※この作品はR-18です。

深森の歌姫   作:三条ゴート

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※本作品はpixivにも掲載しています。


第4話

「やぁんっ、もっと、ああぁっ♪ゴリゴリしちゃダメ、あっ、ああぁん♪」

 

 アキの切なげな声が響く。

 先程までの余裕が、消し飛んでいた。

 ただ、快楽に踊らされるだけの雌。

 立場が逆転していた。

 

 アキは俯せに組み敷かれている。

 予想外の反撃で、何一つ出来なかった。

 上から覆い被さられ、貫かれていた。

 

 男は、本能だけで動いていた。

 意識はぼやけたままなのに、身体は力強く動く。

 暴走した性欲だけが、全身を制御していた。

 

 寝バックだ。

 力任せに腰を叩き付ければ、アキの臀部が受け止める。

 この臀部が、男の全てを狂わせた。

 ダンスから始まり、セックスの手管に至るまで、鮮烈に焼き付けられた。

 だから、味わい尽くしたい。

 本能のママに動く男は、力強いピストンを叩き込む。

 腰への負担も無視した突き込み。

 後先も考えられず、ただ欲情に従うばかりだった。

 

「それ、それ、良いよぉ♪もっと、もっと♪」

 

 アキもまた、快楽の坩堝に放り込まれていた。

 ダンスから始まり、ずっと捕らえ続けたはずなのに、立場が逆転した。

 力任せの暴挙で、全てがひっくり返されたのだ。

 

 しかし、それが良かった。

 何一つ出来ないスリルが、身体を焦がしていた。

 加えて、今の体位。

 膣内でも、特に感じやすいところを強く擦られる。

 快楽を『貪らされ』、アキは更に狂った。

 

 一方、男の意識は更に歪んでいる。

 愛撫なんて考えはない。

 ただ、アキを味わいたいだけだった。

 

 背後から手を伸ばし、乱暴に乳房を揉む。

 指先が食い込もうとも、お構いなしだ。

 アキが刺激で仰け反る。

 こうなれば、呼吸も苦しくなるのに、それすらも気に留めない。

 乳首に指が引っ掛かれば、力任せに押し潰す。

 痛いほどなのに、それでもアキは喘いだ。

 

 腰を何度も叩き付ける。

 この、尻だ。

 この尻が、狂わせたんだ。

 虜にしてしまったんだ。

 だから、味わい尽くす。

 

 この女尻は、理想だった。

 雄を誘惑するためのものであり。

 子を産むにも、理想の大きさだ。

 快楽と、繁殖と、どちらにも適している。

 だから、本能を鷲掴みにする。

 こんなのを見せられ、反応しないはずがない。

 

 性の本能は燃え盛り、男は欲望を叩き付けた。

 その下でアキは喘ぎ、仰け反る。

 散々に踊った身が求めたのは、組み敷かれることなのか。

 アキ自身にも分からないほどに、よがり狂う。

 今までの経験の中で、一番の夜となっていた。

 

「来ちゃう、クル、あっ、っ、あっ、ああああぁぁぁぁぁぁぁん♪」

 

 コントロールできないのは、アキも同じだった。

 ストロークに身を任せ、燃え盛った心地良い一時。

 それはあっという間に終焉を迎えてしまったのだ。

 

 強く、強く、締め付ける。

 性を絞りだし、子宮へと導く。

 本能を剥き出しにされた一時は、心地良かった。

 

 ◆ ◆ ◆

 

 汗まみれになった二人は、ベッドに横たわっていた。

 男は寝息を立てている。

 放った後、気絶してしまったのだ。

 最後の方など、後先考えられなくなっていた。

 故に、体力面の負担が限界を超えてしまったのだ。

 

 アキは、男を抱きしめ、優しく撫でた。

 慈愛の笑みを浮かべている。

 全てが満たされた一時だったのだ。

 

「今までで、一番良かった。ありがとう」

 

 すぐに、その笑顔に陰りが浮かぶ。

 

 男には帰る場所がある。

 朝を迎えれば、全ては元に戻る。

 これは、その程度でしかないのだ。

 

 続かないが故に、一時に全てを託せる。

 これはこれで、良いのか。

 大きな溜息が零れる。

 胸の内は、不思議と満たされていた。

  

「お休みなさい、良い夢を……」

 

 かき抱いた男の額に、口付けた。

 アキも意識を手放した。

 幕が下りるように、視界は一気に暗くなっていった。

 

 

 ――――――――

 

 朝日を背に、男は歩きだしていた。

 アキに見送られ、家を後にすれば、しっかりとした道があった。

 案内されたときは、獣道を辿っていったはずだった。

 

 首を傾げつつも歩み続ける男は、周囲を見回す。

 そして、感嘆の声が零れた。

 

 見慣れた植生だったのだ。

 昨日見た植物は、どこにもなかった。

 全てが男の記憶の中にある物ばかりだった。

 

 遠くを見やれば、見慣れた山嶺だった。

 元の世界に戻ってきたという事なのか。

 それでも、登山道に合流するにはまだ長いようだった。

 ただひたすら道なりに歩き続けた。

 

 どれくらいの時間が経ったのか。

 不思議と、疲れはない。

 昨夜はあれだけ派手に交わり、今は山道を歩き。

 それなのに全く疲れていないのだ。

 

 ふと見上げる。

 太陽は高い位置にある。

 かなりの時間、歩いたのか。

 

 そして、見慣れた場所に出た。

 あと少しだ。

 もう少しで、登山道に戻れる。

 駆け足気味に、男は突き進んだ。

 

 ◆ ◆ ◆

 

 ようやく、戻って来れた。

 木の根に腰を下ろす。

 真夏の暑さも、鬱陶しい草いきれも、今は心地良かった。

 スマホに手を伸ばす。

 起動画面が表示され、男は歓喜の溜息をついた。

 

 しかし、次の瞬間、瞠目した。

 ぎょろり、と目を見開き、画面を注視した。

 

 表示された時間は、迷い込んだときとほとんど変わらない。

 あれから、一時間も経っていなかったのだ。

 

 男は、辺りを見回した。

 アキの家から辿ってきた道は、なかった。

 獣道すらない。

 あったのは、鬱蒼と生い茂る茂みだけだった。

 

 男は、もう一度溜息をついた。

 こういう物なのだろう。

 不思議と、納得できた。

 

 白昼夢だったのか。

 理解の範疇を超えていた、が。

 大きな溜息が零れる。

 それでも胸の内は、不思議と満たされていた。

 

 アキの踊りは目に焼き付いている。

 柔肌の触感は身体の奥まで刻まれた。

 心地良い香りは今も鼻腔に残っていて。

 唇の味は、舌が覚えていた。

 

 耳を澄ませる。

 微風の中に、何か聞こえてきた。

 

 ずぅっと遠くから聞こえてきたのは、人の声だ。

 大気の粒子を揺さぶる、とても心地良い歌声。

 世界を越え、アキの声が聞こえているのか。

 しばし男は耳を傾けていた。

 

 アキとの関係は、一夜で終わった。

 そもそも一時間ですらない。

 これで、良いんだ。

 彼女が少しでも満たされたなら、それで良かった。

 

 微風が、微風になった頃。

 男は歩き出していた。

 帰る場所がある。

 夢の時間は、終わりを告げていた。

 

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