女帝・緋村怜華、恥じらい乙女に還る夜~部下の俺はギャップにもう限界です~【毎話読み切り】 作:ren_hameln
「あっ……あんっ……。だめ……っ」
長身の美女が、シーツの上で体をくねらせていた。
ゆるくウェーブした黒髪が乱れ、普段は凛とした切れ長の瞳は焦点を失って潤んでいる。
部屋に水音が響く。指を動かしながら、
「まったく、はしたないですね、
「やっ……そんな……んん……っ」
「ねえ、
「は、恥ずかし……あん……っ」
怜華と呼ばれた女性は、真っ赤な顔を両手で覆い、小さく喘ぐ。
昼間の冷徹な口調からは想像もつかない、舌足らずな甘い声と、あまりに初々しい反応。
(くっ……。あの〝氷の女帝〟と呼ばれる緋村部長が……。部下の俺の指で、こんなに乱れて……)
昼夜のギャップと自分だけに見せる素顔に、悠斗の理性はもう、耐えられない。
「さあ、怜華さん……。このまま、部下の指でイっちゃってください」
「ああっ……だめぇ……こんなの、だめなのに……っ、あああぁぁ……っ!」
体がびくりと震え、弓なりに反る。
氷の女帝、緋村怜華は──指だけで、絶頂に達した。
* * *
──数時間前。
夕方の定例会議。
緋村怜華部長は、長テーブルの上座に座り、鋭い視線で部下たちを見渡していた。
黒のパンツスーツにスレンダーな長身を包み、黒髪をきっちりとまとめ上げた姿は、一分の隙もない。
傍目には29歳という年相応の見た目だが、纏う空気と眼光には年齢以上の威厳を漂わせている。
海外留学とMBA取得を経て異例の若さで部長に抜擢され、数字を常に叩き出す、業界きっての逸材。その完璧主義と容赦のなさから、周囲からは〝氷の女帝〟と陰で呼ばれ、恐れられていた。
「
低く、冷たい声。
名指しされた高橋課長の手が震える。
「は、はい、緋村部長。これは前四半期比で——」
「前四半期比? それは去年の同時期と比較してどうなの? 市場全体のトレンドは? 競合他社の動向は加味した?」
矢継ぎ早の質問に、言葉に詰まる高橋課長。
「そ、それは……」
「準備不足ね。この会議、あなたの時間じゃなくて全員の時間よ。次回は完璧にして」
淡々と、しかし容赦なく切り捨てる。
会議室に緊張が走る。
(うわ、今日も容赦ねぇな……)
末席に座る佐久平悠斗は、内心で苦笑する。
ワックスで固めたやや明るめの茶髪に、ようやく着慣れてきた少し良いブランドのスーツ。
愛嬌のある垂れ目のせいで、26歳にしては少し幼く見える。未だに学生と間違えられることも多い。
そんな少しチャラい見た目の悠斗も、この部署の一員だ。
「次、佐久平くん」
「は、はいっ」
突然、名前を呼ばれ、悠斗は慌てて姿勢を正す。
身長の低さを気にして、いつも必要以上に背筋を伸ばしてしまう。
「今回の新規案件、進捗は?」
「順調です。先方との関係も良好で、来週中には契約締結の見込みです」
「根拠は?」
「先方の担当者から内諾を得ています。メールでも確認済みです」
悠斗は淡々と答える。見た目に反して、仕事は手を抜かない。
いや、抜かないようになった。
だって、そうするよりほかにないのだ。顔も普通だし背も低い、特に何の取り柄もない自分が。
緋村部長に——
「わかったわ。ただし、契約締結までは油断しないこと。何かあればすぐ報告して」
「承知しましたっ」
ふぅ……、と内心でほっとする。何とか今日も、乗り切れた。
怜華さんはめっちゃ厳しいけど、ちゃんとやってれば認めてくれる。
そこが、尊敬できるところだ。
(ていうか、昼間の怜華さん、マジで別人だよなぁ……)
ふと、数日前の光景が頭をよぎる。
涙目で甘えてきた怜華の、舌足らずな可愛い喘ぎ声。怜華の〝ナカ〟の感触──
思わず自身の相棒が、ズボンの中で疼きかける。
(やべ、会議中に何考えてんだ俺……。おい、馬鹿、夜までは大人しくしてろっ)
慌てて相棒を叱りつける。
資料に目を落とし、意味もなく売上額を頭の中で合計して、気を紛らわせる。
その後も会議は緋村部長の容赦ない差配で進み、的確に結論が出されて終了した。
三々五々、ほっとした表情で廊下に出た部下達。緋村部長がいないことを確認すると、思い思いに小声で囁き始めた。
「はぁ……。氷の女帝、今日もキレッキレでしたね」
「だよね。完璧すぎて、ほんと怖すぎるよ……」
おびえる女性社員たち。一方、男性社員たちは、下世話な想像で盛り上がっている。
「絶対、夜は女王様として男を鞭で打ってるタイプだよな」
「それな。昨日もどっかのラウンジで男を跪かせてんじゃね?」
「いや、あの目で睨まれたらむしろ、萎えるだろ……。
身勝手な噂話が、嫌でも悠斗の耳に流れ込んでくる。
逆だよ、と悠斗は思う。
(あの人は……俺の腕の中で、自分でもどうしていいか分からなくて震えてるんだ)
乙女のように恥じらう夜の怜華の姿が、一瞬だけフラッシュバックした。
(……絶対に、誰にも教えてやらねぇけどな)
* * *
その晩。怜華の住む、タワーマンションの一室。
怜華とするのは今日で、三回目だ。
それはつまり、怜華の29年間の半生においても、三回目ということを意味していた。
昼間の彼女の威厳は、もはやどこにもなかった。
彼女の〝初めて〟を貰った時に比べれば、そろそろ慣れてきても良い頃だ。下のほうも、前戯でかなり潤うようになってきた。
なのに怜華は未だに、極度に恥ずかしがる。いつまでも処女のようなウブさを隠せない。
今日も怜華は、大きな枕を顔に覆いかぶせたまま、ただ悠斗の愛撫を受けている。
当然、顔はまったく見えない。下ろした黒髪だけが、枕の端からのぞいている。
まるで枕が顔になったみたいで、悠斗は苦笑する。
怜華の小ぶりな胸を、両手で、ふにふにと揉む。
先端を摘まんで、こりこりっと捻る。
「ん……っ」
怜華は必死に声を我慢している。
これまでの様子を見る限り、どうやら彼女はかなり胸の先が弱いらしい。
乳首責めが好きな悠斗としては思う存分喘いでほしいのだが、顔すら見えない状態では、感じているのかどうかもよくわからない。
「ねえ、怜華さん……顔、見せて。あと、声、もっと出してほしいです」
声を掛けつつ、胸の頂点をこよりのようにそっと捻る。
「んんっ……やっ……。は、恥ずかしい……」
枕の下から、くぐもった声が聞こえた。
「胸触ったくらいで何言ってんですか。今からもっともっと恥ずかしいことするんですよ俺ら」
「や……意地悪……あぅっ……」
まるで埒が明かない。
怜華のプライドの高さ、負けず嫌いなところが、変な形で発揮されている。
「あのー、俺からすると、顔だけ隠してちくび丸出しにしてるほうが、よっぽど恥ずかしく見えますけど」
「…………っ!!」
それを聞いた途端、怜華がものすごい勢いで枕を顔からどけた。もはや、投げた、に近い。
耳まで真っ赤に染まった顔が現れた。
完全に、うろたえている。涙目がぐるぐると泳ぎ、睫毛が震えている。
ほどけかけたクールビューティーの陰に、どこかあどけなさを残した表情。
その姿は、犯罪級に可愛かった。
「あぅ……悠斗くん……。じゃあ……ど、どうすれば……」
何なんですか、この可愛い生き物は……。
氷の女帝とのあまりのギャップに、くらくらする。
だけど、同一人物なんだよな。俺だけが知るこの姿も、確かに、怜華さんなんだよな。
そう思いながら、悠斗は胸から指を離す。
可愛い怜華さんを、もっと見たい、と思う。
怜華の目を見て、ゆっくりと諭すように話しかける。
「あのですね……。もし、怜華さんがほんとに、ほんっとうに嫌なら、俺はもうこれ以上何もしません」
「……っ」
ハッとした表情を見せる怜華。少し不安そうな色が混じる。
「だけど……俺の思い込みだったら謝りますけど、怜華さん、自分で自分を律しすぎてません?」
悠斗は慎重に、言葉を重ねていく。
「上司としてのプライドとか、いろんなものが邪魔をして、乱れちゃいけない、はしたないって思ってるんじゃないかって。……俺は怜華さんのそういう真面目なところ、大好きなんですけど、でも、それに縛られすぎると、疲れちゃうと思うんです」
「悠斗、くん……」
「ちなみにですね。真面目な話、声出すと、快感って増幅されるらしいんすよ。逆に、我慢すると力入って、痛くなるっぽい」
「…………」
「もし、怜華さんに──なんか痛いなとか、つらいとか思われてたら、俺は、嫌だなって」
チャラい見た目の悠斗だが、その顔は、この上なく真剣だった。
「せっかくこういうことする以上は、気持ちよくなってほしいんです。俺と一緒に」
怜華は目を伏せてしばらく黙っていたが、やがて、ぽつりと呟いた。
「……あのね、悠斗くん。私、その……これ以上誰かに、嫌われたくなくて……」
「えっ?」
言葉を探しながら、訥々と、怜華は胸の内を明かしていく。
「私、こんなだから……」
「こんなって?」
「知ってるの。周囲から敬遠され、距離を置かれていること。でも、それもやむなしと思ってきた。仕事のためなら」
怜華は思い詰めたような表情で、続ける。
「だからこんな私を、だっ……だ、抱い、て、くれる人なんて、一生いるわけないって思ってた。未だに信じられなくて、夢みたいで……」
「怜華さん……」
「だから、その……み、乱れ、すぎて、悠斗くんに嫌われたらって思うと……」
「何言ってんすか。そんなんで嫌うと思ってんですか。むしろ、逆です、逆」
怜華は少し驚いた顔で、悠斗を見上げる。
「俺はですね……むしろ怜華さんが、理性手放して、めっちゃ乱れる姿が見たいんです。アヘ顔ではしたなく喘ぐ怜華さんが見たい。俺だけが知ってる……甘々にとろけちゃう、えっちな怜華さんが」
「や……っ」
「それに、俺だって不安になるんですよ。俺、下手なんかなって。ちゃんと怜華さんに、気持ち良くなってもらえてるのか」
「なってるからっ!」
思わず反論した怜華の顔に、時間差で、さっと朱が差した。
「あ、やだ……その……ほんと、だから。悠斗くんの、ほんとに……………………きもちい……から……」
だんだん声が小さくなっていく。
少し安堵した顔で、悠斗は怜華の髪をそっと撫でる。
「良かった。でも、それならさ、試しに今日だけでいいから……感覚に体、委ねてくれませんか。枕もどけて。声も、我慢しないで」
「…………」
「もちろん、演技はしなくていい。痛いとか、いまいちなら、ちゃんと言ってほしい。でも、もし、恥ずかしいだけなら、もっと部屋も暗くするから」
悠斗は部屋の照明をギリギリまで落とす。
「お願い。お願いします、怜華さん」
ベッドの上で怜華に向き直り、土下座した。
相棒を屹立させながら頭を垂れるのは、なかなか無様な格好だなと苦笑する。
なんだかんだで、自分のエゴだとはわかっている。恐る恐る、そっと怜華の様子を窺う。
「悠斗くんが、そこまで言うなら……わかった。やってみるわ」
静かな決意が、声に込められていた。
* * *
暗がりの中に、彼女の裸体が浮かび上がっている。
美しさに見とれながら、悠斗は愛撫を再開する。
手のひらで胸のふくらみをそっと撫で、その頂を、薬指の腹で優しくさする。
「……あ」
まだ恥じらいは残るが、さっきよりもはっきりとした声が漏れた。
親指と中指でつまみ、人差し指でてっぺんを軽く押す。
「はっ……あっ……」
こねる指に少し力を込める。
少しずつ、怜華の息が荒くなってくる。
「ああ……」
「いいですよ、怜華さん……。もっと鳴いて……」
「あん……、あ、ああ……」
「怜華さんって、ちくび、好きですよね」
「やっ……」
「もっと素直になってください」
「あん……」
だいぶ、声が出るようになってきた。
もう片方の手を腰のくびれに沿って、下に滑らせていく。
茂みをかきわけて指を進めると、くちゅり、と音がした。いつもより、濡れるのが早いような気がする。
「ん……っ」
反射的に両手で顔を覆い、脚を固く閉じる怜華。
「手、どけて。脚、開いて……」
怜華はためらいがちに手を顔から離し、脚を肩幅程度に、おずおずと開いた。
悠斗はそれを見届けると、脚の付け根、可憐な花弁の外側のぷにぷにした部分を、そっと前後にさする。
「んん……」
人差し指と中指でそっと挟み、広げてみる。ぬちゅ、と湿った音が部屋に響く。怜華の身体がびくっと震えた。
指でゆっくりと、開いたり、閉じたりする。ぬちゃぁ……ぬちゃぁ……と卑猥な水音が連続する。
「やぁ……っ」
「怜華さんのここ……可愛いよ……」
悠斗の声は低く、掠れている。
「やだ……私……っ」
こんなにも、はしたない格好をしている。こんなにも、いやらしい音を立てている。
そう思えば思うほど、怜華の下腹部は熱く疼いてしまう。
おもむろに悠斗は、顔を近づけた。
開いた花びらの中心に、そっと唇を寄せる。
ぷちゅ……。
「ひゃあんっ……!」
高く甘い声が部屋に響く。怜華の腰がびくりと震える。
そのまま悠斗は、怜華の恥ずかしいところを、あむあむと口全体で刺激する。
柔らかな舌先で入り口を軽く舐め上げると、奥からいくらでも熱い蜜が溢れてくる。
「あっ……あんっ……!」
その嬌声に、怜華自身が驚いて、さらに顔を赤らめる。
(やだっ……私……こんな声出して……。恥ずかしい……死にたい……)
しかし、その恥ずかしさが逆に快感を増幅させることに、怜華は気づきつつあった。
(でも、悠斗くんの言ったとおり、声を出せば出すほど……気持ちいいような……)
(こんなことって……こんなに私、はしたない人間だったなんて)
その発見は恥ずかしくも、どこか甘い媚薬となって、怜華の理性を麻痺させていく。
悠斗の口が突起を優しく包み込み、ちゅっと軽く吸い上げると、怜華の腰は跳ね上がった。
「んあぁっ……! だめっ……!」
すっかり濡れそぼったそこから口を離すと、悠斗は満足げに目を細めた。
だいぶ、ほぐれてきている。
おもむろに人差し指を、そっと沈めていく。
「ん……」
「怜華さん……いいよ、力抜いて……」
「んんっ……」
「ナカ、きゅうきゅう締め付けてきてる。すげぇえっちですね……」
「やぁ……っ」
奥をそっと擦る。ちゅぽ、ちゅぽ、と卑猥な音がして、うねる内壁が熱く指にまとわりつく。
少し指を曲げて、かすかに圧を加える。
「ここ、どうかな」
「ああっ! あんっ……ああっ……」
「きもちい?」
「んっ………………………………きも、ちい……」
消え入りそうな、だけど完全に蕩けきった怜華のその言葉に、悠斗の理性が飛ぶ。
「じゃ、ここは? きもちいっ?」
「あんっ……きもちい……。きもちいの……っ」
もう、限界だった。
あまりのいとおしさに思わず、悠斗はつぶやく。
「ああ……
その瞬間、怜華の中が、これまでになく強く締まった。
「うおっ!? すげぇ……」
悠斗の予想を遥かに超える反応だった。
試しに、連呼してみる。
「……れいちゃん、可愛いよ、れいちゃん」
「や……っ、やめ……っ」
言葉一つで内側が面白いように締まり、蜜が溢れ出す。
(なんだよこれ……。くっそわかりやすいな)
怜華の最後の鎧を剥ぐ、魔法の言葉。
思いがけず手にしてしまった新たな特効武器に、悠斗は興奮が抑えられない。
(あの女帝の怜華さんが……「れいちゃん」呼びでこんなに感じるのかよ……。可愛すぎる……っ)
「れいちゃん、最高に可愛いです……。あのさ、そろそろ、いいかな……」
潤んだ目で怜華は悠斗を見上げると、うわごとのように漏らした。
「んっ……。ゆ……、
悠斗の心臓が、大きく跳ねた。
相棒が、びくりと震えてしまう。
それは、完全な返り討ちだった。
「く……っ」
(「ゆうくん」だと……!?)
氷の女帝から不意に発せられた、あまりに甘い響き。
オフィスでは「佐久平くん」、プライベートでも、「悠斗くん」までだったのに。
予期せぬクリティカルダメージを受け、悠斗はもはや瀕死だった。
(マジかよ……怜華さんが、あの怜華さんが、俺のこと、ゆうくんって……)
思わず、怜華の顔を見る。
とろけきっている。
自ら発したその響きにどうも満足したらしい。ほわあとした顔で、もう一度小さく繰り返した。
「えへへ、ゆう……くん」
その攻撃に、悠斗の理性は、あまりに脆弱だった。
(ああ、なんだよ、こんなんで……俺、ちょろすぎるだろ……)
「くっ、れいちゃん……。それ、反則……っ」
たまらず、指をめちゃくちゃに動かしてしまう。彼女の腰も、勝手に動き始める。
「あっ、あっ、あっ、んっ、あんっ……」
同時に突起をそっと親指で撫で上げると、怜華はひときわ高く喘いだ。
「あああっ、ゆう、くん……っ!」
指だけで達したらしい怜華は、肩で息をしている。
悠斗の相棒はすでに、痛いほど反り上がっていた。
(くそっ、入れてやるよ。俺の……ゆうくんを……っ! れいちゃんの中に……っ!)
そっと指を抜く。怜華のそこは物欲しそうに、ひくん、と震えた。
急いでゴムを装着し、入り口にそっとあてがう。そのまま先端で、ちゅこちゅことなぞる。
「あ……あん……」
怜華の一番恥ずかしいところが、くぽ、くぽ、と淫らな音を立てる。
「れいちゃん……。入ります……」
「ん、ゆうくん……っ」
ゆっくりと沈めていく。
ちゅくん……という湿った音。
熱くて柔らかい小さな海が、迎え入れるようにうねる。悠斗のものを内壁が優しく、でも貪欲に包み込む。
「んん……っ」
「大丈夫?
その呼びかけに、怜華の中がきゅんと反応する。
「うん、
その答えに、悠斗のものがびくりと反応する。
(これじゃ俺ら、ただのバカップルだよ……)
同じ可笑しさに気づいたのか、怜華が悪戯っぽい小さな笑みを見せた。
余裕が出てきたかな、と悠斗は少し嬉しくなる。
「ゆうくんっ……あんっ、ふふっ、ゆうくん。ねえ、ゆうくんっ」
明らかに怜華は、わざと呼んでいる。
悠斗のものはいちいち反応してしまう。怜華の中で。
何だかちょっと、悔しい。
「くっ……。あの、人のもので、遊ばないでくれませんか」
「お願い……ゆうくんって呼ばせて……。呼びたいの……」
とろんとした顔で、怜華はお願いを口にする。
それも反則だろ、と悠斗は少し呆れる。
そんな顔で、そんなお願いをされてしまったらもう、断れない。
(そうだよな。この人、ほんとはめちゃくちゃ強いんだよな……)
昼間の女帝が発揮する圧倒的な力を、悠斗は思い出す。
氷の女帝のつよつよ怜華さんも、恥ずかしがり屋のれいちゃんも。
どっちも、たまらなく好きだ、と悠斗は思う。
怜華の中はいつもながら、あまりにも名器だった。
動いたらすぐに達してしまいそうな感覚に耐えながら、悠斗はなんとか余裕を示そうとする。
「く……まったくもう……。はい、奥まで入りましたよ」
「やんっ……。そんな報告しないで……」
「すぐ報告しろって、言ってるの緋村部長じゃないですか」
「もう……。ゆうくんのばか……っ」
「う……っ。いちいち締めないでくださいっ」
「そんなこと、言われても……あんっ」
「ほら、いつもみたいに業務命令してくださいよ。次はどうしましょうか?」
怜華の瞳を見つめつつ、胸から腰のラインをゆっくりと撫で回しながら、悠斗は反撃に出る。
「や……っ、そんなの……わかってるくせに……」
「ほら怜華さん。指示、お願いします」
「……………う、うご、いて……」
絞り出すように言う。恥じらう様子が、とんでもなく可愛い。
「動く? ……どう、動きましょうか?」
「うぅ……。どうって……」
怜華は涙目になって、本気で困り果てている。
やりすぎたか、と悠斗は反省する。
「ごめん、調子乗りました」
あんなに声を出してくれるようになった。
こんなエロ可愛いことを言ってくれるようになった。
そして、あんなとろけた顔して、ゆうくんと呼んでくれた。
……それだけで、今日はもう十分すぎるくらいだ。
悠斗はそう、思った。
「怜華さんさ、今日、頑張ってくれて、マジでありがとう。声もめっちゃ出してくれて。すげぇ嬉しかった」
「ゆうくん……」
「今日はもう、無理しなくていい。だから怜華さん、いや、れいちゃん、あとは俺に──」
至近距離で、怜華の潤んだ瞳を見つめる。お互いの吐息がかかる。
指先で怜華の顎を優しく持ち上げると、低く熱を帯びた声で、悠斗は囁いた。
「──すべて、任せてもらえますか」
真剣な表情の悠斗に、怜華は完全に射すくめられる。
悠斗の前なら、日々の重圧から逃れて、自分の心と体に素直になれてしまう。
何もかも放り出して、ただの〝れいちゃん〟に還ることができる、気がする。
今はただ悠斗にすべてを委ねたい。
怜華は、心からそう思った。
震える唇で、小さく、でもはっきりと呟く。
「うん、ゆうくん。私の、ぜ、全部……。あなたに、任せる」
部長・緋村怜華を作り上げてきた、完璧な経歴、敏腕な仕事ぶり、誰も寄せ付けない強気の仮面。
それをいま、自らの意思で、怜華はそっと手放した。
鉄壁の鎧に身を包んだ女帝の面影は、もはやどこにもない。
そこにいるのは、どこまでもうぶで、敏感で、可愛らしい。
ありのままの〝れいちゃん〟だった。
* * *
悠斗は、ゆっくりと円を描くように腰を動かし始める。
結合部から湿った音が響き、蜜がさらに溢れ出す。
「あんっ……ゆうくん……。そこ……」
怜華の腰が自然と浮き、動きに合わせてくねくねと揺れる。
瞳は完全に蕩け、小さな口は半開きで喘ぎ続けている。
腰を抱き寄せ、角度を少し変えて、より深く、奥を突く。
喘ぎが、すぐに連続し始める。
部屋に響く淫靡な水音が、二人の気分をさらに高めていく。
「あっ、あっ……きもちい……。あんっ、あ……っ」
「れいちゃんの中、やばいよ……。すごい締めつけて……」
「やっ、おく……っ、ああっ……れいかの……おく、あたって……」
今までに聞いたことのない、思考力が完全に溶けた喘ぎが、あの緋村部長の口から零れ出る。
(マジか……今、自分のこと、〝れいか〟って……)
舌足らずな幼い口調。悠斗は興奮以上に、嬉しさを抑えきれない。
(ヤベぇ、ここまでとろとろになった怜華さん、見るの初めてだ……)
(気持ち良くなってくれてるってことで、いいのかな)
「はぁっ……はぁっ……。めっちゃえっちだよ……れいちゃん……」
怜華の腰が、無意識に悠斗を迎え入れるように揺れる。
悠斗は動きを少し速めながら、怜華の胸の先端を軽く摘まんだ。
「あうっ……!」
「れいちゃん……俺だけのれいちゃんだからな……。こんな可愛い声、俺にしか聞かせるなよ……」
怜華は涙をぽろぽろこぼしながら、必死に頷く。
「あっ……うんっ……れいかのぜんぶ……ゆうくんにっ……。あっ……ゆうくんのものにしてぇ……」
その言葉に、悠斗の理性が再度飛んだ。
怜華を抱きしめ、深く、強く、連続で腰を打ちつける。
「ああっ! ゆうくんっ! しゅきっ! あんっ! だいしゅきぃ……!」
悠斗の限界が近づいていた。
「ぐ……怜華さん……っ。一緒に、イこう……っ!!」
「あっ、あっ、あ、あんっ、やっ、あっ、ゆうくんっ、一緒にっ、ゆうくん……っ!!」
怜華の唇から、声にならない長い嬌声が漏れる。
体がびくびくと激しく痙攣し、背中が弓なりに反る。
内側が強く収縮し、悠斗を締め上げる。
その刺激に耐えきれず、悠斗もすぐに続く。
「くっ……れいちゃん……っ!」
熱が、怜華の奥深くに注がれた。
* * *
はぁはぁと息を荒げた二人は、ぎゅっと抱き合ったまま動けなくなっていた。
怜華はぐったりと、悠斗の胸に凭れかかる。
「れいちゃん、大丈夫? 痛くなかった?」
「うん……痛くなかった。ゆうくん、ありがとう」
「ちゃんと、気持ち良くしてあげられたかな」
「………うん…………………………すごく」
赤面しながら怜華が答える。小さな頷きが、悠斗はたまらなく愛おしかった。
「れいちゃんが、すげぇいい声で鳴いてくれたから、めっちゃ嬉しかったな」
「…………っ!!」
怜華の顔から火が出る。
快感の波に呑まれ、とんでもない言葉を口走っていた記憶が、あるようなないような……。
「や……っ。ゆうくん、今日の記憶、消して……っ」
「やですよ、そんなの」
「えぇ……」
「でもさ怜華さん、声出したほうが気持ちいいっての、マジだったでしょ?」
怜華はうつむきつつ、無言で小さく頷く。
恥ずかしいことをしていると思えば思うほど、感じてしまう。自分の喘ぎ声さえ、興奮材料になる。
怜華が完全にそのタイプであることを、悠斗は見抜いていた。
悠斗は怜華の髪を優しく撫でると、額にキスを落とす。
「ねえ、明日、会社でさ……れいちゃんって呼んでみていい?」
「…………だ、だめっ! それだけは絶対、だめ……っ!!」
「俺のことは、ゆうくんって呼んでいいから」
「だ、だから、会社にプライベートは持ち込まないって、約束したでしょう!」
もちろんコンプラという事情もある。
だがそれ以前に、会社でそんなふうに呼ばれたら。
平常心を保てる自信が、怜華にはなかった。
「はいはい、怜華さん。俺、怜華さんのそういうとこ、好きだよ」
「も、もう……。とにかく厄介事は絶対に起こさないで。私……離れたくないの。ゆうくんと……」
「うん、ごめん。俺も、離れたくない。……だから、約束は守ります。絶対」
二人はそのまま、互いの体温を分け合い、静かに余韻に浸る。
怜華の心は、深い安心感と愛情で満たされていた。
完璧じゃない自分も、恥ずかしい自分も……ゆうくんの前でなら、全部さらけ出せる。
纏っていた鎧を脱いで、心と体に素直になれる。
ただひたすらに誰かに求められ、愛されること。ありのままの自分を、受け入れてもらえること。
それは、ずっと勉学や仕事一筋で生きてきた彼女がようやく知る、初めての幸せだった。
(ねえ、ゆうくん。人に甘えることがこんなに幸せだなんて……私、ずっと知らなかった……)
悠斗もまた、怜華の頬に唇を寄せながら思う。
この人は、俺の前でだけ、こんなに熱く、柔らかく、溶けてくれる……。
みんな、氷の女帝なんて呼んでるけど。ていうか、俺も呼んでしまってたけど。
本当はこんなに愛らしい人だってこと、誰にも……知られたくない。
それは、ずっと遊びでしか他人と付き合えなかった彼がようやく知る、本気の愛情だった。
(俺のれいちゃん……。俺は怜華さんを……、一生、大切にする)
部屋には二人の穏やかな吐息と、時折漏れる小さなキスの音だけが響く。
──これは、そんな少し不器用な二人の物語。
怜華と悠斗の、ちょっとえっちな物語である。
(つづく)
次回、2話「怜華、仕事中の疼きを詰問されてしまう」
翌日の会議中、不意に昨夜のいろいろを思い出してしまった怜華。気づいた悠斗にその晩、さっそく言葉責めされ…!?
独自路線を突っ走ってる自覚があるので、
果たして読む人がいるのか、カテエラじゃないか、正直すごい不安です。
お気に入り、感想、評価など、いただけると、ものすごく励みになります。
感想はアカウントなくても書けます。
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