【ミリタリー】×【ダークファンタジー】は、お好きですか⁉ 呪力を交えて、一緒に戦争しませんか⁉ 作:BIBI
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「僕やモトカも生意気なんで、きっと軍は性に合わないでしょうね……」
「…………」
僕は暗に軍に入りたくない意思表明しつつ、少し不満気なモトカを無視した。
「あっはっは。確かに、そうかもね。だけど……、仮に入隊しなきゃいけなくなったとしても、あまり気にすることはない。意外と生意気な人でも、尊敬できない上官に懐く人は多い」
まるで褒め言葉の様に言う。尊敬できない上官という言い方に、何だかキジマさんの不満が薄ら伝わってきた。
「イキリ上司に気に入られたがる下っ端根性ですかね? 学生でもいますよね、不良の先輩に気に入られたって自慢する様な人」
「そういう人が嫌いかい? まぁ俺もあまり好きじゃない。ただ下っ端根性というのは社会じゃ優秀だと判断されるもんだよ。意外と馬鹿にできない。皆が皆、俺や君達みたいに生意気な性格だったら、社会は回らないんだ。何事も適材適所だよ」
僕が少し毒づくと、キジマさんは諭す様に軽く笑った。どうやら彼は下っ端根性の価値自体は認めているらしく、その性質を否定する気はない様だった。
「キジマさーん。なーに堅苦しい話を、子供にしてるんですか……。駄目っスよ、そんな暗い話しちゃあ……。教育に悪いでしょ」
同じ元軍人仲間のナガイさんが、セーフティエリアの椅子に腰かけている。
緩い態度のキジマさんと違い、生真面目なナガイさんはキッチリとした印象がある雰囲気が有った。
雰囲気もそうだが、キジマさんが茶髪なのに対し、彼が黒髪だから、余計に真面目そうに見えるだけかも知れない。
「あっはっは! そうだった、そうだった! トモヤ君って、子供とは思えないほど話が通じるから、つい……。確かに、その年でこんな話されても困るよね」
まだ身長が130センチにも満たない僕を見て、キジマさんは大笑いする。本当に近い歳の後輩にでも話す様な態度だったことに、自分でも驚いているらしい。
まぁ前世の年齢込みなら、歳は近いから無理もないな……。
「いえ。面白いですよ。軍には興味があったので」
「…………」
僕が言うと、相変わらずモトカは無言。コミュ障って訳じゃないんだろうが、モトカは少し人間関係を軽視している様子だ。
「え? トモヤ君は将来、日本軍に入りたいの?」
ホントに意外に思ったらしく、目を丸くしていた。キジマさんは「意外だね。僕と同じであーいうガチガチの階級社会、苦手だと思ってた」と付け加える。
「……そんな訳ないですよ。階級社会も苦手ですし、戦争なんて馬鹿げてるって、本気で思うんで。本当は戦いなんてせず、のんびりと自由に楽しく生きたい。ただ、それでも親の都合で、無理やり軍に入れられることも有ります。珍しくない話でしょ?」
「そうだな……」
肩を落とす僕に、同意しつつキジマさんは薄ら苦笑していた。
高級将官の子供が、軍に入れられることは聞かない話じゃない。特別扱いせず、寧ろ最前線に送られるなんてことも、昔なら良くあった。
その習わしは、呪術師の家系では続いている。呪術師ではない高級将官は、子供を戦場から遠ざけたがるだろう。
『高級将官の子を討ち取ったと相手が調子に乗ってしまう』とか、『自分の子が人質にされて取り乱す上官がいるかも知れない』とか、尤もらしい言い訳をして、自分の子だけは安全な場所へ逃がそうとする。
しかし呪術師は軍の肝心要だ。否応なしに、親の命令で戦場に送られることが、後を絶たない。
何故なら国民は誰もが思うからだ、『お前の優秀な子を戦場に出せよ』と。『人に命を懸けさせておいて、自分の子だけ特別扱いするんだな』と。
――国民も軍人も怒りを爆発させる。
そういう人の感情に焼かれたくないから、高級将官は無理にでも子供を戦場に引っ張り出すことが多い。
「トモヤ君……、何て言ったらいいか……。キジマさんが言うほど軍というのは、尊敬できない人達ばかりじゃないよ。というか、キジマさんの周りに偶然クソ野郎が居ただけで、本当に珍しいことなんスよ。いや……、珍しくはない、か……?」
「おい。否定するならちゃんと否定しろよ……」
言いながら首を傾げ始めるナガイさんに、溜息交じりでツッコミを入れるキジマ。
「いやだって、嘘を吐くのも違うかなって。それに軍人も人間で、しかも民間企業とは違う特殊な場所ッスから。学校の教師とかと同じなんです。頭の悪い人が『ここは治外法権だ』って勘違いしやすい場所なんで……」
軍が隠蔽体質なのは、実際に軍に所属していたナガイさんも認める所らしい。今までこの二人は軍人として長い間、良い所も悪い所も見てきたのだろう。
「他人に罰を与える権限を持つと、人格が大きく歪んでしまうからな……。これで一番恐ろしいのは、〈違法な叱責や罰〉を、悪いことだと認識できなくなることなんだ。『こんなんじゃ社会でやっていけないから、俺が躾けているんだ。俺は悪くないんだ』って、彼らは本気で喚き始める。一度ここまで人格が歪むと、病院での治療も難しい」
腕組みし眉を顰めて、考え込んでいる様子。キジマさんは軍の問題を深刻に受け止めているみたいだ。
「……まぁどんなに偉い人でも、馬鹿は一定数いるってことだよ。ただ、尊敬できる軍人も沢山いるから。あまり深く考えなくて良いと思うよ」
色々と文句を言いつつ、一応軍を庇う様なことを言う。ナガイさんはキジマさんほど軍に悪い印象は持たない様にしているのだろう。
度々話している時に垣間見える。どうにも彼はまだ軍を信じたい気持ちがある様子だ。それ故に煮え切らない態度ばかり。
正直、彼の言葉を信じていいかは、疑わしい。
「…………」
前世でもそうだった。
どこの国も『軍には秘密部隊がいて、そいつらは全員超人の集まりなんだ』とか宣伝して、国民に軍人が格好いい組織だと、必死に必死にアピールする。
ミリタリー映画でも軍人が格好良く表現されて、テレビは大いに宣伝しまくる、『軍人ってのは格好いいだろ。皆もならないか』と――。
でもニュースだと、情けないことに〈セクハラ隠蔽〉、〈パワハラ隠蔽〉が何度も何度も報道されてしまう。
しかもその内容はどれも極めて惨めで、格好悪くて、気色の悪い手口ばかりで、世間から叩かれまくっていた。
この世界でも同じらしい。規律正しく、道徳に優れ、最高峰の頭脳を持つ上層部。そんなものは存在しない。
軍人は皆、何処にでもいる様な、普通のオッサンとオバサン達だ。そして、何処の組織でも上に立つ者が優秀で真っ当だとは限らない。
軍人だろうと、所詮は同じ人間。期待し過ぎたら駄目ってことなんだろうな。
だから僕は「軍に入らずに済むように、全力で足掻きます……」と、大きく肩を落とした。
【あとがき】
「面白かった!」
「期待してる!」
「続きが気になる!」
そう思ってくれた人は、
〈評価〉してくれると嬉しいです!
モチベ上がります!!