわかる。
しかし、健康な男として人並みの性欲はあったはずだ。
生身の女を抱いたことは……一度もないかも知れないが、思春期以降は他の青少年同様、毎日のようにポルノ動画なり何なりを観て「自分磨き」に励んでいたことは間違いない。
そして、こちらの世界に生を受けてからは、子供時代からたくさんの侍女に囲まれて育っていた。侍女たちの他にも親族の女性やら父の愛妾やら、今思えば若い女性は周囲にいくらでもいた。
前世の俺なら「おかず」に困らない環境に大喜びしていたに違いない。
しかし、実際はそのようには感じなかった。
身体が子供だったためか、少し前まで周囲の女たちに対して特に性欲が沸くことはなかった。
肉体年齢的にはそれが普通のことと言えるだろう。
そしてこれまた「普通」のこととして、そんな俺の肉体にも変化が訪れた。
第二次性徴を迎えて声が変わり、下の毛が生え始めた。
そして、12歳の誕生日を迎えてすぐのことだった。
とある夜、お気に入りの侍女が夢に出てきた。
夢の中で何が起こったかはよく覚えていない。
だが、良い夢だったと思う。
その侍女は夢の中で一糸まとわぬ姿をしており、優しく俺を包みこんでくれた。
起きた時、俺は夢精していた。
俺を起こしに来た年寄り侍女に速攻でバレてしまい、朝食前には父の耳に入っていた。
思えば、父の上機嫌はその時から続いているような気がする。
父が優しく語りかけてくる。
「身体こそ大人に近付いてきたが、まだお前は若い。女について知らぬのも無理はないさ。貴族の男子として、学問や武芸に打ち込めるよう、あえてそのような環境を作ってきたのだ。今まではな」
俺は父の言葉の意味を考えた。
父はグラスを回し、中の酒を空気に触れさせていた。
この世界で薄いガラス製品は貴重なものだ。
「この酒がどうやってできるか知っているか?」
俺は曖昧に首を振った。
「まず、北方でしか生育しない貴重な果実と、何十種類ものハーブを組み合わせて種酒となるワインを作る。西方の特別な酒造ギルドでしか作れない、特別な逸品だ」
父はまたうんちくを語りながら、旨そうに酒をすすった。
「その時点でも充分旨いし貴重な酒だが、まだ工程の半分だ。それを何十年と寝かせなければならん。そうして最高のワインになる。それからさらに特別な方法で蒸留する。そうすることでほんの僅かなブランデーが得られる」
「貴重な物なのですね」
「庶民ならば、一生かかっても手に入らぬほどな。苦労してやっと1ダースだけ手に入れた。この酒は味がいい上に、非常に栄養がある。魔力の発達にもよい。一口飲んでみろ」
父からグラスを受け取り、ちびりと舐めてみた。
濃厚な甘みの後に、様々な香りが口の中に広がった。
アルコールの匂いはさほど感じなかったが、喉が焼けるように熱い。
「この酒こそ、お前だ」
父はこちらの反応を待つように、じっと俺を見ていた。
少し考えてから、慎重に答える。
「貴重さと……血の濃縮に関する点でしょうか」
「その通りだ」
父は満足そうに頷いた。
「我らグリプス家を始めとした帝国貴族には、帝室の祖先と同じ血が流れている。尊く、強い血だ。そしてそれは世代を経るごとに強くなる。熟成されたワインのようにな。お前のお祖父さんよりもこの父の方が血は濃く、また父よりもお前の方が濃いのだ。この意味がわかるか?」
「存じております。知識としては、ですが」
この世界の貴族は、強い魔力を持っている。
そして、その中でも上級貴族家の男子は別格の存在だ。
世代を経るごとに魔力が強まっていき、そんじょそこらの魔力持ちでは束になっても敵わないほどの魔力量となる。
そして、それにはひとつの条件があった。
男子でしか魔力の濃縮は起きないのだ。
父から息子へ。息子からまたその息子へ。
連綿と続く血脈。
男系でしか継承され得ぬ、強いようで糸のようにか細い血のリレー。
このことが、貴族社会における圧倒的なまでの男性重視の主因となっていた。
当然のこととして、強まり続ける魔力には代償もあった。
「この城で、私が愛した沢山の花々が実をつけてきた。お前の姉たちだ。覚えているだろう?」
「はい。みんな優しくしてくれました」
まだこの城に出入りしていた幼少の頃、数多くの女性にお菓子をもらったり、遊んでもらったり、とにかく可愛がられた。
可愛がってくれた女性の中には、父の愛妾もいれば、半分だけ血が繋がっている姉たちもいた。
何十人という優しい姉たちだ。
そして、俺がこの城で出会ったのは「姉」だけ。「兄」はいなかった。
男兄弟は、今この時にいたるまで一人も会ったことがない。
「お前の姉が全部で何人いるか、今はその数を言うまい。ほとんどは既にこの城にはおらんしな。とにかく、お前が思っているよりずっと多いことは確かだ」
父はグラスの酒を飲み干し、深く息を吐いた。
「アーグよ。お前というたった一人の息子を得るために、私はとても長い間努力をしたのだよ」
このグリプス家を始めとした強い魔力を持つ貴族家では、男が生まれにくい。
通常の半分の確率とか三分の一とか、そういう水準の話ではない。
10人に1人、いや20人に1人という確率でもまだ遠い。
はっきりとはわからないが、100人に1人とか、恐らくそれぐらい低い確率だろう。
この「花の城」は父のために作られた夢の園。
だが、父はここでただ庭いじりに精を出していたわけではない。
無数の女たちに精を放っていたのだ。
そして、その営みにはグリプス家全体の命運がかかっていた。
「父上の息子として生まれたこと、偉大なる十二精霊に深く感謝しております」
そう言うと、父は「そうか」とだけ言って優しく笑った。
父はしばらくじっとしていたが、突然酒をグラスに注いで、それを花壇に撒き始めた。
ざばっ、ざばっ、とグラスを何度も振るって、苦労して手に入れたはずの酒を花々に水やりでもするようにばら撒いた。
「父上、何を……?」
「この酒には高い栄養と魔力が含まれていると言っただろう。こうすれば花はより妖しく咲き誇り、よき実をつけるのだ」
しまいには酒の入ったボトルをひっくり返して、ドバドバと直接花壇に注ぎ始めた。
アルコールで枯れてしまうのでは、と思ったが俺は何も言わなかった。
酔いが回っているのかも知れない。
「お前もこれからこうやって大量の子種をばら撒くことになる」
父の直截的な表現にどきりとした。
「まずは<
「……はい」
そのことを思うと、鼓動が速まってくる。
「初めての女は特別だ。そして女の良さを味わうには、好いた女を抱くのが一番いい。最初はとにかく楽しみなさい」
「……ありがとうざいます」
俺は既に<初火入れの儀>、つまり筆下ろしの相手を指名していた。
精通を迎えたことで子作りをする機能が備わったとみなされ、この数日で侍女長を中心にばたばたと初体験の準備が進められた。
最低限の性教育が済んだ後で相手の希望はあるかと尋ねられ、お付き侍女の中で一番のお気に入りのキーラを選んだ。
侍女長も俺の人選を予想していたらしく、大した障害もなく段取りが決まった。
話を聞いた限り、昔は親なり一門の当主なりに指名された女を抱くのがならわしだったらしい。
自分で相手を選ばせてくれた父に心から感謝した。
「正直なところ、お前のお祖父さんが戦に出ている時で幸いだった。あの人はこだわりが強いゆえ、何を言い出すかわからんからな」
父はうんざりした顔で自分の父親のことを話した。
「それは……同感です」
「お祖父さんに限らず、女を道具や家畜のように扱う貴族は多い。だが、女は慈しみ愛する方がよいと私は思う。そうすれば女はより瑞々しく、美しく咲き誇るのだ。この花々のようにな」
「父上の教え、しかと肝に銘じます」
「お前の種を与える“花”も、そのための“花壇”も、いくらでも用意してやる」
今度は父の言葉の意味をよく理解できた。
子を生ませるため俺の相手を務める女も、子作りに必要な環境も、万全の体制を整えてくれると言っているのだ。
「お前も寝所に関することでいちいち父に詮索をされては嫌だろう。係の人間を幾人かつけるから、今後はその者らに何でも相談しなさい。勿論この父に聞きたいことがあればいつでも時間を取るぞ」
体温が上がっていくのがわかった。
夏の夜の暑さだけが原因ではない。
「思うままに女を抱け。そして楽しみなさい」
父の力強い言葉を聞いて、胸が、心が、そして下腹部が熱くなった。
「そのために必要なことは、この父もお祖父さんも……いや、我がグリプス家の総力を挙げて支援する」
俺が自分自身の息子をこの手に抱くその日まで、何百という女を孕ませる。
それがこの家の跡取り息子の使命なのだ。
「お任せ下さい父上。このアーガスト、きっとご期待に応えてみせます」
めくるめく日々の始まりを暗示するように、月に照らされた花々が妖しく光り輝いていた。
次回は本日木曜日のうちに更新予定です。
(夜遅めになると思います)