女帝・緋村怜華、恥じらい乙女に還る夜~部下の俺はギャップにもう限界です~【毎話読み切り】 作:ren@ハーメルン
金曜、23時過ぎ。
小さなコンビニ袋を手にした、
「ごめんなさい、遅くなっちゃった」
部屋に招き入れ、コンビニ袋を受け取る。
ビールの限定缶が二本、入っていた。
「お、こないだ言ってたやつ」
「たまたま見つけたから。でも今日はもう遅いし、明日のお楽しみにしましょ」
怜華は毎回ちょっとした手土産を欠かさない。
そういう律儀さに感心しながら、悠斗はビールを冷蔵庫にしまう。
「今まで掛かってたんですね。先に帰っちゃって、すいません」
大きな仕事の納期を翌週に控え、今週の怜華は連日深夜まで仕事に追われていた。
「何言ってるの。悠斗くんの今日の業務は済んでたんだから、あとは上司の仕事。……ハンガー、借りるわね」
コートを脱いでハンガーに掛けながら、怜華は優しく微笑む。
「だけど、作ってもらった資料のおかげで、かなり時短できた。感謝してる」
「あ、良かった。怜華さんの指示が的確だったおかげです」
「納期延長なんて醜態だけは絶対に避けたかったから、助かったわ。これで、週末は心置きなく休めるわね」
ジャケットを脱いだ怜華は、ソファにぐったりと沈み込む。
「ふぅ……」
肩を軽く回し、眉間を軽く指で押さえて息を吐く。
普段は完璧に姿勢を保っている分、疲れが溜まると一気に来るらしい。
今夜は疲労を隠し切れていない怜華に、悠斗は胸が痛んだ。
(今週、怜華さん、ほんとに頑張ってたもんな)
「怜華さん、肩凝ってる?」
「そうね。まあ、慢性的に凝ってるけど、今週は特に疲れたかも」
「俺、マッサージしようか。実はアロマオイル、あるんです」
怜華は少し驚いた顔をして、それから恥ずかしそうに頷いた。
「え、いいの? じゃあ、シャワー借りた後、お願い……してもいい?」
「もちろん。じゃ、準備しときますね」
「ありがとう。……アロマオイルがあるなんて、少し意外」
「んー、一度やってみたかったんですよね。怜華さんの全身マッサージ」
もう、と照れながら怜華はシャワーの支度を始めた。
* * *
部屋の照明は、ぎりぎりまで落とされている。チルなBGMが、かすかに流れている。
バスタオルが敷かれたベッドに、怜華はうつ伏せになっている。腰から下にも、大きめのタオルが掛けられている。
悠斗は、ラベンダーとローズマリーがブレンドされたアロマオイルを取り出した。
手のひらに垂らして温める。
ベッドサイドに芳香が広がる。ラベンダーの甘く優しい香り、ローズマリーの清涼感が混じり、心が落ち着いていく。
怜華は目を閉じ、深く息を吸う。
(いい香り……なんだか、安心する……。ゆうくんの部屋の匂いと混ざって……)
悠斗の手のひらが、背中に触れる。
香りと温もりが一緒に肌に染み込んでくるような感覚を、怜華は覚えた。
「はぁ……」
思わず、吐息が漏れる。
悠斗はマッサージを開始した。
肩甲骨の周りを親指でしっかり押す。
「お客さん、凝ってますねえ」
悠斗は軽口を叩く。
「ふぅ……、こんなに凝ってたのね……」
「いつも頑張りすぎなんですよ、部長は」
「悠斗くんこそ、今週は疲れてるのに」
「全然。俺、定時で上がって、さっきまで寝っ転がってゲームしてたし」
そんなことない、疲れてるはず、と怜華は思う。
昼間は最後の追い込みで、悠斗にかなり無茶な依頼をたくさんしてしまった。
しかしそれにきっちりと応えた挙げ句、さらにこんなに優しくマッサージまでしてくれるなんて。
(ああ、悠斗くんの手、あったかい……)
怜華はすっかり力が抜け、リラックスした様子で悠斗の手に身を任せている。
引き続き悠斗は、首筋から肩にかけて、ゆっくり流していく。
「ここ、すごく張ってますね。疲れが溜まってる証拠ですよ」
「はぁ……。ずいぶんと本格的じゃない……」
「昔テニサーで、筋肉とかストレッチのこと、ちょっと囓ったんです。マッサージは完全に自己流だけど」
「ん、上手よ……」
首と肩の付け根に、じっくりと圧をかける。
「ん……そこ、気持ちいい……」
怜華の声が少し甘くなる。
さらに上半身全体に、オイルを滑らせていく。
仄暗い部屋で、オイルに濡れた怜華の肌が、艶やかに光っている。
なだらかな背中のライン、細い腰のくびれ、すべてが間接照明の柔らかな光に包まれて、まるで芸術作品のように見える。
(ああ、怜華さん、綺麗だ……)
悠斗は見とれながらも、真剣に優しく手を動かす。
背中を手のひら全体で撫で下ろし、腰の辺りを丁寧にほぐしていく。
「んん……」
怜華は目を閉じて、完全に身を委ねている。
次に、腰から太ももへ。
下半身を覆っていたタオルをずらし、オイルを追加して、ふくらはぎ、足の裏まで丁寧に。
少しずつ、怜華の体が緩んでいくのがわかる。
「はぁっ……」
足の指を一本ずつ、丁寧にマッサージすると、怜華は切なげな息を漏らした。
——怜華さん、足の薬指、ちょっと弱いんだな。覚えとこ。
知らなかった反応に軽い征服欲を感じつつ、再び足先から膝の裏へと刺激を動かしていく。
やがて、太ももの内側に手を滑らせた瞬間。
「……っ」
怜華の体がぴくっと震えた。
悠斗も、自分の指先に伝わる熱に、息を呑む。
空気が、変わった。
うつ伏せの怜華の頰が、ほんのり赤く染まっている。
悠斗はごくりと唾を呑み込むと、怜華の横に座り直した。
無言で太ももの内側を優しく撫で上げる。
「んっ……」
怜華は、だんだんと変な気分になり始めていた。
息が浅くなり、腰がもじもじと動いてしまう。
「やっ……。ゆうくんの触り方、なんかやらしい……」
「やだなあ、お客さん。普通のマッサージですよ」
お決まりの台詞を返して楽しんでいる悠斗の声も、少し掠れている。
「でも、何だか、変な気持ちに……」
「……怜華さん、あのさ、俺」
悠斗の手が止まった。
熱の籠もった声で、しかし真剣な面持ちで呼びかける。
「今夜は怜華さんのこと、全部ほぐしてあげたいんです。疲れてるとこ、全部」
その言葉の意味を理解して、怜華の頬がさらに赤くなる。
「……ぜん、ぶ」
「うん。心も、体も……ここも」
「ゆうくん……」
「リラックスして、ただ、気持ち良くなってほしいんです。もちろん、嫌なら、やめますけど」
少し間を置いて、怜華は小声で、しかしはっきりと、答えた。
「ううん…………嫌じゃ、ない」
悠斗は少し目を細めて頷くと、手の動きを再開した。
太ももの付け根のぎりぎりのところを、撫でつけるようにさすっていく。
ただし、潤い始めたそこにはまだ、触れない。
あくまで周辺を、じっくりと、フェザータッチで。
「ん、んん…………あっ……」
悠斗の手のひらにオイルがさらに増やされる。
肌の上を滑らせると、ぬちゃ……ぬちゃ……と音がする。
オイルに覆われた怜華の肌は、普段よりもずっと敏感になっている。
悠斗の指先が触れるたびにぬるぬると滑り、皮膚と皮膚が密着する感触が、生々しく伝わってくる。
「やっ……あん……」
怜華はもどかしさに、体をくねらせてしまう。
触れてほしいところに、触れてもらえない。
ほんの一瞬、指先がそこをかすめる感触があった。
「ああっ……!」
しかし、悠斗はすんでのところで刺激を止め、怜華から手をどけた。
「じゃあ、仰向けにしますね」
優しく体を仰向けにさせる。胸が露わになる。
怜華はぎゅっと目を瞑る。体の奥がまだ疼いている。じれったさに、太ももをこすり合わせてしまう。外気に触れたそこはスースーして、しとどに潤んでしまっていることを思い知らされる。
怜華の目の上に、畳んだタオルが掛けられる。目隠しされた形になった。
落とされた照明に浮かび上がる裸体が、彫像のように美しい。
悠斗はオイルを新しく手に取ると、まずデコルテに指を滑らせた。
鎖骨から脇腹をゆっくり撫でる。手の動きに合わせて二つの膨らみもふにふにと翻弄され、桜色の頂がぴんと立ち始める。視覚と触覚が同時に刺激され、悠斗の理性が溶け始める。
怜華の息も、次第に浅くなっていく。
「ん……」
膨らみの裾野を、軽く円を描くように撫でた瞬間、
「あっ……!」
怜華の腰がびくんと浮いた。
オイルを増やし、胸全体を両手で優しく包み込むように揉み始める。
少し肥大した先端を親指で軽く転がすと、怜華の口から甘い吐息が漏れる。
「あっ……あっ……ゆうくん……。そこ……きもちい……」
声がすぐに幼く、切なくなる。
オイルの影響か、いつもよりも感じているように見える。
「あっ……あんっ……」
「凝ってますねえ。ほら、こりこりじゃないですか」
つんつんと指先で弾くと、芯に確かな硬さがあった。
「やぁっ……」
「お客さん、声、我慢しないで下さいねぇ。声出したほうが、美容にも良いんですよぉ」
口から出任せを言いながら、悠斗は指で先端を摘まみ、軽く捻る。
「ああああ……っ!」
怜華の腰が浮いた。
「いいですねぇ、その調子。ちくびもすっかりよわよわになりましたね」
「……んっ……ゆうくん……。もう……だめ……」
怜華は弱々しく呟くが、体は正直だ。
悠斗は片手で胸をこねたまま、もう片方の手を下に滑らせていく。
オイルにまみれた肌が、艶やかに光る。
茂みのカーブに沿って、怜華の秘所全体を、手で静かに覆った。
そのまま手のひら全体で、揉むように動かしてみる。
「あん……っ!」
怜華は無意識に自分の秘部を、悠斗の手に自分から押し付けてしまう。
ぬちゃっ……と音を立てて、秘所が手に吸い付く。
手のひら全体が、怜華の発する熱に包まれる。
二つの液体が混ざり合う。
アロマの香りと、怜華の甘い匂い。
オイルのぬめりと、もっと熱い粘り。
(すげぇ……。これ、オイルなのか、怜華さんのなのか……わかんねぇ……)
押し付けられた複雑な部分の感触と熱さに、悠斗は興奮を隠せない。
怜華も顔を真っ赤にしながら、腰を小刻みに前後に動かしてしまう。
「あっ……んっ……ゆうくん……」
ぬちょっ……、ぬちゅっ……。
湿った音が、静かな寝室に響く。
怜華の中から湯のように熱い液体が溢れ、悠斗の手のひらが、ひたひたになる。
つい、意地悪なことを言ってみたくなる。
「お客さん……ずいぶん積極的ですね。どうしました?」
「やっ……その……」
「何か、してほしいことがあるんですか?」
怜華の顔に、さっと朱が差した。
「っ……!」
言葉に詰まる。
恥ずかしくて、言えない。
プライドが、こんなときに邪魔をする。
怜華は首を横に振り、タオルの上から顔を両手で覆う。
「そんなこと、聞かないで……」
でも、腰は止まらない。
ぬちゃっ……ぬちゃっ……と、ますます音を立てて、悠斗の手に擦り付けてしまう。
悠斗は手を少し動かして、怜華の動きを少し助けるように導く。
手のひらを軽く浮かせ、また押し付け、それを繰り返す。
音が、くぽっ、くぽっ、とさらに淫靡な調子に変わった。
「ああ……っ、それ、だめぇ……っ」
「言わないと、わからないですよ? 自分から動かしちゃって、こんなにえっちな音立てて……俺の手、びちょびちょにさせて」
実況するような言葉に、怜華の体がびくんと震える。
「いやぁ……っ」
「昼間みたいに、的確に指示してくださいよ、部長」
「ゆうくんの、いじわる……」
涙目になりながら、怜華は必死に首を振る。
でも、答えられない。
おねだりしたいのに、言葉にできない。
そのうぶさと恥じらいが、悠斗のSっ気をさらに煽る。
手の動きを止め、怜華の耳元で、意地悪く囁く。
「えー、お客さん。そろそろ、お時間です。はい、お疲れ様でした」
(やだ……ゆうくん、やめないで……)
怜華は顔を覆ったまま、小さく、震える声でかぶりを振った。
「……やっ……え、延長、して……」
言ったあとでこみ上げてくる恥ずかしさに、怜華は逃げ出したくなる。
(言っちゃった……私から、言っちゃった)
怜華の口から零れ出た、予想外の単語。
悠斗はにやつきが抑えられなくなる。
「ふっ、延長ですか。しょうがないなあ。どのあたりをやります? 肩? 腰?」
怜華は顔を覆っていた手を、ためらいがちにずらした。一緒にタオルが顔から落ちる。
すがるような目が、悠斗の顔を見上げている。
小さな口から浅い息が漏れ、顔は火照り、解けた髪がシーツの上に広がっている。
オイルにまみれた全身がてかてかと光り、秘所はひくんと切なげに動いている。
(くそっ……。怜華さん、エロ可愛すぎる……)
「えっと、その…………」
怜華の口が、かすかに動く。
言葉を探して、言い淀んでいる。
やがて。
「……………………来て」
やっと聞こえるような小さな声で。
ようやく、それだけを絞り出した。
(怜華さんが……怜華さんのほうから……)
「れいちゃん……っ」
悠斗はたまらなくなって、手の甲で怜華の頬を撫でる。
今すぐにでも入れたい気持ちを抑えつけ、余裕を見せようとする。
「じゃあ、延長、時間無制限で。ナカの、マッサージ、していきますね……」
急いで自分の服を脱ぎ捨てる。ゴムを装着する手間がもどかしい。
再び向き合って、目と目を合わせる。
上目遣いの怜華が、熱に浮かされるように呟いた。
「ゆうくん……早く……。もう、我慢できない……」
悠斗は、いろいろと、いろいろともう、無理だった。
ゆっくりと挿入する。
「あん…………っ」
怜華の中は、相変わらず狭く熱い。
オイルが滑りを増し、肌同士、粘膜同士がぬるぬると密着する。
火照りがダイレクトに伝わってくる。
まだ挿れただけなのに、内側はすでに小さく痙攣し、悠斗のものをうねるように締め付ける。
「くっ……お客さんっ……。これは……ほぐしがいがありますね……」
「あっ……やだっ……そんな、ぴくぴくさせないで……っ」
「そっちがそんなにうねうねするからですよっ」
「そ、そんなこと言われたって……」
「……ああ、もう。それじゃあ、マッサージしていきますよ。強さ弱さ、合わないところあったら、言ってくださいね……」
悠斗はいつもより丹念に、抽送を開始する。
「あ……っ、ん……っ。……ああっ!」
「ん、ここが……ツボみたいですね」
「ああんっ、そこっ、だめぇっ」
「う……っ、締まる…………っ」
だんだん、悠斗が無言になっていく。
怜華は悠斗の首に腕を回し、くっつこうとする。
ぎゅっと接触する。オイルがさらに滑りをよくしていく。
「ゆうくんっ、ゆうくん……。しゅきぃ……っ」
「れいちゃん……っ。すきだ……っ」
ゆっくり、深く、互いの体を溶け合わせるように、二人は愛し合う。
アロマの華やかな匂いと、彼女自身の甘い匂いが混ざり合い、部屋を満たしてゆく。
オイルの吸い付くような触感に全身が包まれ、快感が何倍にも増幅されていく。
桃源郷ってこんな感じなのかな、とぼんやり思いながら、悠斗は静かに熱を放った。
* * *
事後。
熱々の濡れタオルで、全身のオイルを拭き取る。
軽く水分補給をした二人は、再びベッドに横になった。
心地よい疲れが、全身を包んでいる。
優しく髪を撫でられた怜華が、そっとつぶやく。
「ゆうくん、今日はほんと、ありがとう」
「なんか、こんなことになっちゃって、すみません。れいちゃん、疲れてんのに」
「ん……そうね。なんとなく、こうなる予感はしてた」
怜華は苦笑しつつも、にこにこしている。
氷の女帝が普段は絶対に見せない、ほころんだ表情。
「あー、いや、すいません。マジ、すいません……」
悠斗は決まり悪そうに、頭をかいた。
「でも、アロマの施術としても、本当に上手だった。技術点をつけるなら……そうね、一五〇点」
「……えっと、部長。その、事後に採点するの、やめてもらえます?」
「だって……本当に、その………………よかったんだもの」
恥ずかしそうに俯いて、怜華は目をそらす。
しかし、普段は一〇〇点すら滅多にくれない怜華の破格の高評価に、悠斗の頬はつい、緩んでしまう。
「なら、ちょっとでも怜華さん、癒されたかな」
「うん……。心も、体も……。今夜は、ぐっすり眠れそう」
怜華は最高に幸せそうな表情で、目を閉じた。
悠斗の胸の奥が、疼く。
劣情ではなく、冷静だが静謐な感情が、心を満たしていた。
「あのさ、れいちゃん……いや、怜華さん……」
これほど誰かを愛しいと思えたのは、初めてだった。
「俺、こんな奴だけどさ……怜華さんに全然釣り合えてない、ヘタレ野郎だけど……」
最初は興味本位だったのに。氷の女帝に対する不埒な好奇心に過ぎなかったのに。
想像もしなかった彼女のギャップ、乙女のように恥じらう可愛さに、すっかり溺れてしまっている。
カラダだけじゃない。もちろん肩書でもない。彼女の心、性格、言動、生い立ち——彼女という人間が、まるごと愛おしかった。
「頑張るからさ。いつか、怜華さんにふさわしい男になれるように。だから……」
「………………」
聞こえるのは、静かな寝息ばかりだった。
(…………寝ちゃいましたか。ま、いいや)
無防備な寝顔を見つめながら、悠斗は。
そのまま甘い残り香の酩酊に、心を委ねた。
(つづく)
次回、「9話 怜華、お姫様デートで愛される」
うきうき甘々デート回をお楽しみ下さい! 夜は夜で、何をやってるのかこの二人は…!?
独自路線を突っ走ってる自覚があるので、
果たして読む人がいるのか、カテエラじゃないか、正直すごい不安です。
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(特に「ここすき」は嬉しいです)
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