異宗派のクソ女に村を焼かれ監禁セックスをさせられている俺の、歪んだ恋と復讐の物語 作:品川カタン
『これで君が最初っからパスラ派だったら、どうでもいい結婚とかする必要なかったのになぁ』
俺はあの言葉を言われた日から、丁寧に日付を数えた。
次の日は音が鳴るくらいの激しい雪が降った。ステンドグラスは雪に覆われて真っ白になっていて、外にもそれだけ積もったのだろうと思った。
そしてその次の日は雪が固まってしまったせいか外が騒々しかった。皆、氷を取り除くためにスコップやらで砕いていたのだろう。
その次の日は晴れていた。そしてまたその次の日も晴れていた。その次は、その次は、その次は……。
そして、今日は雨が降っていた。
父が生きていたなら、きっとこう言うだろう。「明日は誕生日なのにジメジメしていて嫌になるな」と。
そして〝僕〟は、こう返すだろう。「そうだね。でも、皆が祝ってくれることが一番嬉しいから天気なんて気にしないよ」と。
〝僕〟にとってその言葉は真実であるが、〝俺〟自身を表したものではない。
(明日、俺は聖魔法を使えるようになり、そしてフロローが結婚をする)
最近、フロローがこの部屋へ来る機会が少なくなっていた。来たとしても前のように何時間もいる訳ではなく、やることを終えたらさっさと帰ってしまうくらいだ。
彼女の父が、彼女と俺の〝真の関係〟を察しているのかは分からないが、これ以上会わせておくのは良くないと思っているのだろう。それでも俺を酷く嬲り殺したり外に捨てておいたりしないのは、やはり俺を監禁しておくことに得があると判断したからのように見える。見せしめに殺すのは祭司である父だけで十分であり、その息子を監禁し堕落させていると吹き込めば、それだけでミザヤ派信者の絶望感を煽ることができるからだ。
(莫迦なやつら)
ミザヤ派を何百人も殺し、パスラの奴らは傲慢になっていた。聖魔法を使える者へと力が集中するのを恐れているのにもかかわらず、自分たちに力があるとわかった途端に、怖いものなどないかのように振る舞い、潜む脅威にまで目が向いていない。
(俺は明日、確かに……聖魔法が使えるというのにな)
俺はベッドの中でじっと丸まり、来るべき日を待っていた。陽がのぼり、陽が沈み、そして次に陽が昇ったら、俺は計画を実行する。
だから今日の俺は蛹だ。静かに目を瞑り、羽を広げる日を待っている。そうして準備の時間が過ぎ、飛び立つことができるようになった時、目の前には新たな景色が広がるだろう。
だから今日は、なんの生産性もない、待つだけの夜を過ごすと思っていた。
足音が近づき、扉が開く音がした。
俺は思わず、起き上がった。
そこには黄色いネグリジェ姿のフロローがいた。
「…………」
俺はすぐには言葉が出なかった。今日ここで、彼女が部屋に来るとは思わなかったからだ。
扉が閉まり、互いに無言の時間が過ぎていく。彼女になんて言おうかとしばらく考えていると、先に声をかけてきたのはフロローだった。
「跡継ぎ、作らなきゃいけないんだよね」
静かに言う。
「避妊薬飲むのやめて、排卵を促す薬飲まされるの。家畜みたいじゃない?」
俺はただ、頷いた。どう返事をすれば良いのか分からなかったからだ。それに、家畜だと思ったのも事実だった。
「どーでもいい信者が夫になってさ、子供作ってさ、今よりも日常がどうでも良くなるだろうね〜。私って。そう思わない?」
これに対しては、頷かなかった。
フロローは、俺が頷くかそうじゃないかはどうでもよかったらしく、ぺたん、ぺたんとスリッパの底を踏んで俺のベッドの前へと来た。
そして、ベッドから起き上がって彼女を見上げていた俺の頬を掴んだ。
「でもさ、私からしたら」
暗い部屋で、彼女の金色の瞳がじっと見つめてきた。
「面白くもない男の子供を作るより……面白くて、頭が良くて、上品で、たまに下品な、可愛い男の子との子供が欲しいんだよね」
フロローはもう片方の手で、自分の下腹部を摩っていた。
話された言葉は少なかったが、俺はその瞬間に彼女の意図を全て把握した。
「ああ」
彼女は、抵抗をしている。
自分の人生の全てであるパスラの肩書きに縛られたまま、押しつぶされそうな孤独の道を歩き、そして抵抗をしている。刻まれた傷や痛みのせいで父に反抗ができなくとも、彼女は必死に空へと手を伸ばそうとしているように見えた。
空は罰だ。踏みしめる地もなく、不安定な空気の上を歩かされる。だけど彼女は、曇界のようなこの世よりも空の方がマシだと思ったのかもしれない。孤独で雲の上を歩くことになろうとも、どうせ一人であることに変わりはないからだ。
何故、彼女の心をそこまで理解できるのかというと、俺もそうだったからだ。父から痛みを与えられている時、目に映るベッドのシーツが苦しかった。だから、果てしない空を歩き、永遠の孤独と不安を味わうほうが、理解のない隣人と共に過ごすよりはマシだと思っていた。
だから彼女のことが好きだ。愛している。彼女は周囲から与えられた役割や、他者の目に映る自分の姿を本当の自分だと思い込んでいるため、自分が孤独だとは気がついていない。それでも、孤独だ。そして、無自覚に佇んでいる孤独が共鳴したことにより、彼女も俺を愛したのだろう。だから俺を拾い、そして今ここに足を踏み入れ、共に子供を作ろうと提案をしたのだ。
そうして俺たちは初めて、今ここで本当に通じ合うことができている。周囲の誰にも定義されない本当の愛が、今、確かにここに存在をしていた。
「フロロー」
俺は彼女の手をそっと引っ張った。
「子供を作ろう」
その一言で、俺たちは服を脱ぎ始め体を重ね合わせた。
彼女が上に乗り、抱き合った。薄暗い部屋の中だからか、白い肌が少し青くなっているように見えた。
そっと胸を触った。柔らかい感触が手いっぱいに伝わってきて、ゆっくりと揉み続けると「んっ♡」と小さな声が聞こえた。フロローも、パンツの中に手を入れて勃起した俺のものをゆっくりと上下に擦る。頬、肩、唇へと順番にキスをしていき、互いの吐息が乱れあっていくのを感じた。
「じゃ、私この姿勢好きだからこのまま挿れちゃうね♡♡」
フロローがパンツを脱がせ、勃起した竿を寝かしたあとにそれをしばらく自分の股へと擦り付けていた。
「……っ、挿れないのか……」
「まーだ♡♡ 焦っちゃダメー♡♡ しっかり焦らした方が赤ちゃんできやすいよ♡♡」
ぐちゅ、ぐちゅとフロローの柔らかい腟肉に俺の竿が擦れる。愛液でぬるぬると滑らかに上下し、その構図のいやらしさに亀頭から我慢汁が出ているのを感じた。
擦れ、滑り、そして時々挿入しそうになる。ぬる、ぬると股の下で俺の勃起したものがぴくんと反応している。
「フロロー、そろそろ……っ」
「も〜〜しょうがないな〜クロードくんは♡♡ えっちが我慢できないワンちゃんのためにそろそろしてあげる♡♡」
そして、フロローのクリトリスへ亀頭が当たった時、重心をかけてゆっくりと竿が腟内へと侵入した。
「ふうー♡♡ 最近あんまえっちなことしてなかったからちょっときついね♡♡」
あまり、といっても数日くらいなのだが、その前までの俺たちはほぼ毎日行為をしていたから、確かに久しぶりに感じていた。
フロローの腰を掴み、竿を奥まで挿入させる。そして、フロローもそれに合わせて腰を上下に動かし、ぱちゅんぱちゅんといやらしい水音が響いた。
俺は久しぶりの性行為に、頭が蕩けそうになっていた。自分では蛹のように眠っていたと思っていたが、俺の中では確かに性欲が募っていたらしい。その全てをぶつけるように、フロローの中をどんどんと責めていく。
「はあっ、フロロー、フロローっ」
「んっ♡♡ あっ♡♡ クロードくん、ちんぽガチガチでかわい〜〜♡♡ 私とえっちなことするの久しぶりだから興奮しちゃった?♡♡」
フロローは相変わらず生意気に俺を煽ってくる。それに苛ついて、もう少し激しく腰を打ち上げてやると、明らかに効いている媚声が聞こえてきた。
「ん゛っ♡♡ クロードくん、やり返すなんて生意気〜〜♡♡ じゃあまた一緒に我慢ごっこしようよ、我慢ごっこ♡♡ 先にイッたほうが負け〜〜♡♡」
その瞬間、フロローの腟内がぎゅうっと締まった。俺の精液を一滴も残らず搾り取ろうとするように、腟の中にある触手のようなヒダが俺の竿に絡みついて蠢いている。射精しそうになるのを堪えて腹に力を入れ、俺はフロローと共に互いの欲望をぶつけあった。
「あっ♡♡ だめそれっ♡♡ クロードくん私の弱いところしっかり知ってて偉いね♡♡ でもイッちゃうからだめっ♡♡」
「うるさい、イけよ、先にイッて負けろよ!」
「じゃあ私もクロードくんが弱いことしちゃお〜〜♡♡」
フロローが俺の両手を掴み、自分の胸を思い切り触らせてくる。上下していた腰から思い切り腟の奥まで亀頭を沈みこませ、スライドするように腰を動かし俺の物をしっかりと責めてくる。その快感に腰が震え、頭の中が一瞬だけ真っ白になった。
「うあっ、それ、それやばい、フロロー!」
「ほ〜〜らクロードくんが私にえっちで勝とうだなんて百年早いんだよ〜〜♡♡ どう?♡♡ 気持ち良い?♡♡ おちんちんビクビクしててかわい〜〜♡♡」
とはいえ、フロローの顔も真っ赤に染まっており彼女もイクのを我慢しているんだと思った。それがどうしようもなく愛おしくなり、俺はフロローの胸から一度手を離して背中から抱き寄せ、思いっきりキスをして舌を絡めた。
「フロロー、好きだ、好きだ、愛してる!!」
「んうっ♡♡ クロードくん、私も好き♡♡ 大好きだよ♡♡ 愛してるよ♡♡ 赤ちゃん作る準備できてるから、いっぱい中に出して♡♡」
お互い舌を絡めながら言葉を交わしているせいであまり上手く発音できていなかったが、それがまた逆に興奮を掻き立て俺はフロローの下で激しくピストンをした。びくびくと震えるフロローの中が、そろそろイキそうだと物語ると共に俺の射精を促していた。
「あ゛〜〜っ♡♡ イキそう♡♡ イク、イク、イッちゃう♡♡♡」
「フロロー、俺も、俺もそろそろ、出そう!!」
「じゃあ一緒にイこ♡♡ 今回は引き分けだね♡♡ ちんちんからいっぱい精液出して私のことちゃ〜〜んと孕ませてね♡♡ 出せ♡♡ ほら出せ♡♡」
フロローが俺の動きに合わせて思いっきり腰を打ち付けた瞬間、お互いびくびくと身体が痙攣して同時に絶頂した。フロローは顔を真っ赤にしながら口をぎゅっと閉じていて、俺はフロローの奥へと射精している。腟の中で、スポイトするように精液が上って行く感覚がして、俺の竿もその動きに合わせて搾り取られていく。
「はあっはあっ、はあっ」
「ふうーっ♡♡ ふうーっ♡♡ クロードくん、全部出したね♡♡ 精液こんなに溢れちゃった♡♡」
引き抜いていないのに、結合部分から精液が溢れて伝っていく感覚がする。俺たちは、そのまましばらく中に挿れたまま、動かずにずっと抱きしめあっていた。
そして、フロローが俺の耳元で呟いた。
「私たち、これで最後だもんね」
顔を見せずに、ぼそりと小さな声でそう言い、そこからは無言になった。
「…………」
最後、最後か。
彼女は、本当にそう思っているだろう。
「ああ、そうだな」
今の時間は何時だろうかと思った。
だけど、そろそろ十二時になる頃だろうというのだけはわかっていた。
「クロードくん」
フロローが笑いながら、俺の顔を見た。
「本当に愛してたよ。またね」
そうして、もう一度軽くキスをした。
……俺たちは数十分経ったあと、ようやく抱きしめるのをやめて身体を離した。
フロローは自分の部屋へ帰る時に、いつもと同じような笑顔で「じゃあね〜」と言っていた。俺も普段と変わらないように手を振り返した。
やがて扉が閉まった。
「…………」
自分の手を見つめた。
どこにも時計がないのに、時計の針の音が響いているような気がした。
「10」
数えた。
「9、8、7」
数えていく。
「6、5、4、3、2」
俺の誕生日までのカウントダウンを。
「1」
復讐が始まる。
「0」
──そう口にした瞬間、夜の景色が確かに変わった感覚がした。
何かが光ったわけではない。音が鳴ったわけでもない。ただ、世界が一瞬だけ呼吸を止めたような気がした。
窓から落ちるぼんやりとした月明かりが、床の上に静かに伸びている。俺はそれを見つめながら、今まで光だと思っていたものが、光ではなかったのだと気がついた。
その向こうに、もうひとつの光があった。
目を閉じても消えない。瞼の裏にも、指先にも、胸の奥にも、同じものが存在していた。
世界が、いや、俺だけがぐるりと一周している感覚に襲われる。手から、熱い何かが溢れる。魔法だ。風がないのに髪の毛がバサバサとはためく。俺はゆっくりと手を持ち上げ、首輪に触れた。すると──ガシャン、と音を立てて、首輪が崩れていった。
粉々になって消えていくそれを、俺はずっと見つめていた。
「……ははっ」
そうか。
「ははっ、はははははっ!!」
神っていうのは、本当にいないんだ。
俺は目覚めた。聖魔法に、本当に目覚めてしまった。穢れなき力だと信じられているそれは、俺がこれからどんなことを実行するのか一切理解していない。ただ、聖職者の血縁者である俺に力を与えるのみだ。それが義務だとでもいうように、生命としての理とでもいうように、いや、ただの現象のように!
「神よ!! お前という存在は──よっぽど節穴で、クズで、莫迦な生き物なんだな!!」
いるはずの無い存在に俺は叫ぶ。信仰という習慣の中で生きている人間たちを、思いっきり嘲笑うために。
俺は、虐殺クソ女に恋をした。
村は一晩にして焼け野原へと変わった。
同胞が暮らす村中に絶叫と悲鳴が響き、実行犯の狂信者は限界まで残虐になった。被害者のはずの村人は狂って同じ住民を殺し出した。
その惨劇を扇動したのは、異宗派の狂信者である一人の女だった。
俺は全てを焼いたクソ女に、そしてパスラのクソ共に──復讐をする。