※この作品はR-18です。

ダンジョン・マイナーズ   作:BBBs

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その7

 

 ダンジョン専門学校の授業って実は午前中しかないんですよ、そりゃ明るいうちは全部授業で精神的に疲れている所にダンジョン潜っても効率下がるだけじゃん。

 だから授業は午前中で終わり、午後はダンジョン潜って素材集めてねって話なんすよ。

 まあ? 別にいい成績狙わないパーティーからすれば午後は自由って嬉しいわけだ。

 10階層前後で素材集めてダンジョンポイントに換金すれば、日給数万円分になるから一日遊ぶぐらいなら十分過ぎる。

 俺等は2時間もかからず2階層抜いたので、換金したら10万を超えるポイントを獲得。

 

 超マンモス校を支えるために周囲に街が作られたんだから、当然ダンジョンポイントは街でも使える。

 つまりは遊び盛りは短めのアルバイト感覚でお金が手に入って街で遊べるって事だ。

 まあ俺達はそこそこダンジョンやるパーティーだから装備の更新や小物の購入とかもあって、ただ遊ぶためにポイントを派手に使えないがたまにならストレス解消も兼ねて使うべきだ。

 なので今回予算を10万ポイントとして、遊びましょうやって事で。

 一旦別れて準備を整えて、それから待ち合わせ場所に集合で俺が借りてるアパート前になった。

 

 街中でいいじゃんって言うと、ナンパがウザいから、で俺のアパート前に決定。

 確かに着飾ったらナンパされてもおかしくない、言い過ぎではないぐらいに可愛いから予想できる厄介は避けておこう。

 そうして待ち合わせ時間までに身だしなみを整え、5分前に家を出ようとした所に呼び鈴。

 タイミングが悪ぃなぁ、そう思いながらインターホンのカメラ画面を見るとすごい三人が居た。

 カメラ越しで見る三人は思い思いの衣服で、しっかりと可愛く着飾ってきたのがわかる。

 

「……まだ早いっておぉーい!」

 

 ドアを開けるなり三人がなだれ込んでくる。

 

「思ってたより普通じゃーん」

 

 入ってくるなり面白みがないと言ってくるリオナ。

 髪はいつものツインテールではなく、緩いウェーブが掛かったストレートヘア

 服は青のデニムのジャケットと縁にレースがあしらわれた白いショートキャミソール。

 足を見せつけるような青いデニムのミニスカートで、アクセサリーの小物と肩掛けのミニバックを身に付けている。

 

「なんか面白いのないの? ベッドの下とか」

 

 古典的な隠し場所を気にするハツキ。

 髪は三つ編みのツーサイドアップを黒いリボンで纏めてある。

 服は黒のショートケープに白いシャツ、青の縦線が入った黒いプリーツスカート。

 腰に小さなポーチを巻いている。

 

「綺麗にしてますね、センパイ!」

 

 部屋の中を褒めてくるのはエレン。

 髪はポニーテールで赤いリボンで纏めている。

 服はブラウン色の薄手のジャケットとニット素材の白の肩出しカットソー。

 下はブラウン色のチェック柄でスリットが入ったミニスカート。

 

 なんだこいつら、そのきれいな足を隠す気はないのか?

 リオナなんか胸の谷間が見えちまってるし、そんな格好してりゃナンパされんだろ。

 

「遊びに行くんだろさっさと出た出た」

「ちっ、何もないか」

「舌打ちしない!」

 

 今どきベッドの下に隠すわけねぇだろ、そもそも持ってねぇけど。

 鍵やスマホを取りに戻り、玄関に戻る。

 

「タツ」

 

 呼びかけられて、靴を履くのを止めて顔を上げれば。

 

「可愛い?」

「……お前らが可愛くなけりゃ、誰が可愛いんだよ」

 

 当たり前のこと聞くなよ、三人の笑顔を見ながら家を出た。

 

 

 

 

 

 近くのバス亭からバスに乗って中心街へと向かう。

 

「本日のデートプランはいかがなもんでしょ?」

 

 後ろの席からハツキが身を乗り出してくる。

 

「着いてからのお楽しみ、と言いたいが普通にウィンドウショッピング」

「普通だねぇ」

「普通に買い物もしたいしな」

「デートじゃないやん!」

「デートしたことないやつにデートプラン丸投げするほうが悪い」

「やだ! デートじゃなきゃやだ!」

 

 もうこいつら隠さなくなってきたな。

 しかし隠さなくなってきても、俺の対彼女性能が上がるわけもなし。

 検索して、ウィンドウショッピングに行って、オシャレなカフェで軽く休憩して、見晴らしの良い公園を散策。

 これが鉄板デートコースだとAIが言っていた、故に俺に敗北はなぁい!

 と考えていれば、ハツキに腕で頭をロックされて、柔らかい胸を押し付けられる。

 

「デート、しよ?」

「……これはデートを求める行動じゃないし、最初からその気のくせに」

 

 ただ遊びに行くだけならこんなに着飾る必要はない、バッチバチに決めといてデートのつもりはありませんでした、は通じない。

 

「おら、離せ。 そもそも4人でデートとか本当に思いつかないんだけど」

 

 1対1でも怪しいのに、1対3の変則デートなんてどう対処すりゃ良いんだ。

 今日は諦めて、後日1対1を3試合で何とか成りませんかね? 無理ですか。

 

「別に深く考えなくていいっしょ、こうやって……」

 

 隣りに座るリオナが俺の腕にしなだれかかってきて、頭を肩に乗せてくる。

 

「一緒にいられれば良いんだからさ……」

「おい! リーはそこ変われ!」

「嫌に決まってんでしょ、あんたも同じなら譲らないでしょうが!」

「静かにしろ! 暴れんな! 止めないならマジで帰るぞ!」

 

 勝ち誇ったリオナと悔しそうなハツキ、ちょっと強引にリオナを引き剥がすとリオナとハツキの表情が逆転した。

 

「……はぁ、エレンはどうだ? デートがいいか? それとも買い物がいいか?」

 

 それを聞いたリオナとハツキはエレンに小声でデートとつぶやき続ける。

 

「……デ、デート、がいいです……」

 

 少し俯きつつ、エレンが恥ずかしそうに答える。

 デートと答えたのが恥ずかしいのか、リオナとハツキが騒いだのが恥ずかしいのか、多分両方だろう。

 

「……あんまり期待すんなよ」

 

 そう言うとエレンは小さく頷いた。

 

 

 

 

 

 ちょっと煩くしたせいか、バスの乗客にジロジロ見られたがその後は静かに到着を待つ。

 到着するとさっさと降りる、リオナとハツキはTPOを勉強しましょうね。

 

「まずはショッピングモールだな」

 

 ほぼ初めての街に繰り出し、スマホで地図を見ながら大型のショッピングモールへ向かう。

 その途中にスススと近づいてきて、リオナとハツキが左右から俺の腕を取って組んでくる。

 最近はよく腕を組んでくるリオナとハツキだが、俺の腕は2本しかないので一人があぶれる。

 その一人はエレンだがなんかリオナとハツキの手下のような動きをするので、リオナとハツキに割って入るようなことはしない。

 俺をセンパイと呼んでくるのもそうだが、4人の中で対等ではない雰囲気を醸し出している。

 

「……どっちか離れてエレンと代われって、俺の腕は早い者勝ちじゃないんだからな」

 

 少なくとも三人の中で誰かを優遇したり上下を付ける気はない、そのつもりでリオナとハツキに言うと二人は同時に離れる。

 

「エレン、組むか?」

「え、でも……」

「組んでも良し、組まなくても良し。 二人のことは考えずに、エレンがしたい事を選べよ」

「……はい!」

 

 エレンは頷いて、近づいて俺の右腕で組んでくる。

 

「じゃんけんぽん! じゃんけんぽん! よし!」

「うそでしょ!」

 

 俺の左腕をどちらが組むかでじゃんけんしていた二人、今回勝ったのはハツキ。

 

「リオナはハツキと腕組めよ」

 

 先程のエレンのように一歩離れて付いてくるような動きだとはぶかれているような感じだし、一人と思われて変な奴が寄ってくるかも知れない。

 

「しゃーない」

 

 別に二人ともお互いが嫌いなわけではないから、リオナはハツキの左腕と組む。

 そうして四人で歩き出して、ショッピングモールへと向かった。

 

 

 

 

 

 流石にショッピングモール内では腕組をせず、一纏まりになって彷徨く。

 スーパー、薬局、服屋、カフェ、家具屋、ゲームセンター、遊びながら色々と回りあれやこれやと買っていく。

 

「これよくない?」

「こっちもいいと思うけど」

「それだとこれと合わせたほうが」

「タツ、こっちとこっち、どっちがいいと思う?」

 

 日用品やら化粧品やら、時にはわからないのに選んでとせがまれる。

 買った荷物は誰が持つって? 当然俺ですね、重くないから良いけど。

 そうして目的無くぶらぶらと歩く振りして、目的地付近へと足を運ぶ。

 遠目から目的地が見え始めると、近付いていくにつれて三人の会話が少なくなっていく。

 こりゃも目的地に気が付いているな、そう思うぐらいに静かになっていく。

 

 正直に言えば俺はここに来たくなかった、なぜかと言えば購入代金のポイントは皆のものだから。

 四人で稼いだのであって俺が稼いだ訳じゃない、逆に言えば四人で稼いだので四分の一は俺の稼ぎだと言って良いと思う。

 バフ奴隷をしっかりとやっているし、稼ぎの分は働いていると思いたい。

 なので25000ポイント分、申し訳ないが使わさせてもらう。

 目的の店に入り、商品を眺める。

 いや、流石にたけ~な。

 

「すいませーん」

「はい、いかがなされました?」

「ここ、ダンジョンポイント使えますよね?」

「はい、決済代金としてご利用できます」

 

 入口に書いてあったが、一応確認しておく。

 

「……かなり少ないんですけど、8000ポイントほどのアクセサリーって無いですかねぇ?」

「8000前後となりますと、こちらの方に……」

 

 カウンターケース越しに店員が希望額のアクセサリーが飾ってある所に案内してくれる。

 俺がそのケースの前に移動すると、三人も無言で背後霊のごとく付いてくる。

 俺がアクセサリーを見ていると、三人はそのアクセサリーを背後から無言で覗いて見てくる。

 

「……あの、もしかしてなんですけれど。 ……お連れの方のアクセサリーをご検討されて居られますか……?」

「どう思います?」

 

 そう聞き返すと、店員の視線が俺の背後に向けられ、すぐに俺へと戻ってくる。

 

「大変よろしいかと、プレゼントされるアクセサリーは金額が重視されることもありますが、真心を込めて贈る相手に合う物を選んだと言う事が最も大事ですので、贈られた方も大変喜ばれるかと思います」

「そう言うもんですかねぇ、今まで彼女とかいなかったんでそこら辺はよくわからないんですよね」

「それでしたら、いくつかお見繕いいたしますがいかがでしょうか?」

「……いえ、自分で選ぼうと思います。 ご迷惑をおかけしました」

「いえ、アクセサリーのことでわからないことがございましたら、声をおかけください」

「はい、ありがとうございます」

 

 店員は頭を下げた後に離れていく。

 

「………」

 

 今見ているショーケースの中には複数のネックレスが飾ってある、そのどれもが値段相応の加工された小さな宝石が一つだけ付いたもの。

 ただ、プレゼントすると決めたけど、三人がこういうアクセサリーが欲しいなんて一言も聞いてない。

 欲しいだろうな、と思って買って渡しても、反応がいまいちということもあり得る。

 間違いなく早合点の独り善がり、最近のボディタッチで勘違いしてしまったか。

 ここまで来て、いまさら欲しいかと聞くのもダサく感じる。

 

「………」

 

 男は度胸、なんでも試してみるのさ。

 背後で無言になっている三人に奇妙な恐ろしさを感じながらも、ネックレスを3つ見繕う。

 好みじゃなかったら着けないだろうし、場所も取らないから好きに処分してくれ。

 

「すみませーん」

 

 手を上げて店員を呼ぶ、来たのは先程の店員。

 

「これとこれとこれをください」

 

 3つのネックレスを順番に指さして選ぶ。

 ショーケースの中から取り出され、包装のために会計まで持って行く。

 包装待ちの合間に振り返って三人を見てみると、三人とも別々のところに視線をやって興味無さそうにしていた。

 バレバレと言いたいところだが、チラ見してくるエレンはともかく、リオナとハツキは興味なさそうに見えるので何とも言えない。

 もし俺が三人側だったら、お前それ誰にプレゼントすんだ? と軽くからかったりするが反応しないし本当に興味がないのかはてさて。

 

「ありがとうございました」

 

 個別にネックレスケースを包装してもらい、代金を支払って受け取る。

 敢えて袋に入れてもらわず、振り返って三人に見えるように上着の内ポケットに入れる仕草をする。

 完全に三人の視線がネックレスケースに吸い付いていて、興味なさそうなのは演技だったのがわかる。

 

「行くぞー」

 

 アクセサリーショップを出る、ショッピングモールはだいたい回って買い物は終えた。

 次にいこうとしても買い物袋で両手が塞がるぐらいの荷物があるので、このまま他に行くのは面倒になる。

 一回家に帰るか、金払って発送するか。

 いや、一回家に帰る方は時間がかかりすぎるな、下手したら日が暮れ始める。

 

「これを家に置きに帰るのもめんどいし、発送していいか?」

「え? ああ、良いけど……」

 

 上の空すぎない? そんなにネックレスが気になるのか。

 1階にあった発送カウンターで荷物を預けて発送してもらう。

 そのままショッピングモールを出て、近くのオシャレらしいカフェへと向かう。

 上の空ではあったが、普通に左右から腕を組まれる。

 今度はエレンとリオナ、ハツキはリオナと組んで目的地のカフェへ。

 

「四人です」

 

 四角いテーブルの四人席、俺の隣にはエレンが座り、対面にはハツキ、ハツキの隣はリオナが座る。

 メニュー表を見れば当然カフェらしいラインナップ、それぞれコーヒーやらカフェオレなどを注文する。

 注文したものが来るまでの間、内ポケットからネックレスケースを取り出して包装をはがす。

 包装もケースも同じなんで外からはどのネックレスかわからないので、包装を破って中身を確認する動きを3回。

 

「……ねぇ、タツ、それ誰にあげるの?」

 

 その行動に見かねたハツキが聞いてくる。

 

「……3つ」

 

 ネックレスケースを指先で触れて数える。

 

「三人」

 

 正面のハツキ、斜め前のリオナ、隣のエレンを順番に見る。

 

「ダンジョンポイントで購入」

 

 合計25200ポイント。

 

「これで別の誰かにあげるプレゼント買ってたら普通にヤバいだろ」

 

 1つ目、小さな星型の宝石が付いたネックレスをハツキに。

 2つ目、小さな月型の宝石が付いたネックレスをリオナに。

 3つ目、小さな雫型の宝石が付いたネックレスをエレンに。

 最初は三人とも同じものにしようかと思ったが、流石にいい加減感が強く感じたのでなんとなくのイメージで別々のモチーフのネックレスにした。

 

「結構反射的に買っちまったけど、いる?」

「「「いる!」」」

 

 三人が共鳴して返事、もやもやした不安そうな表情から一転、嬉しそうな笑顔になる。

 

「タツ! 着けてよ!」

 

 お前ら…着けるんだな!? 今…! ここで! 他の客が結構いるのに!

 席の場所も悪い! ほぼ店の中心! 三人が声を上げたから視線が集まってる!

 こんな観衆の中で! おいは恥ずかしか! 生きておられんごっ!

 

「場所を考えろよ……」

 

 声を抑えて言う、見ようによってはプロポーズしているようにも見えかねん。

 着けている所を見られて友達に噂とかされると恥ずかしいし……。

 

「渡された場所で付けるのが当然でしょ!」

 

 俺は判断を間違えた、次の俺は上手くやってくれるでしょう。

 

「……ほら」

 

 拒否っても駄々こねるのが目に見ているから、しょうがなくネックレスをケースから取り出す。

 身を乗り出してきている三人に、まずは正面のハツキからネックレスを付ける。

 サラリと俺の肌の上を流れる髪を腕で感じながら、髪を挟まないように留め金を閉じる。

 次いでリオナ、最後に隣のエレンにネックレスを着ける。

 キャッキャと嬉しそうな三人、俺は視線を感じながら肩身を狭くして置かれたカフェオレを飲んだ。

 

 

 

 

 

 カフェを出て歩く、三人はネックレスを揺らしながら代わる代わる腕を組んでくる。

 体を押し付け、胸を押し付け、まるで猫が体を擦り付けてきているような有様。

 俺が寝そべったら上に乗ってきて、頭ごとこすりつけてきそうだ。

 

「……ったくよぉ、なんか疲れちまったよ」

 

 市民の憩いの場、広々とした公園のベンチに座って、ビルの隙間の地平線に沈んでいく赤い夕日を眺める。

 精神的疲労ってこんな感じなのか、体は動くのに動かしたくない感じがする。

 

「ダンジョンよりましじゃん」

「歩いて疲れたんじゃねぇよ」

「むしろ元気にならないと、さんざん私たちの胸を触ってたのに」

「当ててきたんだろ」

「あててんのよ」

 

 当てすぎぃ! 三種類の巨乳を楽しもう! そういうことじゃねぇんだよなぁ。

 

「もうちょっとお淑やかさを持ちなさい」

「タツにしかしないけど?」

「俺以外にしてたら軽蔑するわ」

 

 そんな事してたら多分ショックで寝込むだろうな。

 

「……そういや、なんで俺が良かったんだ?」

 

 顔は変ではないけど格好いいとはいいづらいし、性格も悪いとは思わないが良いとも言えない。

 勉強ができるような頭の良さはないし、正直探せば似たようないくらでも居そうだ。

 そう言えば三人は顔を見合わせる。

 

「……懐古してんだよね、あたしたち」

「懐古って、思い出すやつ?」

「そそ、思い出してんだよねぇ。 小学生の頃は楽しかったなぁって」

「今は楽しくないのか?」

「今は楽しいよ、ねぇ?」

 

 リオナが言うとハツキとエレンが頷く。

 

「あたしたちの家庭環境って似たような感じだったの、知ってた?」

「……いや」

 

 言われて思い出してみる、四人でよく遊んでいた中で三人の家庭環境に一切触れたことがない。

 家に遊びに行くのもしたことがない、三人の親が許可してくれないんじゃなくてつまんないから家で遊びたくない、そう言われて遊びに行かなかった程度のことしか知らない。

 

「仕事命の両親なんだよねぇ、私に興味がないわけじゃないけど、仕事のほうが大事ってタイプ」

 

 なるほど、仕事仕事でコミュニケーションを取れないタイプだったのか。

 

「わたしたち一人娘で、わたしたちが起きる前に仕事に行って、わたしたちが寝た後に帰ってきてたんです」

「そんなんだから一緒の家に暮らしてんのに、全然顔を合わせない生活だったわけ」

「当時はさぁ~、すんごい寂しかったわけよ。 話をしたいし構ってほしかった、でも疲れてるからーでコミュは終わり」

「今はちゃんとわかってるつもり、仕事しなきゃ生きていけないしさ。 でも当時としちゃ、寂しかったのよ」

「そんな時に俺が登場したわけか?」

 

 三人が頷く、寂しさで心に穴が空いた所に俺がはまり込んだわけか。

 

「タツに誘われてさ、走り回ってるだけでも楽しかったわ~」

「他の子と遊ぶのが楽しくないわけじゃないんですよね。 楽しく遊んでて、日が暮れてきて、皆帰って。 わたしも家に帰って、一人っきりで」

「そうそう! マジ家に帰る時のつまんなさって半端なかったよね!」

「そんな時にタツが遅くまで遊んでくれた時はすっと心に染み込んだよねぇ」

「喉が乾いている時に飲む水みたいな言い方だな」

「そういうもんだったのよ、一人で居たくない時にタツが居てくれたってのがさ」

 

 そんなもんか、と思えるのは家にちゃんと両親がいる環境だったから。

 いつだって家に誰も居ない状況なんてなかった、その寂しい気持ちをわかってあげられない。

 

「それで俺が良いって事になったのか」

「それが一番だけどさ、その気持がもっと強くなったのが引っ越した後でさ」

「家庭環境が似たりよったりだけど、中学でも似たりよったりになって笑えたよね」

 

 三人は笑う、小学生の頃で同じような家庭環境で、引っ越した先で似たようなことが起こった。

 どんな偶然だよって、今は笑える状況になった。

 

「同じ中学になったのか?」

「皆ばらばらですね」

「全然近くもないし、何でこんな事になんの? って、愚痴ってたらまた私たち似たような状況になってた」

「チャットで見た時、えぇって声が出たんですよ」

「まじか、変な風に繋がってんじゃないのあたしたちってさ」

「何があったんだ?」

「まあ、イジメ」

「おおう……」

「私たちが原因と言えば原因だけど、こっちに言われても困るんですけどって話ね」

「簡単に言うとあたしたち告白されたんよ、こんな風に可愛く育っちゃったからね」

 

 そう言ったリオナが腕を組んできて体を擦り寄せてくる。

 

「だーかーらー! そこ変われって!」

「はいはい、変わってあげるから」

 

 リオナとハツキが入れ替わって、今度はハツキが腕に抱きついてくる。

 

「続きだけど、全く興味ないから断ったんだけど、そしたら同じクラスの女子がこの子は告ってきた奴のことが好きだったのにーっで嫌がらせが始まった」

「はっ? なにそれめんどくさっ」

「でしょ!? 告ってきた奴のことが好きだから何だよって話でさ、もし付き合ったならギャーギャー言ってくるのはわかりたくないけどわかるけど、断ったのに私に言ってくるのは違うくない?」

「どういう考えでそうなったのかまるでわからん……」

「あたしもおんなじで、喚いてきたからあんたそいつにアピールしてんの? 好かれるような努力した? って言ったら泣きだして、周りの女と乱闘になった」

「……ああ、うん。 リオナなら言うだろうなってのがわかる」

 

 嫌そうな顔して、冷たく言った光景が簡単に浮かんでくる。

 

「ハツキはどう対応したんだ?」

「無視した、いない者として扱った」

「言ってきた奴らを?」

「うん、それで無視した奴らが机とかに落書きとかしてきたから警察に通報して被害届だした」

 

 それが正しいと思うけど、余りにもアグレッシブだな!

 

「先生や警官に色々聞かれたからそうなった原因を全部話して、もう二度とこんな事しないし二度と話しかけてこないなら被害届は取り下げるで終わらせた」

 

 警察沙汰にまでなったら、噂が広がってハツキに近寄る人は居なかっただろうな……。

 

「あたしは警察までは行ってないけど、先生とか教頭とか出てきて話を聞かれたから正論で殴った」

「ガチで何もしてないのにってか?」

「うん、告白断ったらこいつらがしゃしゃり出てきてグダグダ言ってきたんですけど、これあたしが悪いんですかねって。 あ、最初に手を出してきたのは向こうだかんね」

 

 うーん、正論パンチは時に人を暴力に走らせる。

 

「そんな状況になったら、なんて返せばいいか分からねぇな……」

「話さないことが正解だったかもね、話が通じないんだし」

 

 言葉はわかるが会話は通じないって事か。

 

「エレンも似たような感じか?」

「……途中まではおんなじですけど」

 

 言いづらそうにするエレン、リオナとハツキとはまた別の方向にねじれたようだ。

 

「クラスが分裂したんだってさ」

「分裂……?」

 

 クラスって分裂するもんなのか?

 

「エレンってこんな感じの性格じゃん? 男子も女子もおんなじ様に話すからさ、エレン擁護派とエレン否定派にわかれてクラスが超ギスってたんだって」

 

 すごいことになってきたぞ!

 

「それは解決したのか?」

「……わかんないです」

「当事者なのに?」

「……わたしのせいで変なことになっちゃって。 その、学校に行きたくなくなっちゃって不登校になっちゃいました……」

「エレンのせいじゃないっしょ」

「バカのせいで周りが迷惑すんだよねぇ~」

「アハハハ……」

 

 力なく笑うエレン、精神的に辛かったのが何となく分かる。

 

「俺もエレンのせいじゃないと思う、エレンは被害者だしそうなった原因じゃないし解決する必要もない。 馬鹿に付き合わなかったのは正解だよ」

 

 エレンの肩に腕を回して軽く叩く、正解はわからないが俺が思った言葉を掛ける。

 

「エレンが傷つく必要はない、覚えておく必要もない。 そんなクソな過去は忘れて、これから前だけみりゃいいさ」

「……はい」

 

 エレンが俺の肩に頭を乗せてくる、それを受け入れてあやすように肩を叩く。

 

「そっからは懐古やね、小学生の時はこんな事無くて楽しかったのになぁ~って」

「元から楽しかったわけじゃないけどさ、中学はそのせいでさらにつまんなくなって勉強しに行くだけの場所になったし」

「……楽しくなくなっちゃいましたね」

「まぁなぁ、そんな面倒事起こされちゃ楽しくはないだろうな」

 

 そんな事に巻き込まれると、俺も行きたくなくなるなそりゃ。

 

「それでつまんねぇ中学が終わってダンジョンに来たってか」

「そゆこと。 中学の途中で検査したら皆ジョブあってさ、あそこのダンジョン学校だけどパーティー組もうよって話になって、ダンジョン帰りの時にタツを見つけたってわけ」

「エレンが急にセンパイっぽい人が居ます! って騒ぎ始めてさ」

「ちょ! やめてくださいよ!」

「言われて見に行ったらまんまで笑ったわ」

「悪かったな、まんまで」

「まんまがよかったんだって」

 

 奇妙な運命だな。

 いや、三人は連絡を取り合ってたからそうでもないか。

 

「タツは中学の時になんかあった? てか連絡くれなかったよね? なんで?」

「中学は特になにも……、スマホを買ってもらったのは中3になった時でして……」

「わたし、センパイのお家に何度も電話をかけたんですけど」

「……タイミングが悪かったんです」

「持ってないからって連絡先書いたの渡したけど?」

「……無くしました」

「………」

 

 三人の視線が俺に向く、……夕陽が綺麗だな。

 

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