色欲の悪魔 作:アスモデウス
今日は公安から特別な任務を与えられている。
それは中国の軍隊の壊滅である。
公安は中国の内通者から中国が戦争を仕掛けてくることを知り、その対策として俺とエンジェルを派遣することにした。
今は内通者から得た情報にあった中国軍が攻めてくるという海岸で待機している。
エンジェルの顔色が悪く、俺は作戦前に話しかけることにした。
「エンジェル、顔色悪いけど大丈夫?」
「逆に、君は平気そうだね。これから何万という人間を殺すのに」
「俺はエンジェル程人間を殺すことに躊躇いがある訳じゃないからなぁ。それに向こうから攻めて来る訳だし」
戦争のようなものだ。それもこちら側が侵略される。
向こうから攻めて来るから撃退するだけ。
可愛い子がいたら逃がしてやろうという程度の話だ。
「やっぱりエンジェルは優しいね」
「……僕は人を殺すことに罪悪感を覚えてる訳じゃない。ただ、夢に出て来るのが嫌なだけ」
それが罪悪感を覚えるということだと思うのだが、本人が否定するなら違うということにしておこう。
さて、そろそろ中国軍が日本に到着する頃合いである。
ちなみに日本陸軍、海軍、空軍の皆さんも協力してくれている。
悪魔に戦争で勝たせて貰ったという体裁はとても印象が悪いので、表向き日本軍が勝利したという報道をする為である。
「お、見えて来た」
まだ遠いが無数の軍艦が見えて来た。
俺は両腕を触手に変えて軍艦を攻撃する。軍艦の中にいる軍人に触れて寿命を奪って老衰させる。
そして生者のいなくなった軍艦を触手で折り畳み、海に沈める。
その作業を軍艦がなくなるまで繰り返すだけだ。
1秒も経たず、中国軍の大半が死滅した。
後は空から攻めて来るのを捌くだけだ。
空から中国軍の軍用機が迫る。
それを全て触手で撃墜し、海の藻屑となって貰う。
壊滅させられた中国軍が最後の足掻きとしてミサイル攻撃を仕掛けて来る。
飛来する大量のミサイルを触手で受け止める。触手が大量の爆発を受けるが、傷一つ負うことはなかった。
中国は完全に抵抗をやめて白旗を上げた。
戦争はそうして幕を下ろした。
結局、エンジェルも日本軍も出番なく終わった。
中国も無駄な足掻きをするものだ。結果としては大量の人員と軍艦、軍用機を失う形で終わったのだから。
今回の損失で中国は他国の侵略を受けても対抗することが難しくなった。まあ、銃の悪魔の肉体を所持している内は戦争なんて仕掛けられることはないだろうが。
その慢心が故に本土侵攻なんて仕掛けたのだろう。
銃の悪魔程度、幾ら所持していたところで超越者に及ぶ筈もないのに。
中国の諜報員はどう報告したのだろうか。
アメリカの所持する銃の悪魔が倒されたことは伝わってる筈だが、それでも勝機はあるとでも勘違いしてしまったのか。
何にせよ、愚かな決断だったことに変わりはない。
世界大戦以降初めて起こった戦争がこうも一方的に終わると、戦争への恐怖は増す一方であろう。
戦争の悪魔を強力にさせるだけだ。
チェンソーマンが第二次世界大戦を消してくれたというのに、人間は戦争をやめない。
それが人間の業であるのかもしれないな。
◇
戦争を終わらせた日の午後、俺は呼び出しを受けてマキマの執務室に来ていた。
「今回の戦争にラスト君が参加してくれたお陰で日本は損害を受けずに済んだ。その褒美として内閣総理大臣が君に望むものを与えると決定した。何か望みはある?」
「俺の給料の増加とエンジェルの休みをもっと増やしてあげて欲しい」
「分かった。そう伝えておくよ」
「全く…戦争なんてデビルハンターの仕事じゃないでしょ」
「そうだね。だから今回の件は日本政府から色欲の悪魔ラストへの依頼という形で処理してる」
「だから褒美ね。日本政府も悪いこと考えるよなぁ」
まあ、報酬がちゃんと出るなら受けるけど。
出来れば戦争なんて二度と依頼しないで欲しい。
「じゃ、話が終わったんなら帰るよ。今日はエンジェルと飲みの約束があるんだ」
俺はそう言って執務室を後にした。
エンジェルとの待ち合わせの場所に向かう。
待ち合わせ場所に着くと、そこには既にエンジェルが立っていた。
待ち合わせの一時間前なのだが、早過ぎないだろうか。
「お待たせ、エンジェル。随分とまた早いね」
「……家で昼寝してたら悪夢見ちゃってさ。気分悪いから早めに外出た」
「そうか。嫌なことは酒飲んで忘れよ」
俺はエンジェルと共に居酒屋に入り、生二つと焼き鳥と唐揚げを頼む。
エンジェルが深刻な顔で口を開いた。
「いつも君に任せたばかりでごめん…」
「んー?気にすることないよ。バディなんだからお互いの足りない部分を補わなきゃ。俺は戦力、エンジェルは良心。良い関係だと思うけどなぁ…」
エンジェルがいるから助かってる部分もある。
悪魔駆除の際の避難誘導だったり、人助けをエンジェルは積極的に行ってくれている。
だから俺は戦い易い。被害を気にせずに戦えている。
「君がいないと死人が出てた場面は意外と多いよ?俺って力を抑えることは出来るけど、そこまで細かい制御が出来る訳じゃないからさ。誤って建物をバッサリ斬っちゃったこともあったし」
「僕は君の役に立ててるかい?」
「勿論。エンジェルをバディにしてから随分と戦うのが楽になった。いつも助けられてるよ」
「なら…良かった」
エンジェルはそう言って運ばれて来た生を一気に飲み干した。
下戸なのに大丈夫だろうか。そこまで嫌な夢を見たのだろうか。
焼き鳥と唐揚げも爆食している。余程悪夢がストレスなのだろう。
「飲み過ぎないようにね…」
俺はそれだけ言って飲み食いに集中するのであった。
◇
「うぅ〜…気持ち悪い……」
「だから言ったのに」
エンジェルは案の定飲み過ぎてグロッキーになった。
俺はエンジェルを担いで家まで運ぶ。
この一連の流れも恒例になりつつある。
エンジェルに水を飲ませてベッドに寝かせると小さく寝息を立て始めた。
その内、悪夢に魘され始めるので抱き締めることで悪夢から解放する。
俺も睡魔に身を任せて眠りに落ちるのだった。
目を覚ますとエンジェルの寝顔が目の前にあった。
穏やかな寝息を立てているので悪夢は見ていないようだ。
その内エンジェルも目を覚ます。
「起きてるなら離してよ」
「いやぁ、つい。寝顔が可愛くて」
「何もしてないよね?」
「抱き締めたくらいかな」
「それは見たら分かる。ほら、離れて」
俺は言われた通りにエンジェルから離れる。
エンジェルは自分から離れてと言った癖に名残惜しそうな顔をする。
もう襲ってしまっても良いんじゃないかと俺の悪魔の部分が囁く。
それを理性で掻き消して何でもない顔をする。
「さ、朝食にしよう」
◇
早川家に帰って来るとアキ君が慌てて迎えに来た。
「あれ?今日休みなの?」
「いえ、これから見回りなんですけど、その前にデンジが弁当忘れてったので届けに行こうかと」
「俺が代わりに行こうか?」
「お願いしても良いですか?時間なくて」
「任せてよ。今日は休みだからね」
アキ君からデンジ君の弁当を預かり、学校へ向かう。
しかし、デンジ君もベタなイベントを踏むものだ。
弁当を忘れる、なんて漫画じゃないんだから。
校門を潜ると校庭に生徒が集まっているのが見えた。
生徒の集まりから離れたところで女子生徒と担任らしき大人が話している。
すると見た目から鶏の悪魔と推測される生物が離れている女子生徒の元へと向かった。
女子生徒は悪魔を受け止めて皆の方を見る。
そして笑みを浮かべて皆の方へと走っていった。
その瞬間、近くにいた女子の足に躓いて転びそうになる。
俺は転びそうな女子生徒を受け止める。
「大丈夫?」
「あ…ありがとう、ございます」
「コケ…危なかったコケ…ありがとうコケー!!」
鶏の悪魔が俺に飛んで来る。
俺は取り敢えず受け止めることにした。
「この子とは友達?」
「コケ!コケピーのクラスの友達コケ!」
「そうか。仲良くね」
学校で飼われてるなら安全だろう。
女の子の方も無事みたいだし、俺はさっさとデンジ君の元へ行くとしよう。
俺はコケピーと名乗った悪魔を転びそうになった女の子に預けてその場を去った。
そして用務員さんにデンジ君の居場所を聞いて、入校許可証を受け取って校内に入る。
デンジ君は屋上で一人黄昏ていた。
「デンジ君、忘れ物だよ」
「俺の弁当!!あざっす!!」
「クラスには馴染めてるかい?」
「バッチリですよ!授業も何言ってるか分かんねえけど楽しいです!」
「そうか。良かった。学校楽しんでね」
「押忍!!」
俺はデンジ君と別れて帰路に就くのだった。
・ラスト
エンジェルをバディにしてから死傷者が減った。
中国との戦争でかなりの年数の寿命を手に入れた。姫野やアカネに渡す予定。
・エンジェル
ラストのバディに相応しいのか悩んでいる。
ラストに抱き締められると悪夢を見ないことに気付いた。
・中国
クァンシを失ったのでかなり焦っていた。
取り戻す為に戦争を仕掛けたが、結果として日本政府がラストを戦争に参加させたので負け戦になった。
・三鷹アサ
コケピーを失わずに済んだ。
結局暴走した委員長に殺され、戦争の悪魔に肉体を乗っ取られる。
田中先生は脊髄剣にされた。