色欲の悪魔 作:アスモデウス
俺が公安に入ってから三年が経過した。
アキ君は未だにバディが見つからず俺と姫野と行動してる。
アキ君は大分動きも良くなり、二年前よりかなり強くなった。
後はバディが見つかればもっと活躍できるだろう。
ただ、呪いの悪魔の能力を使い過ぎて寿命がそこそこ減ってしまっている。40代くらいで死ぬ可能性が高い。
強い悪魔に単独で挑むこともあるから困る。
アキ君はちょっと死に急ぎ過ぎだ。
銃の悪魔の肉片を集める為と無理をする癖がある。
もっと仲間の力を信頼して任せることを覚えた方が良い。
さて、今日は朝早くからマキマに呼び出されて任務である。
何故か今回は姫野を連れずに一人でマキマさんと任務に当たることになっている。それと、もう一人運転手としてマキマが選んだ口の硬い男がいる。
討伐対象はゾンビの悪魔。契約した相手をゾンビに変え、そのゾンビが噛んだ相手もゾンビになるという厄介な性質を持っている。
ゾンビの悪魔はとある倉庫に現れたらしく、それを今から退治しに行くらしい。
「それにしてもさぁ、朝早過ぎない?」
「早くしないと逃げちゃうからね」
「マキマなら追えるでしょ。あー…でも、一匹でもゾンビ残されたら面倒なのか」
それにしても、マキマが俺に頼むような案件ではないと思うのだが、何か別の思惑があるのだろう。
倉庫の前に着くと車が停車する。
俺は助手席から降りてマキマの後について行く。
そして倉庫内に一歩足を踏み入れると、そこは死体と血の海であった。
マキマが何の動揺もなく口を開く。
「先を越されたね」
「ん、生きてるのがいるね。アレは…チェンソー?」
倉庫の奥にはチェンソーを頭と両腕から生やした悪魔が立っていた。
いや、良く匂いを嗅げば悪魔ではない。そして人でもない。
チェンソーマンから名前を消され、尚も存在を許された存在だ。
しかし、まさかチェンソーマンが人間に心臓を渡すとは思わなかった。
マキマはこれを知ってたのか。
一人で考察しているとマキマが奥へと歩いて行く。
「ふぅん……君、変わった匂いがするね。人でも悪魔でもない匂い。君がこれやったの?」
「だ…抱かせて……」
マキマが倒れ行く男を抱き締める。
すると悪魔化していた肉体がどろりと溶けて元に戻る。
中身は金髪にギザ歯の青年だ。
「人だ」
「そして悪魔にもなれる。しかも、チェンソーの悪魔だ」
マキマが探していたチェンソーマンは見つかった。
しかし、人間に心臓を渡してしまっていた。
これでは俺が手を下すまでもなくマキマの願いは叶わない。
その為、どうにかしてチェンソーマンを復活させる方法を探すだろう。
俺はそれを阻止する。チェンソーマンは復活させず、あの恐ろしき能力はマキマに使わせない。
最悪の場合、チェンソーマンが復活したとして。俺は奥の手を使ってチェンソーマンをこの世から消し去る。
そうすればマキマも諦めてくれるだろう。
そう策を練っていると、マキマが青年に話し掛けた。
「私はゾンビの悪魔を殺しに来た公安のデビルハンターなんだ。君の選択肢は二つ。悪魔として私に殺されるか、人として私に飼われるか。飼うならちゃんと餌はあげるよ」
「餌って………朝飯はどんなの?」
「う〜〜ん……食パンにバターとジャム塗って……サラダ、コーヒー、後…デザートかな…」
「最高じゃあないっすか……」
マキマは青年を新しい犬として飼うことにしたらしい。
犬好きは変わってないらしいな。
俺は二人の元まで歩いて行って青年に肩を貸す。
そして青年を車の後部座席に押し込め、俺は再び助手席へと乗り込んだ。
マキマが乗り込んだところで車が発進して公安へと向かう。
車で移動してる最中、車内に腹の音が鳴り響く。
青年が申し訳なさそうに自己申告する。
「俺ん腹の音っす……」
「私達も朝まだだったね。パーキングエリアで適当に食べよ」
「すいません……俺金ないんすけど…」
「俺が金出すから好きに食べな。後、半裸じゃ目立つし寒いだろうからこれ着な」
「あざっす!」
俺は青年に上着を渡す。
青年は上着を羽織って嬉しそうにする。
胸のスターターは隠せてないが、まあ仕方なかろう。
違和感は覚えるだろうがマキマ案件だから深く突っ込む奴もいないだろう。
パーキングエリアに着くと車から降りて店でそれぞれメニューを選ぶ。
「私はカレーうどんにしようかな」
「シャツ汚れたらどうすんのさ」
「でも、食べたいんだもん」
「はぁ…じゃ、仕方ないか。俺もカレーうどんにしよ」
俺達がさっさと注文している間に青年は悩ましげにメニューを見ていた。
「あっ、俺うどんと……うどんとフランクフルト!良いすか!?」
「良いよ。沢山食べな」
俺が青年に奢っていると背後から店員の元まで男が走って来た。
男は頭から血を流しており、事件の香りを振り撒いている。
「たっ、たっ…!助けてくれっ!」
「公安のデビルハンターです。何があったんですか?」
マキマが男に事情聴取をする。
男は汗を流しながら状況を説明する。
「あ…悪魔が俺の娘を攫って!俺の娘をっ、娘を連れて森の方に!!」
「カレーうどんのお客様〜」
「あ…私とラスト君カレーうどん」
マキマは顎に手を当てて考え込む。
そして青年に向き直る。
「君、名前は?」
「デンジっす」
「デンジ君…うどん伸びちゃうから君だけで悪魔殺しに行って」
「えええ。俺もうどんっすよ」
「忘れたの?君は私に飼われてるんだよ。返事ははいかワンだけ。いいえなんて言う犬は要らない」
「い、要らないって……」
デンジが冷や汗を流す。
マキマはデンジに対して冷たく言葉を放つ。
「鑑識課の知り合いから聞いたんだけど、使えない
「はい」
デンジは慌てて森の方へと走って行った。
俺とマキマはカレーうどんを受け取って食べ始める。
もう一人のデビルハンターは救急車を呼んでいる。
俺はマキマと二人っきりで話し始めた。
「漸くチェンソーマンが見つかったね。でもあれじゃマキマの望みは叶わない」
「そうだね……でも、良いんだ」
「チェンソーマンのファンは辞めたの?」
「ファンは辞めてないよ。でも、私なりにこの三年間で私の夢について考えてたんだ」
「考えるって?」
「私の夢は人にとって良いことなのかどうか」
マキマなりに成長していたということなのだろう。
人も悪魔もいつまでも同じではない。
時の流れと共に考えが変わることもある。変わらなくても、向き合うことはある。
「変わったね。前なら自分の夢を疑うことすらしなかった」
「君に影響されたんだよ。同じ人が大好きな悪魔として、君の在り方に憧れたんだ」
「俺の在り方?」
「人と対等な関係を築く君に憧れたの」
マキマは支配の悪魔だから、対等な相手を求めているのだろう。
自分をただの個人として見てくれる存在を求めてる。
「マキマは相変わらず寂しがり屋だなぁ」
「そうかな?」
「そうだよ。誰でも支配してしまうってのは辛いもんだな」
「じゃあ、ラスト君が私の友達になってくれる?」
「良いよ。先ずは友達からだ」
マキマは頬を緩めて嬉しそうに笑みを見せた。
普段の近寄り難い雰囲気から変化した親しみ易い、ただのマキマがそこにいた。
俺はそれを尻目にカレーうどんを平らげて、マキマと共にデンジが戻ってくるのを待つのだった。
暫くして少女を背負ったデンジが帰って来た。
マキマが嬉しそうに口を開く。
「使える犬だね」
「ワン………」
俺はデンジから少女を預かって救急車まで運ぶのであった。
・ラスト
奥の手
何者であろうとこの世から消し去ることができる。本来の能力の奥義である。
記憶改竄もこの能力の影響。
・デンジ
ラストに優しくされたのでラストの印象はとても良い人。
マキマは美人だが怖い人という印象。
・マキマ
ラストに影響されて自分の目的の良し悪しについて考えるようになった。
ラストが初めての友達になってくれたことをとても喜んでいる。