色欲の悪魔 作:アスモデウス
「魔人パワーの外出を許可します。17時までには戻って来るように!」
「一人じゃ外出もできねーのか?」
「おう。ずっと此処の中で退屈しとったわ」
「まぁ、魔人は本来駆除対象だからね。パワーちゃんみたく殺人衝動を抑えられるのは珍しいけど、だからって監視の目が緩くなることはない」
「考えてみりゃぁ俺も毎日監視されてるし、俺達あんま変わんねえのな」
まあ、デンジ君の監視期間は半年だからすぐに自由の身になれるだろう。
勿論、公安と敵対するような動きを見せなければであるが。
さて、外出許可を取れば早速猫を捕らえている悪魔の元へと向かう。
移動手段は電車である。
席順は俺の右隣にデンジ君、更にその右隣にパワーちゃんである。
デンジ君が沈黙に耐えかねて口を開く。
「…俺もポチタっつー悪魔飼っててさ〜。俺はもう撫でるこたぁできねぇんだけどいーんだ。俺の此処で生きてるからな!」
「人間は愚かじゃな!」
「あ〜?」
「そりゃあポチタが死んだってことじゃろ〜?死んだ命は無じゃ!心の中にいるだのなんだのは浅ましい慰めじゃ!」
「パワーちゃん、仲良くできる?」
「できっ…できる…!」
パワーちゃんが更に距離を取って怯えてしまった。
強い言葉は使ってない筈だが、言い回しがキツかっただろうか。
電車を降りたら暫く歩いて悪魔の潜む家の近くへと来る。
パワーちゃんが一軒だけポツンと存在する家を指差した。
「そこの家じゃ!あそこにニャーコと悪魔がいる!」
「は〜ん。じゃあさっさと行くか」
「俺は此処で待機してるから。応援が必要そうなら行くよ」
「うっす」
デンジ君がパワーちゃんの後をついて行って住宅へと入る。
扉が閉まったその瞬間、デンジ君の血の匂いが充満した。
パワーちゃんに裏切られたのだろう。
パワーちゃんがそんなことをする理由はニャーコだろうか。
街で人間を探してたとか言ってたし、都合良く生贄が現れたとでも思っていたのだろう。
だが、悪魔と魔人同士では契約は成立しない。契約は悪魔と人間も縛る強力なルールであるが、悪魔同士では意味がないのだ。だから、パワーちゃんがデンジ君を差し出しても悪魔側は契約を履行する義理はない。
「不味い血でぇ!!復活してしまったではないかあああ!!」
突然、住宅の天井が破壊されて真っ黒な腕が生えて来た。
大きく空いた穴から悪魔が姿を現す。
匂いと見た目的にアレは蝙蝠の悪魔だろう。
「口の中が気持ち悪い!!他の人間で口直しをしなければ!」
蝙蝠の悪魔は意外とグルメらしい。
口直しに食べる人間を慎重に選んでいる。
すると、いきなり下を向いて何やら考え始めた。
パワーちゃんがニャーコを返すように要求しているのだろう。若干だが猫の匂いもする。
しかしニャーコは捕らえている檻ごと蝙蝠に食べられてしまった。
そしてパワーちゃんも丸呑みされる。
蝙蝠は翼を広げて街へ向けて飛び立った。
その足に瀕死のデンジ君がしがみついていた。
アレならまだ戦えるだろう。
俺は後処理班を呼ぶ為にも公衆電話を探そう。
街まで一息に跳躍して着地する。地面に降り立つ直前に勢いを殺していたので地面が罅割れる等の被害はない。
「デンジ君よりも早く来ちゃったか。まぁ、後処理班は待たせても良いか」
俺は公衆電話で公安へと連絡し、蝙蝠の悪魔と交戦中であることを伝えた。
公安からは後処理班と念の為に特異4課を派遣すると指示が下った。
公安への連絡を済ませて戦闘音のする方へ向かえば、丁度蝙蝠の悪魔がデンジ君のチェンソーに切り裂かれたところであった。
デンジ君はチェンソーで蝙蝠の死体を解剖してパワーちゃんとニャーコを救出する。
「何故ワシを助けた…?ウヌを殺そうとしたのに……」
「手柄上げないと処分されちまうし……何となく、お前の気持ちが分かったから」
「騙してすまんかった」
あのパワーちゃんがデンジ君相手に謝っている。
珍しいこともあるものだ。ニャーコとの出会いが多少なりともパワーちゃんを変えたのだろう。
「そんなことより自分の心配しろよ。あの先輩絶対怒ってんぞ」
「ひぇ…デンジ、今の内にワシを逃しとくれ……」
「別に怒ってないよ」
「ぎゃああああ!!出たああああ!!」
「その反応は酷くない?─ほら、パワーちゃん口開けて」
俺は苦笑いしながら蝙蝠の内臓を一部切り取ってパワーちゃんの口の中に血を流し込む。
パワーちゃんはそれですっかり元気になったみたいだ。
飛び起きてニャーコを抱えてデンジ君の後ろに隠れてしまった。
俺は口を開く前に接近する匂いを感知する。
現れたのは蝙蝠以上の巨体を持つ蛭の悪魔だ。
「デンジ君、戦えそう?」
「すんません。もう貧血でチェンソー出ません」
デンジ君が胸のスターターを引っ張っても中途半端に頭からチェンソーが生えただけだった。
「仕方ない。俺がやろうか」
「あら、よく見ると可愛い顔。私の男になるなら見逃してあげる」
「口の聞き方に気を付けろ。雑魚」
俺は人差し指を蛭の悪魔の頭に向けた。
たったそれだけで蛭の頭がぐしゃりと潰れた。
そこで特異4課が到着する。メンバーは姫野とアキ君、それに加えて新人の荒井君と東山ちゃんだ。
「蛭の悪魔駆除確認。新人は生存者の保護と避難誘導。姫野先輩は悪魔の警戒をお願いします!」
「ニャーコもいるよ」
「猫は動物病院で健康状態の確認!ラストさんとデンジ、血の魔人は事情聴取!」
「オシ。公安戻るか」
◇
あれから事情聴取諸々を終えて、今はデンジ君に諸々の確認を取りに病院に来ている。
パワーちゃんは俺の言うことを聞くので手錠はなし。一応姫野も一緒に見張ってるくらいだ。
デンジ君のところにはアキ君が行ってる。
暫し時間が経った後、アキ君がデンジ君の病室から出て来る。
パワーちゃんが口を開く。
「な〜?無罪だったじゃろ?」
「パワーちゃんは良い子だもんね?」
「は、はい…」
頭を撫でただけで怯えられるのは納得がいかない。
こんなに優しく接してるのに。
姫野が懐疑的な声を出した。
「ホントに良いのかな〜。この魔人ちゃんがいつか人を殺した時は見逃したアキ君の責任だぞ?」
「ラストさんがいればこの魔人は逃げ出すこともできません。それにデビルハンターなら利用できるものは利用すべきだ」
「あ、そうだ。マキマからの伝達。パワーちゃんは今日からアキ君の家で暮らすから」
「…何で俺の家にヤバい奴ばかり集めるんだ」
「俺が監視役として適任だからじゃない?」
「デンジとでさえ大変なのに」
「大丈夫、パワーちゃんは良い子にするよ。ね?」
パワーちゃんは首を縦にぶんぶん振って頷いた。
アキ君は途方に暮れた顔で窓の外を見ていた。
◇
「おうおうおう。狭い家じゃのお〜!」
「パワーちゃん、此処で暮らす為のルールを説明するからおいで」
「はい!」
パワーちゃんをリビングに連れて来て俺の対面に座らせる。
俺は一枚の紙を取り出した。それはアキ君と定めた家のルールだ。
「トイレはちゃんと流すこと。汚したら自分で掃除すること。風呂は一日一回必ず入ること。夜中に騒がしくしないこと。ご飯で好き嫌いがあったら事前に教えること。後は明記してないけど、迷惑を掛けないこと。ちゃんとできそう?」
「で、できる…」
「良し。ニャーコの世話は皆でやるから餌をあげたりしたらちゃんと教えてね」
パワーちゃんが頷いたのでこれにてルール説明は終わりだ。
今日の晩飯はカレーだと聞いているので大人しく待つとしよう。
「パワーちゃん、カレー食べれる?」
「野菜は嫌いじゃ…」
「なら、野菜だけ俺の皿に移しな」
そうして四人と一匹での共同生活が始まったのだった。
・ラスト
可愛い子が好きなのでパワーには甘い。
・デンジ
どうやって胸を揉むか模索中。
・パワー
ラストがいるので大人しく暮らしている。
早川家入りした。