2094年5月以降の真司と深雪の関係
真司が深雪と恋人関係になってから、特に何も問題は起こっていない。何もないのだ。
普通に考えるなら、真司が深雪の告白に応えて恋人になれば、四葉真夜から何かしらの干渉があってもおかしくない。しかし真司にも深雪にも何も言ってこない。
真司は真夜に告白への答えを出したことを伝えた。しかし真夜からの回答は節度を持った付き合いをすることと責任持つこと、第一魔法科高校への受験に影響しないようにうつつを抜かさないことしか言われていない。
そもそも深雪の真司への告白と振り向かせる宣言の時点で真司にも深雪にも真夜や深夜から何も干渉などがなかった。深雪は深夜からはしたない真似はしないようにぐらいは言われたらしいが、告白に関しては何も言われてなかったらしい。
真司の予測として、普通に考えると思春期を迎える女性に対して戸籍上は従兄弟でも血縁関係のない異性を宛てがうなんておかしいのだ。その異性と恋愛関係になっても問題ないと考えてないなら話は別だが。
深雪が四葉にとっての政略結婚の道具なら、深雪の恋心は邪魔でしかない。告白の時点で深雪に撤回させたり、真司に告白を断るように言ったり、深雪のガーディアンの任を解いたりしないとおかしいのだ。
それがなかった時点で真司が元々深雪の婚約者候補だから、深雪が恋心を抱いても特に問題なかったと考えられた。深雪の告白は予想外でも深雪が恋心を持つこと自体は想定内だった可能性がある。
そして真司が深雪の告白を受け入れたことを報告しても何もなかったことで真司は自身の予測が間違っていないと考えた。
これは深雪にも伝えてある。
だから深雪は学校で堂々と公言した。しかし同級生は全員深雪の恋心に気がついていた。
中学1年生の夏休み明けの2人は夏休み前と2人とも大きく変わっていた。
真司は夏休み前は、年の割には落ち着いていたが年齢相応には溌剌とした少年だった。
夏休み後には一気に大人びたように周りは見えた。少年らしさが消え、大人の落ち着きを持った少年に変わった。
深雪を見つめる目も態度も一気に変わり、余裕のある振る舞いへと変わる。
極めつけに衝撃を与えたのは、真司が時折見せるようになった憂いの表情だろう。真司の見た目は前時代的な言葉で表すならイケメンである。極めて整った顔立ちの少年が時折見せる憂いは、特に男子の世話を焼きたいような奉仕性、献身性の高い女子の心にクリティカルヒットした。もちろんその筆頭が深雪であるのは言わずもがなである。
夏休み前の時点で深雪が真司に対して恋心を持っていることに気付いている同級生はいた。だが夏休み明けの深雪は真司に猛アプローチするほど変わっていた。自分の恋心に気付き誰の目に見ても真司に対してアプローチし続けていた。
真司は深雪の猛アプローチに気付いていながらも、その答えを出していないことに周りの方がモヤモヤしていた。
深雪はいつまでも真司の答えを待つつもりだったし、真司が誰か他に好きな人がいるならともかくそのようなことがない以上ずっとアプローチし続けるつもりだった。
真司のことを好きになった所が告白の前後で変わっていないことも理由の一つだった。告白の前後で真司が深雪を第一にしている態度が変わらない、自分のことをなんでも話せる安心感が変わらないなど深雪は真司が自分の告白で変わらなかったことに安心していたのも理由だった。
そんなことを知らない周りの方が2人の様子にドギマギしていた。
だから2人が付き合い始めたことを知って男子も女子も一安心した。
特に男子はもし真司が深雪の告白を、想いを断るようなことがあれば、全員で一発ずつ殴ろうとすら決めていたほどだった。
そんなこともあり、2人の関係は特に問題になることなく受け入れられた。
リッチャーズカンパニーと深雪の話
深雪が正式に真司の恋人となったので、真司は次の手を打った。リッチャーズカンパニーで深雪の立場を確立することである。
現状、リッチャーズカンパニーの代表取締役社長兼CEOとして真司が、役員として四葉真夜が就いている。役員である真夜を通して、リッチャーズから四葉へと資金を流していた。
そこに深雪を副社長兼役員としての立場を与える。
真夜に対して、深雪をリッチャーズの副社長兼役員にする提案をした。
理由として今後深雪の美貌から、芸能系やメディア系などからのスカウトや魔法技術関連企業などからのスカウトなどがされる可能性が高い。今でも時折街中を歩けば真司込みで芸能系からスカウトされることがある。魔法科高校に進学するなら、九校戦など表舞台に姿を晒す機会は格段に多くなると推測され、当然前述のスカウトの数などが多くなるだろう。
だからあらかじめリッチャーズの副社長として言わなくても、リッチャーズの社内製品モデルや社内製品モニター、試作デバイス(CAD)のテスターという立ち位置を与えることで、そういった煩わしい勧誘を「契約上個人でお話をお受けできないので全てリッチャーズの会社を通してください」と断ることができる。
そういう風に提案した。
またリッチャーズの副社長として真司のパートナーとして共に社交界に出て、社交界での経験を積ませることができるというメリットも提案する。
これらの真司からの深雪へのメリットを聞き、しばらく考えた後提案を承認した。
真夜としては将来的に深雪が婚約しなくても真司が真夜の義理の息子だと発表するなら、義理の息子を使って姪の次期当主としての社交界の経験を積ませたと説明できるし、そのまま婚約するなら何も問題ないと判断したのだ。
そして真司は深雪と何度か社交界に出席する。
その時に2人がビジネスネームとして社交界で名乗った名前が、葭原真士と葭原美雪である。
会社代表のプライバシー保護の観点から、本名を名乗らずビジネス上の偽名を名乗る文化が存在する。
それを利用して、社交界上で真司と深雪を夫婦として名乗ることを決めた。これは真司から深雪へと提案された内容である。
2人は当然未成年なので、結婚していない。財界のパーティーなどに出席する人から見れば、2人は未成年でも同じ苗字を名乗っている。ビジネスネームが偽名であるのは当然理解している。だから2人はまだ夫婦ではないが将来を約束したパートナーであると認識する。
そして真司と深雪の見た目の衝撃を見た者は忘れない。さらにリッチャーズカンパニーという起業されてから2年から3年で国内トップクラス、世界的に見ても有数の企業に成長している。特に魔法技術を初めとして、非魔法の科学技術など幅広い分野において最先端技術の特許を多数保有している企業である。特許や製品を有し、世界の技術を数十年は進めたとされるほどの謎の躍進を遂げた企業故に財界からの注目度は異様に高い。
そんな会社のトップ2人が未成年の学生でしかも美男子美少女のカップルで、同じ苗字を使ったビジネスネームを名乗れば、誰も忘れることはない。
そして社交界で2人の関係が将来を約束しあったカップルだと浸透すればするほど、後から真夜が2人の関係を引き裂くのは難しくなるように仕向けるのが真司の真の狙いである。
深雪からすれば、恋人になったから次は真司とどうやって結婚するかもしくは伴侶、妻になるのか考えようとしたところにこれである。真司から深雪を社交界でのパートナーとして周囲に認識させるという提案は、真司が深雪と結婚して妻にするという意思表示でもあり、真夜に2人を引き裂きにくくさせる提案でもあったので、真司の話に飛びついた。
真夜は2人が何度かパーティーに出席した後に、この話を聞いた。
真司の読み通り、元々真夜は真司を深雪の婚約者候補としてガーディアン兼付き人として、派遣していたのだ。
だから深雪が告白しても想定内であり、最悪のシナリオである達也に恋心を向けられるよりマシだった。2人が付き合い始めても止めなかった。真司からリッチャーズの副社長などの役職や立場を与える案も社交界にパートナーとして出席する案もメリットが上回ったから提案を飲んだ。
そして真司は深雪との関係の外堀を埋めに来た。真夜からすれば想定内のことではあるから、余計に止めにくい。2人が婚約する未来は想定される可能性の中の一つであるので真司のやっていることに反対し辛い。
真夜相手に政治を行うことができる手腕を捨てれない。達也のように魔法の技能だけが高いならともかく、真夜を相手にして根回ししつつ、自身が望む別の目的を遂げる政治力は捨てれない。特に深雪への影響を考えれば、深雪が恋する相手からそういった政治手腕を教わるのは、当主として望ましいからこそ真夜は真司のやっていることを止められなかった。
撤回させたところで、最終的に真司が深雪の婚約者になれば撤回させた意味が実質ないことも理由である。
次の話が今作最大の変更点になる