鋼鉄のグリプス ~悪党貴族の孕ませハーレム日記~【パイロット版】 作:種をまく者
「若様、ようこそいらっしゃいました。狭い家ですが、どうぞご遠慮なく」
「ありがとうございます先生。お邪魔します」
ドロシィに迎え入れられ、お供の人間を馬車に控えさせて一人で屋敷に入った。
ドロシィの屋敷は城から馬車で15分ほどの街中にあった。
既に日が落ち、暗くなってきている。
あまり目立ちたくなかったのでお供は最低限の人数だったが、屋敷の周囲は事前に派遣されたグリプス家の手の者が厳重に警護しているようだった。辺り一帯に張られた魔力結界の気配が感じられた。
屋敷の中は片付いており、玄関の片隅でハウスメイドらしき老婆が俺に頭を下げている。
「いつもは娘たちもいるのですが、今日は知人の家に泊りがけで遊びに行っておりまして……。上の子は若様と齢も近いので、いつかご紹介させてください」
「はい、是非」
今晩は邪魔者が誰もいないということだ。
ドロシィが俺を名前でなく若様呼びなのは、今日は俺の指導者として向き合っているわけではないと言いたいからだろうか。
まあどっちでもいい。プルも呼び方がよく混ざる。
「私もこんな格好でごめんなさい。家では割と楽な格好をしておりますの」
ドロシィはいつもと雰囲気が違った。
身にまとった淡い紫のナイトドレスは決して派手なものではないが、いつも以上に身体のラインが見える仕立てだった。
上半身から太ももあたりにかけてぴったり身体にフィットしており、女性らしい曲線が見て取れる。丈が長く、膝のあたりからフレア状に広がっている。
上半身は胸元が大きく開いており、谷間が見えていた。首にかかったネックレスには小指の爪ほどの小さな赤い宝石がついている。
髪の毛はいつもよりボリュームアップした形でセットされており、耳にもアクセサリーをつけていた。
前世の日本で言えば、ドロシィは普段清楚な女教師のようだったが、今宵は銀座や六本木のクラブにいるお姉さんのような艶やかさだった。
行ったことないけど。
「今日の先生は、いつも以上にお綺麗です」
「女性と会った時はまず服装を褒めること……礼儀作法、覚えていらして何よりです」
ドロシィがいたずらっぽく笑った。
「お世辞で言ったんじゃありません。本心です」
「ふふ。ありがとうございます。これ、帝都で買ったものなんです。さほど高い物ではないのですが」
ドロシィが胸元の宝石をつまんで、俺に見せるようかざしてみせた。
「へえ……都の細工師は腕がいいんですね」
宝石を見るふりをして、胸の谷間を堂々と見る。
デカい。
普段の服装からは全然わからなかったが、ドロシィは着痩せするタイプらしい。あるいは意識的に胸を服の中に押し込めていたのだろうか。
豊かな胸の肉が、薄手のドレスをこんもりと押し出すように膨らんでいる。
もしかしたらキーラより大きいかもしれない。
身長もキーラに負けず劣らず高かった。
もし俺たちが現代日本で一緒に歩いていたら、若くて綺麗なママとその息子にしか見えないだろう。
「若様、お腹は空いてませんか? もしよろしければ、先にお食事でもいかがかと」
「空いてます。是非」
元々この屋敷を訪れたのはドロシィが持っている珍しい本を見に来たのが理由なので、てっきりそちらの用事を先に済ませるものだと思っていた。だが、正直なところ順番などどうでもいい。
どうせ最後にすることはひとつだ。
ちなみに、この世界において活版印刷はまだ一般的ではなく、本は非常に貴重な物だった。
特に古い時代に作られた本ほど豪華な装幀のものが多く、やたらと重たい。気軽に持ち歩くわけにはいかないので、本を見るために人の屋敷を訪れることはそこまで不自然ではない。俺とドロシィの身分差を別にすればの話だが。
客間のテーブルに対面で座り、ディナーが始まった。
この屋敷の「ばあや」なのだろう、先ほどの老婆が給仕をしてくれたが、彼女はドロシィの指示に簡単な返事をする時以外は一言も声を発さなかった。
「このスープ、おいしいですね」
最初に振る舞われた白っぽいスープは、あっさりしているように見えて濃厚な旨味があった。
「若様のお口に合ってよかった。私の郷土料理なんですよ。野菜とお肉を一晩煮込んで作るんですけど……」
ドロシィの地元の話やら食べ物の話やら、他愛のない世間話をしながら食事が進んでいく。
料理はどの皿も美味で会話も弾んだが、俺は内心かなりそわそわしていた。
胃を満たすのもいいが、早く精巣を空にしたい。
いや、焦ってはいけない。
今日一日が終わる頃にはそうなっているはずだ。
そうなってるんじゃないかな。
そうなっているといいな……。
一通り料理を食べ終え、デザートとしてシュー生地で出来た揚げパンのようなお菓子と紅茶が出された。
「この揚げ菓子もおいしいです。中にマーマレードが入ってますね」
「これは帝都にいた時によく食べてたものなんです。こちらで作ったのは初めてだったんですが、上手くいってよかった。帝都周辺の庶民の間では、女の子が好きな男の子に手作りのものをあげる風習があるんですよ」
「へえ……俺もいつか帝都に行ってみたいな」
「若様のご年齢的に、3年以内には往訪されることになるかと存じます。その時はきっと帝国中の女の子が若様に夢中になるでしょうね。若様はご年齢以上に洗練されてらっしゃいますから」
ドロシィはそう言って俺の目を見つめてきた。
俺は反射的に目を伏せた。
演技でそうしたのか、本当にドロシィの視線に動揺しているのか、自分でもわからなかった。
暗めの部屋に蝋燭のオレンジ色の光が揺らめき、その場に妖しい雰囲気が漂っている。
「……もしそうなら、ドロシィ先生のお陰です」
「舞踏会もありますから、その時までに踊りの練習も沢山しておきましょう。貴族でも平民でも、女の子は誰だって上手にエスコートしてくれる男性を好みますからね」
「努力します。帝都の姫君たちの足を踏んづけないように」
少し冗談めかして言うと、ドロシィが微笑んだ。
「若様ならきっとできますよ」
先ほどからドロシィは会話の内容をさりげなく男女の話題に寄せてきている。
それを察しつつ、俺はあえてその話題を広げないようにしていた。
今晩はプルティータがドロシィに言っていたように、色恋に疎いウブな少年を演じなくてはならない。
まどろっこしい気がしないでもないが、ドロシィの「手ほどき」を最大限に楽しむためには必要なことなのだ。
デザートも食べ終わり、俺達は部屋を移った。
書斎に移動するまでの短い時間だったが、前を歩くドロシィの大きな尻の形を目で楽しんだ。
大きな尻にナイトドレスの布地がぴったりと張り付き、割れ目までくっきりと見えていた。一歩また一歩と歩く度に、尻の肉が小刻みに揺れる。
本当にいい尻をしている女だ。
書斎はそれほど大きな部屋ではなく、畳一枚を立てかけたほどの大きさの本棚がひとつ、それと読書用の大きな机と椅子が一組あるだけだった。
グリプス家の図書室の百分の一にも満たない蔵書量ではあったが、本が高価なこの世界において、底辺貴族家ながらこれだけの蔵書があるのは立派なことと言えた。
ドロシィが目当ての本を取り出し、読書台に置いてくれた。
その本は少年漫画誌2冊分ほども厚みがある上、羊皮紙でできている。見た目以上に重く、手で持って読むことなどできないので読書台が必要なのだ。
最初に見せてもらったのは民話集だった。二百年前の帝国草創期頃に作られた本とのことで、なかなか興味深かった。ドロシィが帝都にいた頃に亡き夫が購入したものらしい。
「へぇ……帝国が出来る前も十二精霊は崇められていたんですね」
「そう書かれていますね。もっとも、今ほど教義が体系化されていなかったようですが」
俺はこの世界に生を受けてから、様々な本を読んできた。
前世と異なるこの世界を生き抜くヒントを得るのが一番の目的だったが、別世界の歴史や考え方を知るのは純粋に楽しかった。
電子製品がなく、ゲームもネットもない世界では読書が数少ない娯楽なのだ。
だが、今日ばかりは目が滑って本の内容が頭に入って来ない。
俺のすぐ隣に立っているドロシィからは花のような甘い香りが漂ってくる。
香水に混じってうっすら石鹸の匂いもする。
俺が来る前に風呂を済ませていたらしい。
本当に今晩、ドロシィを抱けるんだろうか?
土壇場になってドロシィはその気が失せてしまわないだろうか?
もしそうなったら、プルティータはドロシィを責めるのだろうか?
文章を目で追いながら、そんなことばかり考えていた。
ふと、机の隅に積まれている本のひとつが目に入った。
その本は他よりも新しい本のようで、表紙は桃のように鮮やかなピンク色で染められている。
昔の本ほど色落ちが進むものなので、比較的最近作られた本だとわかった。
「先生、これは?」
「あら……出しっぱなしにしていてごめんなさい。これは大人向けの……貴族の夫婦が読む本なんです」
ドロシィはなんだか気まずそうに笑って、そのピンク色の本を本棚にしまおうとした。
「見てもいいですか? どんな本か興味があります」
見る前から内容に関して大体の想像がついていたが、しらばっくれて無邪気に申し出るとドロシィは少し迷った素振りをした。
「そうですね……でも、どうしましょう」
「何か問題が?」
「いえ、その……。でも、若様にはいい機会かも知れませんね」
ドロシィは驚かないで下さいね、と断ってから、読書台にあった本とピンク色の本を入れ替えた。
表紙には『よき夫婦のための愛の十二章』と書かれていた。
本の制作年代を示す数字も入っており、今から十年ほど前に作られたものだとわかる。作られる本の点数が少なく、百年前の本が普通に読まれるこの世界においては充分新しい部類に入る。
「若様。椅子がひとつしかありませんもので、恐れ入りますが少しだけずれてもらってよろしいですか?」
言う通りにすると、空けたスペースにドロシィが腰を下ろした。
椅子を「半分こ」してドロシィが俺の左側に座る形だ。
突然の密着にドギマギしたが、ドロシィは気にした風もなく本の説明を始めた。
「この本は、巷では『花の書』と呼ばれています」
その通称の通り、男性器を雄しべ、女性器を雌しべに喩えて男女の愛の営みについて書かれている本だった。
前半部分は保健体育の教科書のような入門的なもののようで、男女の身体の違いや心構えが書かれていた。比喩がふんだんに使われており、何かと表現が詩的で上品な内容にまとめられている。だがその分わかりにくく、図解も少ないためパッと読んだだけでは内容が頭に入ってこない。
後半までじっくり読み解いていけば違った感想を持つかも知れないが、少なくともオカズになるような本ではなかった。
エロさで言えば、現在俺のすぐ隣に座っているドロシィの方がよほどエロい。
密着度が高く、太ももが触れ合っている。
そっと横目でドロシィの方を見ると、ばっくり開いた胸の谷間が目につく。
なんとまぶしい光景だろう……。
「この本は貴族の女性が書いたものですが、平均的な女性が男性に望むことがまとめられておりまして……」
ドロシィは解説を加えながら、ぺらり……ぺらり……と一枚ずつページをめくっていく。
いつの間にか、ドロシィの手が俺の太ももに置かれていた。
身体がぴったりとくっついていることもあって、俺の下腹部は既に硬くなり始めている。
ドロシィにもバレているかも知れない。
少し前までは、宮廷作法の授業中にこんな気持ちになることはなかった。
ドロシィ側が服の露出や振る舞いなどで女の部分を出さないように努めていたのかも知れない。
だが、俺が精通してキーラを抱いたことで全てが変わった。
周囲にいる女性の「雌ホルモン」を感じ取る回路が、俺の中で開き始めているような気がする。
こちらの性的興奮が高まっていることを知ってか知らずか、ドロシィは落ち着いた声で本の話を続けている。
「平民たちの間ではもっと過激な内容の書物が楽しまれているようですよ」
「平民が本を読むんですか?」
「本と言っても、安い紙を使った挿絵ばかりの小冊子のような物のようです。私は実物を見たことがないのですが、挿絵を目当てに買う者も多いと聞きました」
その本の内容について、ドロシィは言葉を選びながら説明をした。
話をまとめると、今読んでいる花の書よりずっと過激な、艶めかしい挿絵がふんだんに入った「男女のまぐわい教本」ということだった。
この世界における庶民向けのエロ本みたいなものかも知れない。
「そちらの本もご興味があれば、入手しておきます」
ドロシィが少しはにかみながら言った。
その後も二人でひとつの椅子に座ったまま、遠回しな会話が続いた。
ドロシィが帝都で見聞きした男女の色恋話をあれこれされたが、どうも要領を得なかった。
この後の展開にどう持ち込んだらよいものか、ドロシィの方でも迷っているのかも知れない。
俺はアシストしてあげることにした。
わざとらしく窓の外を見て、既に真っ暗になっていることに気がついたフリをする。
「あ、すっかり暗くなってしまいましたね」
「はい……?」
「遅くまでお邪魔しました。そろそろ城に帰らないと――――」
ドロシィが驚いたように俺の顔を見た。
部屋を出る素振りをすると、反射的にドロシィに手首を掴まれた。
「若様、待ってください」
思わずドロシィの顔を見る。
瞳が潤み、頬が赤くなっている。
「先生……?」
「……若様の周りには、女性が沢山いらっしゃるでしょう……?」
「侍女の話ですか?」
「お家の方々もそうですし、良家のご令嬢たちと知り合う機会も多くなるでしょう。若様も貴族の男子として、すぐにこうした類の経験をする機会が訪れるかと存じます」
「はい……?」
俺は、ドロシィがなんの話をしているのかわからないという顔をして見せた。
「若様は貴族の若い男性の一番大事な、特別な義務が何かご存じでしょうか」
俺は少し考えて、模範解答をする。
「帝国の秩序と領民の安寧を守ることです」
「それはとても大事なことです。ただし、そうしたことは若い男性に限らない、全ての貴族の義務です。私がお聞きしているのは、その……若い男性貴族に限定したお話でございます」
「……つまり?」
「これから若様が果たさねばならない“特別な義務”は、お血筋を残すことです。グリプス家のように高貴なお家に生まれついた男性ならなおのこと」
ドロシィが原稿を読み上げるように言った。
緊張しているようだった。
「そのためには、若様には夜の宮廷作法も知って頂かねばなりません」
「夜の……宮廷作法……」
どことなく前世のエロオヤジ風の言い回しだなと感じた。
だが、俺を見上げたドロシィの顔は大真面目かつ真っ赤だった。
「この『花の書』をお貸ししてもよいのですが、若様さえ……若様さえ、もしよろしければなのですが……」
ドロシィが俺の手をその胸にぎゅっと抱きしめた。
「今晩、実際にご指導させて頂けませんか……?」
俺の手はドロシィの大きな胸に埋まるように押し付けられている。
柔らかな肉の感触が手のひら全体で感じられた。
「書物を読むだけではわからないことも多いですし……そういった方面の指導も、若様の……アーガスト様の宮廷作法の教師たる、私の大事な職務ですから」
まるで自分に言い聞かせているようだった。
「それとも、若様は私より他の方から学びたいですか……?」
そう尋ねるドロシィは不安そうで、か弱い少女のようだった。
ここは大事なところだ。
俺もちゃんと思いの丈をぶつけるべきだろう。
「……実は、最近ずっとそのことで悩んでいたんです。女の人のことはあまり詳しくないし、誰に相談していいかわからなくて…」
ギリギリ嘘はついていない。
最後にしっかりとドロシィの目を見て言う。
「女の人について学ばなくちゃいけないなら……先生に教えて欲しいです」
ドロシィの潤んだ瞳が揺れた。
そして、宮廷作法の女教師は深く長いため息を吐いた。
それから無言で立ち上がり、今度は俺の体を抱きしめた。
身長差があるため、ドロシィの胸に顔を埋める形になる。
「若様のお気持ち……よくわかりました」
胸の奥から、ドッ、ドッ、ドッ……とドロシィの鼓動が伝わってくる。
抱きしめ返すかどうか迷いながら、顔と体の前面でドロシィの柔らかさを感じていた。
しばらくじっとしていると、ドロシィがそっと身体を離した。
「嫌だったら、ちゃんと言ってくださいね……」
そう断ってから、俺の顔を両手でそっと挟み込んだ。
ゆっくりとドロシィが唇を重ねてくる。
「ん……」
最初はちゅ……ちゅ……と唇をくっつけるだけのキス。
俺の唇をはむはむと唇で挟み込み、軽く引っ張る。
そうかと思うと、俺の唇を舌でちろりと舐める。
そしてまたちゅっと唇をくっつける。
まだ舌同士を絡ませていないのに、ドロシィのキスはいやらしく、多彩だった。
思わずドロシィの腰を抱きしめた。
細くてしっかりくびれているのに、腰回りに肉感がある。
女の身体というのは、どうしてこうも柔らかいのか。
俺の頭に、また前世に置き換えた時のイメージが浮かんだ。
言うなれば、今のこの状況は放課後の秘め事。
俺は◯学校に入ったばかりの男子生徒で、ドロシィは担任の美人教師。
その女教師の自宅に呼ばれて、向こうから誘われて甘いキスをしている。
そしてこれから、先生に性の手ほどきを受けるのだ……。
そんな想像をしただけで脳髄が甘く痺れてくる。
俺の下腹部は既にガチガチに固くなっていた。
「お付きの方には“ばあや”から伝えさせますから……今晩はうちにお泊まりになってください」
ドロシィがそう言って俺の手に指を絡ませた。
どこかから、ホゥ……ホゥ……というフクロウの鳴き声がしてくる。
夏の夜の暑さが増し、身体からじっとりと汗がにじんでいた。