嬉しいかどうかで言えば嬉しい、離れ離れになった幼馴染が洒落にならないくらいの美少女に育っていたのだ。
できるだけ見ないようにしたが、首から下も凄いことになっている。
とくに胸がヤバい、三人とも強い主張を行っている。
多分一番小さいリオナでさえ、片手では隠しきれないほど大きい。
次はハツキ、一番身長が低いけどリオナより一回りでかくてシャツが横にも膨らんでいる。
最後はエレン、俺には届かないが身長はそこそこあって、胸はハツキよりもさらにでかい。
凄くない? 幼馴染が皆巨乳に育ってんだけど。
顔も別ベクトルで綺麗で可愛い、どう考えてもモテモテだったろうなって感想しか出てこない。
青少年には辛いね、彼女になってくれないかしら?
「やったっ! 覚えててくれたんですねっ!」
「エレンみたいな声のでかくて大げさなやつ、簡単に忘れられんでしょ」
「ご、ごめんなさい、煩かったですか……?」
「いまさら? とっくに慣れてるからそのままでいいよ」
「……はいっ! そうします!」
声がでかいと言えば悲しそうな表情になり、そのままでいいと言えば嬉しそうに笑うエレン。
昔っから大げさでわかりやすいんだよなぁ、こいつ。
「久しぶりだなぁ、皆元気にしてたか?」
どう見ても元気そうなエレンを視界を外し、リオナとハツキを見る。
「私はちょっと寝不足」
「元気っちゃ元気よ」
「わたしは元気です!」
「うおっ!」
ほぼ後ろから右腕に抱きついてくるエレン、凄いのが右腕に当たっているっ!
「こら! 急に抱きついてくるんじゃありません! こけたりしたら危ないでしょ!」
多少なりとも名残惜しさがあったが、俺の鋼の精神が頭を振ってNOを突きつける。
「だって、センパイに会えると思ってなかったから嬉しくてっ!」
何この子、相変わらずまっすぐだねぇ。
とりあえず腕を引き抜いて抱き着き状態を解除する。
「あっ、今ニヤけてたでしょ」
「これでも男ですから、でも男なので拒否しておきます」
「……どういう事?」
ハツキの口撃とリオナの疑問、美少女に抱きつかれて胸を押し付けられるとか嬉しくないわけ無いだろ!
でも抱きつかれてニヤニヤしてるのもダサいから抱き着きはお控えください。
「三人なら抱きつかれれば嬉しいね、でも抱きつかれたらちゃんと拒否します」
「……抱きつけって催促してるように見えるけど?」
俺の言葉に怪訝な表情を浮かべるリオナとハツキ。
「するかどうかはそっち次第、とりあえずエレンはもう駄目です」
「そ、そんなぁ~」
本気でがっかりして落ち込んだような表情を浮かべるエレン。
「はい終了、抱き着きタイムは終了しました。 残念でした、俺」
「残念なのはあんたかい!」
ハツキがツッコミを入れてくれる、黙られると悲しいからな。
「嬉しくない? あんなちんちくりんだったのに、立派に成長して……!」
「どこ見て成長したって、あたしたちにわかるように言ってみな」
「全部」
顔がいい、体もいい、性格はまだわからない。
「なんか俺にばっか評価求めてるけど、俺の評価はどうなんだよ」
「んー、あの時からそのまま成長したって感じ」
腕を組んで、むにゅっと巨乳を盛り上げて言うリオナ。
「逆にそのままで安心した、髪でも染めてたらどうしようかと」
なんか半笑いで言うハツキ。
「センパイはセンパイですね!」
どういう事?
「まあ普通に成長させてもらいました、バリバリイケメンになるとは思ってなかったけどもうちょっと格好良くなって欲しかったですね」
「そこら辺は自分じゃどうしようもなくない?」
不細工ではないが美形と言うには普通に近すぎる、黄色い声援というものを受けてみたかったぜ。
「欲張りすぎるのもあれだし、普通に生んでくれたことに感謝感謝」
「あんたは本当に相変わらずよね」
「……タツは元気だった?」
「あれから病気になったことはないね」
「そりゃ良かった、ちなみにあたしも病気にならなかったよ」
「私もー」
「わたしもです!」
「そりゃ良かった、ところでここに居るってことは
当然、ダンジョンマイナー同士が出会ったらダンジョンジョブの話だよなぁ!
「あたしは魔法使い、レア属性持ち」
「私は錬金術師、レア職業やね」
「わたしは騎士です! 普通っぽいです!」
後衛後衛前衛、パーティー組むならもう一人ぐらい前衛は欲しいだろうな。
「へー、俺はテイマーだけど辞める予定」
「は?」
「ん?」
「えっ?」
三人が俺の言葉を理解できないような、唖然とした表情を浮かべる。
「ダンジョン潜ってマイナーとして向いてないってのがわかってさ、両親に話さないといけないから明日には転校手続きする予定」
「……ふーん、ボコられてビビっちゃったんだ?」
リオナが驚いたような表情から一転、ちょっとニヤついた表情になって挑発するようなことを言ってくる。
「いや、別に攻撃食らったわけじゃなくてさ。 何回潜ってもテイム出来なくてもういいかなって」
「テイム出来ないって、スライムも?」
「スライムすらテイムできない、相性問題もあるらしいけどテイム出来るやつがどれかわかんないし、テイム出来るモンスターが居たとしてもそこまで連れて行ってくれる知り合いも居ないし、ジョブ持ってるけどどうしてもダンジョンマイナーになりたかったわけじゃないし、もういいやって」
モンスターをテイムできないテイマーに価値はありますか? あるわけねぇよなぁ!!
「お前らとダンジョンで青春出来たかも知れないけど、そううまい話はありませんってな」
久しぶりに会えて一日でお別れ、実に悲しい出来事だ。
「……ちょっとそこで待ってて、二人ともこっちに来な」
リオナがハツキとエレンの腕を掴んで、俺から離れていく。
おっと? もしかして偶然再開した俺を幼馴染のよしみでパーティーに入れてくれたりしてくれるのか?
期待は止めとこう、勝手に期待して勝手に失望するのはダサいしな。
ベンチに座って遠くを見ながら、三人の話が終わるまで待つ。
「おまたせ」
「すごく待った」
「辛抱弱くなっちゃって……」
「で、何の話し合いだった?」
「あたしら強いし、パーティーに入んない?」
「……んー、迷惑かけることになるし止めとくわ」
見事予想が当たるも、間違いなく三人の負担になることは目に見えている。
そこまでダンジョンマイナーに縋りつきたいわけじゃない、なので好意はありがたいが誘いを断る。
「な、なんでですか!? 迷惑じゃないです!」
「いや、お前らが迷惑じゃないって思ってても、俺が迷惑になってると思うから嫌なの」
「……エレンは右、ハツキは左」
俺の返答を聞いて、不満そうな表情で二人に指示を出すリオナ。
二人は頷いて、さっと俺の腕に抱きついて拘束してベンチから引っ張り立たされる。
左右の腕には生胸じゃなく、それを支えるブラジャーらしき硬めの素材が押し付けられる。
それでも二人の大きすぎる胸はブラジャー越しでも柔らかさを主張してきて、下心で振り払うのをためらう。
「あのさぁ、あたしらもダンジョンマイナーよ? テイムモンスターの居ないテイマーがどんだけ足手まといになるかわかってるわけ。 それなのにこうやって誘ってる理由、わかる?」
リオナが不満たらたらな感じで言いながら、近づいてくる。
「自惚れるけど、俺のことが好きってか?」
「そう、あたしもハツキもエレンも、あんたがいいわけ」
最後の一歩、近づいて俺の胸にリオナが胸を押し付けてくる。
「これを聞いて、入るの? 入らないの?」
至近距離で真っ直ぐに見つめられる、左右のハツキとエレンも真っ直ぐに俺を見てくる。
「……しゃあねぇなぁ、嬉しいからパーティーに入るよ」
美少女が胸を押し付けてきてあなたがいいんですー、って言われて喜ばねぇ男は居ねえよなぁ!!
……まずい、今まで知らなかった柔らかさで息子が元気になり始めた!
「やったっ! センパイ! これから一緒ですね!」
「……私たち女の子なんだけど、こんな事言わせないでよ」
「じゃあ俺の男心もわかってよ、格好つけたいんだから」
結構性欲に負けたけど、バシッと格好良くモンスターを倒して三人を守りてぇ~~~~。
実際は逆なんですけどね、雑魚テイマーさん。
「頷いちゃって手前で申し訳ないけど、やっぱ条件付けさせて」
「……はっ? 嫌だけど」
「じゃあ入るの辞めるわ」
男に二言はあった、よくよく考えてなんにもなしで入るのは俺が辛い。
長男でも耐えれそうにない、だから条件を付けたいが嫌がられたのでパーティー入りはなしです。
「おつカレー」
左右の二人を引き剥がそうとするも、抱きつく腕にさらに力が入ってより強く胸が押し付けられる。
「なんでなんでなんで! 嫌です! 駄目です!」
「さっき入るって言ったじゃん!」
エレンとハツキがイヤイヤ期の子どもみたいに駄々をこねてくる、勿論俺も駄々をこねる。
「おんぶに抱っこじゃ嫌なんじゃ! 一時潜ってテイム出来なかったら転校するんじゃ! ヒモになるなんておいは恥ずかしか! 生きておられんごっ!」
この世の中に四人だけならヒモになっても良かったかも知れないが、ここは学校で他の生徒にも成績を見られる。
あいつヒモなんだぜって、指さされてひそひそ悪口言われるのは耐えられん!
「往生際の悪いやつっ! おらっ! 諦めろっ! ヒモになっちゃえ!」
リオナが抱きついてくる、柔らかい胸が変形しているのがわかる。
「大丈夫ですっ! どこに出しても立派なヒモにしてあげますから!」
「最悪じゃねぇか!」
「ヒモはヒモってりゃいいんだよ!」
「どういう事!?」
四人が一塊になってふらふら揺れている、傍目から見ればどう見えるだろうか?
「ええい! やめぇい! 幼馴染だからって!」
「一緒に居てよ!」
「また四人で遊んでよ!」
「皆と一緒がいいんですっ!」
今までと声色が変わった叫びとともに三人が強く抱きしめてくる、もう二度と離したくないと思わせるような。
「……へっ、俺と離れて寂しかったってか?」
俺に抱きついて顔を埋めて、三人は何も言わずに頷いた。
確かに俺は小学生の頃に、この三人と沢山遊んでいたのは事実だ。
その中で記憶に残るような特別な体験なんてものはなかったと思う、性欲なんかなくて一緒に遊んで楽しかった程度。
「……わかったよ、一緒にいるよ。 お前らのパーティーに入る」
「……ほんと?」
リオナが顔を上げる、涙を流したのか目元は濡れていた。
「でもな? やっぱ他に良い奴が居たから出ていけ、とか無しだぞ?」
「……うん、約束する」
「ハツキとエレンはどうだ? 約束できるか?」
「する、約束する」
「します! センパイを追い出したりしません!」
何でここまで執着されるのかわからないが、三人には執着する理由があるんだろう。
ヒモにされるのは辛いが、涙を流すくらいに離れるのが辛い三人よりはましだろうから耐えよう。
「ほら、約束したから離してくれ」
頷いて三人が離れる。
「よし、じゃあパーティー登録しに行くか」
出来ない約束はしないタイプだ、このまま解散しても三人は不安がるかも知れない。
明日でも出来ることだが、履行できる約束はすぐに済ませてちゃんと守ることを示しておく。
そうして、三人を連れてダンジョンゲートへと向かった。