※この作品はR-18です。

女帝・緋村怜華、恥じらい乙女に還る夜~部下の俺はギャップにもう限界です~【毎話読み切り】   作:ren@ハーメルン

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8話 怜華、アロママッサージをしてもらう★

 金曜、23時過ぎ。

 佐久平(さくだいら)悠斗(ゆうと)のマンションのインターホンが鳴る。

 小さなコンビニ袋を手にした、緋村(ひむら)怜華(れいか)が立っていた。

 

「ごめんなさい、遅くなっちゃった」

 

 部屋に招き入れ、コンビニ袋を受け取る。

 ビールの限定缶が二本、入っていた。

 

「お、こないだ言ってたやつ」

 

「たまたま見つけたから。でも今日はもう遅いし、明日のお楽しみにしましょ」

 

 怜華は毎回ちょっとした手土産を欠かさない。

 そういう律儀さに感心しながら、悠斗はビールを冷蔵庫にしまう。

 

「今まで掛かってたんですね。先に帰っちゃって、すいません」

 

 大きな仕事の納期を翌週に控え、今週の怜華は連日深夜まで仕事に追われていた。

 

「何言ってるの。悠斗くんの今日の業務は済んでたんだから、あとは上司の仕事。……ハンガー、借りるわね」

 

 コートを脱いでハンガーに掛けながら、怜華は優しく微笑む。

 

「だけど、作ってもらった資料のおかげで、かなり時短できた。感謝してる」

 

「あ、良かった。怜華さんの指示が的確だったおかげです」

 

「納期延長なんて醜態だけは絶対に避けたかったから、助かったわ。これで、週末は心置きなく休めるわね」

 

 ジャケットを脱いだ怜華は、ソファにぐったりと沈み込む。

 

「ふぅ……」

 

 肩を軽く回し、眉間を軽く指で押さえて息を吐く。

 普段は完璧に姿勢を保っている分、疲れが溜まると一気に来るらしい。

 今夜は疲労を隠し切れていない怜華に、悠斗は胸が痛んだ。

 

(今週、怜華さん、ほんとに頑張ってたもんな)

 

「怜華さん、肩凝ってる?」

 

「そうね。まあ、慢性的に凝ってるけど、今週は特に疲れたかも」

 

「俺、マッサージしようか。実はアロマオイル、あるんです」

 

 怜華は少し驚いた顔をして、それから恥ずかしそうに頷いた。

 

「え、いいの? じゃあ、シャワー借りた後、お願い……してもいい?」

 

「もちろん。じゃ、準備しときますね」

 

「ありがとう。……アロマオイルがあるなんて、少し意外」

 

「んー、一度やってみたかったんですよね。怜華さんの全身マッサージ」

 

 もう、と照れながら怜華はシャワーの支度を始めた。

 

   * * *

 

 部屋の照明は、ぎりぎりまで落とされている。チルなBGMが、かすかに流れている。

 バスタオルが敷かれたベッドに、怜華はうつ伏せになっている。腰から下にも、大きめのタオルが掛けられている。

 悠斗は、ラベンダーとローズマリーがブレンドされたアロマオイルを取り出した。

 手のひらに垂らして温める。

 ベッドサイドに芳香が広がる。ラベンダーの甘く優しい香り、ローズマリーの清涼感が混じり、心が落ち着いていく。

 怜華は目を閉じ、深く息を吸う。

 

(いい香り……なんだか、安心する……。ゆうくんの部屋の匂いと混ざって……)

 

 悠斗の手のひらが、背中に触れる。

 香りと温もりが一緒に肌に染み込んでくるような感覚を、怜華は覚えた。

 

「はぁ……」

 

 思わず、吐息が漏れる。

 

 悠斗はマッサージを開始した。

 肩甲骨の周りを親指でしっかり押す。

 

「お客さん、凝ってますねえ」

 

 悠斗は軽口を叩く。

 

「ふぅ……、こんなに凝ってたのね……」

 

「いつも頑張りすぎなんですよ、部長は」

 

「悠斗くんこそ、今週は疲れてるのに」

 

「全然。俺、定時で上がって、さっきまで寝っ転がってゲームしてたし」

 

 そんなことない、疲れてるはず、と怜華は思う。

 昼間は最後の追い込みで、悠斗にかなり無茶な依頼をたくさんしてしまった。

 しかしそれにきっちりと応えた挙げ句、さらにこんなに優しくマッサージまでしてくれるなんて。

 

(ああ、悠斗くんの手、あったかい……)

 

 怜華はすっかり力が抜け、リラックスした様子で悠斗の手に身を任せている。

 引き続き悠斗は、首筋から肩にかけて、ゆっくり流していく。

 

「ここ、すごく張ってますね。疲れが溜まってる証拠ですよ」

 

「はぁ……。ずいぶんと本格的じゃない……」

 

「昔テニサーで、筋肉とかストレッチのこと、ちょっと囓ったんです。マッサージは完全に自己流だけど」

 

「ん、上手よ……」

 

 首と肩の付け根に、じっくりと圧をかける。

 

「ん……そこ、気持ちいい……」

 

 怜華の声が少し甘くなる。

 さらに上半身全体に、オイルを滑らせていく。

 仄暗い部屋で、オイルに濡れた怜華の肌が、艶やかに光っている。

 なだらかな背中のライン、細い腰のくびれ、すべてが間接照明の柔らかな光に包まれて、まるで芸術作品のように見える。

 

(ああ、怜華さん、綺麗だ……)

 

 悠斗は見とれながらも、真剣に優しく手を動かす。

 背中を手のひら全体で撫で下ろし、腰の辺りを丁寧にほぐしていく。

 

「んん……」

 

 怜華は目を閉じて、完全に身を委ねている。

 

 次に、腰から太ももへ。

 下半身を覆っていたタオルをずらし、オイルを追加して、ふくらはぎ、足の裏まで丁寧に。

 少しずつ、怜華の体が緩んでいくのがわかる。

 

「はぁっ……」

 

 足の指を一本ずつ、丁寧にマッサージすると、怜華は切なげな息を漏らした。

 ——怜華さん、足の薬指、ちょっと弱いんだな。覚えとこ。

 知らなかった反応に軽い征服欲を感じつつ、再び足先から膝の裏へと刺激を動かしていく。

 

 やがて、太ももの内側に手を滑らせた瞬間。

 

「……っ」

 

 怜華の体がぴくっと震えた。

 悠斗も、自分の指先に伝わる熱に、息を呑む。

 

 空気が、変わった。

 うつ伏せの怜華の頰が、ほんのり赤く染まっている。

 

 悠斗はごくりと唾を呑み込むと、怜華の横に座り直した。

 無言で太ももの内側を優しく撫で上げる。

 

「んっ……」

 

 怜華は、だんだんと変な気分になり始めていた。

 息が浅くなり、腰がもじもじと動いてしまう。

 

「やっ……。ゆうくんの触り方、なんかやらしい……」

 

「やだなあ、お客さん。普通のマッサージですよ」

 

 お決まりの台詞を返して楽しんでいる悠斗の声も、少し掠れている。

 

「でも、何だか、変な気持ちに……」

 

「……怜華さん、あのさ、俺」

 

 悠斗の手が止まった。

 熱の籠もった声で、しかし真剣な面持ちで呼びかける。

 

「今夜は怜華さんのこと、全部ほぐしてあげたいんです。疲れてるとこ、全部」

 

 その言葉の意味を理解して、怜華の頬がさらに赤くなる。

 

「……ぜん、ぶ」

 

「うん。心も、体も……ここも」

 

「ゆうくん……」

 

「リラックスして、ただ、気持ち良くなってほしいんです。もちろん、嫌なら、やめますけど」

 

 少し間を置いて、怜華は小声で、しかしはっきりと、答えた。

 

「ううん…………嫌じゃ、ない」

 

 悠斗は少し目を細めて頷くと、手の動きを再開した。

 太ももの付け根のぎりぎりのところを、撫でつけるようにさすっていく。

 ただし、潤い始めたそこにはまだ、触れない。

 あくまで周辺を、じっくりと、フェザータッチで。

 

「ん、んん…………あっ……」

 

 悠斗の手のひらにオイルがさらに増やされる。

 肌の上を滑らせると、ぬちゃ……ぬちゃ……と音がする。

 

 オイルに覆われた怜華の肌は、普段よりもずっと敏感になっている。

 悠斗の指先が触れるたびにぬるぬると滑り、皮膚と皮膚が密着する感触が、生々しく伝わってくる。

 

「やっ……あん……」

 

 怜華はもどかしさに、体をくねらせてしまう。

 触れてほしいところに、触れてもらえない。

 ほんの一瞬、指先がそこをかすめる感触があった。

 

「ああっ……!」

 

 しかし、悠斗はすんでのところで刺激を止め、怜華から手をどけた。

 

「じゃあ、仰向けにしますね」

 

 優しく体を仰向けにさせる。胸が露わになる。

 怜華はぎゅっと目を瞑る。体の奥がまだ疼いている。じれったさに、太ももをこすり合わせてしまう。外気に触れたそこはスースーして、しとどに潤んでしまっていることを思い知らされる。

 

 怜華の目の上に、畳んだタオルが掛けられる。目隠しされた形になった。

 

 落とされた照明に浮かび上がる裸体が、彫像のように美しい。

 悠斗はオイルを新しく手に取ると、まずデコルテに指を滑らせた。

 鎖骨から脇腹をゆっくり撫でる。手の動きに合わせて二つの膨らみもふにふにと翻弄され、桜色の頂がぴんと立ち始める。視覚と触覚が同時に刺激され、悠斗の理性が溶け始める。

 怜華の息も、次第に浅くなっていく。

 

「ん……」

 

 膨らみの裾野を、軽く円を描くように撫でた瞬間、

 

「あっ……!」

 

 怜華の腰がびくんと浮いた。

 

 オイルを増やし、胸全体を両手で優しく包み込むように揉み始める。

 少し肥大した先端を親指で軽く転がすと、怜華の口から甘い吐息が漏れる。

 

「あっ……あっ……ゆうくん……。そこ……きもちい……」

 

 声がすぐに幼く、切なくなる。

 オイルの影響か、いつもよりも感じているように見える。

 

「あっ……あんっ……」

 

「凝ってますねえ。ほら、こりこりじゃないですか」

 

 つんつんと指先で弾くと、芯に確かな硬さがあった。

 

「やぁっ……」

 

「お客さん、声、我慢しないで下さいねぇ。声出したほうが、美容にも良いんですよぉ」

 

 口から出任せを言いながら、悠斗は指で先端を摘まみ、軽く捻る。

 

「ああああ……っ!」

 

 怜華の腰が浮いた。

 

「いいですねぇ、その調子。ちくびもすっかりよわよわになりましたね」

 

「……んっ……ゆうくん……。もう……だめ……」

 

 怜華は弱々しく呟くが、体は正直だ。

 

 悠斗は片手で胸をこねたまま、もう片方の手を下に滑らせていく。

 オイルにまみれた肌が、艶やかに光る。

 

 茂みのカーブに沿って、怜華の秘所全体を、手で静かに覆った。

 そのまま手のひら全体で、揉むように動かしてみる。

 

「あん……っ!」

 

 怜華は無意識に自分の秘部を、悠斗の手に自分から押し付けてしまう。

 

 ぬちゃっ……と音を立てて、秘所が手に吸い付く。

 手のひら全体が、怜華の発する熱に包まれる。

 二つの液体が混ざり合う。

 アロマの香りと、怜華の甘い匂い。

 オイルのぬめりと、もっと熱い粘り。

 

(すげぇ……。これ、オイルなのか、怜華さんのなのか……わかんねぇ……)

 

 押し付けられた複雑な部分の感触と熱さに、悠斗は興奮を隠せない。

 怜華も顔を真っ赤にしながら、腰を小刻みに前後に動かしてしまう。

 

「あっ……んっ……ゆうくん……」

 

 ぬちょっ……、ぬちゅっ……。

 

 湿った音が、静かな寝室に響く。

 怜華の中から湯のように熱い液体が溢れ、悠斗の手のひらが、ひたひたになる。

 つい、意地悪なことを言ってみたくなる。

 

「お客さん……ずいぶん積極的ですね。どうしました?」

 

「やっ……その……」

 

「何か、してほしいことがあるんですか?」

 

 怜華の顔に、さっと朱が差した。

 

「っ……!」

 

 言葉に詰まる。

 恥ずかしくて、言えない。

 プライドが、こんなときに邪魔をする。

 

 怜華は首を横に振り、タオルの上から顔を両手で覆う。

 

「そんなこと、聞かないで……」

 

 でも、腰は止まらない。

 ぬちゃっ……ぬちゃっ……と、ますます音を立てて、悠斗の手に擦り付けてしまう。

 悠斗は手を少し動かして、怜華の動きを少し助けるように導く。

 手のひらを軽く浮かせ、また押し付け、それを繰り返す。

 音が、くぽっ、くぽっ、とさらに淫靡な調子に変わった。

 

「ああ……っ、それ、だめぇ……っ」

 

「言わないと、わからないですよ? 自分から動かしちゃって、こんなにえっちな音立てて……俺の手、びちょびちょにさせて」

 

 実況するような言葉に、怜華の体がびくんと震える。

 

「いやぁ……っ」

 

「昼間みたいに、的確に指示してくださいよ、部長」

 

「ゆうくんの、いじわる……」

 

 涙目になりながら、怜華は必死に首を振る。

 

 でも、答えられない。

 おねだりしたいのに、言葉にできない。

 そのうぶさと恥じらいが、悠斗のSっ気をさらに煽る。

 手の動きを止め、怜華の耳元で、意地悪く囁く。

 

「えー、お客さん。そろそろ、お時間です。はい、お疲れ様でした」

 

(やだ……ゆうくん、やめないで……)

 

 怜華は顔を覆ったまま、小さく、震える声でかぶりを振った。

 

「……やっ……え、延長、して……」

 

 言ったあとでこみ上げてくる恥ずかしさに、怜華は逃げ出したくなる。

 

(言っちゃった……私から、言っちゃった)

 

 怜華の口から零れ出た、予想外の単語。

 悠斗はにやつきが抑えられなくなる。

 

「ふっ、延長ですか。しょうがないなあ。どのあたりをやります? 肩? 腰?」

 

 怜華は顔を覆っていた手を、ためらいがちにずらした。一緒にタオルが顔から落ちる。

 

 すがるような目が、悠斗の顔を見上げている。

 小さな口から浅い息が漏れ、顔は火照り、解けた髪がシーツの上に広がっている。

 オイルにまみれた全身がてかてかと光り、秘所はひくんと切なげに動いている。

 

(くそっ……。怜華さん、エロ可愛すぎる……)

 

「えっと、その…………」

 

 怜華の口が、かすかに動く。

 言葉を探して、言い淀んでいる。

 やがて。

 

「……………………来て」

 

 やっと聞こえるような小さな声で。

 ようやく、それだけを絞り出した。

 

(怜華さんが……怜華さんのほうから……)

 

「れいちゃん……っ」

 

 悠斗はたまらなくなって、手の甲で怜華の頬を撫でる。

 今すぐにでも入れたい気持ちを抑えつけ、余裕を見せようとする。

 

「じゃあ、延長、時間無制限で。ナカの、マッサージ、していきますね……」

 

 急いで自分の服を脱ぎ捨てる。ゴムを装着する手間がもどかしい。

 再び向き合って、目と目を合わせる。

 上目遣いの怜華が、熱に浮かされるように呟いた。

 

「ゆうくん……早く……。もう、我慢できない……」

 

 悠斗は、いろいろと、いろいろともう、無理だった。

 

 ゆっくりと挿入する。

 

「あん…………っ」

 

 怜華の中は、相変わらず狭く熱い。

 オイルが滑りを増し、肌同士、粘膜同士がぬるぬると密着する。

 火照りがダイレクトに伝わってくる。

 まだ挿れただけなのに、内側はすでに小さく痙攣し、悠斗のものをうねるように締め付ける。

 

「くっ……お客さんっ……。これは……ほぐしがいがありますね……」

 

「あっ……やだっ……そんな、ぴくぴくさせないで……っ」

 

「そっちがそんなにうねうねするからですよっ」

 

「そ、そんなこと言われたって……」

 

「……ああ、もう。それじゃあ、マッサージしていきますよ。強さ弱さ、合わないところあったら、言ってくださいね……」

 

 悠斗はいつもより丹念に、抽送を開始する。

 

「あ……っ、ん……っ。……ああっ!」

 

「ん、ここが……ツボみたいですね」

 

「ああんっ、そこっ、だめぇっ」

 

「う……っ、締まる…………っ」

 

 だんだん、悠斗が無言になっていく。

 怜華は悠斗の首に腕を回し、くっつこうとする。

 ぎゅっと接触する。オイルがさらに滑りをよくしていく。

 

「ゆうくんっ、ゆうくん……。しゅきぃ……っ」

 

「れいちゃん……っ。すきだ……っ」

 

 ゆっくり、深く、互いの体を溶け合わせるように、二人は愛し合う。

 アロマの華やかな匂いと、彼女自身の甘い匂いが混ざり合い、部屋を満たしてゆく。

 オイルの吸い付くような触感に全身が包まれ、快感が何倍にも増幅されていく。

 桃源郷ってこんな感じなのかな、とぼんやり思いながら、悠斗は静かに熱を放った。

 

   * * *

 

 事後。

 

 熱々の濡れタオルで、全身のオイルを拭き取る。

 軽く水分補給をした二人は、再びベッドに横になった。

 心地よい疲れが、全身を包んでいる。

 

 優しく髪を撫でられた怜華が、そっとつぶやく。

 

「ゆうくん、今日はほんと、ありがとう」

 

「なんか、こんなことになっちゃって、すみません。れいちゃん、疲れてんのに」

 

「ん……そうね。なんとなく、こうなる予感はしてた」

 

 怜華は苦笑しつつも、にこにこしている。

 氷の女帝が普段は絶対に見せない、ほころんだ表情。

 

「あー、いや、すいません。マジ、すいません……」

 

 悠斗は決まり悪そうに、頭をかいた。

 

「でも、アロマの施術としても、本当に上手だった。技術点をつけるなら……そうね、一五〇点」

 

「……えっと、部長。その、事後に採点するの、やめてもらえます?」

 

「だって……本当に、その………………よかったんだもの」

 

 恥ずかしそうに俯いて、怜華は目をそらす。

 しかし、普段は一〇〇点すら滅多にくれない怜華の破格の高評価に、悠斗の頬はつい、緩んでしまう。

 

「なら、ちょっとでも怜華さん、癒されたかな」

 

「うん……。心も、体も……。今夜は、ぐっすり眠れそう」

 

 怜華は最高に幸せそうな表情で、目を閉じた。

 悠斗の胸の奥が、疼く。

 劣情ではなく、冷静だが静謐な感情が、心を満たしていた。

 

「あのさ、れいちゃん……いや、怜華さん……」

 

 これほど誰かを愛しいと思えたのは、初めてだった。

 

「俺、こんな奴だけどさ……怜華さんに全然釣り合えてない、ヘタレ野郎だけど……」

 

 最初は興味本位だったのに。氷の女帝に対する不埒な好奇心に過ぎなかったのに。

 想像もしなかった彼女のギャップ、乙女のように恥じらう可愛さに、すっかり溺れてしまっている。

 カラダだけじゃない。もちろん肩書でもない。彼女の心、性格、言動、生い立ち——彼女という人間が、まるごと愛おしかった。

 

「頑張るからさ。いつか、怜華さんにふさわしい男になれるように。だから……」

 

「………………」

 

 聞こえるのは、静かな寝息ばかりだった。

 

(…………寝ちゃいましたか。ま、いいや)

 

 無防備な寝顔を見つめながら、悠斗は。

 そのまま甘い残り香の酩酊に、心を委ねた。

 

(つづく)




次回、「9話 怜華、お姫様デートで愛される」
うきうき甘々デート回をお楽しみ下さい! 夜は夜で、何をやってるのかこの二人は…!?

独自路線を突っ走ってる自覚があるので、
果たして読む人がいるのか、カテエラじゃないか、正直すごい不安です。
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