※この作品はR-18です。

女帝・緋村怜華、恥じらい乙女に還る夜~部下の俺はギャップにもう限界です~【毎話読み切り】   作:ren@ハーメルン

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9話 怜華、お姫様デートで愛される★

 土曜日の都心、穏やかな冬日和。

 

 佐久平(さくだいら)悠斗(ゆうと)は、駅前の待ち合わせ場所で緋村(ひむら)怜華(れいか)を待っていた。

 約束の時間には少し早い。ベンチに座ってスマホを弄りながら、怜華の姿を探す。

 

 やがて。

 黒のロングコートに白のニット、膝丈のグレーのフレアスカート、足元はシンプルな黒のパンプス。

 清楚で上品なコーディネートで、怜華が現れた。

 職場ではかっちりまとめている髪は、今日は下ろしてハーフアップにしている。

 

「……お待たせ」

 

 少し緊張した様子で、コートの裾をぎゅっと握りしめている。

 立ち上がった悠斗は、わざとストレートに言う。

 

「怜華さん、今日も、可愛いですよ」

 

 怜華は一瞬で、耳まで赤くなる。

 

「そ、そうかしら……」

 

 声が上擦っている。目を逸らし、なぜかバッグの紐を指でねじっている。

 すでに何度もデートを重ねているのに、いまだに反応がいちいち初々しい。

 会社での威圧的な態度からは、想像もつかない。恋人同士という立場で公共の場に立つこと自体に、そもそも慣れていないらしい。まるで中学生だ。

 

 悠斗は思う。

 

(ほんとに、これまで誰とも恋愛してこなかったんだな……)

 

 年甲斐もなく恥じらっている姿が、たまらなく可愛い。

 

「まったく、いつもみたく堂々としてくださいよ」

 

 左手でそっと、怜華の右手を取る。

 怜華はびくりとして、それからおずおずと悠斗の手を握り返した。

 手のひらから、心地よい圧が伝わってくる。

 

「じゃ、行きましょうか、怜華さん」

 

   * * *

 

 二人並んで、冬晴れの都会をぶらりと歩く。

 プランをかっちり決めずに、適当にショップを覗いたり食べ歩きしたりして過ごすのが、最近のデートの傾向だった。

 仕事中はいつも、分刻みのスケジュールをこなす怜華。

 休日くらいは、時計を見ずにのんびり過ごして欲しかった。

 

 他愛のない話をしつつ、悠斗はちらりと左側に目をやる。

 端正な横顔が、すぐ隣にある。長い睫毛、良い匂いの髪、形の良い唇。

 悠斗の背丈と歩幅は、長身の怜華とほとんど変わらない。

 付き合い始めは気にしていたが、最近はむしろ同じ歩調で歩けることに、心地よさを覚えてもいた。

 

 だが、同じ速さだからこそ、悠斗はあることに気づいた。

 怜華の様子が、どうにも落ち着かない。

 歩きながら一分おきに、左手で髪を触ったり、服の裾を気にしたり、ショーウィンドウに映る自分に目を走らせたり。返事もどこか上の空だ。

 

(怜華さん……? どうしたんだろ?)

 

 所在なさげにさまよう怜華の視線がふと止まったのを、悠斗は見逃さなかった。

 視線の先を辿る。

 二人のすぐ隣に建っている、街路沿いのブティック。淡い色彩の可愛らしい服が並んでいる。

 店頭からすぐに目を逸らし、歩き続けようとする怜華に、悠斗は声をかけた。

 

「ちょっと待って」

 

「えっ?」

 

 歩道の真ん中で足を止め、こちらを見る怜華。

 そのまま、悠斗も立ち止まる。二人して、壁際に体を寄せる。はからずも壁ドンみたいな構図になったが、ほぼ同じ身長なのでいまいち不格好だ。

 

「怜華さん……大丈夫? 具合悪い?」

 

「え、な、なんでもないわ」

 

 顔を覗き込まれた怜華の目が泳ぐ。

 

「何かありました? 気になることがあるなら、遠慮なく言ってください」

 

 観念したかのように、怜華は溜息をついた。

 

「…………はぁ。悠斗くんには、何でもお見通しなのね」

 

「そりゃ、まあ、毎晩のように肌を合わせる仲ですから」

 

「……ば、ばかっ、こんなとこで……っ」

 

 キモいからかい方をしてしまったことを、悠斗は一瞬反省する。だが、今にも湯気が出そうな怜華の顔を見たら、まあいいか、と思えた。

 

「すいません……。でも、何か今日、そわそわしてるなって」

 

「…………」

 

「またノーブラですか?」

 

「ち、ちがっ…………!!」

 

 怜華が固まる。

 何かを言いたそうに口をぱくぱくさせ、ついで天を仰ぎ、そして悠斗のマフラーを掴んでぐいと引っ張る。

 

「ぐぇっ!?」

 

 目に怒りをにじませた怜華に、思いっきり睨まれた。

 切れ長の瞳の中に、氷の女帝の冷徹な光と、恥じらい乙女の沸騰しそうな熱が同居している。

 完全に悠斗は気(け)圧(お)される。これ以上は、ヤバい。

 

「うぐ、ご、ごめんなさい……調子に乗りすぎましたっ」

 

 マフラーを掴む手が、緩められた。

 

「まったくもう……。実はね、その」

 

 ぽつぽつと、怜華は心の内を話し始める。

 

「今日の服に、急に自信がなくなってきて……」

 

 このまま悠斗のペースに翻弄されるよりは、自分から話した方が良いと判断したらしい。

 

「なんだか、オフィスカジュアルの延長みたいじゃない?」

 

「そうかなあ。普通におしゃれだなって思いましたけど」

 

「ネットや動画を参考にして揃えてみたのだけど……こうして街の人達の服装を見ていたら、急に恥ずかしくなってきて」

 

「ええ……? どこが……?」

 

 必死に〝勉強〟して服を用意してくれたなんて、いかにも怜華らしくて、いじらしい。

 それに実際、モノトーンで揃えたシックな装いは、彼女の雰囲気に良く似合っている。

 

 だけど、言われてみれば。

 ——すごく、無難なのだ。無難すぎると言ってもいい。

 それは逆に、彼女の〝自信のなさ〟を表しているのかもしれない。

 そんな気がした。

 

 きっと怜華さんは、自分から冒険できない性格だ、と悠斗は考える。

 ビジネスで彼女がリスクを取れるのは、用意周到な何重もの防御策があるからこそだ。

 だけど私生活は、ビジネスとは違う。お得意の知略はもはや通用しない。

 

 これからも怜華さんは、毎回ネットや動画で、当たり障りのないコーデを選んでくるだろう。

 そのたびに、自信が持てずに、不安になってしまうかもしれない。

 

 ふと、怜華の背後のショーウィンドウに目が留まる。

 さっき、怜華が見ていた服。ガーリーでフェミニンな、甘々ラインナップ。

 

「あのさ、怜華さん。この店、見てみません?」

 

「……え?」

 

 怜華は少し戸惑う。

 

「俺は今日の怜華さんの服、普通に好きですけど、そんなに気になるなら、イメチェンもありじゃないですか?」

 

「え、ちょっと」

 

「まあ、見るだけ、見るだけ」

 

 そのまま悠斗は怜華を店内へ連れ込んだ。

 可愛い系のワンピースや、フリルやリボンがあしらわれた服が並んでいる。

 明らかに場違い感を漂わせて、怜華は固まった。

 

「ゆ、悠斗くん。こんな、可愛い服……私には……」

 

「いいから、いいから。じゃ、まずは俺が選んであげます」

 

 そう豪語したものの、女性のファッションは正直よくわからない。

 とりあえず直感で、近くに掛かっていたピンクベージュのワンピースを手に取る。

 ふんわり袖に膝丈、ウエストに細いリボンが付いた、まさに〝可愛い系〟の代表格。

 甘さを出しつつも、決して下品にならないクラシカルなシルエットだった。

 

「これなんか絶対似合う。試着してみてくださいよ」

 

「や……っ、そんな、若い子が着るような……。似合うわけ……」

 

 うつむく怜華。

 しかし試着だけでいいからという悠斗の押しに負け、服を手にして試着室へ入る。

 着替えた自分の姿を見た怜華は、鏡の前で息を飲んだ。

 

 淡いピンクベージュが怜華の白い肌に溶け込み、ふんわり袖とリボンが女性らしさを引き出している。

 脚のラインがきれいに見え、清楚だけど甘い。可愛いのに、子供っぽくなりすぎない。

 

(信じられない。こんな色も、こんなワンピースも、絶対似合わないと思ってたのに……)

 

 ……似合っている。

 その事実を、自己評価が低い怜華も認めざるを得ない。

 おずおずとカーテンを開け、恥ずかしそうに悠斗に声を掛ける。

 

「……ど、どう?」

 

 悠斗も一目見て、言葉を失う。

 これまで見たことのない怜華が、上気した顔で立っていた。

 

「怜華さん……めっちゃ可愛い。いや、可愛すぎです。こんなに似合うと思わなかった。マジ可愛い」

 

 怜華は両手で頰を押さえる。

 

「そんな……っ。ゆ、悠斗くん、褒めすぎ……」

 

「なんか、姫みたい」

 

「な……っ」

 

「俺の姫」

 

「やめ……っ」

 

 本気で恥ずかしがっている怜華。でも、瞳は潤み、口元は緩みまくっている。

 店員も口を挟むのを躊躇うような、バカップル全開の会話が交わされる。

 

「ね、怜華さん。全体見たいからさ、その場で一回転してみて」

 

「え? こ、こう……?」

 

 ぎこちなく小刻みにその場で姿勢を変えようとする怜華を、悠斗は一旦止める。

 

「そうじゃなくて、クルッて感じで」

 

 言われたとおりに怜華は右足を軸にして、くるりと体を回転させた。

 スカートの裾が、ふわりと広がる。ウェーブした髪が華麗にたなびき、後れ毛がちらりと見える。

 その姿はとても美しくて、悠斗は光景を目に焼き付ける。

 

「は~~~、最高、眼福」

 

「ちょっと、何よ……。あ、でも後ろはこんな風に見えるのね。なるほど」

 

 怜華は困惑しながらも、鏡の前で色々とポーズを取り始める。

 

「ごめん、つい……。でも実際、着てみてどうでした?」

 

「そうね、サイズはちょうどいいと思う」

 

「良かった。あとそもそも、怜華さん的にこの服、どう思います? 俺はすげぇ似合うって思いましたけど、押し付けたくはないんで」

 

 怜華は少し考えてから、小さく頷いた。

 

「ありがとう。自分では絶対選ばないタイプだったから、びっくりしたけど……」

 

 自己肯定感が少し、上がった気がした。

 でも、それ以上に。

 悠斗が選んでくれた服だということが、無性に嬉しかった。

 上質な服地を愛おしそうにそっと指先で撫でて、怜華は顔をほころばせる。

 

「ん……その、気に、入った」

 

「じゃあ、今日ずっと、この服着ててよ。俺、怜華さんを姫扱いしますから」

 

「……もう、何言ってるの」

 

 そのまま店員さんにタグを切ってもらう。

 さらに、ワンピースの上に羽織れるジャケットも試着し、オフィスでも着回しできそうな一着を選び出す。

 会計は悠斗が済ませた。怜華は自分が払うと言って譲らなかったが、激しい攻防戦の結果、あとでお返しに悠斗の服を怜華が買う、という約束で決着した。

 新品のワンピースとジャケットに、元から着ていた黒のロングコートを羽織って、怜華は店を出る。

 

「せっかく新しい服を着ても、上にコート着たら変わらないわね」

 

「さすがにコート着ないと風邪引きますって……。それに、コートの間から見えるチラリズムが最高で」

 

「……また、そういうことばっかり言って」

 

「ワンピースがちらっと見えるのが、何がいけないんですか。チラリズムって単語で、何を想像したんですか怜華さん」

 

「……もう。今日、調子乗りすぎ。でも」

 

 頬を膨らませながらも、怜華はその場で再び、一回転してみせた。

 コートの裾がひるがえり、ピンクベージュのフレアがふわりと舞う。

 冬の街路が、そこだけ、春になった。

 

 悠斗の前でしか見せない、怜華の笑顔が弾ける。

 

「——ふふ。この服、嬉しい。ありがとう、悠斗くん」

 

   * * *

 

 その日のデートは、怜華は新しいワンピースのまま過ごした。

 路地裏の小さなイタリアンでランチの後は、セレクトショップで悠斗のシャツを買う。

 怜華の足取りは、どこか踊るように軽やかだ。

 悠斗も、いつも以上に〝姫〟のエスコートに余念がない。

 

 冬の日はあっという間に暮れた。軽めのディナーの後、夜の大通りを歩く。

 ビルの谷間の満月に照らされた街は、いつもよりさらに華やかに見える。

 

 月とイルミネーションの競演に目を奪われ、怜華は無意識に「わ……」と小さな声を漏らした。

 

「すごい、綺麗……っ」

 

 その素直な一言に、悠斗はくすりと笑う。

 ——今日の怜華さん、はしゃいでるな。

 

「怜華さんの目、めっちゃ輝いてる」

 

「そんな……恥ずかしい……」

 

 でも、怜華の顔は、なんだかにやけてきてしまう。

 今日一日、こんなに笑ったのは、何年ぶりだろう。

 

「ねえ怜華さん、写真撮ろっか」

 

「うん」

 

(悠斗くんと一緒だと、こんなに楽しい)

 

 スマホをナイトモードにして、二人で自撮りした。

 イルミネーションをバックに、コートを少しはだけ、ワンピースを少し見せた怜華と。

 仰々しくかしづいてエスコートする、ちょっとおどけた悠斗。

 

 寄り添う怜華は、今までに見せたことのないキラキラした表情をしている。

 横顔を見ながら、悠斗は心の中で思う。

 

(怜華さん……。今までデートすら、ろくにしてこなかった怜華さん)

 

(これから、もっともっと可愛い服着せて、甘やかしてやる。俺の姫として、ずっと)

 

 二人でいると、冬の夜風もまるで寒くなかった。

 

   * * *

 

 その夜は、怜華のタワーマンションで過ごすことにした。

 

 リビングの大きな窓から見える夜景と大きな月を背に、悠斗は怜華を抱き上げる。

 お姫様抱っこのまま、寝室へと運ぶ。

 ベッドに優しく下ろす。怜華はピンクベージュのワンピースのまま膝を抱えて座り、少し照れくさそうに悠斗を見上げた。

 

「悠斗くん。この服、なんだかまだ夢みたいで。ほんとに似合ってた……?」

 

 悠斗は怜華の前に膝をつき、両手で怜華の頰を包み込んだ。

 瞳を覗き込み、ゆっくりと、優しく、でも確信を持って答える。

 

「何度でも言うけど、めっちゃ似合ってます。怜華さんはどんな服でも綺麗だけど、今日は特別。俺の姫」

 

「もう、今日ずっと、姫、姫って……。年甲斐もない」

 

「姫でいいんです、怜華さんは」

 

 額と額をくっつけて、悠斗は続ける。

 

「怜華さん、これまで青春も恋愛も、全部我慢してきたんすよね」

 

「…………」

 

「可愛い服も、どうせ似合わないって思い込んで、敬遠してきたんじゃないんですか」

 

 黙り込む怜華。

 

「でも、〝どうせ〟って言葉——こう言っちゃなんですけど、ただの被害妄想だと思うんです」

 

「……っ!!」

 

「仕事一筋でここまで昇り詰めた怜華さんのこと、俺は尊敬してるんです。一つのことを突き詰めるには、諦めなきゃいけないことだってある。だけど、それを言い訳にして、どうせダメだって思い込むのは、違うと思うんです。たぶん」

 

 怜華の目が見開かれる。

 勉学に明け暮れ、友達と遊びに出かけることもなかった学生時代。

 無難なファッションやメイクさえ〝勉強〟して、ひたすら出世街道を邁進してきた社会人時代。

 どうせ、私には無理。可愛い服なんて似合わない。

 それを言い訳に、ずっと、見ないフリをし続けてきた。

 

「年頃の女の子が、当たり前に味わうドキドキとか幸せとか、怜華さんは、もっと知っていい」

 

 怜華の耳まで真っ赤になる。長い睫毛が震え、瞳が潤む。

 

「可愛いもの、ドキドキするもの。俺が……全部与えてやる」

 

 悠斗は怜華の唇にそっとキスを落とす。

 

「んむ……っ」

 

 そのまま肩から腰、脚へと手を滑らせる。

 ベッドの上に横座りをしている怜華のワンピースの裾を優しく捲り上げる。

 ストッキングに手をかけ、するすると脱がせていく。

 現れた白い脚は月光に照らされ、緊張で少し震えている。

 

 悠斗は怜華の首筋に唇を這わせながら、脚の付け根をそっとさすり、小さな布地の上から触れる。

 くちゅり、と音がした。

 

「ん……」

 

 そのまま布の下に指を差し入れようとする悠斗を、怜華がそっと制止した。

 

「あ……待って。服、汚したくないから……」

 

 立ち上がり、背中に手を回してファスナーを下げると、ワンピースが床に滑り落ちた。

 キャミも脱ぐと、いつもより少し豪華な、ピンクのお揃いのランジェリーが最後の布地となった。

 怜華はワンピースを拾い上げ、椅子の背に掛けると、少し寂しそうに俯く。

 

「魔法、解けちゃった……」

 

「解けてないよ、お姫様」

 

 悠斗は怜華の両肩を掴むと、ゆっくりと仰向けに押し倒した。

 

「ばかだな。あれは魔法の服なんかじゃない。脱いだって、ずっと俺の姫なんだよ、怜華さんは」

 

 そのまま軽く、ついばむようなフレンチキスをしてから、顔を離して怜華を見下ろす。

 潤んだ目、半開きの口、上気した頬。

 期待に満ちた視線が、悠斗の心を刺す。

 

「姫……。姫の全部、俺にください」

 

「うん……ゆうくん、魔法の……続き、掛けて」

 

 覆い被さるようにして悠斗は、手のひらでふくらみを優しく包み込む。

 ブラを外す。指先で先端を転がし、舌でころころと舐め上げる。

 怜華の背中が弓なりに反り、甘い吐息が漏れる。

 

「あっ……ゆうくん……そこ……。きもちい……」

 

「ここ……今日も可愛いね……」

 

 悠斗は怜華の脚を開き、ランジェリーをするりと脚から抜くと、秘部に唇を寄せる。

 舌先で花びらを優しくなぞり、敏感な突起を軽くちゅっと吸い上げる。

 怜華の腰がびくんと跳ね、声が高くなる。

 

「んあっ……!」

 

 ちゅぱ、ちゅぱ、と音を立てて、やわらかいそこを口全体で吸い上げていく。

 

「あっ……ゆうくん……そんな、音、恥ずかしっ……でも……きもちい……あっ……」

 

 とめどなく湧き出す泉を味わい、舌を中に差し入れる。

 感じてきた時特有の甘い芳香が漂い、悠斗をおかしくさせる。

 ひくつくそこを、一心不乱に舐め上げていく。

 

「あ、あん……あんっ……らめっ……」

 

 怜華は腰をくねらせ、息を荒げる。

 突起をそっと下から上に撫でると、

 

「あああんっ」

 

 軽く全身を震わせ、小さく達したようだった。

 

「ふふ、今日も可愛くイけたね……」

 

 まだびくびくとしている怜華の隣で、悠斗は服を脱ぐ。

 ゴムをつけると、仰向けに寝転んだ。

 

「ねえ、姫。今日はお姫様のたしなみとして」

 

 屹立したものを指差しながら、いたずらっぽく言ってみる。

 

「乗馬、やってみません?」

 

 怜華もその意味を理解したらしい。起き上がって悠斗の格好を見るやいなや、赤面しながら不安そうな顔をする。

 

「え、や、それって……もしや」

 

「うん、ご想像のとおりのこと」

 

「う、上から……ってこと、よね……。でも、そんなの、したことないし……」

 

「俺もサポートするって」

 

「できるかしら……」

 

「やってみて無理だったらやめよう。でも騎乗位って、女性側、めっちゃ気持ちいいらしいよ」

 

「……っ」

 

「今日も俺の案で可愛い服着てみて、正解だったでしょ?」

 

「……………それは、そうね。確かに、『馬には乗ってみよ』とはよく言うものだし」

 

 本気か冗談か判然としない台詞に、悠斗が返しあぐねていると、決心したように怜華が立ち上がった。

 悠斗の上にまたがり、片膝立ちになる。

 片手で悠斗の怒張を持つ。もう片方の手で入り口を広げ、そっと当てがう。すでに熱く潤ったそこからは、ちゅぽ、と音がして、怜華の全身が震える。思わず握る手に力を込める。手の中の悠斗のものが、ぴくぴくと震える。

 

「ん、んっ……」

 

 目を瞑ったまま、場所を探るように、くちゅ、くちゅ、と前後左右に動かす。一度達したそこはすっかり敏感になっていて、それだけで小さく声が漏れてしまう。

 やがて、狙いを定めて、ゆっくりと腰を下ろしていく。悠斗もそっと相棒を支えて固定する。

 

「んうっ……。ふうっ……」

 

「くっ……。いいよ……れいちゃん」

 

 時間をかけて奥まで挿入する。ぺたんと座った格好になった。

 怜華の中は熱く、狭く、悠斗を優しく包み込む。

 

「ああ……。れいちゃん、入ったね」

 

「はぁっ……。ここから、えっと、どうすれば」

 

「好きに動いていいけど、最初は前後とか左右とかが楽なのかな……。俺も合わせるよ」

 

 悠斗は下から両手を差し出す。恋人繋ぎになる。

 怜華は腰を、小さく円を動かすようにゆっくりとグラインドさせてみた。

 

「あ、ああっ、あっ……なにこれっ……。すごい……あっ……」

 

 悩ましげに眉を寄せ、喘ぎながら、腰を前後左右にぬちっ、ぬちっとこねるように動かす。その動きが、次第に大胆になっていく。

 

「ああ……あんっ……」

 

 上で一生懸命に動いている怜華は、ひたすらに愛おしくて、ひたすらにエロい。

 悠斗も腰を微調整し、動きに合わせようとする。

 

「うっ……お姫様……。めっちゃえっちだよ……」

 

「あん……っ、ゆうくん……これ、しゅごい……っ。おく、あたってるぅ……あんっ……」

 

「はぁっ……きもちいとこ、わかってきた?」

 

「ん、ああっ、ここ……れいかの、ここ……っ、あっ、あうっ……」

 

 怜華の動きが激しく、リズミカルになる。

 くちゅ、くちゅ、という音が次第にぐちゅっ、ぐちょっ、と変化していく。

 

「あ、あ、あん、あっ、あっ、ふ、あ、ああっ、あああああっ!!」

 

 悠斗を咥え込んだそこが、ぴくんと痙攣して強く締まった。

 ひときわ高い鳴き声を上げた怜華は、息も絶え絶えにくったりとしている。

 だが、まだ悠斗は怜華を楽しませられるだけの固さを保っていた。

 

「れいちゃん、またイっちゃった?」

 

「やん……。うん……」

 

「じゃあさ」

 

 悠斗はいわくありげに微笑んだ。

 

「そのまま、一回転してみて」

 

「ええ……っ!? そのままって……」

 

「うん。刺さったままで。ぐるっと」

 

「え……。そんなの無理……」

 

「まあまあ、ちょっとだけ」

 

 合点のいかない顔で、怜華はほんの少しだけ体を時計回りに動かしてみた。

 

「ああん……っ!」

 

 不意に訪れた刺激に、怜華は思わず仰け反る。

 

「なにこれっ……ああっ……やっ……」

 

 体を回転させると、怜華の中で悠斗のものが当たる場所が変わり、それがたまらなく気持ちいい。

 

 あっ、あっ、と小さく喘ぎながら、怜華は少しずつ体を回していく。

 やがて、ちょうど半回転ほどしたところで、

 

「ん……。はぁっ……はぁっ……。ちょっと休ませて……」

 

 怜華は小休止して息をつく。感じすぎていることもあるが、脚と腕による回転がかなりの重労働のようだった。

 

「ごめん、怜華さん……。めっちゃ面白かった」

 

「面白かったって何よ……。結構大変なんだから、これ」

 

 振り向きざまに、怜華が文句を言う。跨がりながらの見返り姿が、たまらなくエロい。

 

「こっからは俺が回しますよ。でも、きもちいでしょ?」

 

「……………うん、それは、そう……あんっ……」

 

 悠斗は腕の力で、少しずつ怜華の体を回していく。怜華もできるだけ協力する。

 

「あっ……。はぁんっ……」

 

 時折、怜華の細い腰や股間を撫でつけて、軽く喘がせたりしながら、ようやく悠斗は回し終えた。

 

「ふぅ、やった、これで一回転」

 

 再び悠斗と向かい合った怜華が、少し困った顔をしてこちらを見ている。

 

「ほんとにもう……」

 

「なんか、謎の達成感ありますね、これ」

 

「……否定はしないけど」

 

「だから言ったでしょ。〝どうせ無理〟なんて思っちゃ、ダメなんです。怜華さんは、なんだってできる。可愛い服だって着ていいし、騎乗位で回ったっていい」

 

「それとこれとは、だいぶ話が違うと思うのだけど」

 

「でも、きもちかったですよね?」

 

「……………………否定は、しないわ……」

 

 そう言いながらもじもじと、恥じらう怜華。

 

 快感の余韻が残る、せつなそうなその表情も。

 汗で柔肌に張り付いた、乱れた髪も。

 ぎゅっとシーツを掴んでいる右手も。

 悠斗の腰に密着した、濡れそぼったそこも。

 すべてが最高に可愛い、悠斗だけの、姫だった。

 

 悠斗はゆっくりと体を起こすと、怜華をそっと押し倒して正常位の形になる。

 

「やん……っ」

 

「疲れたよね。後は俺が、動きます」

 

「あんっ」

 

「最後まで気持ち良くなっちゃってください。乱れちゃって、俺の姫」

 

 悠斗は怜華の唇を奪い、深く舌を絡めながら、ゆっくりと腰を動かし始める。

 一突きごとに、怜華の声が高くなる。

 

「ああっ……ゆうくんっ、ゆうくんっ……しゅき……」

 

 悠斗は怜華の耳元で、優しく、熱く囁く。

 

「俺もだよ……れいちゃんっ……。これからもずっと、俺だけの姫でいて……」

 

「んんっ…………れいか……ゆうくんの、姫でいたいっ……」

 

「姫……っ。可愛いよ……っ」

 

「あんっ……ずっと、かわいくなりたかった……。ううっ、ほんとは、ずっと……かわいいカッコ、してみたかったの……っ」

 

 不意に怜華の頬を、涙が伝い落ちた。

 

「なりたかった、じゃねえよ。可愛いんだよっ……れいちゃんは……っ」

 

「あんっ……ゆうくんが……いれば……かわいく、なれる、きがする……っ。あっ、や、ああんっ」

 

「俺が、もっと可愛くしてやる……。抱きしめて、甘やかして……。可愛いもの、ドキドキするもの、全部、俺が与えるから……っ」

 

 怜華は涙をこぼしながら、悠斗の首に腕を回して、強く抱きつく。

 もう、嗚咽なのかよがり声なのかもわからない。

 涙と汗とよだれにまみれて、何度も絶頂を繰り返す。

 柔肌を伝い、飛び散るしずくが、月光に照らされてきらきらと光る。

 

「あっ、あうっ……あんっ……ひぐっ……あっ、ゆうくん……あううっ、ゆう、くん……っ」

 

 時計の針が回り、日付が変わっても。

 魔法は決して解けることはなかった。

 

(つづく)

 




次回、「10話 怜華、初めて自分を慰めてみる」
悠斗の出張を控えた夜。自分を慰めたことがないという怜華に、悠斗がまた変な手ほどきを…!?

独自路線を突っ走ってる自覚があるので、
果たして読む人がいるのか、カテエラじゃないか、正直すごい不安です。
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