※この作品はR-18です。

ヤリステメスブター短編集   作:肩首バキバ

3 / 6
 導入が長すぎるっピ!情報とキャラ出し過ぎた気がするっピ!
 時間がいくらあっても足りないっピ!挿絵もAI生成のやつ使うっピ!
(2年後の設定だしもうちょっと等身が欲しかった)

 あと、現実のUSJは関係ないっピ!
(流石に無理がある気もしますが、一応略は異なる設定です。)
(ヤリステメスブターにジャパンとか国の概念なんてねぇから!)


ドキッ⁉︎、遊園地デート編
遅刻から始まるデートとタロット占い


「ヤバイヤバイヤバイ、マジでヤバいって……!マリサちゃん、もうちょっと飛ばせない!?」

「今だって制限速度ギリギリだよ☆、そもそもフッ太クン、最近背が伸びた分重くなったしSA☆」

「うッ」

「いいから黙ってしっかり掴まってて♪舌噛むよ!」

 

 魔女見習いマリサの駆る箒に相乗りし、セントラル病院から遊園地正門に急行する。

あの子(・・・)との待ち合わせの時刻が刻々と迫っていた。

 

 決して寝坊したわけではない。

 しかし本日検査を受ける予定のフレアを病院に連れて行ったあと、そそくさと遊園地に行こうとしたところを、フレアに見つかったのが良くなかった。

 問い詰められ、白状してしまったのが運の尽き。

 

 その時のフレアの拗ね様は凄まじく、「私怒っていないし(滅茶苦茶怒っている)」、「一心同体の相棒に隠し事されたのが凄くショック」、「嫌いな検査を受けに行く私を置いて、よりにもよって他の子と遊園地行くなんてズルい」だの、「相棒が遊びに行くなら私も検査をうけない」だの、基本何事にもサッパリと済ませる彼女としては珍しく、ネチネチと責められた。

 

 ……まぁ概ね10割こちらに落ち度があることは自覚していたので、「今回はフレア(本命)とデートする時のための予行演習」やら「ちゃんと検査受けたらグランドオープンの時のチケットを用意する」やら、「プレオープン限定のお土産買ってくる」やら、用意しておいた理屈を並べて、なんとか宥め賺して総帥の元に預けてきたというわけだ。

 

「着いたよ!」

「うおッ!?」

 

 跨る箒に急制動(ブレーキ)がかかり、フッ太の上半身が前方のマリサの背中へつんのめってしまった。

 しかし流石に実働4年間無事故を持続するだけあって、彼女の可憐な見た目からは想像もできない強靭な体幹は小揺るぎもしなかった。

 

「あ、ありがとう。本当に助かったよ」

「いいってことよ♪私もここに招待されてたし!」

「!、そうだったんだ。あ、ハイこれチップ」

「毎度あり~♪」

 

 お急ぎで運んでくれたマリサちゃんに多めにチップを渡した後、箒から降りて周囲を見渡す。

 地球儀のような巨大オブジェに、巨大な入場ゲートを見上げた。

ゲート奥には往年の映画セットの如き街並みが広がっているのが見える。

 

(す、凄い…!これがギガシティNo.1の新遊園地か…‼)

 月並みな感想になるが、その存在感に圧倒されてしまった。

 

(……、あの人は人気インフルエンサーの…!、あっちは女優の…!)

客層もなんというか、身なりのいい人が多いというか、著明人もちらほらいる。

 プレオープン時に発信力の強い人間を招いて、グランドオープンに向けてポジティブに宣伝してもらう、といった狙いもあるのかもしれない。

 

(ッと、アイツを探さないと……一体どこに?)

「……こっちよ」

「……マキ、か?」

 

 たくさんの人混みと存在感抜群のエントランスに圧倒されながら、待ち人を探してきょろきょろしていたら、後ろから声を掛けられた。

 声の主は、紺色のパーカーにサングラスを身に着けた、ツインテ―ルの少女。

 鈴の鳴るように軽やかな、それでいてどこか威厳を感じさせる声。

 

「…マキ……だよな?…お待たせ」

「久しぶりね。……20分遅刻よ」

「……面目ない…」

 

 艶の良い金髪ツインテールを風になびかせ、アイスコーヒー片手に佇む美少女。

 彼女……遠坂マキは、遠坂コーポレーションの令嬢にして、若き代表でもある。

 

 そのスケジュールは年々多忙さを増しており、先日のヤリモンバトルトーナメントではついに規定勝利数を達成できず、本選に出場できないほどであった。

 面と向かって顔を合わせるのは実に2か月振りだろうか。

 そんな中、時間を作って来てくれた。

 

「色々あって遅れちゃった、本当にごめんね。もしかしなくても大分待った?」

「…別に、大して待ってないわ。」

 

 彼女の言葉とは裏腹に、彼女のアイスコーヒーの氷はほとんど解けかけていた。

 容器のデザインから入場門前の露店で買ったものに相違ない。

 朝方の比較的涼しい気温からして少なくとも30分間…いや、喉が渇くくらい待った上で購入したと考えれば、1時間以上待ってたのか…?

(いくら何でも来るの早すぎでは…!?)

 

 彼女の生真面目さ、律義さには、未だに気後れしてしまうこともしばしばだ。

 

…いや、それだけ楽しみにしてくれていたのかも……

 

「マジですみませんでした」

「…これ以上の謝罪は時間の無駄よ。……早くから来たのは私の勝手だし」

「申し訳なく思っているなら、その分楽しませるようリードしてよね。

……いつもの、その、御主人様らしく」

「うん…分かった。」

 

 割り切りがしっかりしているところが彼女の良いところでもある。

 遅刻魔の汚名はこれからのデートで挽回していくことにしよう。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――

 二人で入場ゲートに並ぶ。

 

 遊園地らしく、動きやすそうなカジュアルな服装に揃えた親子連れがいると思えば、どこか場違いなカッチリとしたフォーマルスーツの紳士淑女も散見される。

 テーマパークにしては不揃いな客層、どことなく感じる違和感。プレオープンが故なのだろうか?

 

 ……違和感、と言えば。

「マキ、今日は変装?してるんだね。ちょっと意外かも」

「変装ってほどじゃないけど……、なに?いつもの服装の方がよかったの?」

「いや、全然悪くないんだけど……。マキって逃げも隠れもしない、どこからでも掛かって来いってイメージだったからさ、なんだか珍しいなって。」

「………」

 

 確かにマキは有名人であり公共の場で正体を隠すことは至って普通のことに思えるが、実際に僕は彼女が姿を隠す場面をほとんど見たことが無い。

 いつもは、仕立ての良いカフス付きの長袖白シャツと、赤い胸リボン、赤いプリーツスカートといった、少女性を前面に出しつつも、気品を感じさせる装いを着こなし、誇り高き令嬢、『ビッグシティの輝く星』を体現するかのように皆の注目を集めて憚らない。

 

 それが「いつものマキ」なのだが、どういうわけか今日は紺色の帽子と紺色のパーカーを着込み、サングラスまで掛けている。

 スポーティーな装いと言えば確かにそうなのだが、いつもの目立つ服装を見慣れている自分からすると、どことなく違和感を感じる。

 

【挿絵表示】

 

 

「…私だって偶には変装位するわよ」

「そうかー」

 素っ気無く返された。

 まぁ、マキがそう言うならそうなのだろう。

 

「…そういうあなたはどうなのよ?私が以前に送った服は着てこなかったの?」

 お返しとばかりに、自分の服装についてもマキから指摘が入る。

 1年ほど前にマキが勉強部屋に遠坂家専属のテーラーをわざわざ呼び寄せ、オーダーメイド衣装を作ってくれた。が、今日はそれを着忘れ代わりにいつもの普段着を着てきてしまったという次第だ。

 

「あ、あれは着るにはちょっと小さくなっちゃって……それに今日は結構動きそうだから汚すのもな、って」

「……言ってくれれば新しく作り直したのに」

「いや、流石に勿体無いよ」

 

 嘘ではない。ここ2年で上背が伸びて、ほとんどの服を捨てる羽目になった。

 マキから貰った服についても、まだ着れなくはないが結構丈も幅もキツくなっていたのは間違いない。

 

「あなたの今着ているトレーナーと長ズボン、大会の時も着ていたわね。…気に入っているのかしら?」

「あー、確かに結構好きかも。なんというか凄く軽くて、風は通さないのに蒸れないし、ほとんどのシーズンこれで十分っていうか、スポンサー(・・・・・)からも何着か貰っているしね。」

 

「……、そう…。それと、あんたのその口元の無精ひげ、伸ばしているの?」

「あー、今度収録があって伸ばすように言われててね。……そんなに似合ってない?」

「…似合ってなくは、ないけど……老けて見えるわよ」

「いまさら…、顔で売ってるわけでもないし」

 

 今度出演する特撮番組に出演するために、脚本の指示で伸ばしている無精ひげについて尋ねられた。

 先日顔を合わせたヒカリとレオ君には滅茶苦茶不評であったが、マキには可もなく不可もなくといったところか。

髭を整えていない、というのも几帳面なマキの性格からしてどこか良く見えないのだろう。(整えたところで、ともいえるが)

 チケフレアとジェイリアン相手だとそこそこ受けが良かったのだが……。

 

 そんな雑談を交わしていると、いよいよ自分たちも保安検査を受ける番になった。

 先ずはメールに添付されたQRコードを取り出し、入場口の係員に見せる。

「チャンピオンのフッ太様、……とそのお連れ様ですね。スペシャルペアチケットのコードを確認致しました。」

 女性係員は園内でのスペシャルペアチケットの扱いについて説明してくれた。

メールの添付文書にあった通り、スペシャルペアチケットは通常の招待券とは仕様が異なる。各エリアの係員にQRコードを見せれば、アトラクション、食事、施設もいずれも無料で利用できるらしい。しかもファストパス相当の扱いだ。

 いつもマキ相手だとデートでは財布を出す前に先回りして奢られてばかりであったから、今回は正直気楽に楽しめそうで助かった。

 

 園内での注意事項が説明された。

「園内では交流エリアでのみヤリモンを出すことができます。他エリアでの連れ歩きはご遠慮ください」

 その後、簡便なボディチェックと金属探知ゲートの通過を経て、無事僕とマキは園内に入場できた。

 

「どうぞ、心行くまで当園をご堪能下さい」

 

 浮かれた僕は、件の係員の視線が僕とマキの後ろ姿を追っていることに気づかなかった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 USJの園内は広い。シレンの森、下手をするとセントラルの西暦の地下実験施設よりも広いかもしれない。

 僕達のよく知る映画の舞台を模した街並みの中に、こちらの度肝を抜くアトラクション群が並んでいた。

 

 ある港町を模したエリアでは、人食い鮫の潜む(という設定の)入江のクルーズを楽しんだ。

 船の残骸の発見や救難信号など丁寧な前振りが入った後、案の定僕達はスターディスクで支配できない野生の大鮫たちに襲われた。いよいよ二匹の大鮫相手にボート修理場まで追いつめられた際、それまでムードメイカーであった船長のゲンさんが、一か八か船の動力でもあるドラフットとプラントンまで駆り出した場面では、迫真の演技も相まり手に汗握った。

 水面に浮くオイルにドラフットのサークルフレイムが引火し爆音と熱気が肌を焼いた瞬間、ようやく大鮫の死体(の模型)が水面に浮かび上がる。

……吊り橋効果ってやつなのだろうか。

 アトラクション終了後、ボロボロのボートを操舵するゲンさんの背中が少しだけ誇らしく、格好良く見えた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 遺伝子工学によって蘇った2000年前の凶暴な古代ヤリモンによるモンスターパニック映画をモチーフにしたアトラクション。

 こちらは完全機械自動の水上ツアー中に、トラブルによりルートを誤って実験施設エリアに入っていく……というシチュエーションであった。こちらの意思に反し、どんどん危なっかしい方向に移動していく様子にどこかデジャブを感じた。

 巨大な肉食古代ヤリモンがその大顎であわや襲い掛かってこようとするその瞬間、緊急脱出用のスロープを利用し無事脱出。着水の際に大量の水飛沫が舞ったが、事前に用意しておいた2着の雨合羽のおかけで、僕もマキの服も無事であった。

 「準備が良い」とお褒めの言葉をマキより頂戴した。

 

(……、あの大型ヤリモンの模型、旧セントラルの実験生物に少し似ていたな……)

元々、2000年前の伝承を元に作ったヤリモン映画である。ヤリモンの起源を考えれば、地下の実験生物の類型が実際に地上に出現していても不思議ではない。

 

(少し、映画の時と比較してディテールが変わった気もしなくないけど)

 それだけ現代のヤリモン研究が進んだ、ということなのだろうか。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 各エリアに移動できる大通りには屋台が並び、様々な催し物が行われている

 

 ちょっと気温が上がり始めていたので、かき氷を二人分購入した。

「……このかき氷、美味しいわね。削りが細かいから、触感も柔らかでくちどけが優しい。氷の不純物が少ないのかしら、シロップの風味も全く損なっていないわ。」

 なぜか神妙な顔持ちで批評するマキをよそ眼に、僕もかき氷を味わう。

 確かに、味のメリハリがあって食べてて飽きない。不思議と頭もキーンとしなかった。それに……

(どこかで食べた味と思ったら、リンリンさんの系列店か)

 かつてワノロードで路上営業していた知る人ぞ知る名店であったが、その後経営が軌道に乗りどこぞの飲食チェーン傘下の元、全国展開しているらしい。

 こうやって多くの人々に愛される味になったのは感慨深いものがある。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 ストリートの向こう岸から子供たちの歓声が上がる。

 目を凝らすと、向こう側の広間の壇上でアトラク用スーツに身を包んだ役者たちがヤリモンバトルを繰り広げていた。

 

(……!、『ネトラレンジャー』のショー、ここでもやっているのか)

「…あれが、貴方の出演する番組かしら」

「え、あ、うん……まぁ端役で基本裏方だけれどね。マキも知っていたんだ」

「調べただけよ……監修役の貴方がどうして出演するに至ったのかは知らないけど…」

『ネトラレンジャー』は「ヤリモンレンジャーシリーズ」の系譜を継ぐ特撮番組だ。

 粗筋としては、世界中のヤリモンを洗脳することで世界征服を企む悪の組織に対し、5人のトレーナーが団結して、強い絆で結ばれたパートナーヤリモン達とともに立ち向かう、といった割と王道な展開である。

 しかし監督の強いこだわりにより、劇中のヤリモンバトルの戦術は今までのシリーズの奇抜さ重視とは打って変わり、「ガチ戦術」を意識し、戦術の監修役としてチャンピオンの僕にお鉢が回ってきたというわけだ。報酬も良く、またスポンサーからの後押しもあり、僕はこれを引き受けた。

 元々は監修役、出演するとしてもおまけコーナーの解説役くらいという話で、黙々と仕事をこなしていた。それがどういうわけか監督とスポンサーが意気投合し、僕も脇役であるものの出演することが半ば強制的に決定した。

 ……まぁ、以前は戦隊ものに憧れる時期もあった。ヒール役ではあるが、ある意味、夢が叶ったといってもよい。現場のスタッフさんも出演者も皆優しく、有難いことだ。

 

(司会役のお姉さん、ヤリスターガールズのハルカちゃんじゃん。前の大会でもMCやってたし、成長したなぁ…)。

 見知ったポニテピンクの少女の活躍に少し驚かされることもしばしば。

 ……かつてのオナニー配信騒動からよくここまで持ち直したものだ。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 某有名魔法映画を題材にしたエリアでは、石畳の、魔法界の歴史を感じる古びた街を再現した建築物群にまず圧倒された。

 映画内の舞台となった学園、庭、駅、商店街。

 とても着工期間僅か数か月で作り上げたセットには見えない。圧倒的な没入感。

 

 そして、空を箒で飛び回る魔法使い達。

 浮遊型のヤリモンに体重を支えてもらい、風属性技で推力を得て、『柳に風』で空気抵抗を軽減する、だったか。

 

(……あれは!)

 飛び回る魔法使い達の姿は圧巻であったが、その中に知り合いを見つけた。

 先程僕をこのテーマパークまで送ってくれた、ヤリモン魔女見習いのマリサちゃんだ。

 

(マリサちゃんが招待された…って、なるほど。キャストとして、か!)

 彼女に向かって手を振って挨拶すると、向こうも笑顔で手を振り返してくれた。

 ちらりとマキから冷たい一瞥を受けた気もするが、見なかったことにした。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 いい時間になってきたので、同エリア内の老舗パブ風のレストランで食事をした。

 人工雪の積もった切り妻屋根と高い梁、何本も立ち並ぶ煙突がいかにも寒村の大衆酒場といった雰囲気だ。

 

「うん、なんだか普通に美味しい」

「……十分、美味しいわ」

プレート料理で、内容としてはローストチキンとポークリブ、茹でたトウモロコシの他、温野菜のスープと黒パンが少々。

値段から考えると(スペシャルチケットだから払わなくて良かったが)、質素な内容ではあるが、蝋燭の淡い光が照らす店内の寂し気な、それでいてどこか温かい雰囲気が、まるで厳しい冬を生き抜く中での精一杯の御馳走と錯覚させてくれる。

……これが陰影礼賛、というやつなのだろうか。

 

「…………」

「……?」

 向かいに座るマキを見ると、眉を顰めどこか険しい顔をしている。

 流石にお嬢様の口には合わなかったのだろうか。

 あるいはかき氷を食べたあとに加え店内の冷房が強く、冷えてしまったのだろうか?

 マキに予備の上着を貸して着せた。

 

 付け合わせのビールのような見た目の甘い炭酸飲料を煽る。程よく冷えシュワシュワと煌めく炭酸と、メープルシロップのような強烈な甘さがマッチし、犯罪的な美味しさと言わざる負えない。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「……その、マキはさ、今日楽しめてる?体調、悪くない?」

「……楽しんでいるつもりよ、どこか、変に見えるかしら」

「なんだか、心此処に在らずって感じがして」

「………」

 マキは割とツンツンとした態度の時が多いが(プレイの時は除く)、今日はアトラクションに乗っているときも、美味しいものを食べているときも、どこか一段上の空という感じである。

 デートのリードが良くなかったか、遅刻したことに怒っているのか。

 体調が良くないのか、或いは何か悩み事でもあるのだろうか?

 そんなことを逡巡しながら、魔法使いの街中を歩いていた。

―――――――――――――――――――――――――――――――

 魔法使い達の商店街に佇む『占いの間』。

 薄暗い室内の中で、複数人の魔女(役のキャスト)の影と、タロットや水晶を始めとする小道具が仄暗く照らされている。

 僕もマキもそこまで占いや運勢には興味はないタイプであるが、気分転換がてら寄ってみることにした。

 

 ファストパスを提示し、居並ぶ男女を横目に、部屋の奥の占い師の元に案内される。

「お主らは……」

「もしかして、ヴリトラさん…?」

 目の前の席でグラマラスな肢体を惜しげもなく晒す目の前の占い師は、自分もよく知った顔であった。

 スタートレーナーの「魔女」、ヴリトラ。

キャリア20年以上のベテラントレーナであり、正真正銘の「魂魄」の研究者でもある。

 

「おお、小僧と、…そっちは遠坂コーポレーションのマキ嬢じゃな。」

「あ、ヴリトラさんも、もしかしてここのキャストとして雇われた感じですか?」

「うむ、そうじゃ、小僧。プレオープン限定じゃがの。…して、マキ嬢」

 

 そう言うと、少しヴリトラさんには珍しく、気まずそうにマキに視線を送った。

 

「化粧品の件はすまんかったの。なにぶん、先約が…な。」

「…いえ、こちらの力不足です。こちらこそご迷惑を言って申し訳ありませんでした。」

「……?」

 

「まぁ、せっかくのハレ(・・)の日じゃ。湿っぽい話にはほどほどにせんとな。こういう場では相性占い、恋愛占いと相場が決まっているが、なにかリクエストはあるかの?」

「……マキはどうしたい?」

「そうね、相性は今更だし、…時間が許せば、勝負運でも占ってもらおうかしら」

「…だそうです。(……自信家のマキが、珍しいな)」

「まぁ、小僧が女難の相なのは今更だしの」

「!?」

 さらっと流れ弾を飛ばしてくるヴリトラさん。

 苦笑いで返すことしかできない。

 

(……いや、ルナの娘とか、アテナ嬢の妹とか、具体的な名前を出さないだけまだ有情な方か)

 彼女は空気を読むことができて、本質的にはとても優しくお節介焼きなのだ。

 

「ん、筮竹(ぜいちく)はいささか時間がかかるし、無難にタロットじゃな」

 

 そういうと、ヴリトラさんは手元から黒い、如何にもな紺色のタロットカードを取り出した。ガス灯に照らされた指がカードをシャッフルする。裏向きになったカードは左手で3つの山にカットされ、再度別々の順番で手元に戻った。

 

「マキ嬢、この中から3枚選んでくれ」

「はい」

 裏返されたカード群からマキが選んだ3枚が横向きに机の上に並べられる。

 

「左から、『現在の状況』、『近い未来のイベント』、『それによって得られる成果』 じゃ。1枚ずつめくってくれ」

 促され、マキはカードをめくる。

 絵柄は左から順に、無数の剣が突き刺された男、周りに無数の神話生物が群がる円、崖の上に立つ旅人であった。

 

「ふーむ、ソードの10、運命の輪、愚者か、どれも正位置じゃの」

 タロットに詳しくない僕らのために解説してくれるヴリトラさん。

 

「ソードの10の正位置が示すことと言えば、まぁ、「現在の苦境」じゃろうな。マキ嬢のことは小僧からも聞き及んでおるが、会社経営にせよ、ヤリモンバトルにせよ、恋愛にせよ強力なライバルがうようよ出て来ておろう。思うような結果を出せないことも増えてきた、といったところかの」

会社経営については分からないが、少なくともヤリモンバトルについては、マキは今年トーナメントの本選に出ることは適わなかった。尤も、実力不足というわけではなく、単純に予選期間の間、十分に試合する時間が取れなかったというだけのことであるが。マキのバトルの実力に関しては今も全く疑っていない。

「……。いえ、私の能力不足に起因するだけです」

「お主はとことん占いに向いていない性分だのー…真面目過ぎるというか四角四面というか…」

 

「…続けるぞ、真ん中の運命の輪は近い未来、ターニングポイントとなる「大きな勝負の時」が迫っているということじゃろう。まぁ正念場といったところかの。それが、会社のことか、バトルのことか、はたまた小僧との恋路についてのことかはわからんがの」

「………」

 

「そして、その逆境の中で得られるものが『愚者』じゃ。いや、逆境を乗り越えるために得る必要があるピースといったほうが自然かの」

「……なんか、愚者って、マキからは一番遠い存在のような気もするんですけど(変態性からは目を逸らしつつ)」

「そうでもないぞ。見てみぃ、この絵の男を。崖っぷちでも軽やかに歩いておろう」

「…つまり?」

「ま、一旦肩の力を抜いて、「逆境を楽しめ」、といったところじゃの」

「………」

(それは、難しいんじゃあ……)

 

 僕だってチャンピオン防衛線の前は軽くえずく位には緊張する。

 ましてやマキは、スタートレーナーとしての地位のみならず、超メガコーポの経営権までその肩に背負っているのだ。彼女の一存で、数万人単位の人生が決まる、その重圧は想像すら難しい。

 

 ちらり、とマキの方を見る。

 マキは少し考え込んだ後、こちらの心配そうな視線に気づいたのか、顔を向けた。

 そしてクスリ、と破顔した。

 

「なんだか気を遣わせたわね、ご主人様。2か月振りの機会、楽しまなくちゃ」




 未だ書きたいシーンに到達していないという悲しみ
 なんだか不穏な空気ですが果たして?
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以下、おまけ

Q.ギガシティって原作にあった?
A,無いです。本二次創作オリジナルの都市です。
 ビッグシティに対抗する第二の都市として発展中の都市で、某グループの系列企業により産業が成り立っています。
 周辺にキロタウンやセンチ村みたいな町が付随しています。
 経済成長率に関して言えばビッグシティ以上の、現在成長中の都市、みたいな設定です。
 市内にジムが無いために、地域のヤリモントレーナーはややレベルが劣る印象。
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Q.チケフレアの病院の検査ぐらい日程ずらせばいいのでは?
A.ヤリステメスブター世界では機械の風化が早まっており、特に精密機器の場合スター鉱石を含有していないとすぐ使用不能になるという設定があります。
 そのため、スター鉱石の供給がボトルネックとなり医療機器も数を揃えた上で維持するのは難しい状況で、安易に検査の予約をキャンセルできない、みたいな感じです。
 まぁセントラル傘下の医療機関なので総帥に頼めばどうとでもなったでしょうが、2年間検査を受けていませんからね……
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Q.なんで「ネトラレンジャー」の監督はガチ戦術にこだわっているの?
 従来の戦隊ものを見たお子さんが、劇中に登場する無茶な戦術を真似して自分のヤリモンに大怪我を負わせるといった事例が多発しており、社会問題となっていました。シリーズの存亡にも関わるこの問題に対し、例え子供向け番組であっても、子供の手本にできる堅実な戦い方をまず大人が示さなければならない、そんな真面目な背景があったりします。
 また、そういった深刻な背景があったからこそ、忙しいフッ太くんもプロジェクトの参加を決めたわけです。(かつてチケープがそういうクソガキの必殺技(笑)の実験台にされかけた過去があり、少し戦隊ものに対しては複雑な気持ちがあります)

・鮫型ヤリモンのアトラクションに出てくる船頭のゲンさんは「対影特殊部隊下級男性職員の日常 EX2」に出てくる大熊源さんをイメージしています。……どうか幸せになっててほしいな
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