女帝・緋村怜華、恥じらい乙女に還る夜~部下の俺はギャップにもう限界です~【毎話読み切り】 作:ren_hameln
翌日の会議室。
部長・
「ここの数字、説明不足よ。
声は低く、冷たい。
誰もが恐れる〝氷の女帝〟の鋭い一撃。
憐憫と好奇心が入り交じった周囲の視線が、末席の佐久平
髪を染め、チャラい見た目の悠斗も、さすがに緊張の面持ちで唾を飲み込む。
「はい、緋村部長。まず、前提としまして——」
女帝と陰で呼ばれる容赦ない女性上司と、そこそこ出来るけどチャラい男性部下の、いつもの一コマ。
けれど。
定例会議の出席者はもちろん、この会社の誰も。
まるで、気づいていない。
緋村怜華は、佐久平悠斗の前でだけは——
女帝の鎧を脱ぎ捨てて、自分自身の心と体に素直になってしまうことに。
弱さをさらけ出し、すべてを預けて、思いっきり甘えてしまうことに。
もちろん、公私混同はしない。
コンプラが厳しい時代、仕事の場にプライベートな関係は一切持ち込まない、と二人は決めている。
勉強・仕事一筋で生きてきた怜華はもちろん、悠斗も意外と根は真面目なところがあり、関係は絶対に公にしないというのが二人の真摯な約束だった。
しかし、そうは言っても、まったく意識しないなんてことは無理なわけで──
* * *
「──以上が根拠です」
怜華の厳しい追及にたじたじになりながら、悠斗はようやく説明を終えた。
(昼間の怜華さん、やっぱりすげぇ)
悠斗は内心で、感心する。
(いや、まあ、夜の怜華さんもすげぇんだけど……)
華々しい経歴、確実に数字を積み上げる実力、昼間の冷徹で完璧主義な姿。
そして、うぶで恥ずかしがり屋で甘えん坊で、めっちゃエロ可愛い、怜華の夜の姿。
自分だけが、そんな彼女の可愛い本性を知っている。
そんな優越感に、思わず顔が緩んでしまう。
「佐久平くん、何をへらへらしているの」
怜華さん──いや、緋村部長の叱責が飛んできた。付き合うようになってからも、仕事では一切容赦してくれない。
「は、はいっ」
「数字の根拠はわかったわ。それで? 佐久平くん、あなたの結論は?」
「はい、本件、請けるべきと思います。先方の感触も良好ですし」
クライアントの機嫌取りが得意な悠斗の功績を、怜華は一目置いてくれている。
何より、怜華と出会い、真面目に業務に取り組むようになって。
仕事というものがすごく面白くなってきたところなのだ。
「ですから部長、ぜひ俺……あ、いや、私に──」
規模は小さいけれど、全部自分で仕切れるこんなチャンス、滅多にない。
この案件、絶対に、逃したくない。
「──すべて、任せてもらえますか」
自分に担当させてほしい。
その思いを、ストレートに悠斗は怜華にぶつける。
だが。
悠斗の本気アピールを聞いた怜華の顔が。
なぜか、一瞬で真っ赤になる。
「……っ!」
怜華の口から声にならない声が漏れ、目が泳ぐ。
訝しむ悠斗と目が合った瞬間、すごい勢いで逸らされた。
「ぅ…………」
必死に平静を装おうとするものの、耳まで赤く染まり、長い睫毛が小刻みに震えている。
どこかもどかしそうに、太ももが摺り合わされている。
腰がわずかにくねるのを必死に抑えようとしている。
悠斗は。
気づいてしまった。
(うわあ、怜華さん……何やってんすか……)
すべて任せてもらえますか、という台詞。
それは昨晩、自分が、怜華をリードするときに言った言葉。
そのものだった、ということに。
思わず、悠斗も動揺してしまう。
あの時の怜華の、不安と期待が入り交じった、とろけた表情。そして、体温と感触と——
脳内再生されたそれらに、下半身が反応しそうになる。
だが、さすがに百戦錬磨の悠斗、立ち直りは怜華よりずっと早い。資料の数字を眺めて自身の相棒を抑え、平常心を取り戻すと、冷静に怜華を観察する。
怜華は慌てて咳払いをして誤魔化そうとする。
しかし、完全にしどろもどろになっている。
「ご、ごほんっ。え、えっと……その……」
声が上擦り、途切れ途切れになる。目にはうっすら涙が滲んでいる。
「緋村部長……? どうかされましたか?」
隣の席の
「……っ、も、問題、ありません……。ちょ、ちょっと喉が……」
やっとのことで、怜華はペットボトルのお茶を一口飲む。少し落ち着いたようだ。
「……え、ええ、いいでしょう。先月の案件では、ずいぶんと先方の信頼を勝ち取れたようだし」
やっと、いつもの調子が戻って来た。
「佐久平くん、この案件、全部、あなたに任せま……ひゃうっ!?」
再び、奇声が、怜華の口から発せられた。
自分自身の台詞も昨晩と同じだったことに気づいて、自爆したらしい。
(うわあ……)
もはや悠斗は、見ていられなかった。
* * *
その日の夜。
怜華は、ベッドの隅に正座させられている。
ジャケットは脱がされている。ブラウスのボタンは三つ開けられ、水色のブラのレースがちらりと見えている。
タイトスカートは太ももまで捲り上げられ、ストッキングのラインが露わだ。
悠斗は椅子に腰かけて足を組み、怜華を見下ろす位置にいる。
ネクタイは緩め、シャツの袖はまくり上げている。
「——緋村部長」
悠斗の声は低く、抑揚がない。
怜華の肩がびくっと震える。
「……は、はい。佐久平、くん」
声は小さく、震えていて、昼間のトーンとは程遠い。
「今日の会議、なんであんなにぐだぐだになったんですか」
「……っ」
怜華の頬が一気に赤くなる。
正確には、ぐだぐだになったのは、あの一瞬だけだった。あの後、緋村部長はちゃんと会議の雰囲気を立て直し、新しいアイデアまで提案して、最終的にはそつなく終わらせた。
そうなのだ。緋村部長は——怜華さんはめちゃくちゃ仕事が出来る人で、悠斗は彼女のそんなところを本当に尊敬している。
けれど、今は。
「ねえ、緋村部長」
ただ、一点だけを、穿っていく。慎重に。
「あの時、何考えてたんですか」
答えのわかっている問いを、あえて投げかける。
怜華は目を伏せ、唇を噛む。ふるふると弱々しく首を振る。
ああ。そんな顔をされたらもう、もっと困らせたくなってしまうじゃないですか、怜華さん。
そう思いながら、昼間に言われた言葉を、そのまま彼女に投げ返す。
「説明不足ですよ。根拠を明確にしてくれませんか?」
不意打ちに、怜華の息が乱れる。
でも、言わなければ許されないという空気が、部屋を支配している。
「……あの時、さ、佐久平くんが」
「俺が? 何ですか?」
「すべて、任せて……もらえますか、って……」
「はい、言いましたけど。それが?」
腕組みすると、わざと意地悪く悠斗は
「……」
「……ふうん。なんですかそれ? 俺には任せたくないってことですか? ていうか部長、なにしれっと俺の発言のせいにしてんですか?」
「ちっ、違うの! そうじゃないの!」
「だったら、何を、思い出してたんですか?」
「うぅ…………」
「答えてください」
「…………き、昨日の、晩の」
「昨日の晩の?」
「い、いろんなこと……」
「へぇ……いろんなことねぇ」
そういえば、会議中に怜華が脚をもじもじさせていたな、と思い出す。
ニヤニヤしながら悠斗は続ける。
「もしかして、あの時、濡れちゃってました?」
「……」
「ねぇ」
「………………………はい」
怜華は完全にうつむきつつ、蚊の鳴くような声で悠斗の言葉を肯定した。耳まで真っ赤だ。
「ふうん、そうなんだ……。どんな気分でした?」
「えっ、あのっ……。こ、こんなの、だめなのにって」
怜華の声がさらに弱々しくなっていく。
「仕事中に……部下のこと考えて、こんなに……かっ、か、感じ、ちゃうなんて……はしたないって……」
悠斗はゆっくりと立ち上がる。怜華の顎を指で持ち上げて、目を合わせる。
(あの緋村部長が……涙目で……。こんな真っ赤になって……)
興奮で声が上擦りそうになるのを必死にこらえ、できるだけ抑揚のない口調で、言い放った。
「悪い部長ですね」
その一言で、怜華の美しい顔が歪み、瞳がさらに潤む。
「はい……悪い、部長です……」
「じゃあ、おしおき、しますね」
「……はい……」
怜華の唇が震えた。
「おねだり、してください」
「佐久平くん……。お、おしおき……お願い、します……」
悠斗はごくりと唾を飲み込むと、怜華のブラウスをさらに開き、ブラをずらして胸を露わにする。
すでに硬く尖った先端を、指先で軽く弾く。
「ひゃ……っ!」
怜華の身体が跳ねる。
「今日も声、ちゃんと出してくださいね」
左右の突起を両手で摘まみ、ゆっくりと捻る。
「ああぁ……っ!」
怜華の背中が弓なりに反る。
「ふふ、緋村部長、胸だけでこんなに感じちゃうんですね……。誰かに知られたら、ヤバいですね?」
「そんな、知られたらなんて……あっ……恥ずかしくて……や、はあんっ……死にそう、あ、あああっ……!」
親指と中指で摘まんで、人差し指の腹で頂点をさする。
それに合わせて、怜華の腰がへこへこと動いてしまう。
「でも、俺には見せてるんですよね? 緋村部長の、こんなはしたない姿」
「んあっ……。ゆうくん、だけ、だから……っ」
怜華は目をぎゅっとつぶったまま、消え入りそうな声で。
その特別な呼び名を口にした。
(うっ……。そこでゆうくん呼びは、反則だろ……っ)
昼間、あれほど冷徹に俺を叱責していた緋村部長が、今は俺の名前を甘くねだっている。
その煽りに、悠斗の理性は一瞬で焼き切れた。
乳首を激しく高速でこね始める。
「あああああ……っ!!」
高くよがる彼女の耳元で、そっと囁く。
「怜華は……れいちゃんは……俺のものです。全部、俺のもの。わかってますか?」
怜華の目から涙がこぼれる。
くにくにと動かす指に、さらに、力を込める。
「あっ、あっ……わかってま……はうっ! れいかの、ぜんぶ……あっ……ゆうくんの……っ!」
たまらなくなって、悠斗は怜華の息を奪う。
キスは優しく、でも支配的で。
「んっ、んむっ……あふぅ……」
唇を離すと、そのままベッドに彼女を横たえさせる。
スカートを捲り上げ、ストッキングを途中まで脱がせて、クロッチ部分に指を這わせる。
ぬちょ、という音がした。
「じゃあ、れいちゃん。今日も……俺に、全部、任せてくれますか?」
「……はい……ゆうくん……あっ、あなたに……ま、任せま……ひゃっ、だめっ」
「だめ?」
「ち、違うのっ。お願いっ……あっ、あ、あ……あんっ」
しばらくクロッチの上から刺激してから、怜華の脚を優しく開き、下着を完全に脱がせる。
怜華は目に涙をたたえながらも、どこか期待を隠せない表情で、悠斗を見上げている。
悠斗は指を規則的に動かしながら、怜華の乱れっぷりを静かに熱い目で、見つめ続ける。
ちゅくっ、ちゅくっ、という水音が、次第に響き始める。
「あっ、あっ、あっ、あ……あっ、あん、あっ」
「いいよ、怜華さん……。もっと乱れてください。もっとはしたなく……」
指の動きが速くなる。くちゅくちゅと執拗にこね上げてゆく。
怜華の声が高くなる。
「あっ! あんっ! ゆうくんっ! れいか、こんなに……あっ! はしたなくて……っ!」
「れいちゃん……可愛いよっ。エロ可愛い……っ」
「あっ! やっ! だめなのぉっ! あああ!」
「このまま、俺の指でイって……さあ」
ぷっくりと立った突起を、満を持して、下から上にそっとひと撫でした。
怜華は背中を反らせ、絶頂を迎える。
「あああっ……っ!」
怜華の身体がびくびくと痙攣し、弛緩した。
* * *
汗と涙で濡れた顔に、悠斗は優しくキスをする。
「れいちゃん……。指だけで、可愛くイけちゃいましたね」
怜華はとろんとした表情のまま、掠れた声で悠斗の名を呼ぶ。
「はぁ……はぁ……。ゆう、くん……」
「怜華さんには、おしおきっていうよりご褒美だったかな」
「そんなわけ……ほんと、恥ずかしかったんだから……」
頬を赤らめて恥じらう怜華は、どこまでも愛おしかった。
そのまましばらく両手で顔を覆っていたが、ふと、なにかに気づいたような顔をする。
「ああ……。そっか……私……」
「ん、どした? れいちゃん」
「ゆうくん…………えっと、あの」
切れ長の瞳に一瞬ためらいの光が見えたが、怜華は口を開いた。
「私……誰かに負けたかったのかもしれない。ずっと。心のどこかで」
「え? 負けたかった……?」
悠斗には、話がまだ見えない。
自分の気持ちを反芻するように、言葉を探して、怜華は語り始める。
「ゆうくんに……屈辱的なこと言われたり、恥ずかしいことされると……その、ちょっと嬉しいの……」
「ちょ……っ」
突然のカミングアウトに、悠斗はどう反応したら良いかわからない。
いや、まあ、確かに怜華さんドMだよなとは前から思ってたし、だからこそ今日はつい言葉責めしちゃったけど。
でも、まさか。
自分から、そんな話をしてくるとは。
「こんな感情、初めてで。なんだろうって思って……」
「…………」
「私ずっと、一番にならなきゃって……。そのためには強くなって、全部自分でコントロールしなきゃって……」
幼い頃から、勝ち続けること、全てを自ら采配することを要求され続けてきた緋村怜華。
一流大学からMBA、海外留学、そして二十代での部長就任という圧倒的な経歴。
しかし、その重すぎる鎧の下で、怜華は。
誰かに身も心も預けてしまいたいという根源的な欲求を、ずっと抑え込んできた。
「でも、女帝なんて……ほんとは、ただの幻想。強いフリしてるだけ」
「怜華さん……」
「だから、その幻想を崩してもらえて、ほっとしてるのかもしれない」
「いや、ちょっと、怜華さん……どこまで分析魔なんですか」
なにも、自分のM属性まで分析しなくても。
吹き出しそうになるのを悠斗はこらえた。
「しかも怜華さんの分析、ちょっと間違ってます」
えっ、と困惑する怜華。そんな彼女の髪を優しく撫でて、悠斗は続ける。
「怜華さんは強い人です。フリなんかじゃない」
「…………そんなこと、ない」
「何度でも言いますけど、ちゃんと強い人です。俺、知ってますから」
怜華は驚いた表情で、悠斗の顔をただ見つめている。
「数字を取ってくる強さ、部下を守れる強さ、業界に討って出る強さ、全部、知ってます。それは、ドヤ顔で誇っていいんです、怜華さん」
「……っ」
「でも……ずっと勝ち続けるのも、疲れると思うんですよね。たまには弱い人間になって、部下に罵られるのもありなんじゃないですか。今日みたいに」
怜華の瞳に、うっすらと涙がにじむ。
他人には決して見せまいと、ずっと我慢してきた涙。
「ゆうくん……」
その言葉に、甘えたい、と怜華は思った。
負けることの快楽、屈することの甘美。
すべて委ねてラクになることの、圧倒的な解放感。
悠斗と出会ったことで、初めて知る感覚だった。
「ねえ……私、さっき、ちゃんと負けられてたかしら」
「うん、怜華さん、めっちゃ可愛く負けられてた」
「ん……良かった」
「あと、言葉責めされて嬉しいってのは、幻想が崩されたとかそんなんじゃないと思いますよ」
「え?」
「単に、怜華さんの本性が、ドMなだけです」
「…………っ!!」
怜華は何か言いたげに口を開閉させるが、言葉が見つからない。
「怜華さんが一瞬でも解放されるなら、俺、いつだって責めてあげますから。ドMな怜華さん」
「もうっ……! でも、ゆうくんになら……その……め、めちゃくちゃにされたい……かも……」
そんな、けしからんことを言う、怜華さんの表情。
潤んだ目、震える睫毛、はにかんだ頬。半開きの口から漏れる吐息、乱れた髪。
熱を帯びた柔肌と、たくし上げられたスカートからのぞく、濡れそぼった、えっちな部分。
悠斗はもう、耐えられなかった。
「ああもう、そういうこと言っちゃうんですね。くそ、わかりましたよっ」
矢も楯もたまらず、服を脱ぎ捨てる。怜華の服も全部剥ぎ取る。
限界まで反り立つ自分の相棒にゴムを被せる。
熱く蕩ける秘所にそっとあてがい、そのまま、ちゅぷっ、ちゅぷっ、と入り口を擦る。
「はぁんっ…………」
「入れますよっ、緋村部長。承認願います」
悠斗が耳元で意地悪く囁くと、怜華はふるふると首を振った。
「……んっ。……そんな呼び方……」
「呼ばれて興奮してるくせに……ほらっ、早く承認してください。限界なんです俺」
「やっ、ばか、もう……あ、あんっ………………しょう、にん……しますっ…………あああぁぁ……っ!!」
承認した途端、勢いよく貫かれる。
怜華は大きく仰け反ると、一オクターブ高いよがり声を上げる。
そのまま二人のバカップルは再び、夜の深みに溺れていった。
(つづく)
次回、「3話 怜華、胸の先をひたすら優しく責められる」
仕事の理不尽に落ち込む怜華さんを訪ねてきた悠斗は、なぜか少し怒っていて……?
独自路線を突っ走ってる自覚があるので、
果たして読む人がいるのか、カテエラじゃないか、正直すごい不安です。
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