超昂大戦SS 絶望超昂〜こぼれた愛と奇蹟の残滓 作:環 藍河
「…転院…ですか…?」
「うん。驚くよね。先日目が覚めたばかりなのに…ね。」
閂市総合病院、一般病棟。
入院当時は閂学園3年生。そして既に休学期間を使い切り、中退扱い。
それほどの長期入院…そして、長期の意識不明を経て、少女は奇跡的に目覚める。
「どちらの、病院へ…?」
「正確には病院じゃないの。でも…あなたを治すために、これ以上ない医療施設。」
翌日、少女は搬送車両へ。
通常は救急車があてがわれるところ、玄関で少女を迎えたのは…
カーキ色の輸送車両と、人類の救世主。
「! 園崎…さん…?」
「はい。園崎アカリ…エスカ・ルビーです。
先輩のお迎えに…只今参上、です。」
「…初め、まして。」
(……。)
その返答に、アカリは一瞬、顔を曇らせる。
「ミソラ先輩は…6年前、アルダーク侵略のときに意識不明で発見された、って…聞きました。」
「うん…。」
くすっ。
「と言っても、私もわからないんだ。
先週、このベッドで意識を取り戻して、お医者様から『貴女はずっと眠っていたんです』って…。
だから何だか、何を聞いても別世界の話みたいで…ヘンな感じ。」
(……。)
「世界で何が起きたかは、この1週間、ネット検索で大体勉強したけどね。
園崎さんは…その当事者なんだよね。
良かったら、聞かせてくれるかな。エスカ・ルビーとダイビートが、どうやって街を、地球を護ったのか。」
「…はい。私は今日、そのために来ました。」
…コミュ強モンスターのアカリが、今日はらしくなく、ひと言ひと言を選んで語る。
その事情は順を追って記す。だが…さしあたり、これだけは。
ミソラとアカリは…初対面ではない。
それどころか…
……
…
「トキサダ長官。私は…やっぱり、超昂戦士として戦いたい!
お願いです! 私が授かったADDD適性は、神様の天啓なんです!」
6年前。
アルダークの先兵どもが青空を汚し、地球に降り注いだ、運命の日。
だが、運命を変えるべく、トキサダたちは防衛組織を編成。
基地を整備し、補給・輸送・技術…あらゆるスタッフを秘密裏に揃えた。
異界の伝説的戦士、天才博士の娘、政治と資金調達のエキスパート…そして。
東雲ミソラ。
表向きは成績優秀ながら、存在感の薄い閂学園生。
だが、爪を隠した才ある鷹の正体は、ホワイトハッカーとしてICTの世界で知られる、若き逸材。
その才を見出したダイビートが水面下で接触し、期待通りミソラはその才能を遺憾なく発揮。
通学しながら技術スタッフとしてさやかの下で働き、ビートポータルの実用化に貢献した。
(蛇足だが、後のアカリの勤務形態…表向きは倉庫番、その実は超昂戦士…に近い。)
だが、続くADDDの実用化シーケンスで、自らの高いADDD適性を知ったミソラ。
ためらわずに技術スタッフの地位をなげうち、最前線を志願した。
物静かな少女の、らしからぬ懇願に戸惑うも、トキサダは有望な戦闘スタッフの参戦を歓迎する。
「はああ…っ……
…!! やああーーーっっ!!」
どがああああーーーーんっ!!
はあっ…はあっ…!
「や…やった…!
…でも…この威力を何度でも…
出せるように…ならなくちゃ…!」
くらっ…どさっ。
(まだ…アルダークには…勝てない…)
精魂尽き果てるほどのトレーニングが、才女の日課。
正拳突き、蹴り技、寝技。
およそ技術者とは思えぬ格闘術を、来る日も来る日も繰り返し骨身に叩き込んだ。
ミソラの真の才能は、情報工学でも戦闘力でも、ADDD適性でもなかった。
悪に屈しない。そのために自らの苦難を厭わない。
その勇気こそ、少女を超昂戦士たらしめるライセンスだった。
そう。
アカリの目の前の患者・東雲ミソラは…超昂戦士。
旗揚げ前からダイビートに参画し、志願して技術職から戦闘職へ配置転換。
その後は誰よりも過酷な訓練を日々重ね、みるみる戦士の素養を備えていった。
そして、アカリの敬愛する先輩。
運命の日、街で侵略者に襲われ、自分の無力に絶望したアカリは…ご存知の通り、エスカレイヤーたちの闘いに心打たれ、翌日すぐにダイビートに志願した。
(勢いだけで面接受けて、通っちゃったけど…
やっぱり、私だけ…なのかなあ…?)
真っ先に採用されたアカリが、自らの直情径行に迷いながら、初の戦闘訓練に臨んだ、その日。
「えっ…あなたは…?!」
「初めまして。話は長官から聞いているわ。2年生よね。」
すっ。
「私は東雲ミソラ。3年生。
園崎アカリさん…一緒に、超昂戦士になろう。」
その女性が身に纏うは、同じ学園の体操着。
レジェンドじゃない、この世界に生まれながら超昂戦士を志願する人が。
先輩が、もう既にいるなんて…!
がしっ!!
「園崎さん…勝とう。絶対に!」
「ミソラ先輩…! はいっ! ガッツ全開です!」
差し出された右手を、力強く握り返すアカリ。
街の、みんなの、地球の危機。
だから…私が立ち上がる。
普通の女子だって、黙っていられるもんか。
ミソラの存在は、駆けだしの超昂戦士には何より心強かった。
そしてアカリの参戦も、ミソラの孤立した心を勇気づけた。
《(ひとりじゃ…ない…!)》
互いの心に共鳴する、決意と闘志、そして敬愛。
先駆けて戦闘デビューを果たしたのは、エスカ・ルビー。
「…園崎さん、おかえり。そして、初勝利おめでとう。」
「あっ…ミソラ先輩…!」
「…うん。待ってて。私も、追いつく。」
勝利への誓いを新たに、磨き上げた希望の翠石が、紅石に並び輝く、はずだった。
……
…
程なく、東雲ミソラはその超昂戦士デビューを、満を持して迎えた。
「待ちなさいっ!!」
「何だっ!?」「ブブウッ!?」
すたっ!
「青い地球を護るため、胸の鼓動が天を衝く!
翡翠の光は未来のしるべ!
超昂戦士、エスカ・エメラルド! 悪の現場に只今参上!」
「エメラルド!」
「ルビー、お待たせ。2人なら…私たちなら、負けないっ!」
「はいっ!」
その秘めた潜在能力は、ルビーに勝るとも劣らず。
その知性と勇気は、ダイビートの苦難の行く手を煌煌と照らす希望の旗手として、誰もを勇気づけた。
エスカ・ペアのリーダーとして…ダイビートの希望の明星と期待された。
そんな彼女の洋洋たる前途は…
無惨に引き裂かれた。
『こちら輸送班! 戦闘不能のエスカ・ルビーを収容しました! 直ちに基地へ帰投します。
バイタル低下中、救護班の準備を!』
《…敵残党の追撃に注意を払え。》
「…うっ…ううっ…!」
『ルビー! しゃべるなっ、安静を…』
「長官…。エメラルドが…ルビーを…
私を…かばって…!」
《…知っている。》
エスカ・エメラルドの初陣。エスカ・ルビーとの初の共闘。
輝かしい船出だったはずの、この日は…
今となっては誰もが、呑まされた苦渋に唇を噛み、口をつぐむ…惨劇の日となった。
……
…
惨敗だった。
気負いや驕りは、無かった。
二人のADDDも、D2エナジーも正常だった。
ルビーは…デビュー戦を完全に解析されていた。
狙う攻撃対象は総て先を読まれブロック。
自慢のフットワークも巧妙に封じられ、待ち構える滅忍のカウンターの餌食に。
遂にはディフェンスをことごとく破られ、苦し紛れのストライク・エスカレーションはアスファルトを掘るばかり。
その時が来たぞとばかりに、フーマンの集団攻撃。
ふらっ…ぐらぐらっ…
「そ…そんなっ…。
こんな、はずじゃ…!」
ADDDでは補えない、ルーキー超昂戦士の体力はすでに限界超え。
物量で劣後する肉弾戦で、繰り返し繰り返し、何度もフーマンたちに押しつぶされ、もはやルビーの眼差しは虚ろ。
「かはっ…ううっ…ぐふっ…」
後に人類滅亡の危機を切り拓く、エスカ・ルビー自慢の右脚。
だが、駆け出しの今は精魂尽き果て、惨めに膝を地に屈し、情けなくがたがたと震えるばかり。
体も心もへし折れ、もはや撃沈同然。
「ル…ルビーっ…!」
満身創痍の相棒を、助けたいのに…!
脚が、拳が、身体が、動かない。
デビュー戦のエスカ・エメラルドもまた、アルダークの猛襲に打ちのめされていた。
「オラア!」
しゅっ…どぼおっ!
「うぐうっ!」
「ほらほら、顎が、脚が、お留守だ…ぜっ!」
どごお! ぐしゃっ! ばきっ!
「あぐっ! おごっ! ううっ…
うああーーーーっ!!」
澄み渡った大海の輝きにも等しいコバルトグリーンのレオタードは、理不尽と横暴のボディブローに貫かれ続けた。
短い新兵訓練期間ながら、オーバーテクノロジーとたゆまぬ鍛錬で丹念に鍛え上げたはずの鋼の腹筋は、脆くもずたずたに潰された。
超昂戦士のボディは幾度もくの字に折れ曲がり、五臓六腑は根こそぎ磨り潰された。
ずきんっ!!「うぐっ!」
(あ…アバラ…折れたぁ…!)
それでも耐え、隙を見て敵の流れをかい潜り、ルビーの援護に飛び込む瞬間を狙うエメラルド。
だが、波状攻撃を仕掛けるコマンダーとフーマンの攻撃が、途切れない。
(護るんだ…ルビーを…
護らなくちゃ、ダメ…なのにいっ…!)
エメラルドの救援が叶わない。
その間も、ごっそりエナジーと闘志を削られ続けるルビー。
「うっ…!」
ふらっ…どすん。
そして、ルビーのエナジーが尽きた。
初めてを捧げ、身体と心の奥の奥でトキサダを受け止めて、至福のDチャージで満たしたD2エナジーだった。
その満タンのエナジーすら…
悪の手管に手玉に取られたルビーは、持て余した。
当たらぬ必殺技で空転させ、ディフェンスで浪費させ、遂に底をついた。
「ダメっ…身体が…もたないっ…!」
もはや立つことも叶わず、へたり込む紅蓮の超昂戦士。
今こそとどめを見舞うべく、フーマンが四方八方から…クラウチングで構える。
「【《『ブウーーーーーッ!!』》】
「あっ…ああっ……!!」
同心円でルビーを囲み、合図と同時に一斉タックル。
逃げ場無く追い詰められ、満身創痍のルビー。
その脳裏によぎったのは…
大型トラックに挟まれて原形を留めず潰れ、スクラップとなった軽自動車の映像。
(つ…潰さ…れるっ…!)
跳んで避ける脚力は、もう残っていない。
あの巨躯のタックルをガードなどしても無駄。
戦闘スーツの防御力を引いても、おそらく全身、骨まで粉々。
左右から、背後から、そして正面から迫る、フーマンの突進…!
「ひっ…!」
「ルビーーーーッ!!」
恐怖に遠のく意識の中、ルビーの耳に届いたのは…バディの決死の咆吼。
自らの身体がふわり宙に浮き…
どすん。どすどすぐしゃっ。
自らが前の瞬間に居たはずの場所から、多重事故の鈍い衝撃音が爆ぜる。
ふわっ…べしゃっ。
「あううーーーっ!!」
スクラップを免れた。
かばわれて突き飛ばされ、墜落した。
命拾いするも、汗と砂にまみれ、アスファルトに這いつくばるルビーは…
(エ…エメラ…?)
なけなしの精神力で、必死に爆心地を目で追った。
「ぐっ…ぐふっ…。」「!!」
自分が…ルビーがこうなっていた、はずなのに。
両肘で頭部をガードし、片足立ちで右脚を敵に突き出したのだろう。
精一杯のディフェンスも空しく…プレス機の中心に、翡翠の超昂戦士が吊られる。
急所を護り抜いた高い代償は、だらり力なく肩から垂れ下がるバトルグローブ。
ファイティングポーズは、もう二度と取れないだろう。
辛うじて、左脚は護りきった。
それだけに、あらぬ角度にねじれる右脚が、戦士を襲った衝撃のおぞましさを雄弁に語る。
じわ…っ…。
(エ…エメラルド…エメラルドぉ…!)
ダメだ。
いま、諦めたら、ダメだっ…!
瞳に滲む絶望を、最後のガッツで拭う超昂戦士。
相棒の貴い自己犠牲で護られた右脚で、パルシオンが最後の雄叫びを上げる。
「ああああああーーーーーーっっっ!!!」
ルビーが、限界を超えた。
「ストライクうううーーーっ! エスカレーショーーーンっ!!」
どごおおおおっっっ!!!
「ストライクーーー!! エスカレーションっ!!
エスカレーション! エスカレーションっ!! エスカレーションっっ!!!」
どがあっ! どどんっ!! どごおおおおっっっ!!!
肉体の限界を振り切り、ADDDはとっくにレッドゾーン。
パルシオンは亀裂を浮かべ、胸のジュエルは悲鳴を上げ…
それでもルビーは、ダイナモのアクセルを開ける。
「うあああああーーーーーーーっっっ!!」
我が身が壊れようと構うものか。
右脚が砕けたら、左で。
拳が潰れたら、ヘッドバッドで。
蹴撃に次ぐ蹴撃、拳撃に次ぐ拳撃で、トンネル工事のドリルの如く突き進む。
エスカ・ルビーは掟破りの肉弾戦で、フーマンの肉弾の壁をことごとく発破していった。
(エメラルドを…
仲間を…助けるんだ…
助け…なきゃ…。)
紅蓮の超昂戦士の馬鹿力は、無駄ではなかった。
救援部隊の到着まで、持ちこたえる時間を築いた。
だが、その評価は何ら慰めを成さない。
「出でよ、イデアの壁!」「【《『ブブウーーーーーッ!!』》】
(……。)
エスカ・エメラルドは敗北し、拉致された。
エスカ・ルビーの救出の手は、届かなかった。
シナプスまで焼き切れ…追いついた救援部隊の腕の中、ルビーは失神した。
…
……
救急輸送車のストレッチャーから、意識だけを取り戻したルビーは長官に嘆願する。
「お願いです。私は…自力で撤退、できます…
エメラルドを…」
《エメラルドの奪還は…断念した。》
「…えっ…?!」
《発令済みだ。救出部隊を改めて編成する。》
トキサダの無慈悲に、ストレッチャーに横たわるルビーの全身が凍てつく。
「…この…後は…?
エメラルドは…まさか…。」
《……。》
「…いえ…何でも…ないです…。」
ルビーも知識を持っていた。
超昂戦士が万が一戦闘に敗北し、撤退に失敗し、捕虜となった場合の心得。
最悪の事態を免れるための選択肢、即ち…救援まで身体と精神を崩壊させないよう、耐えるためのマニュアルを頭に叩き込んだ。
だが、それは座学で教わったに過ぎない、あくまで机上の論。
実際に捕らえられた超昂戦士が、どんな暴力と陵虐を受け、どんな辱めを受けるか…
それはこの後、ルビーもその身にその心に幾度も刻み込まれる、敗れし超昂戦士の宿命。
だが、VR訓練を受ける前にデビューしてしまったルビーは、その現実を知らなかった。
今日。
敬愛し、支え合う先輩を、目の前で奪われた。
不完全なエスカチームのバディを蝕む惨劇は、始まったばかり。
そして、ルビーは思い知る。
敗北の先に在る、超昂戦士の惨めな成れの果てを。
……
…
「通信回線に外部から侵入! これは…映像です!」
ぶつん。ざざざぁ…!
【ダイビートの諸君。とりわけ、長官・戦部トキサダ…だったか。
我等アルダークに抗う愚か者どもよ。
我はアルダーク総統・ディストバーン。貴様等を十字架に繋ぐ者よ。】
「…ディスト…バーン…!」
【今日、通信を繋いだのは他でもない。
貴様等、超昂戦士どもを待つ地獄の一つが完成した。
ああ、先日捕らえた超昂戦士が、その人知を越えた素晴らしさに、歓喜に震えて腰を振っておるわ。
無理も無い。あれから三日三晩、休む間もなく、とくと味わってもらっているからなあ。】
トキサダ、ユーノ、ルビー…ダイビート指令部の全員が息を呑む中、映像が暗転。
(……エメラルドっ!!)
「ああああーーーーっっ!!
いやあっ、またっ、中にいっ…ぐうっ…!
あっあっあっあっ、イクっ、ダメえっ、もうっ、もう…!!」
ずぼっ! ずぶっずぶっずぶっ!
ぱんっ! ぱんっ! ぱんっ!
それは、瘴気とも呼ぶべき、戦士を身も心も冒す悪夢のエナジー。
牢獄を探しあぐねて救援部隊が72時間を空転させる間も…
敗北者、エスカ・エメラルドはさらなる敗北の絶望を刻まれ続ける。
「ふははははあ! よおくっ、締まるっ、なあっ!」
「ぐへへっ! やっぱり、想破を抜けて、正解だったぜえ!」
「ブッ! ブブウッ! ブッ、ブブッ、ブウウッ!!」
ずぐっ! がすっ、がすっ、ずぶっ!
ぱんっ! ぱちゅっ、ぶちゅっ、ぱんっぱんっぱんっ!!
「やあっ…やめろおっ…! ごふっ…!
挿す…なあっ…注ぐなあっ…!
もう…こんなああっ…ああっ…あっ…」
「くっ! 行くぞっ、淫乱ドスケベ戦士さんよおっっ!!」
「応っ! 全身っ、汚してやるぜえ!
凛々しい戦闘服も、中の純潔もなあ!」
「ブブウッ、ブーーーーーっ!!」
どぶっ! びゅーーーーーっっっ!!
「あ…ああっ! うあああああーーーーーーーっっっ!!」
びくんびくんびくん、どくうっ!!
……くらっ…
どちゃっ。
エスカ・エメラルドは…抵抗かなわず轟沈した。
ルビー同様、エスカレイヤー譲りの戦闘服。
緑のセーラーカラーとプリーツスカートが授けてくれた勇気に、無垢なる新人超昂戦士は正義の勝利を誓った。
だが…高層ビルをも砕くその拳と、戦車をも無力化するその蹴撃でさえも…
侵略者の企みを砕くには、あまりにも足りなかった。
…
……
フーマンのリンチからルビーを救出するべく飛び込んだ、勇敢なる新兵。
その勇敢の代償は…デビュー戦の敗北と拉致監禁、そして屈辱。
意外にも、イデアの壁で真っ先に施されたのは、応急治療だった。
「な…なぜだ…?」
「バーカ。これからあんあん喘がせるのに、いちいち激痛でのたうち回られたら、俺等が萎えるだろうがよ。
まあ、そういうのが大好きでたまらねえ、ドSのコマンダーもいるけどな。」
「…!!」
慈悲でも、ましてや捕虜への紳士的処遇でも無かった。
総ては…さらに凄惨な陵虐で、超昂戦士を一層いたぶるため。
「…許さない。あんたたちみたいな外道になんか…絶対、負けないっ!!
やあああーーーっっ!!」
後悔させてやるんだ。私を侮って、治癒したことを。
なけなしのエナジーで立ち上がり、エメラルドは最後の勇気で飛びかかる。
「ふんっ!」
ひゅっ…びしいっ!!
「あぐうっ!!」どごおっ!
所詮は、イデアの壁で攻撃力を封じられた、経験浅き超昂戦士。
コマンダーの電磁ウィップの一振りで、エメラルドは電気ショックに身を委ね、ピンポン球のように軽く吹き飛ばされる。
「う…おええっ…ゲボっ…!」
骨は繋がっても、身体のダメージは重篤なまま。
エメラルドは突っ伏し、這い上がることさえままならない。
「ふははははっ! やはりなあっ!」
「な…何が…おかしい…!」
「ダイビート? 超昂戦士? 笑わせるなあ!
強いのは最初のレジェンド3人だけ!
あそこでお前が逃がしてなければぺちゃんこだったエスカ・ルビーといい!
身代わりで無様なスルメイカになったお前、エスカ・エメラルドといい!
超昂ぉ? 戦士ぃ?
大したこたあねえ! 所詮お前たちはレジェンドどもの劣化コピー、ザコだってことさあ!」
……!!
(くっ……ううう~~~っっっ…!)
実力の彼我の差に、超昂戦士はわからされる。
もはやエメラルドは、獅子の獰猛にひるむモルモットも同然だった。
残された僅かなD2エナジーで、辛うじて生命を維持するのが精一杯。
この屈辱に…こんな奴に負けないように、鍛えてきたのに…!
びりびりびりっ!!
「ああっ!!」
遂にはスカートの正面、パールホワイトが覆い護るショーツを、下卑た欲望に剥ぎ取られ…
腰まで伸びる新緑の髪は、幾度も殴り倒されて地べたの埃まみれ。
明晰な頭脳を護るカチューシャは、エメラルドの顔面だけで受けきれない、おびただしい汗と涙と白濁液でべちょべちょに汚された。
先刻まで溢れる闘志とみなぎる正義に燃えていた、ピジョンブラッドの瞳。
今やエメラルドは絶望と肉欲に囚われ、とっくに眼差しは焦点を喪っていた。
ずぶっ! ずんっずんっ、ずぶううっ!
ぐじゅっ! ごりゅっ、ぐりぐりぐりっ!
「う…ぐううっ!? うああああ〜〜〜っっ!!」
太ももを閉じても、逃れた右手で秘唇をさえぎっても。
抵抗虚しく、怒張は剛力で妨害をねじ伏せる。
閉ざす路をこじ開け、蛇の頭は戦士の最奥を幾度もノック。
「おお〜っ、いいぞっ、超昂戦士!
もっと締めろっ! 搾り、尽くせえ!」
ごりゅりゅりゅりゅっ!!
「あぐうううっっ!!
痛っ、もう、入ら、ないいっ…!!」
超昂戦士エスカ・エメラルド。
後輩戦士を庇い、自らが身代わりとなった勇者は…その殊勝の報復を、総身に浴び続ける。
正面からフーマンの人外で貫かれ、背中からはコマンダーの調教。
両の掌でいずれも滅忍の棒を掴まされ、戦闘グローブはローションまみれ。
「フンっ!
では…そろそろ…!」
ぐるんっ!「!?」
エメラルドのバックを取るコマンダーが、腰のホルターから再び鞭を掴むと…
喉元を護るインナーの上から、エメラルドの首に巻き付ける。
「なっ…あぐうううううっっ!?」
エメラルドは狼狽する。
こいつらは…敵を快楽漬けに堕とすつもりではなかったのか。
ムチで首を、気道を絞めて、何をしたいのか…?
わからない。理解できない。
情報工学では天才のエメラルドも、性の知識は平均未満。
未知のサディズムに、困惑する間も許されず、ただ喉元に迫る生命維持のリミットに、半狂乱でわななくしかなかった。
「くたばれ、このっ、変態戦士があ!」
ぎゅううううっっ……!
「うああっ! かはっ、おええっ…」
コマンダーが下の逸物を挿し込んだまま、背中から喉を締め上げる。
かひゅうーー……。こひゅうーーー……。
エメラルドの肺が酸素をせがむたび、芦笛のように喉がか細く鳴る。
額に伝う汗が凍てつき、絶対零度の絶望を戦士に知らしめる。
(も…もう、私…)
初陣の超昂戦士に、絶命の瞬間が迫る。
(だ…ダメ…なの…?!)
そのとき、今際の防御本能とばかりに、脳が苦痛緩和の快楽を放出。
(………あはっ♡)
まさに、天にも昇る心地。
エスカ・エメラルドは、その一瞬…とろけた。
そして、次の瞬間。
どくんっ!! びくううううっっっ!!1
「ああああーーーーっっ!!
あうっ! あんっ! あひいっ!」
がくんがくんがくんがくんっ!!
「うあああああーーーーーーーっっっ!!」
電気ショックに撃たれたように、翡翠の超昂戦士は全身をがくがく震わせる。
腰を前に突き出すと、フーマンを最奥まで咥え込む。
飛沫を上げた反動で後方に尻を叩きつけ、今度はバックのコマンダーを腸まで迎え入れ、また高みに至る。
そのエクスタシーで、両手でしごき続ける滅忍の怒張を、思わずパールホワイトのグローブでぎゅうぎゅうに搾るエメラルド。
掌をてらてら濡らす白濁液で、つるりと逃げた左右の蛇口が、締め上げられた欲望を全開に、緑の超昂戦士を両脇からさらに白く染め抜く…。
どびゅーーーっ!! どぶどぶっ、どぴゅっ!
びゅううう〜〜〜っ!! びゅるっ、びゅうっ!
「あひいいい〜〜っ!! あんっ! ああっ!!」
初陣の超昂戦士は、前後左右から獣欲の爆発を浴びた。
秘唇の奥を発破する、フーマンのショットガン。
菊門から後ろを掘削する、コマンダーのマシンガン。
左右の滅忍は爆ぜる手榴弾か、頭のてっぺんからプリーツスカートの下まで燃え広がる火炎瓶か。
…かくんっ。
はあっ…はあっ…
「……。
…あ……。…ああ~~っ…。」
気高きエメラルドグリーンは、泡立つ獣欲に沈む。
【何を余韻に浸っておるのだ、エスカ・エメラルド。】
(…えっ…?)
【ダイビートが…超昂戦士どもが二度と歯向かおうなどと思えぬよう、貴様の無様で淫らな醜態を晒し者にして送りつけ、恐怖を植え付けるのだぞ。
貴様を待つ、終わりなき無間地獄が、こんな程度でたまるか。】
「あ…へっ…?」
ざざっ。ざざざざっっ。
「くっくっくっ、超昂戦士は今際にイくのがお望みなんだなぁ。」
「滅、滅滅! いいぜえ、想破の得物は苦痛も快楽も望むがままよぉ。」
「【《『ブブウーーーーーッ!!』》】
イデアの壁の端が見えないほどの、コマンダー、滅忍、フーマン師団。
【こやつらの股間を見るがよい。戦闘力も精力も、まだまだ底なしだぞ。
これから昼夜を問わず、交代制で貴様の五臓六腑に注ぎ込んでくれるわ。
エスカ・エメラルド。ここが貴様の墓標だ。】
ぎん。ばきばきっ。ぼきっ。
(…ひっ…! ひいいっ…!)
漏れなく屹立する躾け棒の数々。
焼き切れそうな脳神経で、エメラルドはコマンダーの処刑宣告を理解する。
(わた…わたしぃ…
また…まだまだ…もっと…
アレを、アレも、されるんだ…!)
絶望を刻まれる。獣欲を注ぎ込まれる。
尊厳を穢される。誇りを踏みにじられる。
知性も、努力も、科学も、正義も…
役に、立たない。何も護れない。
がちっ。がちがちがちがち…!
震える。
緑のカラーを纏う双肩が。大地を駆ける両脚が。
実力の差を悟った心が。恐怖に潰される眼差しが。
歯を食いしばることも、呼吸を整えることも忘れた顎が、がたがたと恐怖を奏でる。
どんな悪にも負けない、どんな暴力にも屈しないと誓った、燃え盛る炎のように澄んだ、紅の瞳。
今や正義の宝石は絶望に濁り、その端からこぼれる大粒の涙は、どんなに強く止まれと念じても、栓がばかになった蛇口のように…
止まらない…!
…ぷちん。
(…?
……。
…あっ…。)
勝てない。
アルダークには、勝てない。
もう、逃れられない。抗えない。
こんなの…耐えられない…!
…ああ、そうか。
耐えなければ、いいんだ。
されるがままに、嬲られるがままに。
《超昂戦士は、地球の、人類の平和のために。
負けられない。屈してはならない。》
…そんなの、誰が言ったの?
違う。私が誓っただけ。
超昂戦士が負けたら、地球が終わる。人類が滅亡する。
そんなの、私の勝手な思い込み。
だったら、いいじゃない。
私…負けたんだ。
負けて…汚されて…超昂戦士の恥さらしに、なるんだ…!
だって…だってええっ…!!
…
……
「やめろおっ! やめてええええっっ!!!」
アカリがいくら叫んでも、ジャミングされた回線の向こうには届くはずもない。
アルダークの超昂戦士ハメ撮り生映像。
無料配信は、新進気鋭の組織をあざけるように…その後も続いた。
「長官っ! エメラルドを!
エメラルドを、助けてくださいっ!!」
「……!」
「…長官っ! 長官っっ!!」
自責の業火に身悶えるアカリの嗚咽に、トキサダは応える術を持たなかった。
…
……さらに、2日。
ダイビートの未来の暗号技術でさえも、逆探知とジャミングに成功するまで、さらに48時間を費やした。
ようやく突入部隊を編成し、ダイビートは辛うじてエメラルドの奪還に成功。
「変身を維持し、腸内を洗浄!」
「バイタル低下! エナジー補充、心拍を保ちます!」
「エメラルド! 助かったんだ! しっかりしろ!」
「何とか…基地まで、持ちこたえて…!」
手当を受けながら、ストレッチャーに横たわり搬送されるエメラルド。
搬送車の映像を、固唾を呑み見守るトキサダとユーノ、そしてアカリ。
だが、誰も気づいていなかった。
にたり。
(…ふひっ。ふひひっ…。)
意識が途切れながらも、その虜囚が薄ら浮かべた…娼婦の歪んだ微笑を。【続く】
作者です。
第2話は原作超昂大戦で踏み込めない「敗北H、その先に…」をお届けです。
ソシャゲの制約上、超昂戦士は敗北Hから必ず戦線復帰します。(さもなくば、引いたSSRがロストするハメに…ウイ◯ードリィじゃないんだから)
でも、それでは描けない世界があります。
超昂シリーズBADエンド。
それはもちろんifの世界。正史ではありません。
でも…敗北を紙一重で免れ続けるも、さらに物量で、暴力で、秘術で追い詰められて。ついに力尽きて悪の理不尽に屈し、敗者の烙印を柔肌に焼き押される少女戦士の、救いの無い末路…!
初代エスカレイヤーのビジュアルファンブックを、amazonも楽天ブックスも弱小だった時代に出張先のアキバで購入、東北に帰る夜行寝台で読んで、闇堕ちエスカに脳みそ灼かれた20年前の僕。
今、その世界を超昂大戦で描きたくなったのが、このSSの執筆動機です。
そしたら、興が乗ってなんと前後編に。環のダークサイドは…いろいろアカンなコレ。
※ライトサイドはおバカなギャグSS、またはアリスソフト放送局のお便りでお楽しみ下さい。ときどきシリアスSS(ルビーカッコいい!)も書きます。
後編も執筆中。少々お待ちください。ではまた。