※この作品はR-18です。

一番の特別(主ビア編)   作:アロンの杖

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光と闇のロンド

 神の錫杖たる“ドラゴンの杖”の持ち手に選ばれてエルヘブンの長老達の監督の元で厳しい修業に汗を流し、また天空竜“マスタードラゴン”の試練を突破して本来の底力を余すことなく発揮できるようになったリュカは新たなる秘技にも目覚め、またその勢いで“天空の一族”を率いて仲間達と共に魔界に乗り込んだ上に遂には宿願だった大魔王“ミルドラース”を討ち滅した挙げ句、地獄の帝王“エスターク”をも眠りに就かせて封印したその後で、再びグランバニア王国に戻って来た、その後はー。

 

 最愛の花嫁たるビアンカと共に愛を交わして甘い蜜月の時を過ごしつつ、充実した毎日を送っていたのであるモノの、それからおよそ2年ほどが経ったある週末の夜。

 

 リュカは公務が終わってから寝るまでの間に教会で密かに1時間ほど“天上の大神”に祈りを捧げる習慣を身に付け、そしてその日以降は“それ”を絶えず実践していった、それもどんなに忙しくても大変でも彼は1日も欠かさずに教会に通い詰めては必死になって“天上の大神”への祈りを捧げ続けていったのである。

 

 ところが。

 

 ちょうどその頃から暫くの間、彼はよくあちこち怪我をしたり原因不明の病に伏せったりする事が多くなっていった、と言っても元が頑健で強壮な上に各種回復呪文をも使い熟せるリュカの事である、周囲の者達は“リュカ様も以外と抜けている所がお有りなのね”だとか“それまでの疲れが出たのだろう”位にしか思っていなかったのだ。

 

 しかし。

 

「・・・ねえリュカ、本当に大丈夫なの?」

 

「・・・ああ、うん。心配は要らないよ?ビアンカ」

 

 彼の幼馴染にして掛け替えのない愛妻王妃である“ビアンカ”だけは、そんな夫の身に起きている“異変”に気が付いており、だから正直気が気でなかった、リュカは周囲の者達が言うほど間抜けでは無いし、それに1人の“男”として彼がどれだけ精強で逞しいのかは、何度となくリュカに抱かれてその滾りの迸りを自身の“女の部分”で受けていたビアンカには良く解っていたから余計に心配になっていたのである。

 

(そもそも・・・、今のリュカの体やオーラなら大抵の攻撃なら弾き返してしまうし。それに何よりも容易に傷なんて付けられないわ?それなのに)

 

 “何者かによる呪いか”、はたまた“魔術の攻撃か何か”か・・・?。

 

 そんな事を考えてビアンカは思わず不安に陥ってしまうが彼の肉体には彼方此方(あちらこちら)に大きな打撲のアザや鋭い引っ掻き傷が出来ており、また悪寒を伴う高熱を数回ほど発した事もあって、それも彼女にとっては気掛かりだった、だけど。

 

 そんな夫に起きた“異変”も3年が経過すると段々と落ち着いて来ており、ビアンカもホッと胸を撫で下ろしていたのであるが、そんなある日。

 

「やあリュカ、それにビアンカも。元気そうだね・・・!!!」

 

 彼等夫妻のいるグランバニア城に1人の中年の男が来訪していた、天空人の“プサン”である。

 

「久方振りだねぇ、夫婦仲良く平和で日々是好日と言った所かな?所で・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「リュカ。君はまた無茶をしたねぇ、ずっと毎晩祈りを捧げていただろ・・・?」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・?」

 

「まあでも?やっぱりやらなくてはならない事だったのだからどうしようもないけれど・・・。いくら並外れて強く、勇敢だとは言えどもよく人間の身で全ての試練を突破出来たもんだよ。感心するね」

 

「・・・・・」

 

「・・・ね、ねえあの。マスタードラゴン、いいえプサン?それってどう言う」

 

 プサンの意味ありげな言葉にリュカはなんだか申し訳なさそうな、それでいて照れ臭そうな表情を浮かべて俯いてしまい、代わって疑念と興味の湧いたビアンカが彼に食い下がる。

 

「どう言う事なの?確かに一時期この人はよく怪我をしたり病気をしたりしていたけれど・・・。プサンは何か知っているの?」

 

「・・・・・」

 

「リュカ、もう言っても大丈夫だよ?君の願いは叶えられ、最後まで果たされたのだからね・・・」

 

 そう言うとプサンはビアンカに向き直り、彼女に静かに語り始めた。

 

「リュカはねビアンカ。この3年の間に君のことをずっと祈り続けていたんだよ?」

 

「・・・え、えっ。私のことを?」

 

「そうだとも。“君が救われますように”と、“ずっと幸せでありますように”と・・・」

 

 そう告げてプサンは“天空の花嫁”に真実を告げ始めた。

 

「ねえビアンカ、君は小さな頃から色々と冒険をしたり試練に臨んだり。時には大変な目にも遭って来たと思うけど、いつも必ず何とかなって来たし・・・。それに最終的には救われて来ただろう?」

 

「それは・・・。まあ確かに、そうですけど」

 

「君は本当に素晴らしい少女だったよ、その魂に紛う事無き愛と正義の光りを宿し。それを事ある毎に発揮しては闇を、そして何よりも“魔”を撃退して打ち沈めて来た・・・」

 

 “ただね?”とプサンは続けた、“如何に君でも1人だけではどうにもならない限界があったんだよ”とそう述べて。

 

「君は小さな頃から大人になるまで・・・。いいや大人になってからもずっとリュカと共に世界を旅して回って来ただろ?当然、時には危険を犯す事もあったし。また数え切れない程の戦火と戦場を潜り抜けて来た訳だけど・・・。如何に“正義を成す為に”とは言えども通常、あれだけのモンスターを破砕して怨敵を撃滅していれば。流石に“報い”の一つや二つは跳ね返って来て然るべきなんだ、なんだけどね・・・?」

 

「・・・・・」

 

(まさか・・・)

 

「そう。もう気が付いたみたいだけど、今まで君の身に“報い”が跳ね返って来なかったのは。その身が汚されたり、はたまた運命が踏み躙(にじ)られたりと言った“決定的に不幸な出来事”が何も起こらなかったのは。確かに君自身の“光りの縁(えにし)”の力のお陰でもあるんだけれど、もう一つが“リュカの祈り”の奇跡に拠るモノなんだよ?ビアンカ・・・」

 

 プサンが淡々と、しかし解りやすい言葉で話を続けた。

 

「彼はね?我々“神”にこう祈ったんだよ。“自分があの子の身代わりになります”と、“あの子の闇の半分は自分が引き受けます”と。だから“ビアンカを守って欲しい”、“ずっと無事でいさせて欲しい”とね・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・っっっ!!!!?」

 

「願い事の内容の全てを今ここで伝える事は出来ないけれど・・・。その結果彼は君が本来ならば受けるハズだった“罪穢れ”や“痛み”の半分をその身と心で受け止めてくれていたんだよ?だからリュカはこの3年の間はよく怪我をしたり病に伏せったりしていただろう、あれはそう言う事だったんだ・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「“祈り”と言うのはね?ビアンカ。どんな距離も過去も未来も超えて響き合うモノなんだよ、いいやそれだけではない。本当に純粋なる気持ちで一念を貫き通せれば強固な歪みや障害すらをも突破して、対象となる存在や現象に徹底的に作用する特性を持っているんだ。リュカはその事を知っていた、だからこの時空線から過去へと意識を向けて。君の事を密かに守り続けて来たんだよ・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・っ!!?」

 

(そう、だったんだ・・・っ。だからリュカは、この人は毎晩のように教会に通って!!!)

 

 そこまで教えてもらった時に、ビアンカの青空色の双眸には熱い涙が浮かんでいた、正直に言って彼女は感動していたのであり、また夫に対する感謝と共に申し訳なさも感じていたのだ。

 

「ゴメンね?ビアンカ・・・」

 

 そんな妻に対してしかし、リュカの方が先に詫びて来た。

 

「君が小さな頃から色々と冒険をして来た事は知っていたし・・・。それに大人になってからも僕のために危険な目に遭わせてしまった事もあって、凄く申し訳ないって思っていたんだよ?だから・・・」

 

「・・・・・っ。ヒグ、グスッ!!!も、もうリュカったら。涙を拭くから服を貸しなさいよっっっ❤❤❤❤❤」

 

 困ったように悪びれる夫に対して愛妻王妃が涙ながらに抱き着き、その顔を逞しい胸板に埋めた。

 

「君の“闇”は、“罪科”や“痛み”の半分は僕が引き受けるよ。代わりに僕の光を分けてあげるね?だから・・・」

 

「ウェッ、グスッ!!!ふ、ふえぇ・・・っ?」

 

「これからも、よろしくお願いします。ビアンカ・・・?」

 

「~~~~~~~~~っっっ❤❤❤❤❤」

 

 “好きっ!!!”とそれを聞いたビアンカは泣きじゃくりながらそう叫んで一層、しっかりと彼にしがみ付いた。

 

「ウエェッ、グスッ!!!す、好きぃっ。大好きっ//////////リュカッ、リュカアァァ~ッッッ❤❤❤❤❤」

 

 嗚咽を漏らしつつもそう言って肩を震えさせる“天空の花嫁”をしっかりと抱擁しつつも、リュカは彼女の温もりと共に幸せを噛み締めていた。

 

「グスッ、ヒグ・・・ッ!!!も、もうっ。リュカったら、いつも私を泣かすんだから・・・っっっ❤❤❤❤❤」

 

「えええっ!!?う、うん。ゴメンね?ビアンカ。だけど僕は・・・」

 

「ウッ、グス・・・ッ。ううん、良いの。ねえリュカ、私嬉しいよ?あなたが私のことをこんなにも思ってくれていたなんて!!!」

 

 リュカの腕の中で顔を上げたビアンカが、自身も彼を抱擁しつつもお日様のように明るい笑顔を見せる。

 

「あなたが祈りを捧げてくれていた間中ね?私、ずっと胸の奥が暖かくて、安らいで。何でかは解らなかったんだけど、ずっとあなたを感じてドキドキしていたんだよ?」

 

「・・・ビアンカ、それは」

 

「有り難うリュカ、私はね?もうあなただけのモノだから・・・。今までも、そしてこれからも。ね?だから・・・」

 

 そこまで言うとビアンカは不意に瞳を逸らして顔を赤らめ、モジモジしながら夫に告げた。

 

「こちらこそ。よろしくお願いします・・・っっっ❤❤❤❤❤」

 

 恥じらいながらも自分の目を見てそう告げて来る愛妻王妃の気持ちに嬉しくなったリュカはニッコリと、しかし静かに笑ってまた彼女を抱き締め、一方のビアンカもまた夫にしがみ付いたままいつまでもいつまでも離れようとはしなかった。

 

「あはは、これは良きかな良きかな。幸せそうで何よりだよ2人とも、これからもお互いを大事にね?」

 

 そう言うとプサンはグランバニア城の街中に午前中からオープンしている“酒場”へと向けて歩を進めて行く。

 

「・・・あ、そうだ。2人とも、最後に言い忘れていた事があった」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・?」

 

「リュカにビアンカ。もう知っているかも知れないけれど君達はね?どの世界線に於いても強い絆で結ばれている特別な関係でね、結ばれた場合は勿論の事なんだけど・・・。例え結婚しなかったとしてもずっとお互いに相手を想い続ける程の“確かなる一途さ”を相手に対して持っていたんだ、特にビアンカ。君はね?」

 

 “自分で解るだろ?”とプサンから思い人本人の前で図星を刺され、ビアンカはまた赤面しつつも俯いてしまった。

 

「まあ君達は1人でいるより2人で一緒にいた方が良いよ、お互いがお互いを補填して支え合える最高の関係だからね。最も輝ける間柄だからさ、良いかい?リュカにビアンカ、そもそも夫婦と言うのはね、“二人で一つ”なんだよ?だけどそれはね、もっと言ってしまえば“二人が揃って初めて一人前になれる”って事なんだ。君達は一緒にいる時が最も輝ける間柄だからね、これからも幸せにおなり・・・」

 

 そこまで述べ立てるとプサンは今度こそ酒場へと向けて歩き出し、二度と振り返る事は無かった。

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