色欲の悪魔 作:アスモデウス
翌日、俺は再び公安庁舎に赴き、新しいバディである天使の悪魔と合流することにした。
天使の悪魔は複数の監視が付いた状態で俺の前へと現れた。
俺は監視員達に向けて口を開く。
「監視ご苦労様。もう下がって良いよ」
「…君が僕の新しいバディ?」
「あぁ。俺はラスト。色欲の悪魔だ」
「ラスト……ああ、噂で聞いたよ。どうしようもない女好きだけど、人間に友好的で積極的に力を貸してるって」
「まあね。君の方は怠け癖があって、勤務態度に問題がありって聞いたけど?」
「働くくらいなら死んだ方がマシだね」
「極まってんな〜。まあ、良いや。見回り行くよ」
「えぇ〜…」
渋い顔をする天使の悪魔を引き摺って俺は見回りに向かうのだった。
◇
一時間程巡回エリアを歩いたところで天使が口を開く。
「暇なんだけど」
「そりゃあ、大抵の悪魔は俺にビビって逃げ出すか隠れるからね」
「僕、居ても居なくても良くない?」
「公安はバディ制度だから仕方ないよ。それより腹減ったからどっか食いに行こ」
俺はご飯と聞いたら素直について来る天使君を連れて適当なステーキ屋に入る。
そして一番量のあるメニューを二人とも注文する。
「天使君って意外と食べるんだ?」
「まあ…そこそこ。君の方こそ意外……じゃ、ないな。君、背丈異常に高くない?」
「これでも元はそれ程大きくなかったんだよ。それこそ最初は子供くらいのサイズしかなかった。でも、精力で自身を強化する程大きくなっていった」
「精力で強化?何それ」
「俺の操る精力は生命の源。だから、それを自身の糧とすることで基礎的な力を底上げしていったんだよ」
「ふぅーん…それでどれだけ強くなったの?」
「銃の悪魔よりも」
天使君が運ばれて来たステーキに手を付けようとして止まる。
そして信じられないという感情が浮かんだ表情をした。
「……マキマから聞いたけど、君は公安で一番強いデビルハンターなんだってね。普通に考えたら銃の悪魔よりも色欲の悪魔の方が強いなんて有り得ないけど、有り得てるから公安で重宝されてるんだろうな」
「現実に起きてることが真実さ。弱い悪魔なら君と組まされることもないだろう」
天使君はステーキを頬張りながら考え込む。
俺は雑談代わりに今度の任務について話すことにした。
「明日、沢渡とサムライソードが拠点としていたヤクザの事務所に乗り込む。そこが新特異4課のお披露目だ。天使君もしっかり働くようにね」
「えぇー…面倒臭い」
「頑張ったら俺からマキマに天使君の休日を増やすように打診してみるよ」
「それならまあ…やってあげないこともない」
天使君はやる気さえあれば強い。そして働くのが面倒だと感じている。だから天使君の欲しがる休みを餌にすれば簡単にやる気を引き出せる。
所詮は残党狩りだし、そこそこのやる気でも十分活躍できるだろう。
俺はそんなことを考えながらステーキを食べ始めるのだった。
◇
対魔2課がビルを包囲している。此処はサムソの活動拠点である。
岸辺が話し始める。
「作戦はない。特異課全員をビルにぶち込む」
「じゃ、適当に殲滅すれば良いの?」
「人は殺すな。悪魔がいたら殺して良いぞ」
「よっし。デンジ君、活躍の機会だぞ。やる気は充分か?」
「うっす。マキマさんとランデヴーする為にも良いとこ見せないといけないんで」
「その調子だ。さ、中に突入〜!」
ビルの正面入り口から中に入って行く。
一階は静かなもので敵の匂いもしない。
ただ、下からかなりの数の腐臭がする。下にゾンビがいるのだろう。
「デンジ君とパワーちゃんは上階、俺と天使君は地下に向かう」
デンジ君達に指示を出し、階段を使って地下に降りる。
そこでは既に戦闘が行われており、特異4課のメンバーがいた。
暴力の魔人と鮫の魔人、そして蜘蛛の悪魔だ。
天使君は寿命武器を取り出してゾンビと戦い始める。
俺も適当にゾンビを殺して回る。
ゾンビに噛まれると人間はゾンビになるが、人外にはそんなこと関係ない。
だから単に鈍重な動きの敵を相手にしている感覚だ。
俺からすると欠伸を噛み殺せる程遅い。
「ラスト、こっち来て」
不意に天使君に呼ばれたので其方に向かう。
するとそこには厳重に鍵の掛けられた金庫があった。
俺はそれを無理矢理開いて中の物を検める。
それは体感で1.5kg程ある銃の悪魔の肉片であった。
ゾンビの中に置いとけば誰も触れられないと踏んでいたのだろう。
「これは俺が公安に届けておく。天使君は引き続きゾンビの処理宜しく」
そう指示して俺は肉片を持って外に出る。
そして外で待機している岸辺に肉片を渡す。
「デカいな。公安の分と合わせると本体の方まで引き寄せられるかもな」
「いよいよって感じだ。アキ君の敵討ちが叶う日も近い」
「それまでにアイツが生きてられればだけどな」
「公安の動き次第でもある。銃の悪魔を殺さずに拘束するとか言い出したら仇は取れない」
「まぁ、お前がいるんだ。抑止力は充分だろ」
「それも含めての今回の任務なのかね」
俺の存在を他国に知られた方が公安にとっては利益になる。
勿論、引き抜きのリスクはあるがそれ以上に抑止力、或いは兵器としての運用を期待されている。
俺は特級の爆弾のようなものだ。使えば国一つ堕とすのに一日と掛からない。
だからこそ、公安も俺に対する待遇が良いのだ。
だが、別に俺は日本の味方という訳ではない。
あくまでも都合が良いから、互いに利益があるから手を組んでるだけだ。
俺に敵対するような動きを見せればすぐにでも切り捨てる。
その程度の関係性である。
いつか、公安とも敵対する日が来るかもしれない。
そんな風に夕焼けに染まる空を見上げながら未来に想いを馳せるのだった。
◇
ヤクザの残党処理は滞りなく終わった。
人外達が逃げ出すこともなく、ゾンビは綺麗に処理され、人間は逮捕された。
今回の騒動で捕まえた奴等はテロリストとして扱うらしい。
早川家は姫野を追加して打ち上げを行った。
デンジ君とパワーちゃんが寿司が良いと言うので出前を頼んだ。
そうして酒を飲みながら寿司を食べ、皆で雑魚寝した。
アキ君はデンジ君の足を枕にして眠っていた。
姫野は俺に抱き付いて離れなかった。
朝になるとデンジ君が真っ先に目を覚まし、パワーちゃんの角が4本に増えてることに気付き、未だ夢の中なのかと寝惚けていたらパワーちゃんの腹パンを食らったらしい。
その物音で全員が目を覚まして片付けを始めた。
そして全員で朝食を済ませてそれぞれ仕事に向かった。
パワーちゃんは血抜きで暫く公安に留まるらしい。
姫野とアキ君は小規模話任務、俺と天使君は見回りに行くことにした。
見回りの途中で小腹が空いたので近くの二道というカフェに入った。
そこで店員から奇妙な匂いを嗅ぎ取る。
それはデンジ君とサムソと同質の匂いだ。此処はデンジ君の巡回エリアと被っている。狙いはデンジ君の心臓だろう。
早速新しい刺客が送り込まれたようだ。
俺は店員が近付いた瞬間に小声で話し掛けた。
「チェンソーの心臓が欲しいなら、先ず俺を殺すべきだと思うよ」
「……何の話ですか?チェンソー?」
「惚けても無駄だ。俺は悪魔だから匂いで君がデンジ君と同じ悪魔の心臓を持つ者だと分かる」
そう言えば、店員は首のピンに手を掛けた。
恐らくそれが変身のトリガーなのだろう。
「やめておけ。君がピンを抜くより早く君の腕を切り落とせる」
「……何が目的?」
漸く此方の意図に気付いたらしい。
そう、俺は今のところこの子を捕らえる気はない。
「君はソ連から送り込まれた刺客だろう?だけど、俺はできるだけ可愛い子の味方をしたいのさ。公安に差し出せば君はマキマのものになってしまうからね。デンジ君さえ狙わないなら見逃してあげる」
「……はぁ。折角潜入できたのになぁ。沢渡を捕まえたのも貴方でしょ」
「そうだよ。だから戦うだけ無駄だ。君が幾ら強かろうと俺に敵う筈もない」
「随分な自信だね」
「ただの事実だ。君が大人しく店員に偽装している内は俺も干渉はしない」
そう言えば、店員は観念したように溜め息を吐いた。
「分かりましたよ。此処ではやめておきます」
「良かった。美人を殺さないで済む」
俺はそう言って店員から受け取ったコーヒーを飲むのだった。
・ラスト
レゼをマキマのものにしたくないので見逃している。
精力を生成する為に沢山ご飯を食べる。
・天使の悪魔
噂では最強だと聞いているが、ラストが本当に強いのか疑問を抱いている。
・レゼ
二道に潜入して初日で刺客バレした。
ラストの強さが未知数の為警戒中。蛇の悪魔とサムソが瞬殺されたことは知っている。