【ミリタリー】×【ダークファンタジー】は、お好きですか⁉ 呪力を交えて、一緒に戦争しませんか⁉ 作:BIBI
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――〈バウンディング・オーバーウォッチ〉。
それはチームを二つに分けて、〈バウンド〉と〈ウォッチ〉として役割分担しつつ、前進する、基礎的な歩兵術である。
バウンドが、次の遮蔽物へ移動する。ウォッチが移動中のバウンドが狙われない様に、敵に向かって威嚇射撃する。
そうやって、お互いに〈バウンド〉と〈ウォッチ〉を交代して、少しずつ前進する。
こういう基本的な歩兵術を学ぶ上で、サバゲーは有効だった。
だから僕は――。
この一ヵ月間、暇さえあればサバゲーに費やしている、モトカを連れて。
「リローディング!」
森の中に作られたフィールド。周囲には木材や建物が配置されている。その遮蔽物に、相方チームが隠れながら、ライフルのマガジンを満タンな物へ取り換える。
それを聞いて僕は大人しく待機する。此方が全く顔を出さず、射撃すらない状況は、敵チームから見れば安全に動く隙だろう。
でも動かない。バウンディング・オーバーウォッチの目的は、あくまで前進。制圧ではない。
敵の前に姿を晒すのは基本、〈味方が遮蔽物へ移動する時だけ〉で、最低限に抑えるべきだ。
そもそも相方チームがリローディングしている状態で、片方のチームだけ姿を晒すのは自殺行為に等しい。
「セット!」
その掛け声は装填完了の合図である。
「移動する!」
僕が声を上げ、いつでも走れるように身構える。相方チームは「カバーする!」と答え、敵が顔を出せない様に射撃開始。
それを確認し此方も素早く行動を開始する。次の遮蔽物へ移動。できるだけ、大きくて頑丈な近場へ、一気に駆け出す。射撃はしない。走ることに集中。
近場の遮蔽物を選んだのは、〈4秒前後のルール〉というものがあるからだ。人は照準を合わせ、撃つまでに3秒から5秒を要すると言われている。
だからこそ、その4秒前後で次の遮蔽物へ移動完了しなければならない。ダラダラと長い距離を走れば、格好の的であり、ハチの巣にされてしまう。
「イン・ポジション!」
僕は遮蔽物へ移動できたことを、報告した瞬間だった――。
『――タイムアップ! 終了です! セーフティエリアへ移動してください! 繰り返します! タイムアップ! 終了です! セーフティエリアへ移動してください!』
そうアナウンスが響き渡った。
「お疲れ様~」
「お疲れ~」
「いやぁ、楽しかったッスねぇ」
遮蔽物の後ろから、次々と私服の男性達が姿を現した。軽い挨拶を交わしながら、セーフティエリアに移動を始める。
因みに僕やモトカを含め、全員が動きやすそうな私服だ。あくまでゲームなので、そこまで本格的な装備は必要としてない。
「はぁ……。もう終わりですか……」
一息吐き、モトカは立ち上がる。暴発しても安全な銃口の向き――〈マズルコントロール〉を意識しているのか、銃口が上に向く様に銃を持っていた。
「まだやりたかった?」
僕もモトカと同じ様に、銃口を上に向けて銃を持つ。
「……楽しいですよね。武器を含めて、シチュエーションとか柔軟に調節して、ゲームができるので結構訓練にもなりますし」
「まぁ、世界的に軍でもサバゲーに似た訓練は、採用されているからね。ある程度シチュエーションを調節すれば、もっと適切な訓練になるのかも?」
楽しそうに微笑を浮かべるモトカに、僕は同意しつつ少し物足りなさを感じていた。訓練自体ではなく、今の自分の実力に。
わりと撃たれるんだよなぁ。まだまだ実戦は無理なんだろうな……。サバゲー好きな人達に撃たれまくる時点で、プロには通用しない。
まぁ実践なら、呪力で体感時間を引き伸ばしまくって無双できるんだろうけど、それに普段から頼り過ぎると、咄嗟の判断力が鈍る。
自分と同じ身体能力の相手と戦った時に、適切に対応できなくなる。
「――いやぁ。相変わらず強いねぇ。吞み込みが早いというか……」
頭を掻きながら高身長で優しそうな中年男性――キジマさんが出てきた。シャツに短パンの適当な格好で、凄い普通の人に見える。
だが、これでも呪術師としての腕は一流だと、日本軍の中では評判だったらしい。
「かなり集中してやってますからね。経験で劣る分、集中が切れたら一瞬でやられちゃうんで冷や冷やしっぱなしでした。流石は元軍人という感じです。というかキジマさんって、呪術師としての腕だって一流でしょ、何でサバゲーしてるんですか」
「ははは。金はあるからね。もうこういう遊びくらいしか楽しみがなくて。というか軍隊より楽しんだよね。気が楽でさ。あーいう堅苦しい場所だと、訓練楽しめないでしょ」
「まぁ確かに。楽しいとは違うかも知れませんね。軍人としての純粋な訓練としては、最適なんでしょうけど……」
「そうだね。軍隊の方がやっぱり本格的だし、経験値は多いのは間違いない。ただ運ゲー過ぎるよ、人間関係が。人間関係が嫌で辞めるとか、ダサいから言いたくないけど、軍人だけは言って良いと思うんだ。だってさ、尊敬できない上官やクソみたいな仲間が周りにいると、どうしても訓練に身が入らないって。訓練内容が幾ら本格的でも、環境が悪ければ台無しだ」
僕の軽い感想に、キジマさんは首肯して少し寂しそうな顔を浮かべていた。
「……それ偶に言ってますね。よほど嫌なことがあったんですね」
ゆっくり歩きながら、セーフティエリアに向かう。
「いや、大した話じゃないよ。ただ僕は所詮はミリオタだったってだけ。それに僕は結構生意気で、尊敬できない上官に逆らうタイプだった。色んな意味で、軍人には向いてなかったんだろうね」
ヘラヘラと笑い、キジマさんは深く過去を語ろうとはしなかった。