ラブコメの鈍感系主人公すぎる幼馴染♂の頼れる友人ポジである俺の日常がエロゲーすぎるんだが 作:三越利範
俺には公男というまことに残念な幼馴染がいるが、じつはもうひとり幼馴染がいるのだ。名前は
「だからさ、今は『
放課後の喫茶店で注文したフランクフルトに豪快にかぶりつきながら、誰も知らんような韓国アイドルの話を熱心に語る幼馴染。興味もないものの話を無理やり聞かされる身にもなってほしいよな。俺はブレンドコーヒーをすすりながらたぷたぷとスマホをいじる。その隣で、公男が椎奈の話に熱心に相槌を打っている。
「ちょっと、おかゆー! あたしの話ちゃんと聞いてる!?」
「聞いてるよ。包茎のチンカスがヤバいって話だよな」
「なんの話だよ! 全然聞いてないじゃん!」
椎奈はバンバンとテーブルを叩く。猿かよ。なんで俺の幼馴染にはろくなやつがいないのか。うんざりしてくるな。
――ちなみに、『おかゆー』っていうのは椎奈限定の俺のあだ名だ。『神岡友人』の真ん中二文字を取って『
俺達3人は小学校から続く腐れ縁。同じ中学を経て、同じ高校に進学した俺たちは、放課後にこうして喫茶店で駄弁るのが日常になっているのだった。
俺を相手にしても無駄だと悟ったのか、椎奈は公男に向き直る。
「公男はわかってくれるよね? 『ティンカス』の魅力!」
「うーん。『ティンカス』のことはわからないけど」
公男はきらりと白い歯を見せて笑う。
「好きなものの話をしている椎奈は、すごく魅力的だよ」
「ふぁ」
公男の歯の浮くようなセリフに、椎奈の顔が真っ赤になる。
「も、もー。公男ったら。急にはずいこと言うなし……」
ガジガジとストローの先を噛みながらデレデレする幼馴染。俺はげんなりした。例に漏れず、この椎奈も公男のことが好きなのである。もしかすると、一番最初に公男にオトされた女かもしれない。それなのに未だに恋仲になっていない時点でいろいろお察しだ。じつに残念な女である。
「はぁ……」
俺はため息をついた。
こんなんでも、椎奈は俺の初恋の相手なんだよな。昔の俺は今以上にひねくれたカスだったから、公男と椎奈以外のやつは話しかけてこなかった。俺はぼっちだったのだ。椎奈はそんな俺にも根気強く話しかけてきて、うぶだった俺は見事に恋に落ちたのだった。
まあ、そんな椎奈の本命は公男だと知って、俺は闇落ちしてしまったわけだが。世の女子に声を大にして言いたい。好きでもない男に軽率に優しくするもんじゃない。男は単純な生き物だから、優しくされるとコロッとオチてしまうんだよ。そうして人知れず枕を濡らす羽目になるのだ。
俺が遠い目をしていると、椎奈がこう切り出した。
「ねえ、ふたりとも。次の週末ひま? 実は、『ティンカス』の来日ライブがあるんだけど、一緒にいかない?」
そして、これみよがしに3枚のチケットを指で挟んで見せつけてくる。俺は察した。これは3人というていで、実質公男とのデートを狙っているな。俺は空気を読んで「用事があるからふたりで行って来い」と言うところか……。
「あー、俺は週末――」
「ごめんっ! 俺は行けないよ!」
俺は思わず隣に座る公男を凝視した。いや、おまえが断るんかい!
「今日知り合った女の子と、宇宙人を探す約束をしているんだ。だから俺は行けない」
「どんな理由だよ。そんな用事すっぽかしてこっちを優先するべきだろうが」
「ま、待って! おかゆー!」
俺が公男の胸ぐらを掴むと、椎奈が慌てた様子で仲裁する。
「先約があるなら仕方ないよ。……楽しんできてね!」
明らかに強がった笑みを浮かべ、椎奈はひらひらと手を振った。公男は申し訳なさそうに立ち上がる。
「じゃあ、俺は行くね。これから女の子とゲーセンで遊ぶ約束があるからさ。たまたまクレーンゲームでぬいぐるみを取ってあげたらなんか仲良くなっちゃってさ」
「ぶち殺すぞ。消えな」
俺が中指を立てると、公男は苦笑して、テーブルから伝票をさっと拾い、スマートに会計を済ませて店を出ていった。
公男が出ていったことを確認してから、椎奈はテーブルに突っ伏す。
「ああ~! またダメだった~! もー、なんでこうなるの??」
涙声だ。いろいろと稚拙だったが、こいつなりに勇気を振り絞ったのだとわかるから責められんな。
俺は、肩をすくめる。
「おまえはやり方が回りくどいんだよ。もっと直接的に言え」
「だって、告白しようとすると急に公男の耳が遠くなるんだもん。じつはおじいちゃんなのかな?」
「んなわけねーだろ」
まあ気持ちはわからんでもないが。公男が絡むと急に世界の理が歪むような気がするよな。これが主人公補正というやつなのだろうか。
「うー。もうどうしたらいいかわかんないよぉ! どうやったらあたしは公男の彼女になれるの?」
椎奈は頭を抱えて呻く。俺はコーヒーで唇を湿らすと、何気ない調子で切り出した。
「つかさ、俺で良くない?」
「……え?」
「あいつはもうダメだってわかったろ。俺ならおまえを悲しませたりしない」
俺が椎奈の目を見てはっきり伝えると、彼女はあからさまにうろたえた。
「お、おかゆーの気持ちは嬉しいけど……でも、あたしは公男のことが好きだよ」
「まあ、知ってるけどさ」
腐っても幼馴染。こんなやり取りは数え切れないくらいしてきた。いつもだったら俺も大人しく引き下がるところだが……。
「ひゃっ」
俺は椎奈の手をぎゅっと握りしめた。
「おまえの気持ちはわかってる。けど、俺だって譲れないものがあんだよ」
「お、おかゆー……?」
彼女の頬が赤くなり、揺れた瞳で俺を見る。
俺は明るい声音で言った。
「次の週末。デートしようぜ」
「え……」
――次の週末で、俺はこいつをオトしてみせる。椎奈をあの悪しき