女帝・緋村怜華、恥じらい乙女に還る夜~部下の俺はギャップにもう限界です~【毎話読み切り】 作:ren@ハーメルン
土曜日の都心、穏やかな冬日和。
約束の時間には少し早い。ベンチに座ってスマホを弄りながら、怜華の姿を探す。
やがて。
黒のロングコートに白のニット、膝丈のグレーのフレアスカート、足元はシンプルな黒のパンプス。
清楚で上品なコーディネートで、怜華が現れた。
職場ではかっちりまとめている髪は、今日は下ろしてハーフアップにしている。
「……お待たせ」
少し緊張した様子で、コートの裾をぎゅっと握りしめている。
立ち上がった悠斗は、わざとストレートに言う。
「怜華さん、今日も、可愛いですよ」
怜華は一瞬で、耳まで赤くなる。
「そ、そうかしら……」
声が上擦っている。目を逸らし、なぜかバッグの紐を指でねじっている。
すでに何度もデートを重ねているのに、いまだに反応がいちいち初々しい。
会社での威圧的な態度からは、想像もつかない。恋人同士という立場で公共の場に立つこと自体に、そもそも慣れていないらしい。まるで中学生だ。
悠斗は思う。
(ほんとに、これまで誰とも恋愛してこなかったんだな……)
年甲斐もなく恥じらっている姿が、たまらなく可愛い。
「まったく、いつもみたく堂々としてくださいよ」
左手でそっと、怜華の右手を取る。
怜華はびくりとして、それからおずおずと悠斗の手を握り返した。
手のひらから、心地よい圧が伝わってくる。
「じゃ、行きましょうか、怜華さん」
* * *
二人並んで、冬晴れの都会をぶらりと歩く。
プランをかっちり決めずに、適当にショップを覗いたり食べ歩きしたりして過ごすのが、最近のデートの傾向だった。
仕事中はいつも、分刻みのスケジュールをこなす怜華。
休日くらいは、時計を見ずにのんびり過ごして欲しかった。
他愛のない話をしつつ、悠斗はちらりと左側に目をやる。
端正な横顔が、すぐ隣にある。長い睫毛、良い匂いの髪、形の良い唇。
悠斗の背丈と歩幅は、長身の怜華とほとんど変わらない。
付き合い始めは気にしていたが、最近はむしろ同じ歩調で歩けることに、心地よさを覚えてもいた。
だが、同じ速さだからこそ、悠斗はあることに気づいた。
怜華の様子が、どうにも落ち着かない。
歩きながら一分おきに、左手で髪を触ったり、服の裾を気にしたり、ショーウィンドウに映る自分に目を走らせたり。返事もどこか上の空だ。
(怜華さん……? どうしたんだろ?)
所在なさげにさまよう怜華の視線がふと止まったのを、悠斗は見逃さなかった。
視線の先を辿る。
二人のすぐ隣に建っている、街路沿いのブティック。淡い色彩の可愛らしい服が並んでいる。
店頭からすぐに目を逸らし、歩き続けようとする怜華に、悠斗は声をかけた。
「ちょっと待って」
「えっ?」
歩道の真ん中で足を止め、こちらを見る怜華。
そのまま、悠斗も立ち止まる。二人して、壁際に体を寄せる。はからずも壁ドンみたいな構図になったが、ほぼ同じ身長なのでいまいち不格好だ。
「怜華さん……大丈夫? 具合悪い?」
「え、な、なんでもないわ」
顔を覗き込まれた怜華の目が泳ぐ。
「何かありました? 気になることがあるなら、遠慮なく言ってください」
観念したかのように、怜華は溜息をついた。
「…………はぁ。悠斗くんには、何でもお見通しなのね」
「そりゃ、まあ、毎晩のように肌を合わせる仲ですから」
「……ば、ばかっ、こんなとこで……っ」
キモいからかい方をしてしまったことを、悠斗は一瞬反省する。だが、今にも湯気が出そうな怜華の顔を見たら、まあいいか、と思えた。
「すいません……。でも、何か今日、そわそわしてるなって」
「…………」
「またノーブラですか?」
「ち、ちがっ…………!!」
怜華が固まる。
何かを言いたそうに口をぱくぱくさせ、ついで天を仰ぎ、そして悠斗のマフラーを掴んでぐいと引っ張る。
「ぐぇっ!?」
目に怒りをにじませた怜華に、思いっきり睨まれた。
切れ長の瞳の中に、氷の女帝の冷徹な光と、恥じらい乙女の沸騰しそうな熱が同居している。
完全に悠斗は
「うぐ、ご、ごめんなさい……調子に乗りすぎましたっ」
マフラーを掴む手が、緩められた。
「まったくもう……。実はね、その」
ぽつぽつと、怜華は心の内を話し始める。
「今日の服に、急に自信がなくなってきて……」
このまま悠斗のペースに翻弄されるよりは、自分から話した方が良いと判断したらしい。
「なんだか、オフィスカジュアルの延長みたいじゃない?」
「そうかなあ。普通におしゃれだなって思いましたけど」
「ネットや動画を参考にして揃えてみたのだけど……こうして街の人達の服装を見ていたら、急に恥ずかしくなってきて」
「ええ……? どこが……?」
必死に〝勉強〟して服を用意してくれたなんて、いかにも怜華らしくて、いじらしい。
それに実際、モノトーンで揃えたシックな装いは、彼女の雰囲気に良く似合っている。
だけど、言われてみれば。
——すごく、無難なのだ。無難すぎると言ってもいい。
それは逆に、彼女の〝自信のなさ〟を表しているのかもしれない。
そんな気がした。
きっと怜華さんは、自分から冒険できない性格だ、と悠斗は考える。
ビジネスで彼女がリスクを取れるのは、用意周到な何重もの防御策があるからこそだ。
だけど私生活は、ビジネスとは違う。お得意の知略はもはや通用しない。
これからも怜華さんは、毎回ネットや動画で、当たり障りのないコーデを選んでくるだろう。
そのたびに、自信が持てずに、不安になってしまうかもしれない。
ふと、怜華の背後のショーウィンドウに目が留まる。
さっき、怜華が見ていた服。ガーリーでフェミニンな、甘々ラインナップ。
「あのさ、怜華さん。この店、見てみません?」
「……え?」
怜華は少し戸惑う。
「俺は今日の怜華さんの服、普通に好きですけど、そんなに気になるなら、イメチェンもありじゃないですか?」
「え、ちょっと」
「まあ、見るだけ、見るだけ」
そのまま悠斗は怜華を店内へ連れ込んだ。
可愛い系のワンピースや、フリルやリボンがあしらわれた服が並んでいる。
明らかに場違い感を漂わせて、怜華は固まった。
「ゆ、悠斗くん。こんな、可愛い服……私には……」
「いいから、いいから。じゃ、まずは俺が選んであげます」
そう豪語したものの、女性のファッションは正直よくわからない。
とりあえず直感で、近くに掛かっていたピンクベージュのワンピースを手に取る。
ふんわり袖に膝丈、ウエストに細いリボンが付いた、まさに〝可愛い系〟の代表格。
甘さを出しつつも、決して下品にならないクラシカルなシルエットだった。
「これなんか絶対似合う。試着してみてくださいよ」
「や……っ、そんな、若い子が着るような……。似合うわけ……」
うつむく怜華。
しかし試着だけでいいからという悠斗の押しに負け、服を手にして試着室へ入る。
着替えた自分の姿を見た怜華は、鏡の前で息を飲んだ。
淡いピンクベージュが怜華の白い肌に溶け込み、ふんわり袖とリボンが女性らしさを引き出している。
脚のラインがきれいに見え、清楚だけど甘い。可愛いのに、子供っぽくなりすぎない。
(信じられない。こんな色も、こんなワンピースも、絶対似合わないと思ってたのに……)
……似合っている。
その事実を、自己評価が低い怜華も認めざるを得ない。
おずおずとカーテンを開け、恥ずかしそうに悠斗に声を掛ける。
「……ど、どう?」
悠斗も一目見て、言葉を失う。
これまで見たことのない怜華が、上気した顔で立っていた。
「怜華さん……めっちゃ可愛い。いや、可愛すぎです。こんなに似合うと思わなかった。マジ可愛い」
怜華は両手で頰を押さえる。
「そんな……っ。ゆ、悠斗くん、褒めすぎ……」
「なんか、姫みたい」
「な……っ」
「俺の姫」
「やめ……っ」
本気で恥ずかしがっている怜華。でも、瞳は潤み、口元は緩みまくっている。
店員も口を挟むのを躊躇うような、バカップル全開の会話が交わされる。
「ね、怜華さん。全体見たいからさ、その場で一回転してみて」
「え? こ、こう……?」
ぎこちなく小刻みにその場で姿勢を変えようとする怜華を、悠斗は一旦止める。
「そうじゃなくて、クルッて感じで」
言われたとおりに怜華は右足を軸にして、くるりと体を回転させた。
スカートの裾が、ふわりと広がる。ウェーブした髪が華麗にたなびき、後れ毛がちらりと見える。
その姿はとても美しくて、悠斗は光景を目に焼き付ける。
「は~~~、最高、眼福」
「ちょっと、何よ……。あ、でも後ろはこんな風に見えるのね。なるほど」
怜華は困惑しながらも、鏡の前で色々とポーズを取り始める。
「ごめん、つい……。でも実際、着てみてどうでした?」
「そうね、サイズはちょうどいいと思う」
「良かった。あとそもそも、怜華さん的にこの服、どう思います? 俺はすげぇ似合うって思いましたけど、押し付けたくはないんで」
怜華は少し考えてから、小さく頷いた。
「ありがとう。自分では絶対選ばないタイプだったから、びっくりしたけど……」
自己肯定感が少し、上がった気がした。
でも、それ以上に。
悠斗が選んでくれた服だということが、無性に嬉しかった。
上質な服地を愛おしそうにそっと指先で撫でて、怜華は顔をほころばせる。
「ん……その、気に、入った」
「じゃあ、今日ずっと、この服着ててよ。俺、怜華さんを姫扱いしますから」
「……もう、何言ってるの」
そのまま店員さんにタグを切ってもらう。
さらに、ワンピースの上に羽織れるジャケットも試着し、オフィスでも着回しできそうな一着を選び出す。
会計は悠斗が済ませた。怜華は自分が払うと言って譲らなかったが、激しい攻防戦の結果、あとでお返しに悠斗の服を怜華が買う、という約束で決着した。
新品のワンピースとジャケットに、元から着ていた黒のロングコートを羽織って、怜華は店を出る。
「せっかく新しい服を着ても、上にコート着たら変わらないわね」
「さすがにコート着ないと風邪引きますって……。それに、コートの間から見えるチラリズムが最高で」
「……また、そういうことばっかり言って」
「ワンピースがちらっと見えるのが、何がいけないんですか。チラリズムって単語で、何を想像したんですか怜華さん」
「……もう。今日、調子乗りすぎ。でも」
頬を膨らませながらも、怜華はその場で再び、一回転してみせた。
コートの裾がひるがえり、ピンクベージュのフレアがふわりと舞う。
冬の街路が、そこだけ、春になった。
悠斗の前でしか見せない、怜華の笑顔が弾ける。
「——ふふ。この服、嬉しい。ありがとう、悠斗くん」
* * *
その日のデートは、怜華は新しいワンピースのまま過ごした。
路地裏の小さなイタリアンでランチの後は、セレクトショップで悠斗のシャツを買う。
怜華の足取りは、どこか踊るように軽やかだ。
悠斗も、いつも以上に〝姫〟のエスコートに余念がない。
冬の日はあっという間に暮れた。軽めのディナーの後、夜の大通りを歩く。
ビルの谷間の満月に照らされた街は、いつもよりさらに華やかに見える。
月とイルミネーションの競演に目を奪われ、怜華は無意識に「わ……」と小さな声を漏らした。
「すごい、綺麗……っ」
その素直な一言に、悠斗はくすりと笑う。
——今日の怜華さん、はしゃいでるな。
「怜華さんの目、めっちゃ輝いてる」
「そんな……恥ずかしい……」
でも、怜華の顔は、なんだかにやけてきてしまう。
今日一日、こんなに笑ったのは、何年ぶりだろう。
「ねえ怜華さん、写真撮ろっか」
「うん」
(悠斗くんと一緒だと、こんなに楽しい)
スマホをナイトモードにして、二人で自撮りした。
イルミネーションをバックに、コートを少しはだけ、ワンピースを少し見せた怜華と。
仰々しくかしづいてエスコートする、ちょっとおどけた悠斗。
寄り添う怜華は、今までに見せたことのないキラキラした表情をしている。
横顔を見ながら、悠斗は心の中で思う。
(怜華さん……。今までデートすら、ろくにしてこなかった怜華さん)
(これから、もっともっと可愛い服着せて、甘やかしてやる。俺の姫として、ずっと)
二人でいると、冬の夜風もまるで寒くなかった。
* * *
その夜は、怜華のタワーマンションで過ごすことにした。
リビングの大きな窓から見える夜景と大きな月を背に、悠斗は怜華を抱き上げる。
お姫様抱っこのまま、寝室へと運ぶ。
ベッドに優しく下ろす。怜華はピンクベージュのワンピースのまま膝を抱えて座り、少し照れくさそうに悠斗を見上げた。
「悠斗くん。この服、なんだかまだ夢みたいで。ほんとに似合ってた……?」
悠斗は怜華の前に膝をつき、両手で怜華の頰を包み込んだ。
瞳を覗き込み、ゆっくりと、優しく、でも確信を持って答える。
「何度でも言うけど、めっちゃ似合ってます。怜華さんはどんな服でも綺麗だけど、今日は特別。俺の姫」
「もう、今日ずっと、姫、姫って……。年甲斐もない」
「姫でいいんです、怜華さんは」
額と額をくっつけて、悠斗は続ける。
「怜華さん、これまで青春も恋愛も、全部我慢してきたんすよね」
「…………」
「可愛い服も、どうせ似合わないって思い込んで、敬遠してきたんじゃないんですか」
黙り込む怜華。
「でも、〝どうせ〟って言葉——こう言っちゃなんですけど、ただの被害妄想だと思うんです」
「……っ!!」
「仕事一筋でここまで昇り詰めた怜華さんのこと、俺は尊敬してるんです。一つのことを突き詰めるには、諦めなきゃいけないことだってある。だけど、それを言い訳にして、どうせダメだって思い込むのは、違うと思うんです。たぶん」
怜華の目が見開かれる。
勉学に明け暮れ、友達と遊びに出かけることもなかった学生時代。
無難なファッションやメイクさえ〝勉強〟して、ひたすら出世街道を邁進してきた社会人時代。
どうせ、私には無理。可愛い服なんて似合わない。
それを言い訳に、ずっと、見ないフリをし続けてきた。
「年頃の女の子が、当たり前に味わうドキドキとか幸せとか、怜華さんは、もっと知っていい」
怜華の耳まで真っ赤になる。長い睫毛が震え、瞳が潤む。
「可愛いもの、ドキドキするもの。俺が……全部与えてやる」
悠斗は怜華の唇にそっとキスを落とす。
「んむ……っ」
そのまま肩から腰、脚へと手を滑らせる。
ベッドの上に横座りをしている怜華のワンピースの裾を優しく捲り上げる。
ストッキングに手をかけ、するすると脱がせていく。
現れた白い脚は月光に照らされ、緊張で少し震えている。
悠斗は怜華の首筋に唇を這わせながら、脚の付け根をそっとさすり、小さな布地の上から触れる。
くちゅり、と音がした。
「ん……」
そのまま布の下に指を差し入れようとする悠斗を、怜華がそっと制止した。
「あ……待って。服、汚したくないから……」
立ち上がり、背中に手を回してファスナーを下げると、ワンピースが床に滑り落ちた。
キャミも脱ぐと、いつもより少し豪華な、ピンクのお揃いのランジェリーが最後の布地となった。
怜華はワンピースを拾い上げ、椅子の背に掛けると、少し寂しそうに俯く。
「魔法、解けちゃった……」
「解けてないよ、お姫様」
悠斗は怜華の両肩を掴むと、ゆっくりと仰向けに押し倒した。
「ばかだな。あれは魔法の服なんかじゃない。脱いだって、ずっと俺の姫なんだよ、怜華さんは」
そのまま軽く、ついばむようなフレンチキスをしてから、顔を離して怜華を見下ろす。
潤んだ目、半開きの口、上気した頬。
期待に満ちた視線が、悠斗の心を刺す。
「姫……。姫の全部、俺にください」
「うん……ゆうくん、魔法の……続き、掛けて」
覆い被さるようにして悠斗は、手のひらでふくらみを優しく包み込む。
ブラを外す。指先で先端を転がし、舌でころころと舐め上げる。
怜華の背中が弓なりに反り、甘い吐息が漏れる。
「あっ……ゆうくん……そこ……。きもちい……」
「ここ……今日も可愛いね……」
悠斗は怜華の脚を開き、ランジェリーをするりと脚から抜くと、秘部に唇を寄せる。
舌先で花びらを優しくなぞり、敏感な突起を軽くちゅっと吸い上げる。
怜華の腰がびくんと跳ね、声が高くなる。
「んあっ……!」
ちゅぱ、ちゅぱ、と音を立てて、やわらかいそこを口全体で吸い上げていく。
「あっ……ゆうくん……そんな、音、恥ずかしっ……でも……きもちい……あっ……」
とめどなく湧き出す泉を味わい、舌を中に差し入れる。
感じてきた時特有の甘い芳香が漂い、悠斗をおかしくさせる。
ひくつくそこを、一心不乱に舐め上げていく。
「あ、あん……あんっ……らめっ……」
怜華は腰をくねらせ、息を荒げる。
突起をそっと下から上に撫でると、
「あああんっ」
軽く全身を震わせ、小さく達したようだった。
「ふふ、今日も可愛くイけたね……」
まだびくびくとしている怜華の隣で、悠斗は服を脱ぐ。
ゴムをつけると、仰向けに寝転んだ。
「ねえ、姫。今日はお姫様のたしなみとして」
屹立したものを指差しながら、いたずらっぽく言ってみる。
「乗馬、やってみません?」
怜華もその意味を理解したらしい。起き上がって悠斗の格好を見るやいなや、赤面しながら不安そうな顔をする。
「え、や、それって……もしや」
「うん、ご想像のとおりのこと」
「う、上から……ってこと、よね……。でも、そんなの、したことないし……」
「俺もサポートするって」
「できるかしら……」
「やってみて無理だったらやめよう。でも騎乗位って、女性側、めっちゃ気持ちいいらしいよ」
「……っ」
「今日も俺の案で可愛い服着てみて、正解だったでしょ?」
「……………それは、そうね。確かに、『馬には乗ってみよ』とはよく言うものだし」
本気か冗談か判然としない台詞に、悠斗が返しあぐねていると、決心したように怜華が立ち上がった。
悠斗の上にまたがり、片膝立ちになる。
片手で悠斗の怒張を持つ。もう片方の手で入り口を広げ、そっと当てがう。すでに熱く潤ったそこからは、ちゅぽ、と音がして、怜華の全身が震える。思わず握る手に力を込める。手の中の悠斗のものが、ぴくぴくと震える。
「ん、んっ……」
目を瞑ったまま、場所を探るように、くちゅ、くちゅ、と前後左右に動かす。一度達したそこはすっかり敏感になっていて、それだけで小さく声が漏れてしまう。
やがて、狙いを定めて、ゆっくりと腰を下ろしていく。悠斗もそっと相棒を支えて固定する。
「んうっ……。ふうっ……」
「くっ……。いいよ……れいちゃん」
時間をかけて奥まで挿入する。ぺたんと座った格好になった。
怜華の中は熱く、狭く、悠斗を優しく包み込む。
「ああ……。れいちゃん、入ったね」
「はぁっ……。ここから、えっと、どうすれば」
「好きに動いていいけど、最初は前後とか左右とかが楽なのかな……。俺も合わせるよ」
悠斗は下から両手を差し出す。恋人繋ぎになる。
怜華は腰を、小さく円を動かすようにゆっくりとグラインドさせてみた。
「あ、ああっ、あっ……なにこれっ……。すごい……あっ……」
悩ましげに眉を寄せ、喘ぎながら、腰を前後左右にぬちっ、ぬちっとこねるように動かす。その動きが、次第に大胆になっていく。
「ああ……あんっ……」
上で一生懸命に動いている怜華は、ひたすらに愛おしくて、ひたすらにエロい。
悠斗も腰を微調整し、動きに合わせようとする。
「うっ……お姫様……。めっちゃえっちだよ……」
「あん……っ、ゆうくん……これ、しゅごい……っ。おく、あたってるぅ……あんっ……」
「はぁっ……きもちいとこ、わかってきた?」
「ん、ああっ、ここ……れいかの、ここ……っ、あっ、あうっ……」
怜華の動きが激しく、リズミカルになる。
くちゅ、くちゅ、という音が次第にぐちゅっ、ぐちょっ、と変化していく。
「あ、あ、あん、あっ、あっ、ふ、あ、ああっ、あああああっ!!」
悠斗を咥え込んだそこが、ぴくんと痙攣して強く締まった。
ひときわ高い鳴き声を上げた怜華は、息も絶え絶えにくったりとしている。
だが、まだ悠斗は怜華を楽しませられるだけの固さを保っていた。
「れいちゃん、またイっちゃった?」
「やん……。うん……」
「じゃあさ」
悠斗はいわくありげに微笑んだ。
「そのまま、一回転してみて」
「ええ……っ!? そのままって……」
「うん。刺さったままで。ぐるっと」
「え……。そんなの無理……」
「まあまあ、ちょっとだけ」
合点のいかない顔で、怜華はほんの少しだけ体を時計回りに動かしてみた。
「ああん……っ!」
不意に訪れた刺激に、怜華は思わず仰け反る。
「なにこれっ……ああっ……やっ……」
体を回転させると、怜華の中で悠斗のものが当たる場所が変わり、それがたまらなく気持ちいい。
あっ、あっ、と小さく喘ぎながら、怜華は少しずつ体を回していく。
やがて、ちょうど半回転ほどしたところで、
「ん……。はぁっ……はぁっ……。ちょっと休ませて……」
怜華は小休止して息をつく。感じすぎていることもあるが、脚と腕による回転がかなりの重労働のようだった。
「ごめん、怜華さん……。めっちゃ面白かった」
「面白かったって何よ……。結構大変なんだから、これ」
振り向きざまに、怜華が文句を言う。跨がりながらの見返り姿が、たまらなくエロい。
「こっからは俺が回しますよ。でも、きもちいでしょ?」
「……………うん、それは、そう……あんっ……」
悠斗は腕の力で、少しずつ怜華の体を回していく。怜華もできるだけ協力する。
「あっ……。はぁんっ……」
時折、怜華の細い腰や股間を撫でつけて、軽く喘がせたりしながら、ようやく悠斗は回し終えた。
「ふぅ、やった、これで一回転」
再び悠斗と向かい合った怜華が、少し困った顔をしてこちらを見ている。
「ほんとにもう……」
「なんか、謎の達成感ありますね、これ」
「……否定はしないけど」
「だから言ったでしょ。〝どうせ無理〟なんて思っちゃ、ダメなんです。怜華さんは、なんだってできる。可愛い服だって着ていいし、騎乗位で回ったっていい」
「それとこれとは、だいぶ話が違うと思うのだけど」
「でも、きもちかったですよね?」
「……………………否定は、しないわ……」
そう言いながらもじもじと、恥じらう怜華。
快感の余韻が残る、せつなそうなその表情も。
汗で柔肌に張り付いた、乱れた髪も。
ぎゅっとシーツを掴んでいる右手も。
悠斗の腰に密着した、濡れそぼったそこも。
すべてが最高に可愛い、悠斗だけの、姫だった。
悠斗はゆっくりと体を起こすと、怜華をそっと押し倒して正常位の形になる。
「やん……っ」
「疲れたよね。後は俺が、動きます」
「あんっ」
「最後まで気持ち良くなっちゃってください。乱れちゃって、俺の姫」
悠斗は怜華の唇を奪い、深く舌を絡めながら、ゆっくりと腰を動かし始める。
一突きごとに、怜華の声が高くなる。
「ああっ……ゆうくんっ、ゆうくんっ……しゅき……」
悠斗は怜華の耳元で、優しく、熱く囁く。
「俺もだよ……れいちゃんっ……。これからもずっと、俺だけの姫でいて……」
「んんっ…………れいか……ゆうくんの、姫でいたいっ……」
「姫……っ。可愛いよ……っ」
「あんっ……ずっと、かわいくなりたかった……。ううっ、ほんとは、ずっと……かわいいカッコ、してみたかったの……っ」
不意に怜華の頬を、涙が伝い落ちた。
「なりたかった、じゃねえよ。可愛いんだよっ……れいちゃんは……っ」
「あんっ……ゆうくんが……いれば……かわいく、なれる、きがする……っ。あっ、や、ああんっ」
「俺が、もっと可愛くしてやる……。抱きしめて、甘やかして……。可愛いもの、ドキドキするもの、全部、俺が与えるから……っ」
怜華は涙をこぼしながら、悠斗の首に腕を回して、強く抱きつく。
もう、嗚咽なのかよがり声なのかもわからない。
涙と汗とよだれにまみれて、何度も絶頂を繰り返す。
柔肌を伝い、飛び散るしずくが、月光に照らされてきらきらと光る。
「あっ、あうっ……あんっ……ひぐっ……あっ、ゆうくん……あううっ、ゆう、くん……っ」
時計の針が回り、日付が変わっても。
魔法は決して解けることはなかった。
(つづく)
次回、「10話 怜華、初めて自分を慰めてみる」
悠斗の出張を控えた夜。自分を慰めたことがないという怜華に、悠斗がまた変な手ほどきを…!?
独自路線を突っ走ってる自覚があるので、
果たして読む人がいるのか、カテエラじゃないか、正直すごい不安です。
お気に入り、感想、評価、ここすきなど、いただけると、ものすごく励みになります。
(特に「ここすき」は嬉しいです)
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