透視魔法を完成させてから、しばらく経って。
俺は今、新たな問題に頭を悩ませている。
「……どうすれば光らなくなるんだ?」
机に向かい、目の前の本を眺めながら小さく呟く。
透視魔法そのものは、すでに実用できる段階に達していた。白黒の影しか見えなかった初期段階から、色の識別、透視する範囲や深さの指定までできるようになっている。壁の向こうの音を拾う魔法も、まだ不完全ながら形になった。
問題は、魔法を使うと目が淡く光ってしまうことだ。
これでは人前で使いにくい。
俺の魔法が知られていないのは、今のところ幸運に恵まれているからにすぎない。セレナのように観察力の鋭い人間が相手なら、ちょっとした違和感から秘密を見抜かれる可能性だってある。
何より、母に知られるのは避けたい。
魔法を使えるとわかれば、今までのように自由に研究できなくなるかもしれない。少なくとも、今の年齢で好き勝手に実験をさせてもらえるとは思えなかった。
だから、弱点を克服するまでは秘密を守る。
そのためにも、目に流す魔素の量を減らしたり、魔素の流れを目の内部に限定したり、いろいろな方法を試していた。
しかし、今のところ目立った成果はない。
「まあ、焦っても仕方ないか……」
俺は本を閉じた。
そもそも、透視魔法が完成しただけでも十分な成果だ。前世の知識があったとはいえ、魔法の仕組みを一から考え、実際に使える形にすることができたのだから。
それに、研究の成果は透視魔法だけではない。
俺はもう一つの魔法を使って、本だけでは知ることのできなかった、この世界の情報を集め始めていた。
◇
この世界の本には、当然ながら限界がある。
歴史書や地理書を読めば国の成り立ちや領地の位置はわかるし、魔法の本を読めば魔法の基本的な仕組みもわかる。
しかし、実際に人々がどのように暮らしているのか、貴族たちがどんな会話をしているのか、日々の仕事で何が問題になっているのか。
そうした生きた情報までは、なかなか手に入らない。
そこで俺は、透視魔法と盗聴魔法を使い、部屋の中から周囲の様子をうかがうことにした。
もちろん、誰かに見つかれば大変なことになる。
そのため、目が光る透視魔法はなるべく使わず、必要なときだけ短時間で済ませる。音を拾う魔法も、会話の内容がわからないときや、周囲に人がいないことを確認できたときに限って使った。
……まあ、そもそも四歳児がそんなことをしている時点で、かなり問題がある気もするが。
そこは気にしないことにした。
俺は知りたいのだ。
この世界について。
自分が生まれたヴァレンシュタイン家について。
そして、これから自分がどう生きていくことになるのかについて。
ある日には、使用人たちが仕事の合間に話している内容を耳にした。
領都ヴァルデンの市場では、最近、木材の取引が活発になっているらしい。別の地域から商人が訪れ、蜂蜜や薬草をまとめて買い付けていくこともあるという。
また別の日には、母が領地の経営について話している声を聞いた。
農村の収穫量、街道の修繕費、商人との契約。
どれも、俺が今まで本で読んできた知識とは違い、実際に領地を動かしている人々の言葉だった。
なるほど。
母は、ただ優しくて俺を甘やかしてくれるだけの人ではない。
領地を維持するために、毎日さまざまな判断をしている有能な領主なのだ。
姉のエレオノーラが将来家督を継ぐために勉強しているのも、こうした仕事を引き継ぐためなのだろう。
男を落とすテクニックの授業も受けていたが、それは必要なのだろうか?
エリザベートが剣術の訓練に励んでいるのも、彼女なりの将来を考えてのことだ。
家族のことを知るたびに、俺は少しずつ、この家での自分の立ち位置を理解していった。
◇
その日の午後。
俺はいつものように透視と盗聴で情報を集めていた。
ついでに侍女の下着や裸を確認して回っていた
体内はまだ慣れないので見ないようにしている
隠れ巨乳の侍女、寄せてあげている侍女、お尻の大きい侍女……
驚いたのはパットらしきものを入れていた侍女がいたことだ
セレナは天然の巨乳だった。素晴らしい
この世界にもそういうのあるのね……
そしてみんなぼーぼーだった
どうやらこの世界は剃ったりする文化はないようだ
いずれにせよここ最近の俺のQOLは爆上がりだった
眼福だった
幸せだった
「それで、ルシアニウス様の今後についてですが……」
足が止まった。
今、俺の名前が出なかったか?
声の主は、母の秘書役を務めている女性だった。
名前はイザベラというらしい。母の仕事を補佐し、書類の整理や予定の管理をしている、あの有能な女性だ。
残念ながら絶壁だ
今日はライトグリーンだった
どうやら、母と二人で何かの相談をしているらしい。
……これは、聞くしかないだろう。
自分の将来についての話なら、少しくらい知っておいてもいいはずだ。
そう自分に言い訳しながら、俺は壁際に身を寄せた。
アンネリーゼの声が、はっきりと聞こえてきた。
「そうね。ルシーも、もう四歳……もうすぐ五歳ですもの。そろそろ準備を始めてもいい頃かしら」
……四歳で準備?
何の?
「はい。早い段階から環境を整えておくことが重要です。特に、ルシアニウス様は男児ですから」
「ええ。あの子が困るようなことにはしたくないわ」
アンネリーゼの声は、いつもどおり優しかった。
しかし、話の内容は穏やかではなかった。
「まず、教育についてですが、一般的な貴族の男児と同様に、礼儀作法や芸術、教養を中心に進めるのがよろしいかと存じます。ご本人が望まれるのであれば、領地経営についても簡単なところから学んでいただくことは可能です」
「そうね。ルシーは本を読むのが好きだから、勉強そのものは嫌がらないと思うわ」
「それから、社交についても考える必要がございます」
「社交…ねぇ……」
「はい。ルシアニウス様が成人されるまでに、できるだけ多くの有力貴族と縁を結んでおくべきかと」
アンネリーゼが少し考え込むような間を置いた。
「そうね……。ただ、あの子は人見知りなところがあるでしょう? あまり大勢の人が集まる場所へ連れていくのも、かわいそうだわ」
「お気持ちはわかります。しかし、男児は非常に希少です。特に貴族の男児となれば、他家からも強い関心を持たれることになります。そのため、まずは親しい貴族の方々との小規模な茶会から始め、徐々に交流の範囲を広げていくのがよろしいかと存じます」
「……そうね。ルシーに無理をさせない範囲で進めましょう」
茶会か。
前世の俺なら、絶対に参加したくない類いの集まりだ。
だが、今世ではそうもいかないらしい。
貴族の子供として生まれた以上、ある程度の社交は避けられないのだろう。
しかし、アンネリーゼとイザベラの会話は、そこで終わらなかった。
「そしてもっとも重要なことですが…」
「子供…よね…」
「はい。たとえ妻や妾でなかったとしても一晩だけでも、という声は多いでしょう。」
「そうねぇ…貴族同士の子は才能ある子に生まれやすいし。大変になりそうね」
「それだけでなく、初夜の相手になってあげるという者も必ず出てくるでしょう。なにしろルシアニウス様の容姿や言動、性格は非常にぐっとくるというか…襲いたいくr……非常に麗しいので」
アンネリーゼにギロっと睨まれてイザベラは慌てて訂正する
「……それだけは絶対に渡さないわ。」
「そうですね。精通したらその子を一番よく知る母親と初夜を過ごすのが一般的ですし、外交的にもその他の貴族のことを考える初夜を渡すわけにはいきませんね」
「…それにいったい何度ルシーの初夜の相手をする妄想でオナニーしたと思ってるの。はあ…想像しただけで濡れてくるわ…。ちんこをびんびんにさせながらうるんだ瞳で「母様…こわいよ…」って許しを懇願してきてそれでも興味を捨てられず誘うような視線を向けてきてそして私は言うの「大丈夫…かあさんに任せて」ってそしたら小さくこくりと頷いて…」
「……奥様」
「あの子たまに私の胸をこっそり見てるの。視線を感じるの。それにいまだに私がぎゅって抱きしめても嫌な顔一つせずにむしろルシーからぎゅってしてくれるの。もうルシーったらお母さんのこと好きすぎじゃないかしら。もう、もう、もう!そんなところもかわいくてすk…」
「………奥様!」
「……ごめんなさい。とにかく初夜は私が相手します。」
「はい、それがよろしいかと。ただし、ルシアニウス様ご本人の意思も尊重する必要がございます。近年では、男性の意向を無視して進めた結果、関係が悪化した例もございますので」
「むぅ…」
「もしルシアニウス様が初夜の相手に希望する方がいたりする場合はおとなしく身を引いてくださいね。」
「……わかってるわよ」
その後も俺の将来に関する話し合いは長々と続いた
◇
部屋に戻ると、俺は寝台の上に倒れ込んだ。
俺は混乱していた
俺は枕に顔を埋めた。
この世界の男女比が偏っていることは知っていた。
男性が大切にされることも、女性が積極的に求愛することも、一夫多妻制が一般的であることも。
だが、知識として理解していることと、自分の将来として突きつけられることはまるで違う。
考えてみれば、母や姉たちが俺を溺愛している理由も、少しは理解できる。
俺は男爵家唯一の男児。
この世界では、男性そのものが希少だ。
だから、家族に大切にされる。
それだけなら、ありがたい話だ。
だが、貴族社会全体から見れば、俺は単なる家族の一員ではない。
将来的に他家との縁を結ぶ存在であり、政治的な価値を持つ存在でもある。
「初夜の相手が母親って……まじ?」
それが、一番の問題だった。
秘書は、俺の意思を尊重する必要があると言っていた。
母も、俺に幸せになってほしいと言っていた。
少なくとも、俺の意思を完全に無視して話を進めようとしているわけではなさそうだ。
しかし、前世の倫理観から考えれば到底許されないことだろう
いや、俺もそういうジャンルのを見ていたから強く言えないが
ただはっきり言ってそんなに拒否反応もない
前世の記憶があるからか母親のことは家族というより世話をしてくれる一人の女性として見ている面も正直あったからだ
なにより美人だし
おっぱい大きいし
今日もエッチな下着付けてたし
それに母は俺でオナニーをしていたこともあるし
まあ、精通したらといった
まだ時間は十年弱ほどあるはずだ
ゆっくり考えよう
というか普通に美人だしありよりのありだ
俺を止めるものは前世の倫理観ただ一つ
いや、もし近親相姦で子供ができたらどうするのだろうか?
しかし、もう少しこの世界に染まったら何も感じなくなるかもしれない
「……まずは、もっとこの世界のことを知らないとな」
俺は、そう結論づけた。
この世界の常識を理解しなければ、自分がどうするべきかわからない。
ただ将来、複数の女性と結婚することになると聞けば、戸惑いはあっても、悪い気はしない。
……いや、正直に言えば、ちょっと楽しみですらある。
◇
翌日。
「ルシー、今日は何をして遊びましょうか?」
朝食のあと、姉のエリザベートが俺の顔をのぞき込んできた。
「えっと……本を読みたい」
「また本なの? たまには外で遊びましょうよ!」
リーザは不満そうに頬を膨らませる。
「リーザ、ルシーが本を読みたいと言っているのだから、無理に誘わなくてもいいでしょう?」
隣にいたエレオノーラが、呆れたように言った。
「でも、せっかく天気がいいのに!」
「それなら、読書が終わってから一緒に庭を散歩すればいいわ」
「……それならいいけど」
姉たちのやり取りを見ながら、俺は苦笑した。
いつもどおりの光景だ。
ノーラはしっかり者で、リーザは活発。
二人とも俺を可愛がってくれている。
そして、母もセレナも、俺が何をしていても優しく見守ってくれる。
その温かさは、何も変わっていない。
だからこそ、昨日聞いた話が、余計に頭から離れなかった。
「ルシー? どうかしたの?」
エレオノーラが不思議そうに俺を見た。
「ううん。なんでもないよ」
俺は笑って首を振った。
「……そっか。何かあったら、いつでも言ってね」
「うん、ありがとう。ノーラ」
そう答えると、姉は嬉しそうに微笑んだ。
俺は、その笑顔を見て思った。
この世界で生きていく以上、前世の常識だけにこだわるわけにはいかない。
男女比も、家族のあり方も、貴族社会の仕組みも違う。
その中で、自分らしい生き方を見つけていく必要がある。
そして、そのためには知識がいる。
魔法だけではない。
この世界の歴史、文化、政治、経済。
人々の考え方や社会の仕組み。
すべてを理解することはできないかもしれない。
それでも、少しずつ知っていこう。
俺は、そう決意した。
この世界での第二の人生は、どうやら俺が思っていた以上に、波乱に満ちたものになりそうだった。