オラに(できれば暖かめの)感想と、高評価を分けてくれ~(土下座)
質問もぜひぜひ募集中!
「あああ、おしまいだ……これが屠殺場へ行く豚の気分か…」
「大袈裟ね……もう乗ってしまったのだから少しは楽しみなさいよ///ご主人様♡」
(マキはなんで少し嬉しそうなんだ……?)
マキの強いリクエストに押され、ジェットコースターに搭乗したことを猛烈に後悔していた。
最初の高度を確保するための上り坂はまるで処刑台まで続く階段のような心地だ。
しかもファストパス扱いで案内されたせいか、一番先頭に乗ることになったことも恐怖を加速させる。
前方の視界はクリアで、映画の街並みが一望できて素晴らしい限りだが、全く何の慰めにもならない。
なぜか少し悦んでいるマキを横目に、コースターはいよいよ最高地点まで到達してしまった。
しかし、まだ加速は始まらない。後ろの車両がまだ上り坂の途中で、重心が上り坂側に残っているからだ。
いつ?いつから、落下が……
瞬間、体が僅かに、浮いて、浮いて、浮き上がって
「あ、あ、あ、あ、あ、あああああああ………」
気付いた時には、地面に向かって加速を開始していた。
体重が無くなったかのような、人生でも体験するのが稀な、体が宙に浮きあがる感覚。
その浮遊感とは裏腹に、あまりの加速に、風圧に、息すらままらない。
「‼ッ、ぐッ、あ゛あああああああああs」
「キャアッ‼♪」
落下が終わったかと思えば、最高速度で上り坂に突入する。
全身にかかるGに耐えかねて、体が「くの字」に曲がる。
そして続けざまの浮遊。
僕の絶叫と、マキの嬌声が宙に木霊する。
無情にもコースターは、垂直方向に回転しながら同時に水平方向に進む、
(ヤバイ、これ、死ぬ)
遠心力と重力によって、体が右に左に、或いは座椅子方向に沈み込みそうになる。
三半規管をシェイクされ、先程食べた昼食を吐き出しそうになる。
上下感覚は完全に消失した。
(……これと比べたら、マリサちゃんの箒って滅茶苦茶安全運転だったんだなぁ……)
半ば現実逃避気味にそんな益体ないことを考えながら、僕の意識は闇の底へ沈んでいった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ーーー丈夫?……ちょっと‼」
「……!、終わったの…か」
目が覚めた時にはコースターは乗降口まで戻っていた。
マキが横の座席から心配そうな表情で肩を叩いてきた。
「……悪かったわ、あなた絶叫系、苦手だったのね」
「…いや、遠坂ドリームランドの方は乗れてたからこっちも完全に油断してたよ。まさかこんなに加速するなんて……」
「……」
(まぁ、マキは楽しそうだったから、それは良かったよ(遠い目))
去年マキにフレアと一緒に連れて行ってもらった遠坂ドリームランドのコースターは、迫力はあれこそここまで体に負荷はかからなかったろう。
今回のこれはでまさに、アトラクションの名を冠した拷問。
かつて尿管結石の治療に使われたという逸話も強ち間違いではない、そう思わされるほどの凄まじいGと振動であった。
胸元の安全バーが上がり、出口方面に立ち上がったとき、
「う゛っ」
「どうしたの、……って」
腹がつっかえて、座席の突起が食い込んでしまった。
「……貴方の服が小さくなったのも、ジェットコースターが苦手になったのも、少し太りすぎたからじゃないかしら」
「うっ」
確かに体重が増えたら、その分上方加速による負荷は増加するだろう。上背が増えた分チャラだと思っていたが……
「そういうマキは少しやつれた気もするけど……」
「…話を逸らさない」
「面目ない」
やつれる程の激務なのは想像に難くない。マキ自身、結構真面目に心配してくれていたのだろう。
「…心配してくれてありがとう。僕は3か月で5kg痩せるよ。マキも少し戻そう」
「……そうするわ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ジェットコースターを降りてから、マキの様子が少しおかしい。
「うっ///、ふうっ……」
顔が耳まで、紅潮している。ラフなジャージ姿で腰を振り振り、小ぶりなお尻を振り振り…。
熱い吐息さえ漏らす始末だ。
(僕じゃあるまいし、ジェットコースターで酔った、ってわけでもないよな……)
チラチラ、とこちらに熱い、どこか期待のこもった視線を送ってくる。
(これは、もしかしなくても……)
「マキ。少し、空いている方に行くよ」
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人混みを避け、人通りの少ないトイレの近くまで移動した。
「マキ、一応確認するけどお手洗いじゃないよね?」
コクリ、と潤んだ目でマキは頷いた。
先程からの露骨なセックスアピールは、果たして性欲の昂ぶりの表れだったらしい。
……思えば僕とマキは3か月程会えていなかった。
オ〇ニーとかを除けば、マキにとっては丸々2か月の禁欲生活だったとも言える。
(
こっちもこっちで、如何にもありきたりなジャージ姿で悶える、金髪キラキラお嬢様というギャップが結構チ〇コにきていた。
「もう、我慢できない、お願い」
(参ったな、こっちもムラついてきたけど流石にプレオープンで出禁になったら困るぞ…)
性欲が高まる一方で、病院に置いてきたフレアの顔が頭にちらつく。
グランドオープンに連れていくと約束したパートナーが、自分以外の女の子と遊んだ挙句、
……余裕でスリーアウトの絶許案件だろう。いよいよ愛想をつかされてしまうかもしれない。
(あるいは、マキの財力なら出禁解除も可能か?)
マキの、遠坂グループの財力と影響力があれば、世の中の大概の無理無茶はゴリ押せる。
遠坂グループ傘下の企業なら猶更……
(でも、確か此処、遠坂グループ系列ではなかった気がするんだよな……)
今年の遠坂グループからの優勝賞品は、確かホテル『叡智』の1年無料宿泊券。
こっちの遊園地は、どこの提携だったっけ…?
優勝インタビュー後は疲れていて正直よく覚えていない。
(しゃーない、本番は無しで、口に栓して手マンでさっさとイカせるか)
「あッ////」
今の蕩けた状態のマキ相手なら2秒もあれば十分だろう。
着替えを考慮しても1分あれば事足りる。
流石に1分ではコンプラ違反は立証不可能…!(IQ3並の発想)
かくして、目の前の個室トイレにマキを連れ込もうとしたところでーーーー
「―――ねぇー、いいじゃん♪お兄さん達と一緒に遊ぼ?」
「ヒッ、来ないで!?」
「そんなに怖がられると、こっちも傷つくなぁ(笑)」
身なりの良い、しかし何処か柄の悪い若い男達が、女子トイレから出てきたばかりの黒髪の女の子を囲んで、腕を掴み迫る場面に鉢合わせた。
「ちょっ、マキ、待っ…」
「―――――今すぐ、その子の腕を離しなさい。通報するわよ。」
咄嗟の静止も空しく先程の甘い雰囲気は何処へやら、マキがずい、と前に出て黒髪の女の子を庇う形で、男達を睨みつけた。
男達の視線がマキに向く。
「あ~?なんのことっすかぁ?」
「どーせ、不起訴になるだろうけど、どーぞご勝手にぃ」
「コイツ結構かわいくね?服装は地味だけど」
「…ついでにヤッちゃう?つーか、後から来たデブ君ってお前の彼氏?似合ってな(笑)」
マキが警告するも、舐め腐った態度でまともに取り合おうとしない4人の男達。
その手には、各々スターディスクが握られている。
(……実力行使も厭わない、ってことか。というか変装しているマキは兎も角、僕チャンピオンなんだけど、気づかれないもんだな)
はっきり言って、只のヤリモンバトルであれば全く問題にならない。
僕とマキなら、こちらの実力を肌感で分からない程度の相手が何人掛かってこようが、乱戦になろうが確実に勝利できる。
ただし、トレーナーに対してダイレクトアタックありの、アウトローな野良バトルとなってくると話は変わってくる。
相手のヤリモン或いは
ヤリモン4体分とトレーナー4人分の集中攻撃を、ヤリモンの護衛抜きでかわし切るのは至難の業だ。
こちらの護衛のためにいくらか戦力と警戒を割かなければならない分、4人組の「数の有利」が更に際立つ形になる。
(今からでも通報したいけど、間合いが近すぎるな……。単純な肉弾戦なら一人二人なら伸せそうだけど……)
なにやら通報されても起訴されない自信があるらしいが、実際に通報しようとすれば妨害しに来るだろう。
男達の体格はあくまで並なので、体格差も加味すれば適当にあしらいつつ通報することは可能だろう。
しかし、女の子とマキが連中の間合いの内に入ってしまっている。
揉み合いになれば十中八九巻き込んで、怪我をさせることになる。
凶器等も考慮すれば、もう少し間合いを取りたいところだ。
かと言って、ガン逃げしようにも単純な走力では人数差もあり分が悪い。
……何より、マキは退こうと言っても退かないだろう。
(人気のないところにマキを連れてきたのは完全に失敗だったな……)
マキは正義感が強く、清廉潔白を体現した性格だ。不正も汚職も、犯罪も基本的には許容しない。
そして本質的には、ヒカリほどではないものの、即断即決の直情型でもある。
頭に血が上るとカッとなって、行動に移そうとする
(いつもは理性が上回っているんだが……)
先程の発情で、いつもより抑えが効かなくなったのかもしれない。
いずれにせよ、プレオープン特有の警備体制の甘い、監視カメラの少ない、犯罪リスクのある場所に安易に連れてきたこちらのミスだ。
これ以上コイツらと会話しても無駄と悟ったのか、マキが腰からスターディスクを取り出す。
……一触即発の雰囲気。マキは
「なに、やんの?」
「どくせー、女の癖に。いいからこいつらボコボコにしようぜ」
「さんせー(笑)」
(……まぁ、チンピラ相手にまともに相手をする必要はないか)
「いきなさい!タバテール‼」
「やれ、ガルルガン!」「ぶっ潰せ、ギンロック!」「やっちまえ、モーギン!!」
「コッコリス、ぶっ殺しちまえ!」
マキが相棒のタバテールを、4人組が各々自らのヤリモンを繰り出そうとする。
自分もビルドーマを繰り出そうとするーーー
――――――その前に、
アウトローにはアウトローを、或いは闇の住人をぶつけてやる。
「やっちゃえ、
「はいッ♡」
瞬間、4人組の背後から青髪の爆乳くのいちが姿をあらわした。
ヤリモンを出す間も与えず、右手に持った苦無の取っ手で男の後頭部を殴打し、瞬く間に一人、二人と昏倒させた。
遊園地だろうがどんなセキュリティでも潜り抜けてこっそり尾行してくる、可愛い僕のストーカーだ。
「タバテール‼ギンロックに『光芒一閃』‼」
「ギンロッ”――!?」
素早く状況を理解したマキは動揺した男の隙を突き、一撃でそのヤリモンを沈めた。
―――これでヤリモンの戦力差は1対2だ。トトロちゃんも頭数に含めればさらにこちらが有利になる。
「ひッッ、くっ、来るんじゃねェッ!?」
ガルルガンを繰り出した首領格の男が狼狽えながらも、女の子の肩を掴んで、懐から取り出したバタフライナイフを首筋に当てた。
ワンマンアーミーのトトロちゃん相手にガルルガンをけしかけ、必死に距離を取る。流石にトトロちゃんでもヤリモン相手では分が悪い。
マキも人質を取られた状態では、上手く戦えないだろう。
苦し紛れの割には、悪くない判断だ。
「近づいたら、コイツをッッ!? 」
――――――尤も、
「足元から、う、腕がッ!?、ナイフが!?、泥に覆われてッ!?」
それをどうにかするのが僕とビルドーマの役割だ。
『驚天動地』。土属性の
言葉にすればそれだけだが、うちのビルドーマは同時に、分子一つレベルの、極めて正確無比な運動制御も可能だ。
このように、相手トレーナーの足元から泥を這い上がらせ、手足とナイフを覆ってロックすることも可能。その気になれば、体の穴という穴に大量の土砂を流し込んで絶命させることも自由自在だ。(流石に其処まではやらないが、口は塞いでやった。)
ついでに、少女の足元の土砂をスライドさせて、女の子を砂の盾で覆いながら男の元から引きはがしておく。
「タバテール、『プリズムラッシュ』」
トレーナーからの指示が物理的に封じられ右往左往するガルルガンの横っ腹に、拡散する光線波が炸裂する。
ゴリゴリの弱点属性攻撃により、レベル差も相まってガルルガンは一撃で沈んだ。
「君も無事かな?」
「は、はい!」
黒髪の女の子も無事でなによりだ。
4人の男の内、2人はトトロちゃんが気絶させた。
残り二人も、ビルドーマが操る土砂で両手足をガチガチに固めてやった。
脱出はもはや不可能。
「さて、改めて通報しないと……」
懐から、録音中の携帯電話を取り出そうとしたところで……
「其処の男と、ジャージの女、あと、そこのコスプレしている女も!
此処は交流区域外でヤリモンの連れ歩きは禁止だ‼、直ちにヤリモンを収めなさい!あと、そこのコスプレ女は右手の凶器を今すぐ離しなさい!」
警備服に身を包んだ職員たちが、背後から現れ、警棒とスターディスクを片手に警告してきた。
「貴方様、やっちゃていいですか?」
「流石にそれはやめて……」
言外に警備員も伸してしまおうとするトトロちゃんを何とか宥める。
「最初に言っておくけど、最初に4人がかりでこの子に絡んでいたのは、アイツらよ」
そう言いながら、マキは職員の指示に従いタバテールをスターディスクに収納した。それに倣い、僕もビルドーマを収納する。
「ごほっ、げほっ……! おい、警備! 遅ぇんだよグズ共がッ!」
ビルドーマの土砂による口封じが解かれたガルルガンのトレーナー――首領格の男が、泥を吐き散らしながら怒鳴り声を上げた。
一客が、スタッフに対して随分な物言いだ。
男はまだ泥で固められた手足を必死に揺らし、駆けつけてきた警備員たちの顔を見据えると、途端に勝ち誇ったような醜悪な笑みを浮かべた。
「お前ら、俺の顔を忘れたとは言わせねぇぞ! この遊園地のセキュリティを一手に引き受けてる『大黒セキュリティ』……その代表取締役社長、大黒の息子だぞ!」
その言葉を聞いた瞬間、駆けつけてきた警備員たちの表情が目に見えて強張った。
互いに視線を交わし、警棒を握る手がわずかに震えている。
「ぼ、坊ちゃん……!? ど、どうしてこのような場所で……」
「どうしてじゃねぇよ間抜け! 見りゃ分かんだろ! 俺たちが楽しく談笑してたらよぉ、そこにいるデブとジャージの女、あと裏から奇襲してきたコスプレアマにいきなり因縁つけられて、理不尽に暴力を振るわれたんだよ!」
「なっ……! ふざけたことを言うんじゃないわよ!」
あまりの言いがかりに、マキが怒気を含んだ声で鋭く睨みつける。
だが、男はマキの抗議など歯牙にもかけず、青ざめた警備員たちに向かって唾を飛ばしながら捲し立てた。
「おい、てめぇら! 自分たちの立場が惜しかったら……クビになりたくなかったら、最初からそういうことにしておけ! この悪質な暴漢どもを今すぐ取り押さえて、傷害と器物損壊、営業妨害で警察に突き出せ! 親父には俺から上手く言ってやるからよォ!」
絵に描いたような身分の濫用と、理不尽な命令。
警備員たちは明らかな嘘だと察しつつも、自らの生活や雇用が頭をよぎったのか、苦渋に満ちた表情で視線をこちらへ向け直した。
「……す、すまないが、そういうことなら、署まで同行していただきたい…!」
「…残念だけど、貴方方の発言に法的拘束力はないわ。話があるなら、開けた場所で警察官とこちらの弁護士立ち会いのもと話します。」
「くッ……」
あくまで相手は警備会社所属の民間人。マキの言う通り、法的拘束力は無い。
相手側の息がかかった事務所に入ってしまえば、多人数で威圧されて意に沿わない自白・念書を書かされたり、録音を止められたりするリスクもある。
証人の女の子が口封じされる可能性も見過ごせない。
マキの、あくまで周囲の目がある場所で手続きを行うという主張は極めて妥当だ。
ここら辺の手続きは遠坂コーポレーションの社長たるマキに任せておけば、間違いないだろう。録音もあるし、遠坂家お抱えの弁護士が負けるとは全く思っていない。
とはいえ……
(せっかくのマキの休日に、面倒な仕事を増やしちゃったな……)
多忙なマキにリフレッシュしてもらおうと誘ったデートであったが、結果的に面倒な仕事をさせる羽目になった。ヤリモン禁止区域で規則を破ったのも事実。凶器を使用したトトロちゃんについても詰問されるだろう。
……というか、トトロちゃんはこの施設にどうやって侵入したのだろうか?
小声で尋ねてみると、「監視の少ないフェンスの下を掘って侵入した」らしい。
(要するに無断侵入か……)
これからの手続きや事情聴取を考えれば、午後の予定はパーだろう。下手をすれば明日以降のスケジュールにも影響が出る可能性もある。
(まぁ、この子が無事だったのは良かったのだけれど……)
「あの、私……」
不安そうな顔でこちらを見つめる黒髪ショートの少女。
「ごめんね、ここで証言してもらいたいから、まだ行かないでほしいんだ。」
「いいから、コイツ等を連れていけ‼、愚図共!」
「しかし……!」
大黒を名乗る男は未だに諦め悪く喚いている。
一秒でも早く、この面倒を収束させようと携帯電話で110番をかけようとした、その時――――
「――――――この騒ぎは何事ですか?」
「え……?」
灰色のヴェネチアンマスクと、美しい緑色のドレスを身に纏った女性がやって来た。
華やかな衣装と溢れんばかりの優雅な気品、そしてマスク越しでも分かる鮮やかな縦ロールの緑髪と美しい顔筋が、人気の少ない通りには聊か場違いな様にさえ感じた。
メインストリート方面からやって来た遊園地のアクターなのだろう。
彼女に遅れて、テーマパークのマスコットまでやって来た。
「おい、お前、ここのスタッフだよな!?俺はこいつらにヤリモンで攻撃された!この、交流禁止エリア内で、だ!
こいつらをさっさと事務所に連れていけ!」
「……あら、大黒社長のご子息様ですね。社長にはお父様がいつもお世話になっていますわ」
「…あ?」
ガルルガン使いの男がすごむも、女性アクターはどこ吹く風。
「え、あ、嘘……大黒、お前、ヤバいぞ…」
「あ?なんだよ、そんなにビビッて…」
4人組のうちのまだ意識のある一人が、女性アクターの顔を見て、何かを思い出したかのようにガタガタ震えだす。
女性がこちらに向かって目配せし、うっすら微笑んだ。
見覚えがある、いや、まさか……。
「あの方たちは、私の客人です。特にあの恰幅のいい殿方は、我がグループが総力を挙げて後援させていただいている、ヤリモンバトルチャンピオンの太郎先生です。」
「は?グループ……?後援?チャンピオン?お前、何言ってんの?」
「大黒、お前、今すぐ頭下げろ!、つか土下座しろ!つうか、許してください‼、本当に勘弁して下さい!、コイツ世間知らずの馬鹿なんです!」
「え!?、あ?なんだよ?」
隣の男が、大黒を無理やり土下座させようとしている。
周りの着ぐるみも、警備員も、下を向いて不気味なほどに沈黙を保ったままだ。
「あら、お気づきになられた方もいらっしゃるようですね……」
灰色の仮面が外れ、緑が身の女性の美貌があらわになる。
「私、当遊園地、”Utopian Saionji Joytopia”の総支配人をさせていただいております、西園寺ユメと申します。」
「え」
「西園寺グループ」。それは、あの「遠坂グループ」と世界を二分する、各分野における優良企業を何百社と傘下に置く超巨大グループだ。
そして彼女、西園寺ユメはそれらを統括するCEOの令嬢である。
一族の一員として企業買収にも関わる傍ら、アイドルを始めとした芸能活動、スタートレーナーとしてのトレーナー活動の3足の草鞋を履いている。
たかが一企業の社長のドラ息子である黒川の立場とは、比べるべくもない。
「以後、お見知りおきを……と伝えたかったのですが…」
「あ、あ、……」
「不同意わいせつ未遂罪、銃刀法違反、脅迫罪、虚偽告訴罪、その他諸々……プレオープン一日でこの始末ですか。残念ですが、警備業は信用が命。大黒セキュリティとの提携の件は白紙にさせていただきますね」
本当に残念そうな顔で言葉を続けるユメちゃん。
「あと……」
「え……」
「西園寺グループの顔に泥を塗ったことはお分かりですね?」
「「ひッ」」
先程の柔和な雰囲気から打って変わって、絶対零度の無表情が二人の男の心臓を射抜く。
「当園で人命に関わる犯罪行為に及んだことはお分かりですね?」
「プレオープン時に、今後の当園の信頼構築に関わる重大な違反行為を犯したことはその足りない頭でもお分かりですね?」
「……そして、私の、本当に…、
「………ヒッ」
彼女の絶対零度のプレッシャーを前に、大黒達はもはや息を吐くことさえできない。
「当園の
その一言を合図に、不気味な程無音で、無表情なまま、着ぐるみのマスコット達が立ち上がり、男達を抱え上げ始める。
……というか、あの着ぐるみ達、どう見ても普通じゃない。頭頂部まで含めたら2.5m近いサイズ感だ。
「ひッ、助けて、許して…‼ユメ様ぁああ!?」
「おい、お前ら、突っ立ってないで俺を助けろよ!」
大黒達の叫びも空しく、警備員達は1ミリたりとも動かなかった。
動けば一体、どんな目に遭うことか……。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
黒髪の少女を迷子センターに送った際に、ユメちゃんも一緒についてきてくれた。
ユメちゃんが穏やかな表情で、少しでも落ち着かせようと震える少女の背中をさすって、彼女から喋り始めるまでゆっくり待つ姿が印象的だった。
迷子センターからの帰り道。
「さて、太郎先生。」
ユメちゃんが、花が開くような笑顔で振り返った。
「改めて、毎週ヤリモンバトルの教導をして下さりありがとうございます。大会の復習もしっかりできました。今日もお会いできて嬉しいです。」
「うん、僕も、会えて嬉しいよ。でも、まさかユメちゃんがここの遊園地の総支配人だったなんて……」
リーダーのハルカちゃんもいたから、もしかしたら園内で『ヤリスターガールズ』として活動しているかもぐらいには思っていたが、西園寺グループ系列だとは思わなかった。
いや、でもよく考えたら西園寺グループって映画の版権たくさん持ってたし、それ関係の施設と考えれば自然なのか。
「ふふっ、西園寺グループは新市場にも拡大中です!」
「……フフッ、今日もそのインナー、着て来て下さったんですね」
「あ、その、なんか凄い普段使いで使いやすくて、さ。」
「後援する甲斐がありますね。新シリーズが出た時も、すぐお送りしますね!」
一段と、ユメちゃんは満面の笑みを浮かべた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……マキ様。お久しぶりです。一月半前の最終選考会以来ですね。…まさか太郎先生とご一緒とは思いませんでしたが……。…お元気でしたか?」
「……変わりないわ。そっちは?」
「……絶好調です。太郎先生が指導して下さるおかげで。」
「そう……。そう言えば、今日は私もコイツとデートしたお陰か、少し元気だわ」
「…………。」
マキの目付きがいつもより厳しい。対するユメちゃんはアルカニックスマイルを浮かべたままだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
……二人には因縁がある。
2年前に、アイドル茶屋の招待客として呼ばれたマキが、当時アイドルとしてデビュー仕立てのユメちゃんとヤリモンバトルのエキシビジョンマッチで対決した。
スタートレーナーであったマキは勿論のこと、ユメちゃんもバトルアイドルと言われるだけあって、当時から相当の実力者であった。両者はハイレベルな試合を繰り広げ、一時は(運営側の不正もあり)マキを追い詰めるものの、1段ギアを上げたマキにユメちゃんは完敗した。
不正の片棒を担がされたことによりモチベーションが低下したユメちゃんは一時期スランプに陥り、トレーナー引退まで考えたらしい。しかし、彼女は弛まない努力で何とかスランプから抜け出し、遂にマキと同じスタートレーナーにまで上り詰めた。
そして、今年のYBT予選終盤、マキとユメちゃんはお互い選考基準まであと一勝というボーダーラインに立たされていた。そして、最終選考会にて両者は再び激突した。
……激闘の末、勝利したのはユメちゃんだった。
ユメちゃんはそのまま本選で4位入賞。一方のマキは落選し、今年のYBT大会本選に出場することは適わなかった。
そんな因縁を持つ二人が、名家のお嬢様同士が、スタートレーナー同士が、今この遊園地内で三度対峙していた。
後書き
・いつの間にか姿を消すトトロちゃん。原作再現です()
・マキの実直さと変態性を出しつつ、フッ太君に正しい判断をさせつつ、かつ物語に起承転結をつけるのが中々難しいです。トラブルに対して無難に対処しようとしない主人公は共感できませんが、それだけだと物語に緩急が生まれないので……。
マキもフッ太君も普段は比較的安牌よりな考えをさせる必要があるタイプなので、いかに窮地に至るまでが突然で、逃れにくい状況設定を作れるかを尽力しています。
・2話目の挿絵にて、地味にフッ太君のシャツの右肩のロゴに「Saionji」と入っていました。気づいた方はいるかな?
・3話目のAI挿絵にも、USJの略の一部が載せてありませした。(あれだけで西園寺グループと判断するのは酷ですが)
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『用語解説』
・西園寺ユメちゃん
アイドルグループ『ヤリスターガールズ』のバトル担当にして、やられたらやり返すアベンジャーズ系ヒロイン。イメージカラーは緑で、髪型は縦ロール。フッ太くんより3歳ほど年上という設定にしたが、フッタ君側からは「ユメちゃん」、ユメちゃん側からは「太郎先生(フッタ君の本名は普通野 太郎を採用)」 となっている。
なお、マキは確かフッ太君より1歳年上だったはずなので、ユメから見れば年下になる。
年齢から考えるとかなりの巨乳。
(顔は少し丸顔だが、ジム師範のナナセさんと身長体重スリーサイズがほぼ同じなので、スタイルそのものは良いと思われる。)
原作では、同グループ内のクソ生意気で素行不良のカナタちゃん調教し再起不能にした。
ある意味、「女版教祖様」といっても差し支えない。
また演技が抜群にうまく、グループ子会社令嬢のカナタ相手に、財閥令嬢であることを全く悟らせなかった。(まぁカナタが節穴ともいうが)
時に応援したくなるアイドル、時に優美なお嬢様、時に淫蕩な娼婦をそつなく熟す擬態能力を活かし、最近は女優としての活動が増えつつある。
週2くらいのペースでヤリモンバトル指導しているフッ太も、今回はあまりにも姫様役が板につきすぎていてマスク越しでは気づかなかった。
……新作ゲームで追加CGが無かったので、自分で描いちゃったよ。
(以下、マスク無しのドレス衣装ユメちゃん)
【挿絵表示】
彼女とフッ太くんやマキちゃんとの過去の交流については次回以降の話で書きます。
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・『ヤリスターガールズ』
ユメちゃんが所属する3人組のアイドルユニット。メンバーははセンター兼ボーカル担当ピンク担当のハルカちゃん(実は地味に1,2,3話とも皆勤賞)と、ダンスが上手い青色担当のカナタちゃん。
恐らく、「歌って踊ってバトれる」アイドルをコンセプトに結成されている。
本編から2年後は、ハルカは歌とMC業、ユメは女優業、カナタはユメの飼い犬といった風に、各々の得意分野で活動することが増えており、ユニットで活動する機会は減少している。
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・トトロちゃん
青髪単発の爆乳忍者で、主人公の可愛いストーカー。
単純な近接格闘能力は多分作中で最も強い。チケフレアも不意を突かれれば堕とされそう。
変装術もなかなかのものだが、シチュエーションに合わせるのが下手すぎ。
でもなんだかんだ今回も不意打ち決めてくれたし、腕は確か。
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・大黒セキュリティ
本作オリジナルの民間警備会社。
近年勢いに乗る西園寺グループに対して、社長が色々根回しして、何とかグループ内の傘下企業の仲間入りを果たしそうだった所、バカ息子が色々やらかし、計画はなにもかもおしまいになった。
西園寺グループは複数の民間警備会社を抱えており、代わりはいくらでもいた状況。
名前の由来は「ブラック企業」から。
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・遠坂グループ/西園寺グループ
原作ゲームで存在が示唆された、世界経済を牛耳る二大グループ。
遠坂グループの社長はマキと明記されていたが、西園寺グループに関してはユメは「西園寺グループのご令嬢」としか言われておらず、父親当たりが経営者と考えられる。
両者とも恐らく共通する経営理念は、「富裕層またはミドルハイ志向」。
エネルギーに関してセントラルが完全に牛耳っている以上、製品の生産コスト及び価格競争では絶対にセントラル傘下の製造業に勝てない。
遠坂グループは恐らく西暦が舞台の「ヤれるチケット」にも存在しており、白の神によるジェノサイド後もビッグシティを拠点に、富裕層向けにデパートなどの物流関係を中心に事業の拡大を図ってきたと解釈している。また白神歴において、恐らく住居を除く施設所有はかなりの税金や金銭負担がかかると思われるが、(そもそもセントラルで生産されるスター鉱石を混ぜないと直ぐ金属が風化するため建物の維持コストが上がる、また西暦の社会情勢悪化は大企業による資本集中も背景にあったと考えるため、恐らく資産の集中が起こりにくい制度が構築されていると考える。)、長い年数をかけ地道に使える土地を増やし、ホテル叡智などのリゾート開発とかも行ったのかな、と考えている、
西園寺グループに関しては、ヤれるチケットや他同人誌での存在の示唆がなく、西暦には存在しなかった新興のグループと考える。元々は、白神歴初頭に芸能や映像業などの需要に応える形で発展、現在の得意分野は元々の映像業のほか、メディア業、IT業、金融業、医薬品製造業、人材派遣業など。(まぁ超巨大企業なので、基本何でもできるが)また、前話にて「USJの舞台はギガシティ」としているが、ギガシティそのものが、西園寺グループ主導で開発された新興都市である。セントラルや遠坂グループと比較し、やや黒い噂が目立つ、が、マスコミも傘下にあるので、いくらでも揉み消し可能。
現在のフッ太くんのメインスポンサー企業は西園寺グループである。
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・マキがいつもの服装と異なるジャージを着てきたのは、効果は兎も角(受付相手に一発でバレてた)、ライバル企業の遊園地の偵察(遠坂ドリームランドの競合になりうる)のためできるだけ目立たないように、という目的があったためです。
デート中時々険しい顔になっていたのも、USJのアトラクションや食事に、競合としての危機感を抱いていたためです。
あと単純に、負けた自分がフッ太君とデートしているのをユメちゃん相手に見られるのが居心地が悪かったから、というのもあります。
……マウント取られた後は吹っ切れましたが。