【ミリタリー】×【ダークファンタジー】は、お好きですか⁉ 呪力を交えて、一緒に戦争しませんか⁉ 作:BIBI
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「――軍に入りたくないって割には、結構危険なことをするんだね。〈
昼下がり。都心から随分と離れ、今は森の中。キジマは煙草を吸って余裕そうだが、きちんと腰には剣を差しており、周囲への警戒も怠っていない。
「〈狩猟免許〉さえ有れば銃刀法を無視して、ハンドガンやライフルを持ち歩けますからね。物騒な世の中です。常に武装はしておかないと」
実弾の入ったライフルを握り、山道を迷わず進む。トモヤの服装はサバゲーしていた時と同じ。長袖のシャツ一枚に普通のズボンにスニーカー。実にシンプルな格好。
汚れることはお構いなしにトモヤとモトカは、ズカズカと舗装されてない山を登っていた。
「……だからって不用意に街中でハードケースから銃を取り出したら駄目だからね? こっぴどく怒られるよ? 場合によっては免許剥奪されるかも」
「分かってますよ。ていうか、街中でライフル剥き出しで持ち歩いていたら、流石にヤバすぎでしょ……。流石にしませんよ」
冗談交じりに忠告するキジマに、何言ってんだとトモヤは苦笑する。知り合って数週間なのに、二人は歳の差を互いに意識しない程度には、既に打ち解け合った様子だった。
「それにしても……、〈G3〉か。型落ちを使うんだね。今は〈G36〉とかが、ドイツの主流ライフルだった様な。何でG3なの?」
2000年でG3は少し時代遅れ感が有るものの、それでも根強い人気のある傑作ライフルである。
キジマも悪くない武器だと思いつつ、少し弱点が気になっている。
二人が握っているG3は、SG1という上位モデル。G3の中でも特に高品質で、スコープ付きだ。
だとしても、型落ちライフルには違いない。
「G3の弱点って、反動が大きくて、重たいってことくらいでしょ? 後は、チャージングハンドルが結構重たいとか。リロードしにくいとか。でも全部、呪術師の身体能力が有れば、大した問題ありませんよ」
実に面白味のない回答。トモヤは歩きながら、周囲をチラチラと見渡しながら、歩みを進めていく。
「ははは。それもそうか。ていうか、子供なのに選び方が合理的過ぎるね。単純に新しい物を買うとか、格好いいからコレが欲しいとか、そういう時期でしょ」
「……合理性だけじゃないですよ。G3を選んだ一番の理由は見た目です。幾ら性能が良くても、カッコ悪い武器は使いません。この〈P226〉だってそうです。性能だけじゃなく、単に見た目が好きって理由で選びました」
腰のホルスターに入ったハンドガンを、パンパンと叩く。実際、他にも候補は幾つもあった。
それでもトモヤがG3やP226を選んだのは、単純に見た目が好みだったからに他ならない。
「……嫌かも知れないけど、きっと君は軍人に向いてるよ」
キジマがトモヤの腰に有るホルスターをチラッと見て、一人で納得していた。
その時――。
「お……。隠れろ」
「…………!」
スッと速過ぎず、でも適度に素早い動きで茂みに隠れるトモヤとモトカ。
「……え?」
反応が遅れつつも、二人の並ぶ茂みにキジマも隠れ「え? 何? 何?」と、少し戸惑っていた。
「11時方向。300メートル先。目標発見。モトカ、射撃用意」
少し高い位置の崖の所にいるモノノケを、トモヤは視認していた。スコープにはハッキリと目が五つある熊――〈
境熊は警戒心が薄く獰猛であり、人里に降りやすいレベル2のモノノケ。だから白狼よりも、ずっと危険視されている。
「準備よし」
標的に照準を合わせ、いつでも撃てる状態。モトカはハッキリ短く返答した。
部位の指定はない。だから頭は狙わず、原則通り胴体中央を狙う……――。
「ホントだ……。いるいる……」
キジマはスコープを使わず、呪力による強化で300メートル先にいる境熊を、ハッキリと視認していた。
この距離で分かるのか……。それにしても、初めての狩りって言ってたのに、冷静だな……。興奮した様子もない。ゲームの雑魚敵を見つけたみたいな、平坦な反応だ。
だけど、レベル2だぞ? 物理攻撃なんて、効く訳が……。いや、何か殺す以外に狙いがあるのか?
狙いが何なのか、キジマが一瞬考えを巡らそうとした、その時――。
「――撃て」
トモヤが言い終わった瞬間、どデカい銃声が複数響く。ミリタリー映画の様に、ダラダラと雑談交えて命令はしない。
撃てと言われた撃つ。短く簡潔に呆気なくトリガーを引くのだ。
「――――ッ‼」
毛皮の所為で外傷は分かりにくい。だがミリタリー映画の様な小さな貫通程度で済む訳もなかった。銃弾が撃ち込まれた入り口は小さな穴だが、出口は酷い有様。
熊の様な屈強な肉体だから多少損傷が抑えられているが、人間であればリンゴサイズ以上の大きさで出口が破裂している。
想像しにくいかも知れないが、人間だってスイカと同じ。水分が多い物体だ。途轍もなく速いエネルギーがぶつかれば、肉片が飛び散るのは自明だった。
モノノケはぐったりと倒れ、頭と胸から大量の血がドロドロと垂れ流しとなっている。
毛皮で分からないだけで、銃弾が通過した内部が、抉れてぐちゃぐちゃに損傷しているのは、火を見るよりも明らかだろう。
そして止めと言わんばかりに、2度目の銃声が届く。4発の弾丸が全てモノノケの体に着弾。
「…………」
声を上げる間も与えられず、絶命した。頭と胴体を撃ち抜かれたモノノケは、数秒後少しずつ黒い霧となって消えた。
その際、地面にはゴトリと呪猟石が転がった。
「ヘッドショットって……。胴体狙ってくださいよ」
「普通のクマでさえ、脳や心臓が傷つかない限り、十数分動き回ることあるらしいからなぁ。初撃くらいヘッドショットを狙ってもいいかなぁって」
「初撃だけでお願いします。別に心臓や脳を狙って一撃で仕留めなくて良いんですよ。肺に当たれば、すぐ動けなくなるんですから。そもそも胴体は少し傷つくだけでも致命的な内臓が詰まってます。だから胴体を狙うのが最も合理的だってこと、分かってますよね? というか兄さんが教えてくれたことです」
「……あくまで初撃だけ。それも警戒心が緩んでいる相手にしかやらないから、大丈夫だって」
なんて会話をしながら、モトカとトモヤは仲良く次のポイントに移動を開始していた。
あまりにも鮮やかで呆気ない狩り。レベル2を無傷どころか、瞬殺。しかも、ただのライフルで始末したのだ。
そこには、多少の緊張もなかった。
「…………は?」
歩く二人を他所に、境熊の消えた場所を見つめてキジマは硬直していた。
レベル2のモノノケが……、ただの、銃で……?
「それにしても、流石に当たるな。動いてなかったし、余裕だった」
「良く当てますね……。G3で安定して小さな的を狙うとか……」
「狩猟で定番の〈ソフトポイント〉なら、難しかったと思う。ただ今回使ったのは〈ボール弾〉だからね。そりゃ300メートル範囲ならヘッドショットくらい決められて当然だ。……やっぱG3を選んで正解だったな。コイツは大抵の戦場で役に立つ。特にギャングと戦うことになったら、最強だよ、最強。モトカも可能な限り、早く使いこなした方が良い」
「ボール弾って、貫通力と破壊力が中途半端な弾丸ですから……。狙撃特化の弾じゃないですよ、それ。300メートル先を安定してヘッドショット決められるとか、ホントに射撃初心者ですか? ていうか、G3への信頼が厚過ぎません? どんだけ好きなんですか、G3」
トモヤはやたらとG3を気に入っていて、それを少し可愛いとモトカは感じて微笑した。
「――いやいやいや! ちょっと、待ってくれ。何で、……は? どうして? あのモノノケを銃で倒せたんだ? レベル2、だったよな?」
二人の背中を追いかけて、大きく取り乱す。当然の反応だろう。特にキジマは、今までの経験でレベル2の強さをよく知っている。
よく知っているからこそ、目の前で起きた現実を、上手く呑み込めないのだろう。
「レベル2は呪力で〈物理無効〉できるから、銃が効かない。そう思っていますか?」
普段通りの軽い口調。トモヤは足を止めて、キジマの方を向いた。
「……違うのか?」
何だ、この子は……。一体何を言って――。
キジマは自分の常識がガタガタとひび割れ崩れ去る感覚を、味わっていた。
「レベル2の〈物理無効〉は、非常に不安定で未完成です。だから少し弾丸に呪力を込めて撃つだけで、〈物理無効〉を無視できます。何も、難しい理屈なんて有りません。呪力には呪力で対抗している。それだけの話です」
「……はぁ」
至極当然の様に話すトモヤの隣で、物凄く呆れた様にモトカは溜息を吐き肩を落としていた。
「……いやいや、物体に呪力を纏わせること自体はできるよ」
キジマは足元に転がっている小石を拾い、ブワっと紫色のオーラ――呪力を纏わせた。
「でもさ、呪力って体から離れたら霧散するじゃん。ほら。手から離れた瞬間に、呪力が消えた」
木に向かって下投げすると、シュンッと小石が纏っていた呪力が霧散する。
「まぁ。当然、一筋縄じゃ有りません。緻密な計算に基づいて、物体に呪力を張り巡らせないといけない。でも、それだけです」
そういってトモヤはライフルを構える。周囲が見て分かりやすい様に、ライフルに纏わせた呪力を可視化させる。
ライフルは電子回路の様に、呪力の根が張っており、それがどれだけ精緻な技術なのかを視覚的に物語っていた。
見ているだけで息を呑むほど、美しい呪力の流れだった。
「まぁ、どれだけ才能があったとしても、多少の地道な努力は必要ですが……」
そう言って200メートル先のモノノケを狙い、彼はトリガーを引いた。
「――――ッ!」
普通より数倍大きい兎――〈
「……兄さんは簡単そうに言ってますけど、かなり高度な技術なので、類稀な才能がなければ不可能です」
「だろうね。簡単に出来る技術なら、とっくの昔に誰かがやっていたはずだ」
一応補足するモトカに、見れば分かるとキジマは引き攣った笑みを浮かべた。
「……理論上は呪力を込めるだけじゃなく、〈風圧〉と〈空気抵抗〉だけ〈物理無効〉できます。だから、正確な距離さえ把握していれば、弾丸の落ちる角度を計算するだけで容易く標的に当たります。狙撃に大して技術は必要ありません。……空気抵抗が無いので、弾の減速も、威力低下もしません」
「あくまで理論上の話です。兄さんも私も、〈風圧〉や〈空気抵抗〉を完全に無視するなんて神業、今の所は不可能です。とはいえ、どれだけ離れていても射程100メートル範囲の威力くらいは出せますが……」
途轍もない話をサラリとトモヤが口にすると、モトカも気不味そうに補足する。
流石にこれにはキジマも――。
「…………。ず……、ずっるー……」
反則的な才能だと、もはやドン引きを通り越して、素直に羨んでいた。
【あとがき】
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モチベ上がります!!