色欲の悪魔 作:アスモデウス
「「「「カンパーイ!!」」」」
ビールの入ったジャッキを互いに触れ合わせ、声を揃えて乾杯する。
アキ君が勢い良くビールを飲み進めていく。
「美味い。飲むの半年ぶりです」
「私も家で少し飲むくらいですね」
俺と姫野は早速ジャッキを空にして、パワーちゃんは刺身を独り占めしている。
デンジ君は餃子に目を輝かせ、東山ちゃんが遅れて来る。迷子になったらしい。
「マキマさん遅れて来るって!」
「こんな美味しいご飯初めて食べました…!」
「コベちゃん、お金殆ど家入れてるもんね…沢山食べな?」
「取るな盗人!唐揚げは全部ワシのじゃ!」
「すいません!唐揚げと刺身追加で!」
パワーちゃんが独り占めした分を補充する。
アキ君が伏君に質問する。
「伏さんとこの魔人は連れて来なかったんですか?」
「此処には怖くて連れて来られないですね。早川さんところの魔人ちゃんは理性が高くて良いですね」
「おら、若いんだからもっと頼め!食え!!」
「ああクソ!読める漢字が少ねぇ!」
「読めないなら教えてあげるよ。どれが気になる?」
そうしてワイワイと飲み会は進んでいき、新人の自己紹介のターンになった。
「俺デンジ〜。歳は確か16!趣味は…食うのと寝るの」
「16歳!?ヤバっ!若っ!」
「えっ…!」
「アンタ酒飲んでないよね!?」
「お茶」
デンジ君はこの前言ってたことをちゃんと覚えていたようだ。
未成年飲酒を公安がやるのは不味いからね。
「私は荒井ヒロカズです!22歳!契約している悪魔は狐!趣味は俳句です!」
「早パイと契約してる悪魔同じじゃん」
「狐の悪魔は人間に友好的だから沢山のデビルハンターとけいやくしている」
「頭はイケメンしか使えないんだよ!狐の悪魔面食いだから!」
「荒井君、試しに一句詠んでみてよ」
「ラスト君、それ最悪な振りだよ?」
「え〜。気になるじゃん」
荒井君は狐としか契約していないらしい。
そういう奴は意外と多い。何せ、狐は契約で払う代償が比較的軽い。なので新人でも気軽に契約できるのだ。
「東山コベニです。20歳です……契約してる悪魔は……秘密で。趣味は美味しい物を食べることです」
「俺もコベちゃんって呼んで良い?」
「あっ…はい。大丈夫です……」
「ありゃあ〜?伏さんとこの新人は?」
「残念ですが昨日亡くなりました」
「南無阿弥陀仏!ほうれん……ほうげん……げきょ〜?」
「先輩もう酔ってるな」
新人が死んだことを軽く流された為にコベちゃんと荒井君が冷や汗を流す。
「そんな簡単に死ぬんですか…?」
「民間で無理だった悪魔が公安に任されるからな」
「まあ、バンバン死んでくよね。私の同期ももう公安にいないし」
「長生きしたい奴がする仕事じゃないわな。あ、パワーちゃん、それ俺の唐揚げ……」
「唐揚げはワシのじゃ!」
「また頼むか…」
俺が沈んでいるとマキマが到着する。
アキ君が流れるように席を作った。
「本物のマキマさん初めて見た……」
「マキマさ〜ん!」
「マキマ、また銃の肉片を拾ったよ」
「前までこんな早いペースで肉片を持つ悪魔は現れませんでした。この間のデンジを狙った悪魔と言い、最近少し悪魔の動きが怪しいですよ。マキマさんはデンジのこと何か知ってるんじゃないですか…?」
「私より飲んだら教えてあげる」
「……すいません、生二つ」
「アハハ、私もソレやるぅ〜!生もう一つ〜!」
「馬刺し!唐揚げ!馬刺し!」
「からあげ!」
飲み会も盛り上がり、各々が好き勝手に注文し始めるのだった。
◇
「すいません、生もう一つ……後…グラス片付けて貰って良いですか?」
「んでも凄いよパワちゃん。殺人衝動を抑えれる魔人はとっても少ないんだよ」
「ワシはIQが高いからのお!」
「IQで決まるの?そういうの…IQどれくらいあるの…?」
「…100?」
「100って高いの?私も確か100くらいだったけど…」
「じゃあ120じゃ」
「伏さんは高いんだよね。確か」
「134でした」
「態々覚えてる辺り自慢に思ってそう」
伏君が呆気に取られた顔をする。
余りにも罠すぎる会話の流れに思わず笑ってしまう。
アレは回避不能だろう。
そうして楽しく飲み続け、皆が腹を満たしたら解散の流れだ。
「早川家は私が送っていくよ。ラスト君だけは姫野ちゃんをお願いね」
「りょーかい」
「皆さん、マキマさんの奢りだから感謝しましょうね」
「人のお金で飲むお酒が一番美味しいですね」
「ね!」
姫野に肩を貸して歩いていく。
姫野は完全にグロッキーである。悪魔相手に酒で勝負なんてするからだ。
俺は姫野を定期的に介抱しながら家まで送るのだった。
◇
翌日、早川家+姫野での小規模任務の後に昼飯としてラーメン屋に入った。
味はそこそこで、量も値段も普通。
デンジ君は美味しそうに餃子を食べている。昨日の飲み会で食べてから気に入ったようだ。
少し食べ進めたところで遠くから銃声が幾つも響く。
「何だこの音」
「知らんとは愚かじゃの……太鼓の音じゃ」
「祭りか…」
「いや、銃声だよ。今のは」
「銃って……こんな街中で?」
「地獄で銃の悪魔に絡まれた時に聞いた音と同じだ。何処かで襲撃があったみたいだ」
「急いで店出ましょうか」
アキ君の提案に頷いたところで隣の席の客が口を開いた。
「此処のラーメンよく食えるな……味酷くないか」
「誰…?」
「味の良し悪しが分からないんだな。まあ、仕方ないことだ。幼少期に同じような味のもんしか食べてないと大人になって馬鹿舌になるらしい。舌が馬鹿だと幸福度が下がる」
「何でも美味しいって食える方が幸せだと思うけど」
コイツの匂い。デンジと同じだ。悪魔でも人でも魔人でもない存在だ。
「俺の爺ちゃんは世界一優しくてな。高い店で良いもん食わせて貰ったな〜。爺ちゃんヤクザだったけど、正義のヤクザでさあ…必要悪って言うのかな…爺ちゃんみたいな人はさ。女子供も数える程しか殺したことないんだと。薬売った金で欲しいもんなんでも買ってくれてさ…み〜んなに好かれた江戸っ子気質の良い人だった…デンジ、お前も好きだったろ?」
「何のつもりだテメェ…」
「知り合いか?」
「銃の悪魔はテメェの心臓が欲しいんだとよ」
男は銃を取り出して発砲する。
俺は時を止めて空中で静止した銃弾に触れて砂に変える。
男の体を蹴り飛ばし、時を動かし始めた。
「ぐっ…!」
「何じゃあ!?」
爆風で店が吹き飛び、男も後方に吹っ飛んでいく。
デンジ君達は壁に掴まることで何とか耐え凌いだようだ。
「それぞれ戦闘準備。目標はデンジ君と同じ悪魔の心臓を持つ男だ」
「俺と同じ!?」
「何者なんですか…?」
「さぁ…だけど、デンジ君の心臓を狙ってるのは確かだ」
男が吹き飛んだ方から頭と腕から刀を生やした男が現れる。
男は腰を下ろして腕を構えると、次の瞬間には俺の背後に立っていた。
「ぐわあああ!!」
しかし、男の方が全身がバラバラになって地面に転がる。
すれ違う直前に精力の糸で切り裂いたのだ。
居合の速度は素晴らしいが、到底俺には及ばない。
「刀の悪魔の心臓持ちだから、サムライソードとかだと呼び易いな」
不意に別の匂いを嗅ぎ取って前を向く。
そこには小柄な金髪の女性がいた。目は爬虫類のような赤い瞳で、額からは冷や汗を流している。
そして左手を此方に向けた。
「蛇、丸飲み」
瞬時に出現した蛇の悪魔の攻撃を片手で止める。
そして蛇の頭を圧力で押し潰した。
蛇は物言わぬ屍となって地面に倒れ伏した。
「なっ…んなんだ!?こんな化け物がいるなんて聞いてない!!」
「君は何処の差し金かな」
「クソッ…!」
女が逃げ出そうしたので首を掴んで逃亡を阻止する。
他の敵は俺にビビって出て来れないようだ。
その内、マキマによる遠隔からの敵の圧殺が始まった。
俺は残った女とサムソを連行する。
話は庁舎でじっくり聞くとしよう。
・ラスト
悪魔なので最悪な振り方をする。
サムソと蛇を瞬殺した。
・サムライソード
居合をしたら返り討ちにされた。
公安にて拘束中。
・沢渡アカネ
蛇を瞬殺された。
所属する組織がラストのことを把握していなかったので楽に勝てると思っていた。
公安にて拘束中。