※この作品はR-18です。

平凡、ときどき不幸   作:本田一郎

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その時、私は彼を拒めなかった

束や千冬さんと、その後関係を深めることが

出来たかと言われると…全く出来なかった。

夢の中に毎晩出没してくる束とは相変わらずだが、

私自身が、遠縁の親戚に引き取られてしまったので、

篠ノ之神社の近くに簡単に行けなくなったのだ…

 

というわけで、田原本改め安浦歩(やすうら あゆむ)となったウチは、

気づいたら海沿いの街の小学校に通うようになった。

元々は軍港とかもあって賑わっていたらしいのだが…

束が開発した「インフィニット・ストラトス」が

既存の兵器よりも遥かに優れていると知られてからは

すっかりと寂れてしまい、人口も相当減ったらしい。

小学校もかなり統合されてしまったので、

私が通う小学校までも、片道1時間弱かかってしまう。

 

まぁ、ウチの心臓はかなりのハイスペックなので、

息切れしたりはしないのだけど…正直暇すぎる。

クラスメイトたちとは、話しが上手く出来ないし、

それが原因で、一度はいじめの標的になりかけた。

その時に、黒板用の定規を右(・)手(・)で(・)持ったのだが、

余りにも怒っていたからか定規をへし折ってしまい、

それからは…何か距離を置かれるようになっている。

いじめられないのは有難いけど、何か複雑だ。

 

そういえば、この前「モンド・グロッソ」とかいう

ISを使った大会が行われていて、

初代王者として、千冬さんが表彰されていた。

半分顔も忘れかけていたが、見た瞬間思い出した。

束さんも千冬さんも、今ではすっかり雲の上の人だ。

国語のテストで毎回のように誤答を連発して、

危うく精神病院に連れてかれそうになったウチと、

何で接点をもてたのか、今考えると不思議に思う。

 

そんなウチではあるが、身体は順調に成長している。

産まれた土地に比べると、食材が全体的に新鮮で、

先日の身体測定では少し肥満傾向になったくらいだ。

ただ、それが原因で、思いもよらない人物から

劣(・)情(・)を抱かれることになるとは…予想出来なかった。

 

 

泊まりがけの自然教室を翌日に控えた日の深夜、

小5になったウチはいつものように眠りについていた。

そしたら、なぜか隣に不思議な温かさを感じた。

ふと目を覚ますと…戸籍上の父親が布団に入ってた。

普通の女の子だったら、叫び声の一つでもあげれば

最近は女尊男卑の世の中だし、父親の地位なんて

それこそロウソクの火でも吹き消すかのごとく

なかったことにしていたのかもしれないが…

ウチは…何となく彼を消(・)す(・)気にはなれなかった。

 

「お父ちゃん…?こんな時間にどうしたの?」

とりあえず、まずは事情を聞いてみることにした。

『歩…すまん、起こしてしまったか…

 最近、母さんが妙に威張り散らすんでな…

 一緒の部屋にいても全然落ち着かないんだ。

 それに比べて、お前は何か違う気がする。

 いい意味で染(・)ま(・)っ(・)て(・)な(・)い(・)というのか…

 男を見下さず、対等な存在として見てくれる。

 その温かさを、少しだけでも感じたかった。

 …俺もバカなことをしたとは思っている。

 でも、今こうしていると、すごく落ち着くんだ…』

なるほど。最近の男性はここまで落ちぶれたのか…

白騎士事件が起こる前の男尊女卑の世の中でも、

決して驕るようなことはせず、真面目に仕事をして

家族に腹いっぱい飯を食べさせてくれた父親だが、

母親が女尊男卑に染まってしまった今では、

最早、彼は財布としてしか見られてないらしい。

 

…何となく辛さがわかるように思えたウチは、

父親の頭を抱きしめて、優しく頭を撫でてみた。

『…義理とはいえ、娘の布団に入り込んだのに、

 まさかここまでしてくれるとは…

 それだけ俺は疲れて見えてるのか…情けない。

 …というか、お前は一体何者なんだ?

 いくらなんでも警戒感が無さすぎる…』

「…底辺の男の気持ちが少しだけわかるだけの、

 ただの小学生…のはずなんだけど、

 よくよく考えたら、普通じゃないかもしれない。

 産みの両親は余りにも不運な人(・)災(・)で死んでるし、

 ウチの中身も…まともかどうかはわからない。

 ただ、娘の布団に入り込んでくるくらいに、

 母ちゃんから辛い扱いを受けてる父ちゃんを

 こうして温めてあげるくらいは…していいと

 思ってしまうくらいには…変わってるのかも。」

そう言いながら頭を撫でているうちに、

気づいたら父親は安らかに眠っていた。

…流石に母親に目撃されたらどうなるか怖いので、

見届けたウチは、トイレに行ってソファで寝た。

 

この時はまだ、父親が追い詰められて自殺するのを

間一髪防ぐことが出来た…位にしか考えてなかった。

ただ、人間って一度タガが外れてしまうと、

欲望はどんどんエスカレートしていくものだった。

自分自身も経験があることだった。

どうして、それが他人なら大丈夫だと思ってたのか。

…その頃のウチは、そこまで考えてはいなかった。

ただ、短期的な思考で、父親を赦してしまった。

それがどんな破滅を招くか…ウチは想像出来なかった




女尊男卑の世の中で、男性を見下さない…
というか見下された男性とよく似た思考で
活動している女の子なんていたら…
なんて私なりに考えたらこうなりました。
多分、私が歩ちゃんの立場でもこうしたと思う。
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