色欲の悪魔 作:アスモデウス
ホテル内に入り、一階から順に悪魔がいないか見て回る。
その最中にデンジ君に疑問を投げ掛けた。
「デンジ君、マキマとはどんな話したの?」
「俺が銃の悪魔を殺したら、マキマさんが俺ん願い何でも一つ叶えてくれるって話してました。だから俺、マジで銃の悪魔探すんで期待してて下さいよ」
「ほぉ〜アキ君の前でそれを言うか!」
「お前が銃の悪魔を…?」
アキ君はデンジ君を見る。
その顔には動揺やら期待やらが入り混じっていた。
「マキマからのご褒美かぁ。デンジ君は期待されてるんだね」
「ラストさんはデンジが殺せると思いますか?」
「デンジ君は殺せないだろうね」
「えぇ!?」
「でも、デンジ君の中にいる悪魔は倒せるかもしれない」
「チェンソーの悪魔がですか?名前だけなら銃の方が強そうですけど」
「マキマも言ってたでしょ。デンジ君は特別なの」
「本当に何者なんですか、コイツ」
「それよりほら、悪魔探さないと。デンジ君の話なんて後で幾らでもできるでしょ」
「………それもそうですね。今は悪魔駆除に集中しましょう」
話を無理矢理切り上げて悪魔探しを再開する。
デンジ君とパワーちゃんはゲームを買って貰うのに必死である。
「姫野先輩の新人達は使えそうですか?」
「荒井君は実力不足だけどやる気は充分って感じ。逆にコベニちゃんは引っ込み思案だけどかなり動けるかな。アキ君の方は?」
「血の魔人は強いですが短気で、ラストさんの言うことしかまともに聞きません。デンジはまだ知らない要素が多過ぎて分かりません」
「この新人4人…生き残れると思う?」
「コイツは強いなと思った奴もそうでない奴も一年あれば死ぬか民間に行きます」
「答えになってないな〜。ラスト君はどう思う?」
「そっちの新人は分からんけど、デンジ君とパワーちゃんは生き残れる才能はあると思うよ」
「ふ〜ん、意外な高評価」
二人とも適度にイカれてるし、岸辺に教育させたら大分強くなりそうだ。
マキマもその内、デンジ君の実力不足を気にして指導を行うだろうし、期待は大きい。
何よりチェンソーマンが復活する可能性もある。
だからこその監視だ。マキマは半年以内に色々仕掛けるだろう。
そう思考に耽っていると、悪魔の匂いを嗅ぎ取る。
姫野も気配を感じたようだ。
「アキ君……来る」
前の部屋の扉が開き、小さな悪魔が姿を現す。
頭に手が生えた奇妙な形の悪魔だ。形状から何の悪魔か予想し難い。
悪魔が東山ちゃんに襲い掛かる。
「捕まえた」
「う、ぁうあ……あ、え?」
「浮いた…!?」
姫野がゴーストの右腕で悪魔を捕らえる。
そこをパワーちゃんが血の武器で攻撃した。
悪魔は真っ二つになり、地面に落ちた。
「悪魔め!ワシにビビって浮きおったわ!ガハハハハハ!!」
「違う違う私の力!私のゴーストが捕まえたの!」
「ゴースト?」
「私は幽霊の悪魔と契約してる。私の右目を食べさせた代わりにゴーストの右手を使えるって訳。透明で力持ちで便利でしょ。どう?アキ君。銃野郎の肉片はある?」
「強い反応はなし。コイツじゃないですね」
「そっか……じゃあ、上の階に行くか!」
そうして俺達は更に階段を登って9階に辿り着く。
すると、荒井君が疑問の声を漏らした。
「あれ…?」
「どうした」
「俺達今…8階から9階へ行く階段を登りましたよね?」
「ああ」
「此処も8階ですよ?」
「見間違いか数え間違いじゃねえのお〜?」
「違う!確認してくる!」
荒井君は8階の階段を降りて行く。
すると9階に続く階段から8階に降りて来た。
「あれ……?」
「荒井君今…階段を降りて行ったよね…?」
「不味いな。閉じ込められた」
「どういうことすか?」
「この階だけ外界から切り離されてる。俺らはもう悪魔の胃の中だ」
「そ、そんなこと…有り得るんですか?」
荒井君が恐る恐る聞いてくる。
俺は頷いて答える。
「全然有り得る話だよ。まあ、自分の目で確かめた方が早い」
「コベニちゃん、ダブルピースでじっとしてて」
「えっ、えっえっえっえっ」
姫野が階段を駆け降りて行く。
そして荒井君と同じように8階に辿り着く。
「ありゃりゃ……」
「え〜!?えっ、ええっ、え〜!?」
「コベニ!そこに立ってろ!」
「えっ」
アキ君が適当な部屋に入って行く。
そして反対の扉から出てくる。
「え!?う、ええ〜!?」
「おい!どの窓も外にゃ出られねえ!向かいの部屋に通じてるぜ」
「8階に閉じ込められた……」
◇
「状況を確認する。恐らく悪魔の仕業で8階の階段からどれだけ登っても降りても8階に着く。エレベーターは何故か使えない。部屋や窓からは外に出られない。天井を登ってみたが、上も8階だった」
「パワーがその悪魔殺しちまったからじゃねえのか〜?閉じ込める力を使ったまま死んだんだ!その悪魔が」
「ウヌが殺せと言ったんじゃ!」
「言ってねえ!」
「力は悪魔が死ねば解除されるからそれは有り得ない」
「アキ君、肉片の反応は?」
「それが…全く反応がなくなりました」
「この悪魔を囮にまんまと嵌められたって訳か…こんなトリッキーなことしてくる悪魔初めてだね」
荒井君が冷や汗を流しながら疑問を溢す。
「でも…俺達が此処からずっと帰って来なかったら…他のデビルハンターが助けに来てくれるんじゃ…」
「そのデビルハンターが私達みたいに嵌められないことを祈るしかないね」
「私達、ここで全員死んじゃうんだ……お腹ペコペコで死んじゃうんだ…」
「こっ…コベニちゃん!気張れ!デビルハンターやって兄を大学に行かせたいんだろう!?」
「半分無理矢理なんです……親が優秀な兄だけは大学に行かせたいからって私に働かせたんですぅ〜…風俗かデビルハンターしか選択肢なかったんですう〜!私も大学行きたかったんですぅ〜!!でも此処で死んじゃうんですう〜!!」
東山ちゃんが涙を流して怯える。
それを見てパワーちゃんが腹を抱えて笑い出した。
俺も少し背筋がゾクゾクするのを感じる。
「コベニちゃん…悪魔は恐怖が大好物だからね。怖がってたら相手の思う壺だよ」
「でも怖いんですう〜!」
「アキ君までどうしたの?」
「部屋の時計…さっきから8時18分です……どの部屋の時計も8時18分で止まっていました…ラストさん、時間を止める能力ってありますか?」
「あるよ。俺も使える」
「なら、やはりこの8階だけ悪魔の力で時間が止まっている可能性が高い。その場合助けは来ないかもしれません」
「凄え!じゃあ寝放題じゃねえか!!」
「流石デンジ君、良い感じにイカれてる」
「どうするんですか……?助けも来ないかもしれないなんて……」
アキ君が暫し考えて口を開く。
「ラストさん、どうして最初に此処が外界から切り離されてるって分かったんですか?」
「同じような能力を持つ悪魔と戦ったことがあるからね」
「その悪魔って?」
「老いの悪魔。超越者の一体だよ。暇潰しに殺し合いをしたんだ。その時に異空間に閉じ込める能力を使われてね。悪魔としての能力も封じられる世界だったからかなり苦労したなぁ」
「どうやって出たんですか?」
「同格だったから能力の封じ込めもかなり緩和されてたんだ。だから残った能力で悪魔の力の繋がりを辿って遠隔で攻撃して殺した」
「殺した?なら、老いの悪魔は現世に来たんですか?」
「いや。表現が悪かったね。俺の能力を使って俺が老いの悪魔になったんだ。そうすると元老いの悪魔は存在できなくなり、そのまま消滅した。だから現世で暴れる心配はないよ」
「ラスト君は色欲の悪魔じゃないの?」
「俺は色欲の悪魔で、老いの悪魔でもあるってことさ」
「それって色欲の能力なんですか?」
「違うよ。存在を奪うのは俺の本来の能力」
「存在を奪う悪魔か。そりゃ恐れられる訳だ」
姫野がタバコを吸いながらそう溢す。
「じゃあ、悪魔さえ見つければラストさんの力で此処から抜け出せるってことですね」
「そゆこと。頑張って探そうか」
そうして8階での悪魔捜索が始まった。
・ラスト
存在を奪う能力が本来の力。
色欲、音、触手、老いの悪魔の存在を奪っている。
存在を奪う際に記憶改竄を行うことができる。ラストはその能力で自分が元から色欲の悪魔であると世界の記憶を改竄した。