ノートには、ほぼほぼ「何でもあり」と言っていいほどの力がある。
したがって、それを使う人間の倫理観が問われる。
……まあ、「ヤリチンタラシ野郎」の俺が言うのも何だが。
もしAqoursのメンバーの誰かが自殺したり、殺されたり、不慮の事故で命を落としたりすれば、俺は迷わず時間を巻き戻すだろう。
幸い、今のところそんな事態にはなっていない。
だが、ラブライブ!での優勝と、浦の星女学院の廃校阻止。
この二つだけは、絶対にノートの力でどうにかしないと心に決めていた。
「……ノートで未来を予知しても、ほぼほぼ廃校ルートか……」
俺は小さくため息をついた。
世の中には「結果よりも過程が大事だ」という言葉がある。
だが、俺はそうは思わない。
過程も結果も、どちらも大事なのだ。
そして、結果だと思っていたものも、長い人生の中では、いずれ次の過程になる。
ラブライブ!での優勝も、浦の星女学院の廃校も、それで彼女たちの人生が終わるわけではない。
だからこそ、彼女たちが自分の力でつかみ取る未来を、俺が勝手に書き換えてはいけない。
……これ以上、未来を覗き見るのも野暮というものだろう。
とはいえ、廃校が決定したとき、高海千歌はひどく落ち込んでいた。
いつもの明るい笑顔も、すっかり影を潜めている。
そんな彼女を見て、俺は声を掛けた。
「千歌ちゃん。今度の休日、俺とデートに行かないか?」
「……えっ?」
千歌は驚いたように顔を上げた。
「デ、デート……ですか?」
「ああ。たまには学校のことも、ラブライブ!のことも忘れて、遊びに行こう」
さて。
世界を変えることはできても、落ち込んだ女の子を笑顔にするのは、案外難しいものだ。
「先生、待った……?」
待ち合わせ場所に現れた高海千歌は、少し申し訳なさそうに俺を見上げた。
今日の千歌は、白いパーカーにオレンジ色のスカート、足元には歩きやすそうなスニーカーという、明るく活動的な私服姿だった。
「いや、待ったぞ。実は深夜からワクワクして、ろくに眠れなかったんだ!」
「ええっ!? 先生、おかしいよ!」
千歌は思わず吹き出した。
「ハハハ! デートなんだから、楽しみにするのは当然だろ?」
「もう、先生ったら……!」
そう言って笑う千歌の顔には、まだどこか寂しさが残っていた。
それでも、笑ってくれた。
空元気だって、元気には違いない。
無理に励ます必要はない。今日一日、少しでも楽しい思い出を作ってやれれば、それでいい。
「さて、千歌ちゃん。今日はどこへ行こうか?」
「えっ、先生が決めてくれたんじゃないの?」
「もちろん考えてあるさ。だが、君の行きたいところも聞いておきたくてな」
千歌は少し考えると、久しぶりにいつもの明るい笑顔を見せた。
「……内浦の海辺を散歩したいな」
「よし、そうしよう」
俺と千歌は、内浦の海岸へと向かった。
穏やかな海には太陽の光がきらきらと反射し、遠くには淡島が浮かんでいた。
潮の香りを含んだ風が頬を撫で、寄せては返す波が心地よい音を立てている。
千歌のオレンジ色の髪が、海風にふわりと揺れた。
「綺麗でしょう……?」
千歌は海を見つめながら、少し誇らしげに微笑んだ。
「ああ。でも、君が隣にいると、千倍綺麗に見えるな……」
「……えっ?」
千歌は驚いたように俺を見上げた。
「わ、私が……?」
「そうだよ。海も綺麗だが、千歌ちゃんの笑顔にはかなわないな」
「も、もう! 先生ったら、急にそんなこと言わないでよ!」
千歌は頬を赤らめ、慌てて海の方へ顔を向けた。
「ハハハ! 思ったことを言っただけだよ」
「……先生って、そういうこと平気で言うんだから」
そう言いながらも、千歌の口元には小さな笑みが浮かんでいた。
廃校が決まってから、どこか沈んでいた彼女。
まだ心の底から笑えているわけではないのかもしれない。
それでも、こうして笑ってくれるなら、それでいい。
空元気だって、元気には違いないのだから。
潮風に吹かれながら、俺たちはゆっくりと海岸を歩き続けた。
千歌の手は、しばらく俺の袖を離さなかった。
「みかん、みかん、みかん……みかんだらけだな……」
俺は目の前に広がるみかん畑を見渡した。
「先生、当たり前のこと言わないでよ!」
千歌は呆れたようにツッコんだ。
「俺たちの戦いはこれからだ……!」
「それは未完! 打ち切り漫画のやつ!」
「ハハハ! だがな、千歌。人生はそれの連続だぞ」
「えっ?」
「何かが終わっても、また次の何かが始まる。学校だって、ラブライブ!だって、それで人生が終わるわけじゃない」
「……先生」
千歌は少しだけ真剣な表情になった。
……もっとも、戦いから逃げてきた奴が何を偉そうに語っているんだ、という話だが。
俺はノートの力で人生を変えた。
彼女たちは、自分たちの力で未来を切り開こうとしている。
……まったく、どちらが先生なんだか。
「よいしょ……」
みかんをどんどん取っていく。
「先生、意外とこういうの上手いね……」
「ああ、昔な……」
これ以上言うのは野暮だな……自虐ネタが多いのは俺の悪い癖だ……
「千歌、お前はみかんのポスターが似合うんじゃないか?」
「えーそうかな……?」
「ああ、みかんのデカいヌイグルミきてさ……」
「んもー先生の意地悪!制服だけで十分だよ!」
「ハハハ! つかまえてみろー!」
俺は千歌から逃げるように、みかん畑の小道を駆け出した。
「あはは! 待てー!」
千歌も笑いながら追いかけてくる。
「「ハハハハ!」」
……昭和のアニメや恋愛ドラマなら、ここで画面いっぱいにキラキラしたエフェクトがかかり、妙に爽やかな音楽が流れているところだろう。
おまけに、なぜかスローモーションになる。
……いや、今どきこんなベタな演出をする作品があるのか?
「先生! 待ってってばー!」
「ハハハ! 追いつけるものなら追いついてみろー!」
……まったく、俺も何をやっているんだか。
だが、千歌があんなに楽しそうに笑っているのなら、たまには昭和の恋愛ドラマの主人公になるのも悪くない。
「ふう……肉体労働をしたら腹が減ったな……」
俺は額の汗を拭いながら、大きく伸びをした。
「千歌も〜! ねえねえ、先生! みかんの喫茶店に行こうよ!」
「みかんの喫茶店?」
「うん! みかんを使ったケーキとか、パフェとか、ジュースとか、いろいろあるんだよ!」
「おお、そいつはいいな。みかん狩りの後にみかんスイーツとは、徹底しているな」
「えへへ! 今日はみかん尽くしだね!」
「この調子だと、俺までみかん星人になりそうだ」
「あはは! 先生がみかんになったら、千歌が食べちゃうよ!」
「おいおい、俺は非常食か!」
二人で笑いながら、俺たちはみかん畑を後にした、蟒蛇かよ……
俺と千歌は、みかん畑から少し歩いたところにある喫茶店へとやって来た。
海沿いの道に面したその店は、木造の小さな建物で、入口には手書きのメニューボードが置かれていた。
そこには、みかんジュース、みかんタルト、みかんゼリー、みかんパフェと、みかんを使ったメニューがずらりと並んでいる。
「……徹底しているな。ここまで来ると、みかん専門店じゃないか」
「えへへ! だから連れてきたかったんだよ!」
千歌は嬉しそうに扉を開けた。
カラン、カラン。
小さなベルが鳴り、コーヒーの香ばしい匂いと、柑橘系の爽やかな香りが鼻をくすぐった。
店内には木製のテーブルと椅子が並び、壁には内浦の風景写真や、みかんの収穫風景を写した写真が飾られていた。
窓際には小さな観葉植物が置かれ、その向こうには穏やかな駿河湾が広がっている。
大きな窓から差し込む午後の日差しが、店内を柔らかく照らしていた。
「おお……なかなかいい雰囲気じゃないか」
「でしょ? 千歌、こういうお店大好きなんだ!」
俺たちは海の見える窓際の席に腰を下ろした。
テーブルの上には、みかんの形をした小さな置物が飾られている。
「……ここまでみかんか」
「先生、まだ言ってる!」
千歌は笑いながらメニューを開いた。
「ねえ先生、これにしようよ!」
彼女が指さしたのは、写真いっぱいに盛り付けられた巨大なみかんパフェだった。
「……おいおい、これ一人前なのか?」
「二人で食べれば大丈夫だよ!」
「なるほど。では、こいつを一つ頼もうか」
しばらくして、店員が大きなガラスの器を運んできた。
山のように盛られたみかんの果肉。その下には生クリーム、バニラアイス、みかんゼリーが幾重にも重なっている。
「うひゃー! これはデカいな……二人前はあるぞ……!」
「えへへ! すごいでしょ!」
俺たちはスプーンを手に取り、さっそく一口食べてみた。
「あー、甘い! めちゃくちゃ甘い! 俺の人生よりも甘い……!」
「先生、おかしな例え!」
千歌は声を上げて笑った。
「あーん……!」
俺はみかんパフェをすくったスプーンを、千歌の口元へ差し出した。
「あーん!」
千歌は嬉しそうに口を開け、ぱくりと食べた。
今度は千歌がパフェをすくい、俺の口元へスプーンを伸ばしてきた。
「はい、先生も! あーん!」
「あーん……!」
俺も素直に口を開けた。
「「うーん、美味いね!」」
二人で顔を見合わせ、笑い合う。
……まさにバカップルである。
ふと、店内の隅に目をやると、サングラスとマスクをつけた挙動不審な女の子がいた。
……あれ?
どこかで見たことのある光景だ。
そういえば、以前、矢澤にこも似たようなことをしていたな……。
その女の子は、メニューで顔を隠しているつもりらしいが、明らかにこちらを気にしている。
……まあ、いいか。
俺はあえて気づかないふりをした。
「先生、どうしたの?」
「いや、何でもないよ」
「じゃあ、もう一口!」
千歌はスプーンを差し出し、満面の笑みを浮かべた。
「あーん!」
俺たちは、三津海水浴場を散歩することにした。
「さすがにこの季節だと、誰も泳いでないな……」
「当たり前だよ、先生……」
波打ち際を歩いていると、砂浜に空き缶や菓子の包装紙が落ちているのが目に入った。
俺はしゃがみ込み、それらを拾い上げた。
「ゴミ袋を持ってくればよかったな……」
「先生、偉いね……」
「俺は千年先どころか、二千年先の未来を考えているからな……」
「意識高い……!」
「『閃光のハサウェイ』を読んでいるからな……」
「それ、なに……?」
「戦争で好きだった女の子を失った青年が、世の中を変えようとしてテロリストになるんだが、結局は処刑されてしまう話だ……」
「ええっ!? いきなり結末まで教えちゃうの!?」
「あっ……すまん」
「もう、先生ってば!」
「まあ、暗い話ではあるが……俺は、彼の抱いた理想や問いかけが、次の世代に残っていく物語でもあると思っている」
「そうなんだ……。今度、図書室か本屋さんで探してみようかな」
「スクールアイドルも同じだ」
「えっ?」
「俺はAqoursを見たとき、μ'sの輝きを思い出した。そして千歌ちゃんを見たとき、高坂穂乃果の輝きを感じたんだ」
「穂乃果さんの……?」
「ああ。もちろん、君たちはμ'sのコピーじゃない。君たちには君たちだけの輝きがある」
俺は夕日に照らされた海を眺めた。
「μ'sからAqoursへ。受け継がれたものが、新しい輝きになる。まさにサンシャインだ……!」
「先生……!」
「陽はまた昇る……! サンライズだ!シャイニングの次はバーニングだ!」
「……先生、最後だけ何か違わない?」
「気のせいだ!」
千歌は吹き出した。
夕日に照らされた彼女の笑顔は、今日一日で見たどの景色よりも眩しく感じられた。
千歌もゴミを拾った、こっそりと怪奇サングラスマスク女も拾っていたが無視をした。
「もう、夕日が沈むね……」
茜色に染まった空の下、太陽が西の山並みへと沈もうとしていた。
「だが、陽はまた昇る」
「先生、またそれ?」
千歌はくすっと笑った。
俺はさりげなくノートを確認した。
……いた。
例の怪奇サングラスマスク女は、ちょうど俺たちの後ろにいる。
……今だな。
「千歌、大事な話がある……」
「なあに?」
千歌は不思議そうに俺を見上げた。
こんな純粋な彼女を傷つけるなんて……。
しかし、言わなければならない。
俺は心を鬼にした。
「ラブライブ!の決勝が終わったら、俺は学校を出ていく……」
「…………え?」
千歌の笑顔が消えた。
「先生……?」
その刹那、一陣の風が吹いた。
俺は彼女にそっとキスをした。
千歌は目を見開き、やがてゆっくりと瞳を閉じた。
唇を離すと、彼女は泣きそうな顔で微笑んだ。
「……ずるいよ、先生……」
「……すまない」
「こんなの……一生の思い出になっちゃうじゃない……!」
「……なんとでも言ってくれ……」
千歌は俺の服の袖を、ぎゅっとつかんだ。
俺たちはしばらく、夕暮れの海を見つめていた。
そして――。
俺たちは消えた。
沈みゆく太陽のように、吹き抜ける風のように……。
「……あれ?」
少し離れたところで、サングラスとマスクをつけた女の子が首をかしげた。
「さっきまで千歌さんと朝下先生がいらっしゃったはずなのに……!」
辺りをきょろきょろと見回す。
「ど、どこへ消えてしまったんですの!?」
……と、怪奇サングラスマスク女が言ったとか、言わなかったとか。「先生のお家……初めて来る……」
千歌はキョロキョロと俺の豪邸を見回していた。
広々とした玄関、高い天井、長い廊下。目に入るものすべてが珍しいらしく、まるで観光名所にでも来たかのようだ。
……お上りさんというか、初々しいというか。
「ねえ先生、エッチな本とかあるのかなぁ〜?」
千歌はいたずらっぽく笑った。
空元気ではあるが、先ほどよりはだいぶ元気を取り戻しているようだ。
「あるわけないだろ? そんなもの……」
……専用の部屋に入れている。
嘘は言っていない。ここにはないのだから。
「わあ……! 本がいっぱい!」
千歌は書斎に入ると、目を輝かせた。
壁一面の本棚には、漫画、小説、ゲームの攻略本、映像作品の資料集などがぎっしりと並んでいる。
「ラブコメ、バトル漫画、ラノベ、ゲーム、RPG……特撮ヒーローにロボットアニメ、世界名作劇場……」
千歌は本棚の背表紙を指で追いながら、次々と読み上げていく。
「一般文芸、ミステリー、刑事ドラマ……SF……アイドルアニメ……」
「ずいぶん幅広いでしょ?」
「うん! 先生って、こんなにいろんなものが好きなんだね!」
「ああ。昔からの趣味だからな」
「……あっ! スクールアイドルの本もある!」
千歌が一冊の本を手に取った。
「当然だろう。俺はμ'sの顧問だったんだからな」
「えへへ……じゃあ、いつかここにAqoursの本も並ぶのかな?」
「ああ。そうなるといいな」
「……ううん」
千歌は本を棚に戻し、こちらを振り返った。
「絶対に並べてもらうからね!」
その笑顔には、いつもの千歌らしい力強さが戻りつつあった。
……そうだ。それでいい。
俺がいなくなっても、君たちの物語は続いていくのだから。
チュッ♡
不意に、千歌が俺の頬にキスをした。
「……千歌?」
「えへへ……」
彼女は少し頬を赤らめながら、俺を見つめた。
「キスしたいなら、ちゃんと言ってください……♡」
「……そうか。じゃあ、もう一度キスしてもいいか?」
「……うん♡」
俺はそっと顔を近づけ、改めて千歌の唇にキスをした。
唇を離すと、千歌は照れくさそうに笑った。
「……先生、約束だからね」
「何が?」
「学校を離れても、私たちのこと、忘れないでね」
「……忘れるものか」
千歌は安心したように微笑んだ。
俺達は真っ白なベッドで、お互いを確かめ合い、思い出作りをした。
彼女の制服を脱がせる。
「おおう、みかん色……」
下着はその色だった。
「先生ったら、恥ずかしい〜!」
俺のトランクスはいつの間にか破れていた。
「……千歌……」
「んっ……?」
「綺麗だ……」
「……え……!」
「千歌の全てが……」
「もう、先生……」
「好きだ……」
「……っ……!」
「大好きだ……!」
「ううう……っ、先生も……!」
私たちは何度も何度も、お互いを求めあった。
「センセイはおっぱいは大きい方が好き?」
「千歌のおっぱい可愛くて好きだぞ」
俺は胸を触る、彼女の。それは程よく柔らかく、それでいて若々しい弾力があった。
「うふふ♡ じゃあお尻は?」
「千歌のお尻が好きだ」
俺は彼女の尻を撫でた。滑らかで、程よく肉付きが良く、手に吸い付くような感触だった。
「じゃあ足は?」
「千歌の足が好きだぞ。すらっとしてて、綺麗だ」
「ふふっ。じゃあ、全部、好きなんですね……?」
「ああ。千歌の全てが好きだ」
「……先生……っ」
千歌の瞳が潤み、彼女の唇がふるえていた。
「私も……先生のこと、全部、好き……♡」
「ああ、そうか……」
俺は彼女を優しく抱きしめた。
「……先生、今夜、眠らないで……♡」
「ああ、そうするよ」
「先生がいない未来なんて、考えられない……♡」
「それは約束できない」
「ほんと……?そう……」
彼女は俺のペニスを触る。
「先生のセンセイはね、先生みたいに強くて、優しいの」
千歌は俺の腕に抱かれながら、そう呟いた。
「いや、そんな大げさな……」
「ううん、ほんと」
彼女は俺の胸に顔をうずめ、さらにそう続けた。
「先生みたいな人に出会えて、私、本当によかった……」
その言葉に、俺は何も言えなかった。
「俺も千歌やAqoursの皆に会えて良かったよ……」
ただ、彼女の背中を優しく撫でることしかできなかった。
「私の、初めての人……♡」
朝の光が差し込む、俺の豪邸のベッドで。
千歌は俺の腕の中で、幸せそうに微笑んいた。
「先生……朝だよ……♡」
「ああ……」
俺はまどろみを残す目で、彼女の顔を見つめた。
「……夢なら、目が覚めないでほしかったな……」
千歌は寂しそうに呟いた。
「そうはいかないのさ、寧ろ今のほうが遥かに夢なのさ……」
「起きているのに夢を見ているの……」
「センセイの夢って?」
「人類救済だな……」
「センセイの夢って?」
「人類救済だな……」
「……え?」
千歌はきょとんとした顔で俺を見上げた。
「じ、人類救済?」
「ああ」
「世界征服じゃなくて?」
「なんでそうなる」
「だって、先生ならできそうだもん」
「……否定できないのが困るな」
千歌はくすくすと笑った。
「でも、先生らしいね」
「そうか?」
「うん。だって先生、いつも私たちのことを助けてくれるから」
「……」
「でもね、先生」
千歌は俺の手を握った。
「世界中の人を幸せにするのもいいけど、先生自身も幸せになってね」
「……ああ」
俺は彼女の手を握り返した。
「そのつもりだよ」
「約束だよ?」
「ああ、約束する」
千歌は安心したように微笑んだ。