【ミリタリー】×【ダークファンタジー】は、お好きですか⁉ 呪力を交えて、一緒に戦争しませんか⁉ 作:BIBI
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基本的に軍では、正装が殆ど着られることはない。勤務中に普段着用するのは、
だが――日本の呪術師は別だ。
常に正装が求められる。それは呪術師が呪力によって体温を調節できるから厚着でも問題ないだろう、という理由ではない。
現代の戦争に置いて、呪術師とは肝心要の存在だ。その特別さ故に、日本の呪術師は正装が義務付けられており、普段から一目で区別できる様になっている。
そして民間人や軍の内部でも威厳を示す為に、形から入っているというのが主な理由らしい。
「元帥閣下。トモヤ君が最近、企業のデータを集めていましたが……、その……、先ずはこれに目を通して頂ければ、話が早いかと……」
日本軍を象徴する黒い軍服を着ている中年女性――古川。彼女は手元の資料を、両袖机に置いた。
「へぇ……、今年渡した1000万を、もう殆ど使ってるのね。一応確認するけど、月々のお小遣いと大学費用を含めているって、伝えておいた筈よね?」
長い黒髪の女性――三乃城ミライ。彼女は途轍もなく端正な顔立ちの女子高生にしか見えないが、これでも三十路を越えており、古川と同年代の中年女性だ。
「はい、間違いなく。私が直接、彼に伝えました」
古川は呆れた様に溜息を吐きつつ、肯定する。そこに緊張はないのは、当然のこと。古川は決して階級が高い訳じゃないが、ミライとは昔馴染であり、それなりに親しいのだ。
「……へぇ」
「……やはり一度に大金を渡すのは失敗でしたね。投資初心者にありがちな、大胆過ぎる投資。せめて最初は少ない資金で始める様に言いつけておくべきでした。マイクロキャップ投資と言うんですか? 確かに小さい企業に投資すれば、大きく成長した時にリターンは破格なので、狙いたくなる気持ちも分かりますが……、あまりにもギャンブル性が高すぎます……」
ミライは淡々と資料に目を通し、古川は反省の言葉を口にした。反省とはいっても、あえてミライに余計なことを言うなと、言い含まれていたので、決して古川の所為だけとは言い難いのが実情だ。
「――いえ。意外と悪くないわ。マイクロキャップ投資でリスクが高いのは間違いないけど、戦争の影響に強い投資先も多い……。ポートフォリオ自体は悪くないわ。現代の理論上、これが完璧だとは到底言えない。けど、冒険しつつ無難な落とし所を探してるのが伝わる。良いんじゃない? 私の好みに近いわ」
資料を眺めて、感心した様にミライは不敵に笑う。
「良いんですか、ね……。わ、私が知識不足ってことでしょうか……。彼が投資している先は、その……。将来性が読みにくい段階のものばかりで……。手堅い投資先は、殆ど有りません……。冒険し過ぎな感じがして……」
「まぁその認識で間違いないわ。無難に金を増やす手段とは言えない。ただ、私も密かに目星を付けていた、面白い投資先ばかりなのよね。マイクロキャップ投資するとしたら、かなり納得の行くポートフォリオってだけよ」
古川の現実的な指摘を、あえてミライは否定しなかった。事実として投資初心者にマイクロキャップ投資は向いていない。まして自分の学費を注ぎ込むなんて、馬鹿げている。
「……学費で冒険するだなんて」
古川は目を閉じ、眉間に皺を寄せ、頭が痛そうな表情を浮かべていた。
「そこは、まぁ、私に似ちゃったんでしょうね」
にへらっと笑うミライ。ニコニコと、何処か機嫌が良さそうな感じだ。
「……嬉しんですか?」
普段は子供に厳しい態度の彼女に違和感を覚え、意外な反応だと古川は目を丸くしていた。
長年彼女を見ていたが、楽しそうに子供のことを語るのは、これが初めてかも知れないと内心思う。
「…………。まぁそうね。あの子達って父親が居ないでしょ? 文字通り。呪いと私の遺伝子で産まれただけ。だから今まで共感しにくい、親近感が湧きにくい子達だったから…………、少し私に似た部分が見つかって嬉しいのかも知れないわ」
合理的で上昇志向が強い癖に、挑戦的でギャンブル好き。そんな自分とは違うのだと、ミライは何処か別の生き物として子供を認識していた。
しかし――。
偶然、私が良い投資先だと目を付けていた物を狙い澄ました様に……。此処まで子供は親に似ることって有るのかしら……?
偶然じゃ片付けられない。それなりの知識も無ければ不可能……。歳の割に考える脳みそがあるのは、間違いない……。
ミライは内心、トモヤに強い親近感が湧いていた。というか当然だ。殆ど会いもしない子供が、自分と同じ様な考えや挑戦的姿勢を持っていたのだ。
憑依転生の事実を知らない彼女が、子供が自分に似たのだと判断するのは、至極当然のことだった。
「だったら偶に会いに行くのはどうでしょう。一年ですよ、一年。ずっと会いに行ってません。目と鼻の先なのに」
部下が定期的に保護者として、二人の様子を伺っているとはいえ、古川は子供二人を心配していた。
というかまだ小さな子供を二人暮らしさせるなんて、正気の沙汰とは思えない。
「忙しいのよ。仕事が立て込んでて、後……、私は
「余暇に余念がないって……」
明らかに母親失格の発言を口にするミライに、古川は呆れて苦言を呈する気力すら湧かない。
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人は努力できる人間に成ろうとした時、「小さな習慣化」や「ノルマ設定」に頼ろうとする。しかしそれで上手く行く人は殆どいない。
駄目人間ほど手を出しやすい、よくある失策の一つだ。
結局の所、人のモチベーションを作るのは、「食事」と「運動」なんだ。
当たり前だが、朝から甘いお菓子や揚げ物を沢山バクバク食べて、やる気が出る訳がないんだ。
そんな堕落した食習慣で、日々のモチベーションを保つのは不可能。
「揚げ物」や「お菓子」は10日の一回のチートデイのみ。これを徹底するだけでも、日々のモチベーションは劇的に改善する。
これだけでも、頭はスッキリした状態となり、少しずつ人は努力できる人間に成れる。
というかガリやデブに関わらず、「食事制限したくない」、「運動したくない」は、人を堕落させる発想そのものだと、古来より証明されている。
だからこそ――――。
「最近、兄さんは豚肉と人参にハマっているんですか……?」
兄が作る料理には豚肉、人参がよく入っていると気づいたのか、モトカはコテンと首を傾げていた。
「……ハマってというより、栄養を考えた結果?」
豚肉も人参も好きだが、それだけが理由で食べている訳じゃない。
「はぁ……。偏った食事はしない方がいいのでは……?」
豚肉と人参、その他野菜の入った卵炒めを食べながら、モトカは話す。
「バランスの良い食事ってよく聞くけど、具体的に何なんだろうな。肉や野菜や果物やお菓子を、均等に25%ずつ同じ量を食べることか? 少なくとも僕は、それをバランスが悪いと感じる……。結局、健康に良い食事こそが、バランスの良い食事なんだよ」
我ながら面倒臭いことを言いながら、コップに口付けブルーベリースムージーを飲む。
「そういう意味じゃ、豚肉は、栄養素でいえば、鶏肉と牛肉のほぼ上位互換。そして人参も毎日一本食べればビタミンAの補給は完璧。栄養バランスという意味では、これ以上、バランスの良い食材もない気がする。後、スムージーに使ってるジャージー牛乳は、豚肉で足りないビタミンBも補えて、組み合わせとして完璧だよ? そして牛乳と食物繊維は血糖値の上昇を緩やかにするから、ブルーベリースムージーは毎食摂るのに、最適な飲み物だ」
僕はペラペラと健康オタクの知識をひけらかした。こうして前世ではよく人に嫌われていたと、どこか懐かしみつつ食事を再開した。
因みに牛乳はポリフェノールの吸収を阻害すると言われているが、アレは迷信だと確認済み。正確には吸収が遅れるだけで、失われる訳ではない――……。
とか、そういう話は口にするべきじゃないか。
寧ろブルーベリーと一緒に摂るべきと言われるバナナの方が、ポリフェノールの吸収率を大半失わせると証明済みだとか。
そういう論文が発表された日付を、僕は細かく把握してないからなぁ。
そもそも、この世界でも同じかどうかも分からないんだ。余計なことは言うべきじゃない……。
「野菜とか少なすぎませんか? 食物繊維とか足りないでしょ」
「殆どの野菜は食物繊維なんて皆無だよ。栄養も大してないし、人参以外の野菜は食べる意味なし。というか、ブルーベリー自体が食物繊維が豊富だから完璧」
一説には食物繊維不要論もあるが、個人的には否定派だ。
前世でも腸の研究はあまり進展してなかったから、必要なのか、よく分からない。それが現段階の科学的な結論というものだろう。
だから僕としては積極的に摂るべきとも思わないし、避けるべきとも思わない……――。
「…………」
「後、食事じゃ摂取しにくいビタミンK2は、海外輸入サプリで補っていて、ビタミンEは強化卵で摂取してる。だから栄養学的には、かなり優秀な食生活は完成してるよ」
「…………」
「勿論、他の栄養も軽視してない。ブリとか、サバとか、サーモンの刺身を毎朝に食べてる。どれもDHAが豊富で朝食に最適だからね」
そういえば、1990年頃、『DHAで頭が良くなる』という説が一世を風靡して、2000年時点で常識として浸透しているのは、この世界でも同じだった。
やっぱり、呪術と関連が薄い話であれば、基本は前世に近い時代の流れみたいだな……。
「…………。あの、最近、どうしたんですか……? 家事も自分でやり始めて……。凄く熱心に運動も勉強もしているみたいですし……」
次々に健康オタクとして知識を披露するウザい僕を、モトカは見て少し楽しそうに微笑していた。
僕の鬱陶しい話を聞いて、こんな楽しそうな笑顔を浮かべる奴は初めてだ……。大抵の女は、うんざりした顔をするのに……。
これはまさか……、僕が別人だと疑っている可能性も、あるのか? だとしたら不味いな……。というか面倒。
何かモトカが共感しやすくて、納得しやすい言い訳でも並べるべきか?
「――…………そりゃ、少しは変わるさ。だって母さんに認めて欲しいからね」
「…………!」
ゲーム知識を思い出し僕が言い訳を一言口にすると、モトカは驚いて食事の手を止めた。
「僕は呪術の才を認められなかった。母さんに失望された様な気がする。だったらさ、呪術以外の他の部分で、母さんの役に立てば認めてもらえるかなって」
どうだ。これはモトカが日頃から思っていたことだろ。お前が一番しっくりくる、共感しやすい話のはずだ。
「…………兄さんも、そうだったんですね」
「そうだな。兄妹揃って同じ気持ちだ。……お互い努力しよう。母さんは良くも悪くも、人を実力だけで測るタイプだと思うから。ちゃんと努力すれば認めてくれるはずだよ」
「そう、ですね……。その通りだと思います」
モトカは、何処か嬉しそうに笑っていた。
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トモヤは母を大切に想ってなさそうだった。母親離れしていて、母に執着が無い様に見えた。
だからモトカは共感できず、距離を感じていた。
モトカは少しでも母親に認めてもらいたくて、失望されたくなくて、学業や運動に打ち込んでいた。
それでも――母親は呪力の才能がないと、モトカに落胆している様子だった。学校の話を幾ら聞いても、母親はつまらなそうな表情をしていた。
笑顔で親し気に聞いていたが、目の奥に退屈そうな何かを感じていた。
実際、母親であるミライは、二人の子供に失望していた。
自分の子供なら、途轍もない呪術師になると期待していたのに、二人共呪術の才を発揮しなかったから――……。
子供は意外と大人をよく見ている。
母親の隠していた落胆すらも、モトカは何となく察していた。
ずっと母親の居ない暮らしだった。ずっと母親に認めて欲しかった。ずっと一人で努力し続けていた。
だから――。
兄も最近は努力している事を知り、強烈な親近感を抱いてしまった。
いつか報われる日が来ると足掻いているのは、自分が一人じゃないと分かり、冷めきった家庭環境が、何処か暖かく感じられる様になっていた。
何より最近のストイックで合理的なトモヤに、何となく母親の姿が重なった。物や人を数字で見てそうな、冷たい目。その目が好きだった。
そして母親であるミライも、食事中は栄養素の話ばかりしていた。先程のトモヤの姿は母親と凄く似ており、モトカは少し笑ってしまったのだ。
――因みにゲームの〈シュナン・ルート〉では、モトカは外出が多く、昼間に来た母親と会えなかった。
その結果、母親に日本軍に入る旨を伝えられず、刺客に襲われて結果的に死んでしまう。
逆に〈モトカ・ルート〉で、モトカは兄と和解したことで、外出の回数が減った。だから昼間に来た母親に会え、日本軍に入隊する展開となるのだ。
そして現在、ゲームの〈モトカ・ルート〉以上に、モトカはトモヤに強い親近感と好意を持ち、自然と外出する回数は激減するだろう。
つまり〈モトカ・ルート〉も、着々と進行しつつあった。
とはいえ、ゲームの進行通り、すぐ日本軍に入るとは限らない。
だとしたら――……。
【あとがき】
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