※この作品はR-18です。

女帝・緋村怜華、恥じらい乙女に還る夜~部下の俺はギャップにもう限界です~【毎話読み切り】   作:ren_hameln

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1話 怜華、鎧の下をとろとろにされる★

「あっ……あんっ……。だめ……っ」

 

 長身の美女が、シーツの上で体をくねらせていた。

 ゆるくウェーブした黒髪が乱れ、普段は凛とした切れ長の瞳は焦点を失って潤んでいる。

 部屋に水音が響く。指を動かしながら、佐久平(さくだいら)悠斗(ゆうと)は耳元で意地悪く囁く。

 

「まったく、はしたないですね、怜華(れいか)さんのここ。とろとろじゃないですか」

 

「やっ……そんな……んん……っ」

 

「ねえ、緋村(ひむら)怜華部長」

 

「は、恥ずかし……あん……っ」

 

 怜華と呼ばれた女性は、真っ赤な顔を両手で覆い、小さく喘ぐ。

 昼間の冷徹な口調からは想像もつかない、舌足らずな甘い声と、あまりに初々しい反応。

 

(くっ……。あの〝氷の女帝〟と呼ばれる緋村部長が……。部下の俺の指で、こんなに乱れて……)

 

 昼夜のギャップと自分だけに見せる素顔に、悠斗の理性はもう、耐えられない。

 

「さあ、怜華さん……。このまま、部下の指でイっちゃってください」

 

「ああっ……だめぇ……こんなの、だめなのに……っ、あああぁぁ……っ!」

 

 体がびくりと震え、弓なりに反る。

 氷の女帝、緋村怜華は──指だけで、絶頂に達した。

 

   * * *

 

 ──数時間前。

 夕方の定例会議。

 緋村怜華部長は、長テーブルの上座に座り、鋭い視線で部下たちを見渡していた。

 

 黒のパンツスーツにスレンダーな長身を包み、黒髪をきっちりとまとめ上げた姿は、一分の隙もない。

 傍目には29歳という年相応の見た目だが、纏う空気と眼光には年齢以上の威厳を漂わせている。

 海外留学とMBA取得を経て異例の若さで部長に抜擢され、数字を常に叩き出す、業界きっての逸材。その完璧主義と容赦のなさから、周囲からは〝氷の女帝〟と陰で呼ばれ、恐れられていた。

 

「高橋(たかはし)課長、この数字の根拠は?」

 

 低く、冷たい声。

 名指しされた高橋課長の手が震える。

 

「は、はい、緋村部長。これは前四半期比で——」

 

「前四半期比? それは去年の同時期と比較してどうなの? 市場全体のトレンドは? 競合他社の動向は加味した?」

 

 矢継ぎ早の質問に、言葉に詰まる高橋課長。

 

「そ、それは……」

 

「準備不足ね。この会議、あなたの時間じゃなくて全員の時間よ。次回は完璧にして」

 

 淡々と、しかし容赦なく切り捨てる。

 会議室に緊張が走る。

 

(うわ、今日も容赦ねぇな……)

 

 末席に座る佐久平悠斗は、内心で苦笑する。

 ワックスで固めたやや明るめの茶髪に、ようやく着慣れてきた少し良いブランドのスーツ。

 愛嬌のある垂れ目のせいで、26歳にしては少し幼く見える。未だに学生と間違えられることも多い。

 そんな少しチャラい見た目の悠斗も、この部署の一員だ。

 

「次、佐久平くん」

 

「は、はいっ」

 

 突然、名前を呼ばれ、悠斗は慌てて姿勢を正す。

 身長の低さを気にして、いつも必要以上に背筋を伸ばしてしまう。

 

「今回の新規案件、進捗は?」

 

「順調です。先方との関係も良好で、来週中には契約締結の見込みです」

 

「根拠は?」

 

「先方の担当者から内諾を得ています。メールでも確認済みです」

 

 悠斗は淡々と答える。見た目に反して、仕事は手を抜かない。

 いや、抜かないようになった。

 だって、そうするよりほかにないのだ。顔も普通だし背も低い、特に何の取り柄もない自分が。

 緋村部長に——俺(﹅)の(﹅)怜(﹅)華(﹅)さ(﹅)ん(﹅)に、少しでも釣り合うためには。

 

「わかったわ。ただし、契約締結までは油断しないこと。何かあればすぐ報告して」

 

「承知しましたっ」

 

 ふぅ……、と内心でほっとする。何とか今日も、乗り切れた。

 怜華さんはめっちゃ厳しいけど、ちゃんとやってれば認めてくれる。

 そこが、尊敬できるところだ。

 

(ていうか、昼間の怜華さん、マジで別人だよなぁ……)

 

 ふと、数日前の光景が頭をよぎる。

 涙目で甘えてきた怜華の、舌足らずな可愛い喘ぎ声。怜華の〝ナカ〟の感触──

 思わず自身の相棒が、ズボンの中で疼きかける。

 

(やべ、会議中に何考えてんだ俺……。おい、馬鹿、夜までは大人しくしてろっ)

 

 慌てて相棒を叱りつける。

 資料に目を落とし、意味もなく売上額を頭の中で合計して、気を紛らわせる。

 

 その後も会議は緋村部長の容赦ない差配で進み、的確に結論が出されて終了した。

 三々五々、ほっとした表情で廊下に出た部下達。緋村部長がいないことを確認すると、思い思いに小声で囁き始めた。

 

「はぁ……。氷の女帝、今日もキレッキレでしたね」

 

「だよね。完璧すぎて、ほんと怖すぎるよ……」

 

 おびえる女性社員たち。一方、男性社員たちは、下世話な想像で盛り上がっている。

 

「絶対、夜は女王様として男を鞭で打ってるタイプだよな」

 

「それな。昨日もどっかのラウンジで男を跪かせてんじゃね?」

 

「いや、あの目で睨まれたらむしろ、萎えるだろ……。勃(た)つ奴なんているか?」

 

 身勝手な噂話が、嫌でも悠斗の耳に流れ込んでくる。

 逆だよ、と悠斗は思う。

 

(あの人は……俺の腕の中で、自分でもどうしていいか分からなくて震えてるんだ)

 

 乙女のように恥じらう夜の怜華の姿が、一瞬だけフラッシュバックした。

 

(……絶対に、誰にも教えてやらねぇけどな)

 

   * * *

 

 その晩。怜華の住む、タワーマンションの一室。

 

 怜華とするのは今日で、三回目だ。

 それはつまり、怜華の29年間の半生においても、三回目ということを意味していた。

 

 昼間の彼女の威厳は、もはやどこにもなかった。

 

 彼女の〝初めて〟を貰った時に比べれば、そろそろ慣れてきても良い頃だ。下のほうも、前戯でかなり潤うようになってきた。

 なのに怜華は未だに、極度に恥ずかしがる。いつまでも処女のようなウブさを隠せない。

 

 今日も怜華は、大きな枕を顔に覆いかぶせたまま、ただ悠斗の愛撫を受けている。

 当然、顔はまったく見えない。下ろした黒髪だけが、枕の端からのぞいている。

 まるで枕が顔になったみたいで、悠斗は苦笑する。

 

 怜華の小ぶりな胸を、両手で、ふにふにと揉む。

 先端を摘まんで、こりこりっと捻る。

 

「ん……っ」

 

 怜華は必死に声を我慢している。

 これまでの様子を見る限り、どうやら彼女はかなり胸の先が弱いらしい。

 乳首責めが好きな悠斗としては思う存分喘いでほしいのだが、顔すら見えない状態では、感じているのかどうかもよくわからない。

 

「ねえ、怜華さん……顔、見せて。あと、声、もっと出してほしいです」

 

 声を掛けつつ、胸の頂点をこよりのようにそっと捻る。

 

「んんっ……やっ……。は、恥ずかしい……」

 

 枕の下から、くぐもった声が聞こえた。

 

「胸触ったくらいで何言ってんですか。今からもっともっと恥ずかしいことするんですよ俺ら」

 

「や……意地悪……あぅっ……」

 

 まるで埒が明かない。

 怜華のプライドの高さ、負けず嫌いなところが、変な形で発揮されている。

 

「あのー、俺からすると、顔だけ隠してちくび丸出しにしてるほうが、よっぽど恥ずかしく見えますけど」

 

「…………っ!!」

 

 それを聞いた途端、怜華がものすごい勢いで枕を顔からどけた。もはや、投げた、に近い。

 耳まで真っ赤に染まった顔が現れた。

 完全に、うろたえている。涙目がぐるぐると泳ぎ、睫毛が震えている。

 ほどけかけたクールビューティーの陰に、どこかあどけなさを残した表情。

 その姿は、犯罪級に可愛かった。

 

「あぅ……悠斗くん……。じゃあ……ど、どうすれば……」

 

 何なんですか、この可愛い生き物は……。

 氷の女帝とのあまりのギャップに、くらくらする。

 

 だけど、同一人物なんだよな。俺だけが知るこの姿も、確かに、怜華さんなんだよな。

 そう思いながら、悠斗は胸から指を離す。

 

 可愛い怜華さんを、もっと見たい、と思う。

 怜華の目を見て、ゆっくりと諭すように話しかける。

 

「あのですね……。もし、怜華さんがほんとに、ほんっとうに嫌なら、俺はもうこれ以上何もしません」

 

「……っ」

 

 ハッとした表情を見せる怜華。少し不安そうな色が混じる。

 

「だけど……俺の思い込みだったら謝りますけど、怜華さん、自分で自分を律しすぎてません?」

 

 悠斗は慎重に、言葉を重ねていく。

 

「上司としてのプライドとか、いろんなものが邪魔をして、乱れちゃいけない、はしたないって思ってるんじゃないかって。……俺は怜華さんのそういう真面目なところ、大好きなんですけど、でも、それに縛られすぎると、疲れちゃうと思うんです」

 

「悠斗、くん……」

 

「ちなみにですね。真面目な話、声出すと、快感って増幅されるらしいんすよ。逆に、我慢すると力入って、痛くなるっぽい」

 

「…………」

 

「もし、怜華さんに──なんか痛いなとか、つらいとか思われてたら、俺は、嫌だなって」

 

 チャラい見た目の悠斗だが、その顔は、この上なく真剣だった。

 

「せっかくこういうことする以上は、気持ちよくなってほしいんです。俺と一緒に」

 

 怜華は目を伏せてしばらく黙っていたが、やがて、ぽつりと呟いた。

 

「……あのね、悠斗くん。私、その……これ以上誰かに、嫌われたくなくて……」

 

「えっ?」

 

 言葉を探しながら、訥々と、怜華は胸の内を明かしていく。

 

「私、こんなだから……」

 

「こんなって?」

 

「知ってるの。周囲から敬遠され、距離を置かれていること。でも、それもやむなしと思ってきた。仕事のためなら」

 

 怜華は思い詰めたような表情で、続ける。

 

「だからこんな私を、だっ……だ、抱い、て、くれる人なんて、一生いるわけないって思ってた。未だに信じられなくて、夢みたいで……」

 

「怜華さん……」

 

「だから、その……み、乱れ、すぎて、悠斗くんに嫌われたらって思うと……」

 

「何言ってんすか。そんなんで嫌うと思ってんですか。むしろ、逆です、逆」

 

 怜華は少し驚いた顔で、悠斗を見上げる。

 

「俺はですね……むしろ怜華さんが、理性手放して、めっちゃ乱れる姿が見たいんです。アヘ顔ではしたなく喘ぐ怜華さんが見たい。俺だけが知ってる……甘々にとろけちゃう、えっちな怜華さんが」

 

「や……っ」

 

「それに、俺だって不安になるんですよ。俺、下手なんかなって。ちゃんと怜華さんに、気持ち良くなってもらえてるのか」

 

「なってるからっ!」

 

 思わず反論した怜華の顔に、時間差で、さっと朱が差した。

 

「あ、やだ……その……ほんと、だから。悠斗くんの、ほんとに……………………きもちい……から……」

 

 だんだん声が小さくなっていく。

 少し安堵した顔で、悠斗は怜華の髪をそっと撫でる。

 

「良かった。でも、それならさ、試しに今日だけでいいから……感覚に体、委ねてくれませんか。枕もどけて。声も、我慢しないで」

 

「…………」

 

「もちろん、演技はしなくていい。痛いとか、いまいちなら、ちゃんと言ってほしい。でも、もし、恥ずかしいだけなら、もっと部屋も暗くするから」

 

 悠斗は部屋の照明をギリギリまで落とす。

 

「お願い。お願いします、怜華さん」

 

 ベッドの上で怜華に向き直り、土下座した。

 相棒を屹立させながら頭を垂れるのは、なかなか無様な格好だなと苦笑する。

 なんだかんだで、自分のエゴだとはわかっている。恐る恐る、そっと怜華の様子を窺う。

 

「悠斗くんが、そこまで言うなら……わかった。やってみるわ」

 

 静かな決意が、声に込められていた。

 

   * * *

 

 暗がりの中に、彼女の裸体が浮かび上がっている。

 美しさに見とれながら、悠斗は愛撫を再開する。

 手のひらで胸のふくらみをそっと撫で、その頂を、薬指の腹で優しくさする。

 

「……あ」

 

 まだ恥じらいは残るが、さっきよりもはっきりとした声が漏れた。

 親指と中指でつまみ、人差し指でてっぺんを軽く押す。

 

「はっ……あっ……」

 

 こねる指に少し力を込める。

 少しずつ、怜華の息が荒くなってくる。

 

「ああ……」

 

「いいですよ、怜華さん……。もっと鳴いて……」

 

「あん……、あ、ああ……」

 

「怜華さんって、ちくび、好きですよね」

 

「やっ……」

 

「もっと素直になってください」

 

「あん……」

 

 だいぶ、声が出るようになってきた。

 もう片方の手を腰のくびれに沿って、下に滑らせていく。

 

 茂みをかきわけて指を進めると、くちゅり、と音がした。いつもより、濡れるのが早いような気がする。

 

「ん……っ」

 

 反射的に両手で顔を覆い、脚を固く閉じる怜華。

 

「手、どけて。脚、開いて……」

 

 怜華はためらいがちに手を顔から離し、脚を肩幅程度に、おずおずと開いた。

 悠斗はそれを見届けると、脚の付け根、可憐な花弁の外側のぷにぷにした部分を、そっと前後にさする。

 

「んん……」

 

 人差し指と中指でそっと挟み、広げてみる。ぬちゅ、と湿った音が部屋に響く。怜華の身体がびくっと震えた。

 指でゆっくりと、開いたり、閉じたりする。ぬちゃぁ……ぬちゃぁ……と卑猥な水音が連続する。

 

「やぁ……っ」

 

「怜華さんのここ……可愛いよ……」

 

 悠斗の声は低く、掠れている。

 

「やだ……私……っ」

 

 こんなにも、はしたない格好をしている。こんなにも、いやらしい音を立てている。

 そう思えば思うほど、怜華の下腹部は熱く疼いてしまう。

 

 おもむろに悠斗は、顔を近づけた。

 開いた花びらの中心に、そっと唇を寄せる。

 

 ぷちゅ……。

 

「ひゃあんっ……!」

 

 高く甘い声が部屋に響く。怜華の腰がびくりと震える。

 

 そのまま悠斗は、怜華の恥ずかしいところを、あむあむと口全体で刺激する。

 柔らかな舌先で入り口を軽く舐め上げると、奥からいくらでも熱い蜜が溢れてくる。

 

「あっ……あんっ……!」

 

 その嬌声に、怜華自身が驚いて、さらに顔を赤らめる。

 

(やだっ……私……こんな声出して……。恥ずかしい……死にたい……)

 

 しかし、その恥ずかしさが逆に快感を増幅させることに、怜華は気づきつつあった。

 

(でも、悠斗くんの言ったとおり、声を出せば出すほど……気持ちいいような……)

 

(こんなことって……こんなに私、はしたない人間だったなんて)

 

 その発見は恥ずかしくも、どこか甘い媚薬となって、怜華の理性を麻痺させていく。

 悠斗の口が突起を優しく包み込み、ちゅっと軽く吸い上げると、怜華の腰は跳ね上がった。

 

「んあぁっ……! だめっ……!」

 

 すっかり濡れそぼったそこから口を離すと、悠斗は満足げに目を細めた。

 だいぶ、ほぐれてきている。

 おもむろに人差し指を、そっと沈めていく。

 

「ん……」

 

「怜華さん……いいよ、力抜いて……」

 

「んんっ……」

 

「ナカ、きゅうきゅう締め付けてきてる。すげぇえっちですね……」

 

「やぁ……っ」

 

 奥をそっと擦る。ちゅぽ、ちゅぽ、と卑猥な音がして、うねる内壁が熱く指にまとわりつく。

 少し指を曲げて、かすかに圧を加える。

 

「ここ、どうかな」

 

「ああっ! あんっ……ああっ……」

 

「きもちい?」

 

「んっ………………………………きも、ちい……」

 

 消え入りそうな、だけど完全に蕩けきった怜華のその言葉に、悠斗の理性が飛ぶ。

 

「じゃ、ここは? きもちいっ?」

 

「あんっ……きもちい……。きもちいの……っ」

 

 もう、限界だった。

 あまりのいとおしさに思わず、悠斗はつぶやく。

 

「ああ……れ(﹅)い(﹅)ち(﹅)ゃ(﹅)ん(﹅)……」

 

 その瞬間、怜華の中が、これまでになく強く締まった。

 

「うおっ!? すげぇ……」

 

 悠斗の予想を遥かに超える反応だった。

 試しに、連呼してみる。

 

「……れいちゃん、可愛いよ、れいちゃん」

 

「や……っ、やめ……っ」

 

 言葉一つで内側が面白いように締まり、蜜が溢れ出す。

 

(なんだよこれ……。くっそわかりやすいな)

 

 怜華の最後の鎧を剥ぐ、魔法の言葉。

 思いがけず手にしてしまった新たな特効武器に、悠斗は興奮が抑えられない。

 

(あの女帝の怜華さんが……「れいちゃん」呼びでこんなに感じるのかよ……。可愛すぎる……っ)

 

「れいちゃん、最高に可愛いです……。あのさ、そろそろ、いいかな……」

 

 潤んだ目で怜華は悠斗を見上げると、うわごとのように漏らした。

 

「んっ……。ゆ……、ゆ(﹅)う(﹅)く(﹅)ん(﹅)……っ」

 

 悠斗の心臓が、大きく跳ねた。

 相棒が、びくりと震えてしまう。

 それは、完全な返り討ちだった。

 

「く……っ」

 

(「ゆうくん」だと……!?)

 

 氷の女帝から不意に発せられた、あまりに甘い響き。

 オフィスでは「佐久平くん」、プライベートでも、「悠斗くん」までだったのに。

 予期せぬクリティカルダメージを受け、悠斗はもはや瀕死だった。

 

(マジかよ……怜華さんが、あの怜華さんが、俺のこと、ゆうくんって……)

 

 思わず、怜華の顔を見る。

 とろけきっている。

 自ら発したその響きにどうも満足したらしい。ほわあとした顔で、もう一度小さく繰り返した。

 

「えへへ、ゆう……くん」

 

 その攻撃に、悠斗の理性は、あまりに脆弱だった。

 

(ああ、なんだよ、こんなんで……俺、ちょろすぎるだろ……)

 

「くっ、れいちゃん……。それ、反則……っ」

 

 たまらず、指をめちゃくちゃに動かしてしまう。彼女の腰も、勝手に動き始める。

 

「あっ、あっ、あっ、んっ、あんっ……」

 

 同時に突起をそっと親指で撫で上げると、怜華はひときわ高く喘いだ。

 

「あああっ、ゆう、くん……っ!」

 

 指だけで達したらしい怜華は、肩で息をしている。

 悠斗の相棒はすでに、痛いほど反り上がっていた。

 

(くそっ、入れてやるよ。俺の……ゆうくんを……っ! れいちゃんの中に……っ!)

 

 そっと指を抜く。怜華のそこは物欲しそうに、ひくん、と震えた。

 急いでゴムを装着し、入り口にそっとあてがう。そのまま先端で、ちゅこちゅことなぞる。

 

「あ……あん……」

 

 怜華の一番恥ずかしいところが、くぽ、くぽ、と淫らな音を立てる。

 

「れいちゃん……。入ります……」

 

「ん、ゆうくん……っ」

 

 ゆっくりと沈めていく。

 ちゅくん……という湿った音。

 熱くて柔らかい小さな海が、迎え入れるようにうねる。悠斗のものを内壁が優しく、でも貪欲に包み込む。

 

「んん……っ」

 

「大丈夫? れ(﹅)い(﹅)ち(﹅)ゃ(﹅)ん(﹅)……」

 

 その呼びかけに、怜華の中がきゅんと反応する。

 

「うん、ゆ(﹅)う(﹅)く(﹅)ん(﹅)……」

 

 その答えに、悠斗のものがびくりと反応する。

 

(これじゃ俺ら、ただのバカップルだよ……)

 

 同じ可笑しさに気づいたのか、怜華が悪戯っぽい小さな笑みを見せた。

 余裕が出てきたかな、と悠斗は少し嬉しくなる。

 

「ゆうくんっ……あんっ、ふふっ、ゆうくん。ねえ、ゆうくんっ」

 

 明らかに怜華は、わざと呼んでいる。

 悠斗のものはいちいち反応してしまう。怜華の中で。

 何だかちょっと、悔しい。

 

「くっ……。あの、人のもので、遊ばないでくれませんか」

 

「お願い……ゆうくんって呼ばせて……。呼びたいの……」

 

 とろんとした顔で、怜華はお願いを口にする。

 それも反則だろ、と悠斗は少し呆れる。

 そんな顔で、そんなお願いをされてしまったらもう、断れない。

 

(そうだよな。この人、ほんとはめちゃくちゃ強いんだよな……)

 

 昼間の女帝が発揮する圧倒的な力を、悠斗は思い出す。

 氷の女帝のつよつよ怜華さんも、恥ずかしがり屋のれいちゃんも。

 どっちも、たまらなく好きだ、と悠斗は思う。

 

 怜華の中はいつもながら、あまりにも名器だった。

 動いたらすぐに達してしまいそうな感覚に耐えながら、悠斗はなんとか余裕を示そうとする。

 

「く……まったくもう……。はい、奥まで入りましたよ」

 

「やんっ……。そんな報告しないで……」

 

「すぐ報告しろって、言ってるの緋村部長じゃないですか」

 

「もう……。ゆうくんのばか……っ」

 

「う……っ。いちいち締めないでくださいっ」

 

「そんなこと、言われても……あんっ」

 

「ほら、いつもみたいに業務命令してくださいよ。次はどうしましょうか?」

 

 怜華の瞳を見つめつつ、胸から腰のラインをゆっくりと撫で回しながら、悠斗は反撃に出る。

 

「や……っ、そんなの……わかってるくせに……」

 

「ほら怜華さん。指示、お願いします」

 

「……………う、うご、いて……」

 

 絞り出すように言う。恥じらう様子が、とんでもなく可愛い。

 

「動く? ……どう、動きましょうか?」

 

「うぅ……。どうって……」

 

 怜華は涙目になって、本気で困り果てている。

 やりすぎたか、と悠斗は反省する。

 

「ごめん、調子乗りました」

 

 あんなに声を出してくれるようになった。

 こんなエロ可愛いことを言ってくれるようになった。

 そして、あんなとろけた顔して、ゆうくんと呼んでくれた。

 ……それだけで、今日はもう十分すぎるくらいだ。

 悠斗はそう、思った。

 

「怜華さんさ、今日、頑張ってくれて、マジでありがとう。声もめっちゃ出してくれて。すげぇ嬉しかった」

 

「ゆうくん……」

 

「今日はもう、無理しなくていい。だから怜華さん、いや、れいちゃん、あとは俺に──」

 

 至近距離で、怜華の潤んだ瞳を見つめる。お互いの吐息がかかる。

 指先で怜華の顎を優しく持ち上げると、低く熱を帯びた声で、悠斗は囁いた。

 

「──すべて、任せてもらえますか」

 

 真剣な表情の悠斗に、怜華は完全に射すくめられる。

 

 悠斗の前なら、日々の重圧から逃れて、自分の心と体に素直になれてしまう。

 何もかも放り出して、ただの〝れいちゃん〟に還ることができる、気がする。

 

 今はただ悠斗にすべてを委ねたい。

 怜華は、心からそう思った。

 震える唇で、小さく、でもはっきりと呟く。

 

「うん、ゆうくん。私の、ぜ、全部……。あなたに、任せる」

 

 部長・緋村怜華を作り上げてきた、完璧な経歴、敏腕な仕事ぶり、誰も寄せ付けない強気の仮面。

 それをいま、自らの意思で、怜華はそっと手放した。

 鉄壁の鎧に身を包んだ女帝の面影は、もはやどこにもない。

 そこにいるのは、どこまでもうぶで、敏感で、可愛らしい。

 ありのままの〝れいちゃん〟だった。

 

   * * *

 

 悠斗は、ゆっくりと円を描くように腰を動かし始める。

 結合部から湿った音が響き、蜜がさらに溢れ出す。

 

「あんっ……ゆうくん……。そこ……」

 

 怜華の腰が自然と浮き、動きに合わせてくねくねと揺れる。

 瞳は完全に蕩け、小さな口は半開きで喘ぎ続けている。

 

 腰を抱き寄せ、角度を少し変えて、より深く、奥を突く。

 喘ぎが、すぐに連続し始める。

 部屋に響く淫靡な水音が、二人の気分をさらに高めていく。

 

「あっ、あっ……きもちい……。あんっ、あ……っ」

 

「れいちゃんの中、やばいよ……。すごい締めつけて……」

 

「やっ、おく……っ、ああっ……れいかの……おく、あたって……」

 

 今までに聞いたことのない、思考力が完全に溶けた喘ぎが、あの緋村部長の口から零れ出る。

 

(マジか……今、自分のこと、〝れいか〟って……)

 

 舌足らずな幼い口調。悠斗は興奮以上に、嬉しさを抑えきれない。

 

(ヤベぇ、ここまでとろとろになった怜華さん、見るの初めてだ……)

 

(気持ち良くなってくれてるってことで、いいのかな)

 

「はぁっ……はぁっ……。めっちゃえっちだよ……れいちゃん……」

 

 怜華の腰が、無意識に悠斗を迎え入れるように揺れる。

 悠斗は動きを少し速めながら、怜華の胸の先端を軽く摘まんだ。

 

「あうっ……!」

 

「れいちゃん……俺だけのれいちゃんだからな……。こんな可愛い声、俺にしか聞かせるなよ……」

 

 怜華は涙をぽろぽろこぼしながら、必死に頷く。

 

「あっ……うんっ……れいかのぜんぶ……ゆうくんにっ……。あっ……ゆうくんのものにしてぇ……」

 

 その言葉に、悠斗の理性が再度飛んだ。

 怜華を抱きしめ、深く、強く、連続で腰を打ちつける。

 

「ああっ! ゆうくんっ! しゅきっ! あんっ! だいしゅきぃ……!」

 

 悠斗の限界が近づいていた。

 

「ぐ……怜華さん……っ。一緒に、イこう……っ!!」

 

「あっ、あっ、あ、あんっ、やっ、あっ、ゆうくんっ、一緒にっ、ゆうくん……っ!!」

 

 怜華の唇から、声にならない長い嬌声が漏れる。

 体がびくびくと激しく痙攣し、背中が弓なりに反る。

 内側が強く収縮し、悠斗を締め上げる。

 その刺激に耐えきれず、悠斗もすぐに続く。

 

「くっ……れいちゃん……っ!」

 

 熱が、怜華の奥深くに注がれた。

 

   * * *

 

 はぁはぁと息を荒げた二人は、ぎゅっと抱き合ったまま動けなくなっていた。

 怜華はぐったりと、悠斗の胸に凭れかかる。

 

「れいちゃん、大丈夫? 痛くなかった?」

 

「うん……痛くなかった。ゆうくん、ありがとう」

 

「ちゃんと、気持ち良くしてあげられたかな」

 

「………うん…………………………すごく」

 

 赤面しながら怜華が答える。小さな頷きが、悠斗はたまらなく愛おしかった。

 

「れいちゃんが、すげぇいい声で鳴いてくれたから、めっちゃ嬉しかったな」

 

「…………っ!!」

 

 怜華の顔から火が出る。

 快感の波に呑まれ、とんでもない言葉を口走っていた記憶が、あるようなないような……。

 

「や……っ。ゆうくん、今日の記憶、消して……っ」

 

「やですよ、そんなの」

 

「えぇ……」

 

「でもさ怜華さん、声出したほうが気持ちいいっての、マジだったでしょ?」

 

 怜華はうつむきつつ、無言で小さく頷く。

 恥ずかしいことをしていると思えば思うほど、感じてしまう。自分の喘ぎ声さえ、興奮材料になる。

 怜華が完全にそのタイプであることを、悠斗は見抜いていた。

 悠斗は怜華の髪を優しく撫でると、額にキスを落とす。

 

「ねえ、明日、会社でさ……れいちゃんって呼んでみていい?」

 

「…………だ、だめっ! それだけは絶対、だめ……っ!!」

 

「俺のことは、ゆうくんって呼んでいいから」

 

「だ、だから、会社にプライベートは持ち込まないって、約束したでしょう!」

 

 もちろんコンプラという事情もある。

 だがそれ以前に、会社でそんなふうに呼ばれたら。

 平常心を保てる自信が、怜華にはなかった。

 

「はいはい、怜華さん。俺、怜華さんのそういうとこ、好きだよ」

 

「も、もう……。とにかく厄介事は絶対に起こさないで。私……離れたくないの。ゆうくんと……」

 

「うん、ごめん。俺も、離れたくない。……だから、約束は守ります。絶対」

 

 二人はそのまま、互いの体温を分け合い、静かに余韻に浸る。

 

 怜華の心は、深い安心感と愛情で満たされていた。

 完璧じゃない自分も、恥ずかしい自分も……ゆうくんの前でなら、全部さらけ出せる。

 纏っていた鎧を脱いで、心と体に素直になれる。

 

 ただひたすらに誰かに求められ、愛されること。ありのままの自分を、受け入れてもらえること。

 それは、ずっと勉学や仕事一筋で生きてきた彼女がようやく知る、初めての幸せだった。

 

(ねえ、ゆうくん。人に甘えることがこんなに幸せだなんて……私、ずっと知らなかった……)

 

 悠斗もまた、怜華の頬に唇を寄せながら思う。

 この人は、俺の前でだけ、こんなに熱く、柔らかく、溶けてくれる……。

 

 みんな、氷の女帝なんて呼んでるけど。ていうか、俺も呼んでしまってたけど。

 本当はこんなに愛らしい人だってこと、誰にも……知られたくない。

 それは、ずっと遊びでしか他人と付き合えなかった彼がようやく知る、本気の愛情だった。

 

(俺のれいちゃん……。俺は怜華さんを……、一生、大切にする)

 

 部屋には二人の穏やかな吐息と、時折漏れる小さなキスの音だけが響く。

 

 

 

 ──これは、そんな少し不器用な二人の物語。

 怜華と悠斗の、ちょっとえっちな物語である。

 

(つづく)




次回、2話「怜華、仕事中の疼きを詰問されてしまう」
翌日の会議中、不意に昨夜のいろいろを思い出してしまった怜華。気づいた悠斗にその晩、さっそく言葉責めされ…!?

独自路線を突っ走ってる自覚があるので、
果たして読む人がいるのか、カテエラじゃないか、正直すごい不安です。
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