誤字だったり、色々ミスがあるかもしれません。
オリジナル主人公が『食戟のソーマ』のヒロインたちとスケベしまくります。
苦手な方は絶対に読み進めないでください。
だいたい女性優位で、マジで×5前戯ばっかです(特に口)。
ただしエロ無し回。
──翌日。
チュンチュン、と。
極星寮の窓の外から、のどかな小鳥のさえずりが聞こえてくる。
昨晩の嵐のような、そしてあまりにも濃密で過激な出来事が嘘のように、302号室に差し込む朝の光は清々しいものだった。
しかし、ベッドに沈み込んでいるおれの身体は鉛のように重い。十傑第二席・小林竜胆による手加減一切なしの容赦なき搾取と、それを間近で食い入るように見つめ、未知の技巧をインプットしてしまった純情な同級生。心身ともに限界を超え、すべての
「おーい! 朝だぞー!」
そこへ、遠慮というものを知らない快活な声と共に、バンッ! と勢いよく扉が開かれた。
「なんだカヅキ、まだ寝てんのか? 朝飯できてるし、一色先輩が裏の畑の手伝いしろって呼んでるぞ!」
頭に白いタオルを巻いた幸平創真が、無防備に部屋へと上がり込んでくる。
そして、その後ろから「あ、あの、幸平くん……勝手に入っちゃダメだよぉ……っ」と、おずおずと顔を覗かせたのは田所恵だった。
しかし、恵はベッドでぐったりと爆睡しているこちらの姿を見た瞬間――昨晩、この部屋で繰り広げられた竜胆の凄まじいまでの手練手管と、情けなく声を漏らして搾り取られていたおれの姿を克明に思い出してしまったのだろう。
みるみるうちに顔面を茹でダコのように真っ赤に沸騰させ、ポンッ! と頭から湯気を吹き出した。
「あ、あわわわっ! ゆ、幸平くん、ダメだよ! カヅキくんは昨日、その……すっごく激しくて、えっちな……じゃなくて! 竜胆先輩の、と、特別授業……!? みたいなのがあって、体力を全部……その、搾り取られちゃってるから……っ!」
激しく動揺して三つ編みおさげをぶんぶんと振り回しながら、恵は慌てて創真の背中を押して部屋から追い出そうとする。昨晩の強烈な視覚情報が脳裏に焼き付いているのか、彼女の瞳は完全にグルグルと渦を巻いていた。
「特別授業? なんだそれ、十傑の先輩直々の授業か!? いいなー、俺も受けたかったぜ」
「う、受けちゃダメぇぇぇッ!! 幸平くんが受けたら、大変なことになっちゃうからぁッ!」
何も知らない創真の無邪気な言葉に、恵は半狂乱になって悲鳴を上げた。
朝日が眩しい極星寮の朝。
すべてのエネルギーを搾り取られて爆睡するおれを置いて、遠月学園の騒がしくも新しい一日が始まろうとしていた。
──その後。
なんとか復活したおれは、創真たちと共に一色の畑仕事を手伝い、授業に向かうのだった。
放課後になると、おれは一人、丼物研究会に足を運んだ。
ガラッ、と立て付けの悪い扉を開けると、そこには案の定というべきか、一方的な怒声が響き渡っていた。
「なんだよこのボロい調理器具は! あたしがわざわざ入ってやったってのに、もうちょっとマシな機材くらい揃えられないのか!? こんなんじゃ、あたしの扱う最高級肉のポテンシャルが台無しだろ!」
「ひぃぃぃっ! も、申し訳ない水戸さん……っ! だがうちは廃部寸前で予算が完全に底を突いていてだな……!」
部室の中心で腰に手を当てて怒鳴っているのは、金髪ショートに緑色の瞳を持つ『
相変わらずドスケベ──といったら申し訳ないが、制服を大胆に着崩したアメスクスタイルだった。彼女が小西に文句を言って身振り手振りをするたびに、星条旗ビキニに包まれた巨乳が暴力的に揺れ動いている。
そんな彼女の剣幕に、小西主将は床に正座して涙目で平謝りしていた。
ふと、扉の近くに立つこちらの気配に気づき、郁魅が振り返る。
「あ……っ!」
昨日、食戟に敗北して床にへたり込んでいた無防備な郁魅を、熱を帯びた目で見下ろしていたこと。それを思い出したのか、彼女の小麦色の肌が一瞬でカッと赤く染まった。
彼女は咄嗟に、豊かな胸元を隠すように両腕を交差させ、緑色の瞳で鋭く睨みつける。
「な、なんだよお前……! ニヤニヤと人の顔見て突っ立って……っ。言っとくけど、あいつに負けたからって、別に落ち込んでなんかねーからな! 丼研に入った以上、この底辺みたいな環境をあたし色に染め直してやろうと思って来てやってるだけだ!」
ツンッと顔を逸らし、いつもの強気な男性口調でまくしたてる郁魅。
しかし、交差した腕によってむにゅっと強調された豊満な双丘や、耳の先まで赤く染まっている照れ隠しの態度は、言葉とは裏腹にどこか隙だらけで可愛らしい。
「……で? お前一人ってことは、幸平のやつは今日は来ねーのか? あいつにも、このボロい厨房の改善計画を強制的に手伝わせようと思ったんだけどよ」
少しだけ声のトーンを落とし、上目遣いで様子を窺うように聞いてくる郁魅。
昨夜の過酷な特別授業の疲労をなんとか誤魔化してやってきたおれにとって、放課後の丼研は、また別の意味で視覚的な刺激が強すぎる空間となっていた。
「残念だけど……彼は丼物研究会に入るつもりはないらしいよ」
郁魅たちに真実を告げた。
それを聞いた瞬間、郁魅は目を丸くして完全に動きを止めた。数秒間、その言葉の意味を脳内で処理していたようだが……やがて、彼女の緑色の瞳にメラメラと怒りの炎が点火される。
「は……っ?」
ピキキッ、と。彼女の額に青筋が浮かぶのが見えた気がした。
「はあああああぁぁっ!? ちょっと待て、どういうことだよそれ! あいつ、あたしを食戟で負かしてこんなトコに入れやがったくせに、自分は入部しねぇだとぉ!?」
バンッ!! と、郁魅はパイプ椅子を蹴り飛ばし、安い長机を両手で激しく叩いた。その衝撃で、ただでさえはち切れんばかりの巨乳が、バインッ! と暴力的に跳ね上がる。
「ふざけんな! じゃああたしは一体何のためにえりな様の派閥から抜けてまで……っ! おい……! 幸平はどういうつもりなんだよ!」
「ひぃぃぃっ! こっちに言われても……っ! 彼はあくまで助っ人として食戟に出てくれただけで……っ!」
八つ当たり気味に詰め寄られ、小西は悲鳴を上げてさらに身を縮こませた。
郁魅は「あぁもうっ!」と金髪のショートヘアをガシガシと掻きむしり、忌々しそうに舌打ちをする。食戟で敗北した屈辱に加え、勝者からの完全な放置。プライドの高い彼女にとって、これほどコケにされた話はないだろう。
「……ッ!」
怒りのやり場を失った郁魅は、ふと、未だに気まずそうに視線を逸らしているおれへと鋭い矛先を向けた。
小麦色の肌を怒りと羞恥でほんのりと赤く染めながら、ズカズカと足音を荒立てて歩み寄ってくる。
「お前もさっきからなんだよ! 人の顔見ないでそっぽ向いたりして……あたしの格好がそんなにおかしいかっての!? あいつのダチなら、お前が代わりに責任とって、この厨房の大掃除と機材搬入を手伝え!!」
ビシィッ! と至近距離で指を突きつけられる。
怒りに任せて身を乗り出してきたせいで、大きく開いたブラウスの隙間からこぼれ落ちそうなほどの豊満な谷間が目の前まで迫ってきていた。相変わらず、彼女の無防備なアメスクスタイルは目の毒すぎるようだった。
「ち、違う……おかしいことは……あー、君の格好がエ……魅力的すぎて、直視出来ないってだけだよ」
ごまかしたら余計怒ると思い、白状した。
「み、魅力的……っ!?」
放たれた本音は、郁魅の最も無防備な死角を正確に打ち抜いた。
緑色の瞳を限界まで見開き、数秒間、彼女は金縛りにでも遭ったかのように完全にフリーズしてしまう。
そして――ボフッ! と。
音でも聞こえてきそうな勢いで、小麦色の肌が耳の先から首筋まで、一気に真っ赤に染まり上がった。
「なっ……ななな、何言ってんだよお前っ!! アホか!!」
パニックに陥った郁魅は、バンッ! と後ろに飛び退き、星条旗柄のビキニに包まれた胸元を隠すように、さらにギュッと両腕を交差させた。しかし、その防御姿勢のせいで豊満な双丘がより一層むにゅっと強調されてしまっていることには、本人は全く気づいていない。
「あ、あたしの格好がエロ……じゃなくて! 魅力的だからって、そんな堂々と言う奴があるかっ! お前、頭おかしいんじゃねーの!?」
普段の強気な男性口調はどこへやら、彼女は涙目になりながらしどろもどろに叫ぶ。
「直視できない」と言われたことがよほど恥ずかしく、そして嬉しかったのか、完全に怒りの矛先を見失ってわたわたと視線を泳がせていた。
「わ、わかったわかった。ま、まあ、とりあえず……暇だったし、なにか手伝おうとは思ってたんだ。幸平くんの代わりに仕事させてもらう」
おれが手伝いを申し出ると、彼女はハッとして、必死に平常心を――あるいは強気な『肉の侵略者』としての威厳を取り戻そうとコホンと大きく咳払いをした。
「そ、そうかよ! 暇なら最初からそう言えっての! て、手伝うって言うなら、容赦しねーぞ! あたしが納得するまで、徹底的にこき使ってやるからな……っ!」
そう言って、郁魅は誤魔化すようにバッ! と背を向け、部室の隅に積まれたダンボールの山を指差した。
「ほら! まずはそこのボロい鍋とフライパン、全部外の洗い場に持っていけ! ピッカピカになるまで磨き上げるんだよ! あたしはその間に、搬入業者の手配をするから……っ!」
偉そうにビシッと指示を飛ばす郁魅だが、その声はまだ微かに上ずっている。
そして何より、こちらに向けられている彼女の後頭部――金髪のショートヘアから覗くうなじや耳たぶが、未だに茹でダコのように真っ赤に染まったままであることは、後ろから見ているおれには丸わかりだった。
「あ、ああ……」
郁魅に言われたとおり、小西と協力して調理器具の洗浄やら、部屋の掃除を行なったのだった。
──窓の外がすっかり茜色に染まる頃。
ホコリを被っていた丼研のボロい厨房は、おれと小西の懸命な作業によって見違えるようにピカピカになっていた。
「や、やったぞ……っ! 丼研の厨房が、輝いている……!」
床にへたり込み、磨き上げられた寸胴鍋を抱きしめて感極まって泣き崩れる小西。
その様子を腕を組んで眺めていた郁魅は、「ふん」と鼻を鳴らして満足げに頷いた。
「まあ、素人にしてはよくやったんじゃねーか。あたしが手配した最新機材を搬入する下準備としては、合格点ってとこだな」
そう言って、彼女はどこから取り出したのか、よく冷えたスポーツドリンクのペットボトルを小西とおれ方へ放り投げた。
「ほらよ。水分くらい補給しとけ。……特に、お前な」
郁魅はふいっと露骨に視線を逸らした。
金髪のショートヘアから覗く耳たぶや、小麦色の頬は夕日のせいだけではなく微かに朱に染まっている。彼女はもじもじとつま先で床を小突いていた。
「さっきは……その、変なこと言いやがって。あたしはあんなおだてに乗るほどチョロくねーからな……っ! バカ」
聞こえるか聞こえないかほどの小さな声で強がりの文句を呟いた後、彼女は照れ隠しのようにバンッ! と長机を叩いた。
「と、とにかく! 厨房が綺麗になったんなら、次は火口と調理台のテストだ! お前ら、掃除して腹減ってんだろ! このあたしが、極上のA5ランク肉を使って最高の肉丼を振る舞ってやる! ありがたく思えよな!」
そう声高に宣言すると、彼女はクーラーボックスから見事なサシの入った塊肉を取り出し、ピカピカになったばかりの調理台の前に立った。
大きく開いたブラウスの下で、星条旗柄のビキニに包まれた豊満な双丘が、彼女が包丁を振るうたびにブルン、バインッと暴力的に揺れ動く。夕日に照らされた健康的な小麦色の肌と、はち切れんばかりの胸の谷間には、微かに汗が光っていた。
ジュワァァァァッ……!! と、新しく磨かれたフライパンで極上の肉が焼ける暴力的なまでに食欲をそそる匂いが、狭い部室に充満していく。
しかし、それ以上に視覚的な暴力――料理に集中して無防備に身体を揺らす郁魅の肉感的な姿と、彼女から漂う甘いフェロモンが、昨晩から酷使され続けて疲労困憊のはずの身体を、再び芯から熱く刺激し始めていた。
正直、押し付けられた雑務よりも煩悩と勃起を鎮めることの方がハードだった。
それから、郁魅の作った肉丼をごちそうになった。やはりというか──別格だった。
「ごちそうさん。良かったな、小西先輩。こんな……良い後輩が入ってくれて」
「うおおおぉぉぉんっ! 涙が出るほど美味い……っ! こんな極上の肉丼がうちの部室で食べられる日が来るなんて……っ! 水戸さん、本当に、本当にありがとう……っ!」
小西は空になったドンブリを抱え込み、文字通り滝のような涙を流しながら床にひれ伏していた。
一方の郁魅はというと。
良い後輩という真っ直ぐな褒め言葉を聞き、ビクッと肩を跳ねさせていた。
小麦色の肌が、夕焼けのせいだけではなく、みるみるうちに耳の先まで真っ赤に染まっていく。
「ふ、ふんっ! あたしの極上肉を使ったんだ、美味くて当然だろ……っ!」
ツンッと尖った口調で言い放つが、その声は嬉しさで完全に上ずっていた。
チラチラと緑色の瞳でこちらの様子を上目遣いに窺いながら、照れ隠しのように金髪のショートヘアの毛先をいじっている。
「だ、誰が良い後輩だ! あたしはただ、自分が調理しやすいようにこの底辺環境を整えただけで……お、お前のためとか、そういうんじゃねーからなっ!」
必死に強がるものの、緩みそうになる口元を抑えきれていない。
食戟で敗北した屈辱などすでにどこかへ飛んでいってしまったのか、彼女はおれが綺麗に平らげた空のドンブリを見て、本当に嬉しそうに目を細めた。
「……でも、まあ。お前が掃除を手伝ってくれたから、今日は特別に振る舞ってやっただけだ。……美味かったなら、それでいいけどよ」
そっぽを向いたまま、ぽつりと小さく呟く郁魅。
ツンデレの手本のような態度を見せる彼女だが、無防備に開かれたブラウスの胸元から放たれる健康的な色気と甘い匂いは、なんとか鎮めたはずの下半身の熱を、休む間もなく再びじわじわと煽り立ててくるのだった。
「ありがとう……あ、あのさ……おれと……食げ……んんっ」
最後らへんの言葉は極端に小さく、しかも途中で遮った。
「やっぱり美味かったなあ」とごまかした。
「じゃ、じゃあおれもう帰るよ。さらば!」
逃げるようにして、丼研の外に出た。
パタン、と立て付けの悪い扉が閉まる。
夕暮れの静かな廊下に、深く、そして疲労困憊の大きなため息が吸い込まれていった。
昨晩の竜胆による搾取のダメージが抜けきっていない身体で、あんなにも刺激的で無防備な格好の郁魅を直視し続けるのは、まさに拷問だった。強制的に煽られた股間の熱と、限界に近い肉体の疲労で、今すぐ極星寮のベッドに倒れ込みたい気分だ。
しかし、帰路につこうと足を踏み出したその時。
「ち、ちょっと待てよ……っ!」
背後の扉がバンッ! と勢いよく開き、慌てたような郁魅の声が廊下に響き渡った。
振り返ると、夕日を背に受けた郁魅が、小さな包みを両手で大事そうに抱えて立っていた。豊満な双丘が、彼女の荒い呼吸に合わせて激しく上下に揺れている。
ズカズカと歩み寄ってきた彼女は、こちらの胸にドンッ! と半ば強引にその包みを押し付けてきた。
指先に伝わってくる確かな温もり。中からは、微かに先ほどの極上肉の香ばしい匂いが漂ってくる。
「さ、さっきの肉……少し余ったから、ついでに弁当にしてやったんだ! 明日の朝にでも温め直して食え! べ、別にお前のためにわざわざ作ったわけじゃねーぞ! 食材を無駄にするのは三流のやることだからなっ!」
ツンとそっぽを向き、早口でまくしたてる郁魅。
しかし、用事は済んだはずなのに彼女は踵を返そうとはせず、もじもじとつま先で床を小突きながら、緑色の瞳で上目遣いに見つめてきた。
「そ、それとさ……お前、さっき出ていく前、最後になんて言おうとしたんだよ……?」
小麦色の頬を夕日以上に赤く染め、彼女は金髪のショートヘアの毛先を指でくるくると弄りながら、小さく震える声で尋ねてくる。
「あたしと……『しょくげ』……? しょくげ……しょくじ……っ! も、もしかして……あたしと、休みの日に二人で食事に行きたい、って……誘おうとしてたのか……っ!?」
見事なまでの勘違いだった。
ただスケベ目的で「食戟」という単語を言い淀んだだけだったのだが、純情な彼女の脳内では、それが『デートの誘い』へと完全に変換されてしまっていたらしい。
「ば、バカじゃねーの!? 丼研の掃除を手伝ったくらいで、あたしをデートに誘おうなんて……100年早いっての!」
ビシィッ! と顔を真っ赤にして指を突きつけてくるが、その声色には怒りよりも明らかな動揺と照れが混ざっている。
「で、でも……っ。お前が、ど────してもって土下座して頼み込むなら……! その……今度の日曜くらいなら、別に……付き合ってやらないこともない、けど……っ!」
腕を組み、むにゅっと豊かな谷間を強調させながら、チラチラとこちらの反応を窺う郁魅。
『肉の侵略者』としての威厳など微塵もなく、完全に恋する乙女の顔になった彼女からの、不器用すぎる逆アプローチだった。
「……あ、ああ……えっと、それなら……どこでも良いけど……それこそ丼研でも良いけど、今回のお礼も兼ねておれが料理を振る舞うよ」
「あ、あたしに料理を……? ふ、ふんっ! この『
ビシィッ! と、胸を覆っていた片手を離しておれを指差す。その反動で、解放された巨乳がブルンッ! とまたしても扇情的に揺れ動いた。
「ま、まあ……! 今回は丼研の掃除を手伝ってくれた恩もあるし? そこまでお前が言うなら、あたしが直々に審査してやってもいいけどよ……っ!」
完全にツンデレのテンプレートのような台詞を口にしながら、郁魅はそっぽを向いて金髪のショートヘアをいじる。夕日に照らされた彼女の横顔は、完全に恋する乙女のそれだった。
この純情な『肉の侵略者』は、こちらがとんでもない隠し味を生み出す特異体質であることなど、当然ながら知らない。
日曜日、おれに手料理を振る舞われるということは、すなわち彼女も竜胆や恵と同じく、
「に、日曜日! 昼にこの部室だからな! ぜ、絶対に遅れるなよっ! 少しでも遅刻したら、ただじゃおかないからなっ!」
言い捨てると同時に、郁魅はバッ! と踵を返し、逃げるように丼研の部室へと駆け戻っていった。
ちょっと露骨に見過ぎだったかもしれない。反省しなければ。
そう思いながら、極星寮への帰路につく。
すると──予想外の出会いが一つ。
夕暮れ時の静寂が支配する遠月学園の長い廊下。その向こう側から、カツン、カツンと、洗練された足音が冷たく響いてきた。
夕日を背に受けて現れたのは、遠月学園高等部において『
彼女は豪奢な長い金髪に紫の瞳を持っている。制服の上からでもはっきりとわかるほどの巨乳を揺らすその姿は、周囲の空気を一変させるほどの圧倒的な存在感と威圧感を放っていた。
そしてその後ろにぴったりと控え、周囲に鋭い警戒の視線を放っているのは、彼女の側近である新戸緋紗子だ。彼女は赤紫色のショートヘアの持ち主であり、えりなに引けを取らないほどの豊かな巨乳を備えている。
えりなは優雅な歩みを進める途中、ふと視線を前に向け――そして、ぴたりと足を止めた。
紫の瞳が不快そうに細められ、彼女の端正な顔立ちに明らかな嫌悪と、ほんのわずかな動揺の影がよぎる。
「……貴方は」
鈴を転がすような、しかしひどく冷ややかな声が廊下に響いた。
編入試験の日。彼女の『神の舌』に自らの料理を突きつけ、そして彼女自身の口から直接「不合格」を言い渡されたにもかかわらず、なぜか今も遠月の生徒として図々しく居座っているおれの存在。
えりなは不機嫌そうに腕を組み、見下すような視線を向けてくる。
「まさか、このような所で顔を合わせることになるなんて。私の視界に入らないでいただけます? 編入試験で、あのようなどうしようもない料理を私に出しておきながら、しぶとく学園に残っている図々しい方」
厳しい言葉を投げかけながらも、えりなの脳裏には、編入試験で味わった
「えりな様に道を譲れ。お前のような編入生が、気安く近づいて良いお方ではないぞ」
緋紗子が一歩前に出て、えりなを庇うようにして立ち塞がる。その鋭い眼光は、少しでも不敬な態度を取れば即座に排除しかねないほどの忠誠心に満ちていた。
えりなはふんっと小さく鼻を鳴らし、紫の瞳で冷ややかに睨みつけてくる。
「水戸郁魅が、丼研などという底辺の傘下に入ったと聞きましたけれど……貴方、まさかあんな泥舟に関わっているのではないでしょうね? 彼女も彼女です、私に背いてあのような無様な敗北を喫するなど……まあ、貴方のような三流にはお似合いの場所かもしれませんけれど」
言葉の端々にトゲを含ませ、徹底的に見下すような態度を崩さないえりな。しかし、彼女は自らその場を立ち去ろうとはせず、探るような、あるいは何かを期待しているような複雑な視線を向けたまま、静かに立ち止まっていた。
しかし、おれはムッときていた。態度には出さずとも、やはりこの女は気に食わない。
もともとおれはボンボンが嫌いだ。生まれた時から地位を約束されているから、
「あなたに……上に立つ人間としての器量はないみたいだな。
えりなに向ける言葉というよりは、独り言のように文句を並べていった。
おれは彼女とすれ違う、まるで彼女を見ていないかのように。
「安心してくださいよ。もうあなたには、
「なっ……き、貴様ッ! 待て!」
夕暮れの静寂を切り裂くように、緋紗子の怒号が廊下に鋭く響き渡った。
主であるえりなに対する信じられないほどの不敬な態度と、完全に無視して通り過ぎようとするその振る舞いに、彼女の落ち着いた顔立ちは激しい怒りに染まる。
「えりな様に向かって何たる暴言だ! 腕があれば認められるだと? 貴様のその三流の料理が、えりな様の『神の舌』を満足させられるとでも本気で思っているのか! 無礼にも程がある、今すぐ土下座してその言葉を取り消せッ!」
えりなを庇うように一歩踏み出し、激昂する緋紗子。普段の冷静さは吹き飛び、鋭い口調で容赦のない敵意を剥き出しにしている。
しかし、その後ろに立つえりな本人は――雷に打たれたように完全に言葉を失い、その場に立ち尽くしていた。
『もうあなたには永遠に振る舞うつもりはありませんから』
すれ違いざまに放たれた、冷酷なまでの見切り宣告。
これまで彼女の前に立ったすべての料理人たちは、這いつくばってでも、己の料理人としての命を懸けてでも、彼女に自らの料理を認めさせようと必死になってすがりついてきた。それなのに、目の前の男は自分を一切顧みず、あろうことか自分から見限ったのだ。
数秒の空白の後。
えりなの白い頬が、夕日よりも鮮烈な怒りと屈辱の色にカッと染まり上がった。
「……っ、ふ、ふざけないで……ッ!!」
完璧だった優雅な令嬢の仮面が完全にひび割れ、鈴を転がすような声が怒りでギリッと震える。彼女は長い金髪を振り乱し、遠ざかっていく背中へ向かって、一歩踏み出した。
「だ、誰が貴方のような三流の料理など……っ! 頼まれたって、二度と口にしてなどあげません! ええ、永遠にです! 私の『神の舌』に、貴方のその下品で得体の知れない料理など、金輪際近づけないでちょうだいッ!」
豊満な胸を激しく上下させ、紫の瞳に涙を滲ませんばかりの勢いで声を荒らげるえりな。
しかし、キャンキャンと威嚇するように叫びながらも、彼女の胸の奥底には、自分でもまだ気づいていない得体の知れない焦燥感が渦巻いていた。
編入試験のあの日、彼女の舌を強烈に支配し、身体の芯まで熱く火照らせた『あの味』。それを二度と味わうことができないという事実が、怒りとは別の小さな疼きとなって彼女の絶対的なプライドをチクチクと刺激している。
「あんな男……あんな男の料理など……っ!」
バッ! と乱暴に踵を返し、えりなは逃げるように足早に歩き出す。
その足取りはいつもの優雅なものではなく、明らかな動揺で早足になっており、彼女の背中からは怒りと共に、どうしようもない焦りが滲み出ているのだった。
「良かった。他の子、いや……この世界の誰にでも料理を振る舞うつもりだったけど、
夕暮れの廊下に、意地悪な、しかし決定的な宣告が響き渡る。
その言葉が耳に届いた瞬間、足早に立ち去ろうとしていたえりなの背中が、ビクンッ! と大きく跳ねた。足音が不自然に途切れる。
「……え……?」
彼女の口から漏れたのは、今までのような刺々しい怒声ではなく、ひどく間の抜けた、虚を突かれたようなか細い声だった。
この世界の誰にでも振る舞う。
それはつまり、自分以外の遠月の生徒たち――それこそ、底辺だと見下した極星寮の面々、さらには遠月のトップに君臨する十傑の面々すらもが、あの圧倒的な旨味と快楽を伴う謎の隠し味を味わうことができるということ。
そして、例外であるえりなだけが、この先永遠にそれを口にすることを許されないという、あまりにも残酷な事実。
「え、えりな様……? どうされましたか、お顔の色が……」
異変に気づいた緋紗子が心配そうに覗き込んでくるが、えりなは緋紗子の声など全く耳に入っていないかのように、呆然とその場に立ち尽くしていた。
(私だけが……例外……? 永遠に……? あの、脳が痺れるほど濃厚で、身体の奥底がドクドクと熱くなるような……あの味が、もう二度と……?)
編入試験で味わった、あの禁断の味。
それを脳が正確にフラッシュバックさせた途端、えりなの口内にじゅわりと大量の唾液が溢れ出した。自分から「不合格」を突きつけて拒絶したくせに、彼女の身体――絶対的な味覚を持つ神の舌は、あの麻薬のような特濃ソースの味を細胞レベルで記憶し、無意識のうちに激しく渇望してしまっていたのだ。
「あ……ぁ……」
夕日に照らされたえりなの端正な顔立ちが、絶望にも似た色に染まる。
同時に、下腹部の奥がツンと甘く疼き、制服のスカートの下で、彼女は無意識にガクガクと震える太ももをきゅっと擦り合わせた。永遠に奪われたという喪失感が、強烈な焦燥と飢餓感となって、彼女の絶対的なプライドを内側からボロボロに崩していく。
「ま、待っ……!」
ギリッと唇を噛み締め、彼女は慌てて振り返り、震える手を伸ばした。
しかし、こちらが歩いていった廊下の先にはもう誰の姿もなく、ただ冷たい夕暮れの影が長く伸びているだけだった。
「えりな様!? しっかりなさってくださいッ!」
膝から崩れ落ちそうになったえりなを、慌てて緋紗子が抱きとめる。
『神の舌』を持つがゆえに、誰よりも最高の味を求めてしまう悲しい
───そんな背後での喜劇など知る由もなく。
少しの優越感と共に、極星寮へと続くのどかな道を、のんびりと歩き続けていた。