誤字だったり、色々ミスがあるかもしれません。
オリジナル主人公が『食戟のソーマ』のヒロインたちとスケベしまくります。
苦手な方は絶対に読み進めないでください。
だいたい女性優位で、マジでマジで前戯ばっかです(特に口)。
ある日の昼間。
おれは『ディッシュ』の店内で、皿を洗っていた。
カチャカチャと食器が触れ合う音と、水道の流れる音が静かな厨房に心地よく響いている。
ランチタイムのピークを過ぎ、店内にゆったりとした午後の空気が漂い始めた、その時だった。
「おーい! ……す、すげぇぞっ!!」
バンッ! と勢いよく扉が開き、親父が血相を変えて厨房に飛び込んできた。
その手には、見慣れない高級そうな封筒が握りしめられている。親父は興奮冷めやらぬ様子で、息を切らしながらその封筒を顔の高さまで掲げてみせた。
「たった今、郵便屋さんが持ってきたんだ! ほら、この宛名と差出人を見てみろよ!」
親父の手にある封筒の表面には、達筆な文字で宛名が記されており、裏面には誰もが知るあの超名門校――『遠月茶寮料理學園』の紋章が金箔で押されていた。
「編入試験の合否通知だ! お前、あの学園の試験を受けてたなんて……父さんちっとも知らなかったぞ! しかも待ちきれなくて中を確認させてもらったら、『高等部編入・合格』ってデカデカと書いてあるじゃないか!!」
親父は感極まったように目を潤ませ、大声で笑いながらバンバンと肩を叩いてきた。
「あの嬢ちゃんが美味いって褒めてくれた時も嬉しかったが……まさか、お前が本当にあの遠月に受かるなんてな! 試験官にどんな料理を出したのかは知らんが、天才的な才能があるって嬢ちゃんの言葉は本当だったんだ! いやぁ、父さん鼻が高いよ!」
すっかり有頂天になって涙ぐんでいる親父の横で、分厚い封筒の中から一枚の紙がヒラリと落ちた。
そこには事務的な合格通知書に紛れて、小さなメッセージカードが同封されていた。
『言った通りになったろ? 学園でのメシ、楽しみにしてるぜ! 竜胆』
彼女が言っていた「結果はひっくり返る」「権力を使ってねじ込む」という言葉は、決して冗談ではなかったらしい。
親父が歓喜の涙を拭う横で、遠月学園という規格外の世界への切符が、確かに届けられていた。
「いや……まさか本当に受かるとは……ははは……」
おれは苦笑してしまった。
しかし、えりなの判定は思いっきり
「まあ、やるだけやってくるよ。この合格通知を突っぱねたら、もったいないしな」
「おおっ! その意気だぞ、カヅキ!」
親父は満面の笑みで、バンバンと景気良く背中を叩いてきた。
「腐ってもうちの看板を背負うんだ! 遠月学園のエリートどもに、お前のその女性を魅了する味ってやつを、たっぷり思い知らせてこい!」
もちろん、親父は隠し味の正体が何であるかなど、微塵も気付いていない。屈託のない親父の激励を背に受けながら、遠月学園での過酷な日々へのカウントダウンが始まったのだった。
――そして、数週間後。
春の陽射しが降り注ぐ、遠月茶寮料理學園。
その広大な敷地内にある大講堂には、真新しい制服に身を包んだ新入生たちがずらりと並んでいた。誰もが、これから始まる血を洗うような競争を前にして、緊張で顔を強張らせている。
壇上では、学園総帥である薙切仙左衛門の厳格極まりない訓示が終わり、新入生たちの間にはビリビリとした重苦しい空気が漂っていた。
「続いて、本日より本学園高等部へ編入する生徒を紹介します。幸平創真、カヅキ──両名、前へ」
司会の声に呼ばれ、壇上へと上がっていく赤い髪の少年――幸平創真。
彼はマイクの前に立つと、数千人のエリート候補生たちを前にして、全く悪びれることなく言い放った。
「えー、そんじゃま、軽く二、三言。……とりあえず俺は、お前ら全員踏み台にして、てっぺん取らせてもらうんで。よろしく!」
その瞬間、講堂の空気は凍りつき、直後に「ふざけんな!」「編入生風情が調子に乗るな!」と鼓膜を劈くような大ブーイングの嵐が巻き起こった。
そんな阿鼻叫喚の講堂を、舞台袖から忌々しそうに見下ろしている二つの人影があった。
薙切えりなと、その隣に控える新戸緋沙子だ。
「信じられません。あの下賤な編入生ども、やはり裏から手を回して合格をもぎ取っていたか……! えりな様、私がすぐに手配して、奴らをこの学園から叩き出してご覧に入れます!」
緋沙子が赤紫色のショートヘアを振り乱し、ブラウスの胸元を怒りで波打たせながら声を荒らげる。
しかし、えりなはそれに答えることができなかった。
腕を組み、冷徹な試験官として振る舞っていた彼女の紫色の瞳は、ブーイングの嵐の中で壇上に立つ創真……ではなく、その横に並び立つもう一人の編入生の姿に釘付けになっていたのだ。
(あ、アイツ……っ。本当に、遠月に……)
視認したその瞬間。
えりなの脳裏に、あの編入試験で食べさせられた『スクランブルエッグ』の記憶が鮮烈にフラッシュバックした。
『神の舌』が未だに正体を暴けない、あの暴力的で、ひどく卑猥なコクと旨味。
理性を根こそぎ奪い去り、下腹の奥をジンジンと熱くさせた、あの未知の快楽。
「あ……ぅ、んっ……」
えりなの抜けるように白い頬が、一瞬にして朱に染まった。
講堂の喧騒など耳に入らなくなり、カッと全身が熱を帯びる。彼女は緋沙子に気づかれないよう、ブレザーの裾をギュッと握りしめ、ブレザー越しでもわかる豊かな双丘を微かに上下させながら、必死に太ももを擦り合わせた。
(思い出しただけで……体が、熱く……っ。ダメよ……この私が、あんな下品な味に……屈するわけ、ないんだから……ッ!)
えりなは涙目になりながら、自らの内側から湧き上がる疼きを必死に抑え込もうとしていた。
一方で、騒然とする講堂の2階席――上級生専用のバルコニーから、身を乗り出して楽しそうに笑っている真紅のロングヘアの少女がいた。
「あっはははっ! 最高じゃんか、今年の編入生は! あっちの赤髪も面白ぇけど……」
小林竜胆は、大きく開いたブラウスの胸元をバルコニーの手すりにぐにゅりと押し付けながら、蛇のような金色の瞳でじっと一人の少年を狙い定めていた。
「あたしの専属シェフも、相変わらず美味そうな匂いさせてるぜ……。さぁて、今日はどんな
ペロリ、と。
竜胆は艶やかな赤い舌で自身の唇を舐めめぐらせ、獲物を狙う野獣のように、ねっとりとした熱い視線を注ぎ続けていた。
おれはというと、創真の踏み台宣言に感心していた。
「まあ、そうだよな」
試験会場で一度会ったきり、ロクに言葉も交わさなかったが──なんとなく彼は受かる気がしていた。
彼の挨拶に比べると、おれは「頑張ります」だの「よろしくお願いします」だの無難すぎる挨拶で場を乗り切った。
別におれは目立ちたがり屋ではない。むしろ、人目を忍ぶような人間なのだ。
創真の放った特大の爆弾発言の直後だったこともあり、おれの存在は良くも悪くも全く目立たず、その挨拶は嵐が過ぎ去った後のように講堂へと吸い込まれていった。
「……幸平創真に比べれば随分と凡庸で臆病な男ですが、あいつも編入試験でえりな様を愚弄した輩の一人。いずれ必ずや、私が学園から放逐してみせます!」
舞台袖では、緋沙子が憎々しげにおれの後ろ姿を睨みつけていた。ブラウスの胸元を怒りで波打たせながら、隣に立つ主へと同意を求める。
「……そうでしょう、えりな様? ……えりな様?」
「ひゃあっ!? ……あ、え、ええ……そうね、緋沙子……っ。その通りよ……ッ」
ビクッと肩を震わせたえりなは、慌てて腕を組み直し、どうにか威厳を保とうと声を張った。しかし、紫色の瞳はトロンと潤み、抜けるように白い頬は耳まで真っ赤に染まっている。声を聞き、その姿を見ただけで、編入試験のあの味がフラッシュバックし、下腹の奥から込み上げる強烈な疼きをごまかすのに必死だったのだ。
(あんな無難な顔をして……っ。この私の理性を、あんな卑猥な味で狂わせたくせに……ッ!)
えりなは胸元を激しく上下させながら、バレないようにギュッと太ももを擦り合わせていた。
――そして、入学式が終わり、新入生たちが各々の教室へと移動し始めた時のこと。
人混みに紛れて歩いていたおれは、不意に背後からブレザーの襟首をグイッと引っ張られた。
「おーっと! 逃がさねーぜ、あたしの専属シェフ!」
「えっ――」と声を上げる間もなく、強引な力で人の波から引き抜かれ、講堂の裏手にある薄暗い空き教室へと連れ込まれてしまった。
バタンッ! と扉が閉められ、カチャリと鍵がかけられる。
春の陽射しが遮られた教室の中で、甘く熟れたような汗の匂いがふわりと鼻腔をくすぐった。
「よっ、新入生! 影の薄い無難な挨拶、お疲れさん!」
そこに立っていたのは、真紅のロングヘアを揺らす小林竜胆だった。
蛇のような金色の瞳を嬉々として輝かせ、スクールセーターとブラウスの胸元を大胆に開けた着こなしは相変わらずだ。彼女はケラケラと笑いながら、おれの胸ぐらを掴んで黒板へドンッと押し付けた。
「周りは幸平創真の宣戦布告ばっか気にしてたけどさぁ……あたしの目は誤魔化せねーぞ? あんな猫かぶった挨拶しながら、お前の股間は『早くあたしに食わせろ』『
竜胆は楽しげに牙を覗かせると、足の間にするりと入り込み、豊満な双丘をおれの胸元にぐにゅりと力強く押し付けてきた。
「あー、ダメだ。お前が
ペロリ、と。
艶やかな赤い舌で自身の唇を舐めめぐらせると、竜胆は一切の躊躇なく、おれの真新しいスラックスのベルトへと手をかけた。
「あたし直々に、遠月の厳しさを教えてやるよ。さあ、大人しくズボン下ろして、パンパンに溜め込んだ極上の
「ちょっ、さすがに自由過ぎ……あッ」
ぼろんっ──と、ギンギンに膨れ上がった肉棒が竜胆の目の前にさらけ出される。二度の奉仕を受けて、すっかり彼女に懐いてしまっていた。
「……っ」
言葉が出てこない。
それどころか、竜胆の艶やかな唇と、その豊満な谷間に視線を向けて、喉を鳴らしてしまう。
「あっははは! なんだよこれ、もうビクビク跳ねてんじゃんか! さすがに自由過ぎなんて言いながら、お前の下半身は完全にあたしを待ちわびてたってワケだ!」
竜胆は嬉しそうに目を細めると、弾け出た硬直を両手で優しく、それでいて逃がさないようにガッチリと包み込んだ。
熱を帯びた蛇のような金色の瞳が、おれの視線を追って、自身の開いた胸元へと向けられる。
「ん? なに、あたしの胸と唇、そんなに見つめちゃってさ。入学式の間ずっと、あたしにどうやって食われようか妄想してたんだろ? エロい新入生だな」
からかうように笑うと、竜胆はズイッと身を乗り出した。
「ま、あたしも人のこと言えねーけどな。お前のこの熱くて硬いヤツ見たら、もう理性が吹っ飛びそうだわ……っ」
竜胆は艶やかな赤い舌で自身の唇をペロリと舐めめぐらせると、先端からとめどなく溢れ出ている透明な蜜を指先ですくい取り、嬉しそうに自身の舌へと這わせた。
「んっ……あぁ、これこれ。この匂いと味……! 遠月でも、こんな極上のスパイス出せるヤツ、お前しかいねーよ」
獲物を前にした野獣のように瞳をらんらんと輝かせると、竜胆は大きく口を開け、一切の躊躇なく、熱くそそり立つ先端から根元までを一気に深く咥え込んだ。
「んぐっ……! ちゅぷっ、じゅるるるるっ……!!」
薄暗い空き教室に、卑猥な水音が響き渡る。
竜胆は頬をすぼめて強烈な吸引力で吸い上げながら、敏感なカリ首を執拗に舌先で舐め回し始めた。温かく濡れた口腔内で、肉棒が歓迎の宴を受けているかのように激しく愛撫される。
「んむっ……ずずずっ、ちゅぽっ……! んふっ、どう? 久しぶりのあたしの舌……最高だろ?」
一度口を離して銀色の糸を引かせると、竜胆は上目遣いに金色の瞳を向けて悪戯っぽく笑った。
「声、漏れてるぞ? ここ、外を他の新入生が歩いてるかもしれないのにさ……でも、我慢しなくていいぜ。あたしがもっと気持ちよくしてやるから、全部あたしの口の中に吐き出せよ……ッ!」
煽り立てるような言葉と共に、竜胆は再び熱い舌を這わせ、今度は根元まで一気に飲み込み、首を激しく上下させながら貪欲な搾取を開始した。
「んあぁっ、はあはあっ、くっう……り、竜胆せんぱいぃ……!」
こうなっては、もう彼女に搾られるだけだ。そう思うと、どんどん欲望が溢れてくる。
「あ、あの……せ、先輩。さ、サンドイッチ……したら……も、もっと濃いのが……っ」
その一心で、口走っていた。
「んぷっ……ちゅる……サンドイッチ?」
勢いよく上下させていた首を止めると、竜胆は銀色の糸を引きながら口を離した。
キョトンとした顔で首を傾げたのも束の間。すぐ目の前でビクビクと脈打つモノと、自分の胸元、そしておれのとろけた表情を交互に見比べると、蛇のような瞳をピカンと輝かせた。
「あーっ、なるほどね! サンドイッチって、そういうことか!」
竜胆はケラケラと快活に笑うと、ただでさえ大きく開いていたスクールセーターとブラウスのボタンを、さらに下まで外した。
バサリと生地がはだけ、下着に包みきれていない規格外に豊満な双丘が、これ見よがしに無防備にこぼれ出す。
「お前、ホントむっつりスケベだなー! あたしのおっぱいで挟んでほしいって、素直に言えばいいのにさ!」
図星を突いてからかうように笑いながらも、竜胆の動きに躊躇いはなかった。
熱く反り返った硬直を、こぼれんばかりの二つの柔肉で両側からむにゅりと挟み込んだ。
「んっ……すっげ、お前の熱、直に伝わってくる……」
竜胆は艶やかな赤い舌でペロリと唇を舐めると、谷間に挟み込んだ肉棒に向かって、ツーッとたっぷりの唾液を垂らした。それを潤滑剤代わりにして、両側からギュッと胸を寄せ合い、下から上へとすり上げるように動かし始める。
むにゅっ、ぐにゅんっ……と、極上の柔らかさが暴力的なまでの密着感で肉棒を包み込む。
「でもさ……こんな美味そうなエサぶら下げられちゃ、試さないわけにはいかねーよな! あたしの舌は強欲だからさ、極上ソースのためなら、このくらい喜んで協力してやるよ!」
竜胆は楽しげに牙を覗かせると、豊かな胸で全体をしごき上げながら、先端から顔を出すカリ首を再びパクリと咥え込んだ。
「んむっ……ちゅるるっ! じゅぽっ、ずずずっ……!!」
下からは圧倒的な質量を持つ双丘が擦り上げ、上では熱い口腔と舌が敏感な先端を容赦なく吸い上げる。
文字通り、竜胆の極上の武器によるサンドイッチだ。胸に挟まれ、口内で蹂躙される圧倒的な快感が、腰の髄をガンガンと揺さぶってくる。
「んふっ、ちゅぽっ……ほら、どうだ? このサンドイッチ、すっげー気持ちいいだろ?」
顔を離して妖艶に微笑むと、竜胆は再び胸の谷間で激しく扱きながら、上目遣いにおれを見上げてきた。未知の濃い味を求めて、飢えた野獣のようにギラギラと熱く発情していた。
「遠慮すんなよ? お前の特濃……あたしの口の中に、一滴残らずぶちまけてみろって……ッ!」
「んはああっ! そ、それっ、気持ちいいっ! 気持ちいいですぅっ!」
天国だった。夢にまで見た竜胆のパイズリ。さらにはフェラまで。
もう至れり尽くせりである。極上の快感に腰が浮き上がり、あっという間に特濃ザーメンが込み上げた。
「んほぉっ!!」
どぷどぷどぷっ! どびゅるるるるるる────っ!!
「んぐぅっ……!? ごきゅっ、んむっ……ごきゅっ、ごくんっ……!!」
薄暗い空き教室に、生々しく喉を鳴らす音が響き渡る。
突然の凄まじい勢いと、かつてないほどの粘度を持った熱量に、竜胆の瞳が限界まで見開かれた。しかし、彼女は決して口を離そうとはしない。それどころか、豊満な双丘で肉棒を両側からさらにギュッと強く挟み込み、最後の一滴まで搾り取ろうと激しく頬をすぼめて吸い上げ続けた。
「んむっ……ちゅるるっ、ごきゅっ……ちゅぽぉっ……!」
やがて脈動が完全に静まると、ポンッ、と卑猥な水音を立てて竜胆の艶やかな唇が離れた。
口端からこぼれそうになった白濁の糸を、赤い舌でペロリと掬い取るように舐めめぐらせる。
「ぷはあっ……! はぁっ……はぁっ……げほっ、んんっ……!」
大きく息を吐き出しながら、竜胆はゴクリと最後のひとくちを喉の奥へと飲み込んだ。
獲物を丸呑みした直後のような恍惚とした表情を浮かべ、欲情で真っ赤に染まった顔を上気させている。乱れた呼吸に合わせて、むき出しになった規格外の双丘が激しく波打った。
「……っかー! なんだこれ、すっげぇドロドロじゃんか! マジで『特濃』じゃねーか……!」
竜胆は弾んだ声で笑うと、自身の胸の谷間に飛び散っていた白い飛沫を指ですくい取り、嬉しそうにチュパッと舌で舐め取った。
「口に入ってきた瞬間、重たすぎてむせそうになったぜ。いつもより全然濃くて……旨味もヤバい。喉の奥から脳髄まで、ビリビリ痺れてとろけそう……っ」
とろんと潤んだ瞳でおれを見上げると、彼女はふにゃりとだらしない、それでいて最高に嬉しそうな笑顔を見せた。
「あっはは、サンドイッチ大成功だな! こんな極上のスパイス出されちゃ、あたしの胃袋、もう完全にお前なしじゃ生きていけねー」
名残惜しそうに何度か舌なめずりをすると、竜胆はゆっくりと立ち上がり、乱れたスクールセーターとブラウスのボタンを留め始めた。とはいえ、相変わらず胸元の豊かな谷間はガッツリと開け放たれたままだ。
「あー、食った食った! 入学初日からごちそうさん!」
満足げにブレザーを羽織り直すと、竜胆はまだ余韻で火照っているおれの頬を、ポンポンと軽く叩いた。
「さーて、あたしの専属シェフくん。ここからが遠月学園の本当の地獄の始まりだぜ? 周りは蹴落とすことしか考えてねーバケモンばっかりだからな。せいぜい退学にならないように、死ぬ気で生き残れよ?」
ニシシッと牙を覗かせて笑うと、竜胆は扉の鍵を開け、外の廊下へと振り返る。
「お前がこの学園にいる限り、あたしはいつでもどこでも、その隠し味を味わいに来るからさ。次も今日みたいな特濃、期待してるぜ!」
バチンッ、と片目でウインクを残し、竜胆は春風のように軽やかな足取りで空き教室から出ていった。
あとに残されたのは、彼女が発情していた甘く熟れたような匂いと、遠月学園での波乱に満ちた生活の、あまりにも濃厚すぎる幕開けだった。
「はあっ……はあっ……」
気持ち良すぎて、おれは少しの間余韻に浸ってしまった。
おかげで──少しだけ遅刻した。
すでに人が集まっている調理室へ、急いで駆け込んだ。
扉を開けると、広大な調理室にはすでに数十人の生徒たちがそれぞれの調理台に立ち、凄まじい熱気と包丁の音が響き渡っていた。しかし、扉が開いた瞬間にその手がピタリと止まり、全員の視線がこちらに突き刺さる。
「……授業開始時刻を3分過ぎているぞ、編入生」
調理室の奥から響いたのは、地を這うような威圧感のある低い声だった。
そこに立っていたのは、純白のコックコートに身を包んだ初老の講師。遠月学園の中でも特に厳格なことで知られるフランス料理部門主任、ローラン・シャペルだ。一切の感情を排した冷たい眼差しが、遅刻してきたこちらを鋭く射抜いている。
「初日から私の授業に遅れるとは……遠月のカリキュラムを甘く見ているようだな。それとも、よほどの自信があるのか」
周囲の生徒たちから「あいつ、編入式の時の……」「よりによって『笑わない料理人』シャペル先生の授業に遅刻するなんて、終わったな……」と、同情と嘲笑が入り混じったヒソヒソ声が漏れ聞こえてくる。
「さっさと空いている調理台に入れ。今日の課題は『
シャペルは冷酷にそう言い放つと、手元のバインダーに何かを書き込んだ。
「私の授業において、E評価はすなわち退学を意味する。心して取り掛かることだ」
重苦しいプレッシャーが調理室を支配する中、斜め前の調理台から「おっ! お前もこのクラスだったのか!」と能天気な声が飛んできた。
見れば、幸平創真がすでに手際よく肉に焼き目をつけながら、気さくに笑いかけてきている。その横では、青い三つ編みのおさげ髪をした小柄な女生徒が、「ひぃぃ……編入生くん、初日からシャペル先生に睨まれてる……!」と顔を青ざめさせてガクガクと震えていた。
容赦のない遠月学園の過酷なカリキュラムが、いよいよ本格的に幕を開けた。
目立つような行動は控えるつもりだったが、しょっぱなから目立ってしまっていることに肩をすくめる。
それから創真と、横のおさげ髪の女生徒に視線を向けた。
創真のペアは大変そうだ、という感情と──可愛いなという感想が入り混じっていた。
「おっと……」
呑気にしている暇はない。おれも行動を開始した。
調理室に響き渡るのは、包丁がまな板を叩くリズミカルな音と、鍋の中で具材が煮立つ音、そして生徒たちの焦燥感に満ちた息遣いだけだ。他の生徒たちが二人一組で手分けして作業を進める中、一人で遅れを取り戻さなければならない状況は、誰の目から見ても明らかに不利だった。
青いおさげ髪の女生徒は、視線が合ったことに気づくと、ビクッと肩を揺らして「ひゃっ、す、すみません……!」となぜか小声で謝り、慌てて手元の玉ねぎを刻み始めた。その横で、創真は「おーい田所、焦げ付くぞ!」と全く動じることなく、マイペースに肉の処理を進めている。
「……よそ見をしている暇があるのか?」
背後から、氷のように冷たいシャペルの声が響いた。
振り返らずとも、彼が腕を組み、調理室全体を鋭い眼光で監視しているのがわかる。
ブッフ・ブルギニョン。フランスのブルゴーニュ地方を発祥とする、牛肉の赤ワイン煮込み。
本来であれば、硬い牛肉を赤ワインでじっくりと時間をかけて煮込み、ホロホロに柔らかく仕上げる伝統的な料理だ。しかし、この授業で与えられた時間は限られている。短時間でいかに肉を柔らかくし、かつ赤ワインの酸味を飛ばしてソースに深いコクを出すかが、この課題の最大の焦点であった。
周囲の生徒たちが、焦りから火加減を間違えたり、手順を飛ばしたりして四苦八苦している中、時計の針は無情にも進んでいく。
シャペルは冷徹な眼差しで生徒たちの調理過程を採点しながら、ゆっくりと調理室を歩き回る。そして、単独で調理を進めている調理台の前でピタリと足を止め、その作業工程をじっと見下ろしてきた。
「遅刻した上に、単独での調理……時間内に及第点の皿を提示できなければ、その時点でE評価だ。せいぜい足掻くことだな」
一切の期待を持たない、冷酷な宣告。
タイムリミットが迫る中、「笑わない料理人」の重圧が真上からのしかかっていた。
「やるしかない」
つぶやくように言った。しかし、その言葉とは裏腹に、おれはプレッシャーを感じていなかった。
本来であれば遠月学園に来るはずのなかった身。もし退学しても、元の環境に戻るだけという
「よぅし……」
懐から、小瓶を一つ取り出した。さっき竜胆に搾られた
ただ、ほとんど彼女が飲み干してしまったので、少量だった。
いつも料理に使う量の3分の2くらい。それを調理に用いた。
調理室の時計が、無情にも残り時間の少なさを告げていた。
焦燥感に駆られた他の生徒たちがミスを連発し、シャペルの冷酷な「E」宣告が次々と下されていく中、おれは指定された時間内に皿を完成させ、教卓へと提示した。
「規定時間内には間に合ったようだな。だが、味に妥協があれば結果は同じだ」
シャペルは皿に盛られた『ブッフ・ブルギニョン』を冷徹に見下ろし、ゆっくりとフォークを手にした。
周囲の生徒たちが「あいつもどうせE評価だ」「一人で作ってまともな味になるわけがない」とヒソヒソと囁き合い、息を呑んで見守っている。
シャペルは肉を一口大に切り分け、一切の期待を抱いていない顔で口へと運んだ。
咀嚼した瞬間。
「…………ッ!?」
シャペルの動きが、微動だにせずピタリと静止した。
その眼光の鋭さが一瞬にして消え去り、目を見開いて硬直する。
普段よりも意図的に量を減らした『隠し味』は、食べる者の理性を吹き飛ばすような暴力的な快感ではなく、極限まで研ぎ澄まされた圧倒的なコクと深みとして見事に作用していた。
短時間しか煮込んでいないはずの硬い牛肉が、まるで何日も極上のソースの中で熟成されたかのように芳醇な旨味を放ち、赤ワインの角のある酸味を未知のまろやかさで完全に包み込んでいる。
「…………」
無言のまま、シャペルは再びフォークを動かした。
二口、三口。
彼のフォークの動きは徐々に早くなり、ソースの一滴すら逃すまいとするかのように、皿の上の肉が次々と消えていく。
「な、なんだ……? シャペル先生の様子が……」
「嘘だろ、あんながっついて食べるなんて……」
周囲の生徒たちがざわめき始めたその時。
シャペルはゆっくりとフォークを置き、ふぅ、と深く、長く息を吐き出した。
「……素晴らしい」
その直後、調理室にいた全員の心臓が止まりかけた。
厳格で冷酷無比、一切の感情を表に出さないはずの『笑わない料理人』ローラン・シャペルの口元が。
微かに、しかし確かに弧を描き、至福の笑みを浮かべていたのだ。
「わ、笑ったぁぁっ!?」
「『笑わない料理人』シャペル先生が……笑ったぞ!?」
調理室に、悲鳴にも似た大絶叫とどよめきが巻き起こる。
「単独での調理、しかもこの短時間で……信じられん奥深さだ。私の知るどんなスパイスやブイヨンにも該当しない、未知の旨味。それが肉のポテンシャルを次元の違う領域へと引き上げている。実に見事な一皿だ」
シャペルは感嘆の溜息をつくと、手元のバインダーにペンを走らせた。
「評価はAだ。……いや、私がつけられる最高評価がAまでしかないことが、これほど悔やまれる日はない」
その言葉に、他の生徒たちが「ありえねえ……」「編入生、何者なんだよ……」と絶望的な顔でへたり込む。
異様な熱狂と静寂が入り混じる中、斜め後ろの調理台から、バンッと勢いよく皿が置かれる音がした。
「おーっし、こっちも完成だ! なんだなんだ、すげー盛り上がってんじゃん」
幸平創真が、ハチミツで肉を柔らかくする工夫を凝らした特製のブッフ・ブルギニョンを自信満々に差し出していた。その横では、田所恵が「ひぃぃ、シャペル先生が笑ってる……怖い……っ!」と別の意味で震え上がっている。
遠月学園での最初の授業は、こちらの──というよりザーメンソースの底知れない実力を周囲に強烈に刻みつける形で幕を開けたのだった。
それから創真の持ってきた品を見て、おれは目を細めた。
「ほお……」
おれが一人であれこれやっている間、創真と恵ペアはトラブルに見舞われていた。
自分の課題で精一杯だったため見に行かなかったが、塩がどうのこうの言っていた。そんな状況でも、創真は取り乱していなかった。
教卓に進み出た創真は、無言で鋭い眼光を放つシャペルの前に、自信満々に皿をドンッと置いた。
「おあがりよ!」
シャペルは静かにフォークを取り、創真の『ブッフ・ブルギニョン』を口に運ぶ。
咀嚼した瞬間、その冷徹な目が僅かに見開かれた。
(……蜂蜜。誰かに塩を大量に入れられるという妨害を受けたにもかかわらず、咄嗟の機転で蜂蜜の酵素を利用し、短時間で肉を柔らかく仕上げたというのか……)
「……評価はAだ。お前たちもな」
その宣告が調理室に響き渡った瞬間、隣に立っていた田所恵は「へにゃぁぁっ」と奇声を上げて腰から崩れ落ちた。
「よ、よがっだぁぁぁ……! 退学、免れたぁぁ……っ!」と、安堵のあまりボロボロと滝のような涙を流し始める。
「おう田所、だから言ったろ? 余裕だって」
創真はケラケラと笑いながら手首の白いハチマキを解くと、振り返って真っ直ぐにこちらへ視線を向けてきた。
その瞳には、編入試験の会場で顔を合わせた時と同じ、純粋で強烈な好奇心がギラギラと宿っている。
「いやー、それにしても……お前もすげーな!」
創真は気さくな足取りで歩み寄ってくると、ニカッと人懐っこい笑みを浮かべた。
「あの『笑わない先生』を笑わせるなんてよ。俺の蜂蜜より、もっとすげぇ裏技でも使ったのか? 遠目から匂い嗅いだだけでも、すっげー深いコクがあるのがわかったぜ。編入試験の時のアレもそうだけどさ、お前の料理、なんかめちゃくちゃ面白そうだな!」
屈託のない、しかし底知れないバイタリティを感じさせる創真の言葉。
周囲の生徒たちは、シャペルを笑わせた得体の知れない編入生と、絶望的なトラブルを即座の機転で乗り越えてA評価をもぎ取ったもう一人の編入生が親しげに話している光景にすっかり気圧され、遠巻きに見ていることしかできなかった。
波乱に満ちた遠月学園の初日は、こうして二人の異端児の存在を周囲に強烈に焼き付ける形で終了した。