※この作品はR-18です。

エロノート2 ラブライブ!サンシャイン!!編   作:良田両作

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まさか、ヨハネこと津島善子と同じく三部作になるとは……


ラブライブ!サンシャイン!! Aqours 黒澤ダイヤ中編

 

 

「参ったぜ……」

 

少子化という未来の問題だけではなく、現代の社会問題や政治的な問題まで解決しようと思っているのに、目の前の女の子の涙一つに対応できないなんて……。

 

だから僕は……。

 

……いや、自虐に走る必要はない。

 

「黒澤ダイヤ! 気をしっかり持て! 君は生徒会長にして、スクールアイドルAqoursの一員だろう!」

 

「ひゃっ!?」

 

突然の大声に、ダイヤは驚いて顔を上げた。

 

ここでビンタなんて論外だ。軽い叱咤激励にとどめておこう。

 

「それに、今日はデートだろう? せっかくの綺麗な顔が、涙で台無しじゃないか」

 

俺はハンカチを取り出し、ダイヤに差し出した。

 

「……先生」

 

「俺の昔話なんかで、君まで悲しい気持ちになる必要はないんだよ」

 

「……違いますわ」

 

「え?」

 

「先生の昔話だからこそ、悲しいのです……」

 

ダイヤはハンカチで涙を拭った。

 

「わたくしは、先生がどれほど立派な方なのか、存じているつもりでした……でも、何も知りませんでしたのね……」

 

「ダイヤ……」

 

「それに……生徒会長だって、スクールアイドルだって、泣きたいときは泣きますわ」

 

「……そりゃそうだな」

 

俺は苦笑した。

 

「一本取られたよ」

 

「もう……先生ったら……」

 

ようやく、ダイヤの顔に小さな笑みが戻った。

 

「さて、そろそろ昼食にしようか。沼津港の美味しい海鮮料理を食べに行こう」

 

「……はい。ですが、先生」

 

「ん?」

 

「お話は、まだ終わっておりませんわよ?」

 

……おっと。

 

どうやら、ダイヤの大説得はこれからが本番らしい。

 

いや説得ではない、相互理解だ。

 

深海水族館を出た俺たちは、沼津港の飲食店街へ向かった。

 

通りには海鮮料理店や干物を扱う店が並び、港町らしい賑わいを見せていた。

 

「さて、昼食にしようか。せっかく沼津港まで来たんだから、美味しい魚を食べたいね」

 

「ええ。わたくしも、お腹が空いてまいりましたわ」

 

俺たちが向かったのは『魚河岸 にし与』という店だった。

 

店先には料理の写真やメニューが並び、刺身や海鮮丼、揚げ物など、どれも食欲をそそるものばかりだ。

 

暖簾をくぐると、店内には魚河岸の食堂らしい活気があった。

 

厨房に面したカウンター席と、いくつかのテーブル席。壁には手書きの品書きが所狭しと貼られている。

 

食器の触れ合う音、客たちの話し声、厨房から聞こえる調理の音。

 

高級レストランのような華やかさはないが、気取らず食事を楽しめる、どこか懐かしい雰囲気だった。

 

「こういう店もいいだろう?」

 

「はい。港で働く方々にも親しまれているお店なのですね」

 

俺たちは案内されたテーブル席に腰を下ろした。

 

運ばれてきたお茶を一口飲む。

 

「さて、何を食べようか……」

 

「まあ、随分と種類がございますのね」

 

ダイヤは壁の品書きと手元のメニューを交互に見比べた。

 

さっきまで涙を流していた彼女も、ようやく普段の落ち着きを取り戻したようだった。

 

俺はその様子を見て、少しだけ安心した。

「嗚呼、庶民的だな……鯖はないか、鯖は? サバじゃねぇ!」

 

「……は?」

 

ダイヤがきょとんとした顔で俺を見つめた。

 

 

「そう。分かる人には分かるんだが……まあ、気にしないでくれ」

 

「はあ……」

 

ダイヤは困惑したまま、メニューに視線を戻した。

 

「それで先生、本当に鯖を召し上がりたいのですか?」

 

「いや、そこまで鯖にこだわっているわけじゃないんだ」

 

「……ますます意味が分かりませんわ」

 

ごもっともである。

 

「まあ、せっかく沼津港に来たんだ。海鮮丼にしようかな」

 

「最初からそうおっしゃればよろしいのに……」

 

ダイヤは呆れたように微笑んだ。

 

「「今を超えないとな……」

 

俺は小さくつぶやいた。

 

「……先生?」

 

「いや、何でもない」

 

やがて注文した料理が運ばれてきた。

 

俺の前には、マグロやサーモン、白身魚などが色鮮やかに盛りつけられた海鮮丼。

 

ダイヤの前には、数種類の刺身にご飯、味噌汁、小鉢が添えられた刺身定食が置かれた。

 

「まあ……美味しそうですわね」

 

「ああ、いただこうか」

 

「はい。いただきます」

 

俺は海鮮丼の刺身を一切れ口に運んだ。

 

新鮮な魚の旨味が口いっぱいに広がる。

 

「美味いな……魚が俺の中を泳いでいる……沼津の魚も、俺の中を泳ぎたいはずさ……」

 

「……少し、詩的ですね」

 

ダイヤは小さく微笑んだ。

 

「親父がよく言っていたのさ……」

 

「お父様が?」

 

「ああ。親父はストレスに対する耐性が低くてね。何かあるとすぐにパニックになっていた。俺も昔は似たようなところがあったんだ」

 

「そうでしたの……」

 

「だから、落ち着いて物事を考えるのが苦手だった。今じゃ、少しはマシになったと思うけどね」

 

俺はもう一切れ、刺身を口に運んだ。

 

「……でも、親父から受け継いだものが、悪いところばかりだったとは思いたくないんだ」

 

ダイヤは箸を置き、静かに俺を見つめた。

 

「先生は、ご自分のことをよく振り返っていらっしゃるのですね」

 

「そうかな?」

 

「ええ。ご自分の弱さを認められることも、一つの強さだと思いますわ」

 

「……ありがとう、ダイヤ」

 

俺たちは再び箸を進めた。

 

さっきまでの重苦しい空気は、もうなかった。

 

ただ、こうして彼女と食事をしながら話しているだけで、不思議と心が軽くなっていくのを感じた。

「親父もおふくろも、もういない……だけどね……そばにいない時に、そばにいるような気がするし、近くにいても、心が通じないことがある。俺とさっきまでのダイヤがいい例さ……」

 

「そうですわね……」

 

ダイヤは静かに頷いた。

 

「わたくしも、先生のことを何でも知っているつもりでおりました。でも、今日のお話を聞いて、知らないことがたくさんあるのだと気づきましたわ」

 

「俺だって同じさ。君のことを全部知っているわけじゃない」

 

「……でしたら、これから知っていただければよろしいのです」

 

「これから?」

 

「ええ。今日一日ですべてを理解する必要はありませんもの」

 

ダイヤは穏やかに微笑んだ。

 

「わたくしも、先生のことをもっと知りたいと思っております」

 

「……そうか」

 

「はい」

 

俺は海鮮丼を一口食べた。

 

「だったら、まずはこの美味い魚を一緒に味わおうじゃないか」

 

「ふふっ、そうですわね」

 

二人で笑い合った。

 

……人間同士、分かり合うのは難しい。

 

でも、分かろうとすることなら、今からでもできるのだ。

 

「お互いを知り合いたいと思いたい、ニュータイプ……」 

 

「……アニメの雑誌ですか……?」

 

「俺が好きなアニメの設定さ、

テレパシーや直感のような非言語的コミュニケーション能力により、人と人がお互いを誤解なく理解し合えるようになる存在として語られる。戦争や争いがなくなると期待されていた」

 

「なんだか……難しい話ですわね……」

 

「ああ、難しい話さ、例えばインターネットやスマートフォンが発達して、人々は分かり合えたか?戦争や争いがなくなったか?」

 

「無くならないですわね……」

 

俺たちは魚を食べながら、会話を楽しんでいた。

 

「面と向かってもだ……逆に相互理解をした結果、こいつは倒さないといけないと思うことがある……」

 

「残酷な話ですわね……」

 

「残酷とは血や内蔵、エログロをやればいいというものではない……ああ、すまん脱線したな……」

 

俺は『光る宇宙』を思い出した。

 

宇宙空間を飛ぶ、俺とダイヤ。

 

いや、Aqoursやμ's……そして未来のスクールアイドルたちや、俺たちの子供たち……!

 

もしも、すべての人間がお互いを理解できるようになったら……。

 

「……先生?」

 

「ん?」

 

「先ほど、相互理解というお話をされましたわね」

 

「ああ」

 

「でしたら……わたくしも、先生のことをもっと知りたいです」

 

ダイヤは箸を置き、少しだけ表情を引き締めた。

 

「先ほど、ご両親のお話をしてくださいましたけれど……」

 

「……ああ」

 

「もし、お話ししていただけるのでしたら、もう少し聞かせていただけませんか?」

 

「親父とおふくろのことかい?」

 

「はい。ですが、無理にとは申しませんわ」

 

俺は少し考えた。

 

「……そうだな。楽しい話ばかりじゃないけど、それでもよければ」

 

「ええ。先生の大切な思い出ですもの」

 

俺は湯飲みに手を伸ばした。

 

「じゃあ、どこから話そうかな……」

「先生、ご両親の馴れ初めはご存じですか?」

 

とダイヤが尋ねた。

 

「お見合い結婚さ。母さんは父さんを哀れに思って、結婚したらしい……」

 

「……哀れに、ですか?」

 

ダイヤは少し驚いたように目を瞬かせた。

 

「ああ。少なくとも、俺はそう聞いている」

 

「そうでしたの……」

 

ダイヤは少し考え込んだ。

 

「ですが……同情から始まったとしても、それだけで結婚生活のすべてが決まるわけではありませんわよね」

 

「……どういうことだい?」

 

「最初は恋愛感情がなくても、長い年月を共に過ごすうちに、愛情が芽生えることもあるのではないでしょうか」

 

「……なるほど」

 

「もちろん、実際のお二人がどうだったのかは、わたくしには分かりませんけれど……」

 

ダイヤは静かに続けた。

 

「先生は、ご両親が仲睦まじくされているところをご覧になったことはありますか?」

 

俺は箸を止めた。

 

「……そうだな。親父はいわゆる、結婚できない男だった可能性が高い。イラチ……関西弁で短気という意味なんだが、そういう性格だった。醤油も大量にかけるタイプでね……ストレスにも弱かった。早くに亡くなったよ」

 

「……そうでしたのね」

 

ダイヤは少し悲しそうな顔をした。

 

「ですが、先生。短気だったからといって、愛情のない方だったとは限りませんわ」

 

「そうだな……」

 

俺は小さく頷いた。

 

「しかし、少なくとも下品な言い方になるが、四回もしているんだ……愛していたのかもしれない」

 

「よ、四回……?」

 

ダイヤは一瞬きょとんとしたが、意味を察したのか、頬を赤らめた。

 

「も、もう! 先生! そのような数え方をなさらなくても……!」

 

「ははは、すまんすまん」

 

「ですが……お子様が何人いらっしゃるかだけでは、ご夫婦の愛情は測れませんわよ?」

 

「……ごもっとも」

 

「それでも、お二人の間に幸せな時間があったのなら、素敵なことだと思います」

 

「まあ、亡くなってから、おふくろは親父の悪口をよく言っていたよ……フフフ」

 

「……まあ」

 

ダイヤは困ったように微笑んだ。

 

「長く一緒に暮らしていれば、不満の一つや二つはあるのでしょうね」

 

「一つや二つじゃなかったけどな」

 

「ふふっ……」

 

「今と違って、シングルマザーやシングルファザーに対する世間の目も厳しかった。母方も父方も、親戚がなんとか支えてくれたが……政府にも、もっとできることがあるんじゃないかと思ってね」

 

「……そうですわね。ご親戚の方々が支えてくださったのは、ありがたいことですけれど……」

 

ダイヤは少し考えてから続けた。

 

「誰もが、ご親戚を頼れるわけではありませんものね」

 

「そうなんだよ」

 

「家族だけに負担を任せるのではなく、社会全体で支える仕組みも必要なのでしょう」

 

「そういうことさ」

 

俺は味噌汁を一口飲んだ。

 

「知り合いが結婚して、子供が生まれてね。子供にとってのおじいちゃん、おばあちゃんが面倒を見てくれるからありがたいと言っていたんだ」

 

「ええ。祖父母の方々のお力添えは、心強いでしょうね」

 

「家父長制にしろ、家母長制にしろ、子供を産み育てるという営みは、何も革新的なことじゃない。本来、昔から続いてきた保守的な営みでもあるんだ……」

 

「……なるほど」

 

ダイヤは箸を置き、俺の顔を見つめた。

 

「先生は、そうした社会の仕組みにも関心をお持ちだったのですね」

 

「ああ。まあ、昔からいろいろ考えていたんだ」

 

「ですが、先生」

 

「ん?」

 

「わたくしは、昔から続いてきたものを大切にしたいと思っています。けれど、昔と同じ形でなければならないとも思いませんわ」

 

「……ほう?」

 

「家族の形が違っても、子供たちが安心して暮らせること。それが大切なのではありませんか?」

 

俺は思わず微笑んだ。

 

「……いいことを言うじゃないか、ダイヤ」

 

「ふふっ。これでも黒澤家の長女ですもの」

 

「ははは!」

 

俺たちは笑い合い、再び食事を楽しんだ。

 

「「こうやって、一緒に飯を食べていると、いい意味で昔を思い出すよ……」

 

「……そうでしたのね。先生にとって、懐かしいひとときなのですわね」

 

「ああ。嫌なことばかりじゃなかったからな」

 

ダイヤは優しく微笑んだ。

 

「でしたら、今日のお食事も、いつか懐かしく思い出していただけたら嬉しいですわ」

 

「……もちろんさ」

 

俺は笑って、ダイヤを見つめた。

 

「黒澤ダイヤちゃん。君はアイドルも向いているけど、政治家にも向いているよ。アイドルと政治家は、案外似ているところがあるんだ……」

 

「せ、政治家ですか? わたくしが?」

 

「人前に立って、自分の言葉で人の心を動かす。そして、応援してくれる人たちの期待に応えようとする。そういうところさ」

 

「……なるほど。ですが、政治家となりますと、歌や踊りだけでは済みませんわね」

 

「もちろん。人の暮らしや将来に責任を持つ仕事だからな」

 

「でしたら、なおさら簡単に『向いている』とは言えませんわ」

 

「ははは! そこまで真面目に考えるところも、君らしいよ」

 

「もう、先生ったら……」

 

俺の中も、彼女の中も魚が泳いでいた。

 

「さて、次はあそこへ行こうか」

 

俺は港の向こうにそびえる巨大な建造物を指さした。

 

「びゅうお、ですわね」

 

「ああ。あそこから沼津の景色を眺めてみたい」

 

「ふふっ。先生に、わたくしたちの街をもっと好きになっていただけたら嬉しいですわ」

 

俺たちは並んで、巨大な水門へと歩き出した。

 

「それで学院を辞めたあとに、なにか考えているのですか?」

 

「ああ、あの豪邸の荷物を片付けて、一旦東京にもどって、元μ'sと会おうかな……」

 

「やらしい事を考えてませんよね……」

 

「当たり前田のクラッカー」

 

「はぁ?」

 

「何でもない、それから関西に戻ろうと思う、無論兄弟姉妹には会わないと思うが……それから旅かな……無論少子化の勉強を兼ねつつな……本を読みながら、勉強するんだ」

何でもない。それから関西に戻ろうと思う。無論、兄弟姉妹には会わないと思うが……」

「……そうですのね」

「それから旅かな。無論、少子化の勉強も兼ねてな。本を読みながら、いろんな土地を見て回るつもりだ」

「……少子化、ですか?」

「ああ」

「先生は、先ほどもご家族や社会のお話をされていましたけれど……随分と関心をお持ちなのですね」

「まあな。人類がこれからどうなるのか、気になるんだよ」

「人類……ずいぶん壮大なお話ですわね」

「ははは。そう聞こえるだろうな」

ダイヤは少し考え込んだ。

「ですが、先生。少子化に関連する本を読むだけでなく、実際にさまざまな方のお話を聞くことも大切ではありませんか?」

「……ほう?」

「子育てをされている方、結婚を望んでいる方、そうではない方……それぞれに事情や考え方があるはずですもの」

「……確かにな」

「先生が先ほどおっしゃった、相互理解というものにも通じるのではありませんか?」

俺は思わず笑った。

「一本取られたな、ダイヤ」

 

「おおう、これは確かにデカい水門だな……」

「おおう、これは確かにデカい水門だな……」

 

俺は目の前にそびえる巨大な建造物を見上げた。

 

「でしょう? こちらが沼津港大型展望水門『びゅうお』ですわ」

 

「まるで要塞だな……」

 

「ふふっ。実際、沼津港を守るために造られた施設ですもの。2004年に完成した、日本最大級の水門の一つですわ」

 

「ほう……」

 

「津波を防ぐ扉の幅は約40メートル、高さは9.3メートル、重さは406トンもあるのです」

 

「406トン!? そりゃすごいな!」

 

「地震計と連動して、津波に備えて自動的に閉鎖する仕組みになっていますのよ」

 

「なるほど……ただの観光名所じゃないんだな」

 

「ええ。沼津の人々の暮らしを守っている、大切な施設ですわ」

 

「そうだ……これを超える建物、施設……いや、沼津を超える島を作ろう!」

 

俺は駿河湾を眺めながら、思わず声を上げた。

 

「あら、先生なら本気で作りそうですね……♡」

 

ダイヤはくすりと笑った。

 

「ははは! だったら、君たち九人が遊びに来られる島にしようかな」

 

「まあ……それは楽しみですわね」

 

「約束するよ。いつか、必ず招待する」

 

「ふふっ。では、その日を楽しみにしておりますわ」

 

ダイヤはそう言って、俺の腕にそっと寄り添った。

 

眼下には、沼津の街と青い海が広がっていた。

 

……この時、俺の頭の中には、まだ存在しない島の姿が浮かんでいた。

 

俺たちはエレベーターに乗り、地上約30メートルの展望回廊へと上がった。

 

窓の向こうには、駿河湾が広がっていた。

 

遠くには富士山。眼下には沼津港、そして海岸線に沿って続く千本松原。

 

「……美しい景色だ」

 

俺は思わずつぶやいた。

 

「ええ。ここからは駿河湾だけでなく、富士山や愛鷹山、沼津アルプスまで見渡せますの。ぐるりと360度、沼津の景色を楽しめるのですわ」

 

「……素晴らしいな」

 

「この港には、毎日たくさんの船が行き交います。漁師の方々、お店で働く方々、そしてここで暮らす人々……」

 

ダイヤは窓の向こうを見つめた。

 

「皆さん、それぞれの人生を歩んでいらっしゃるのですわね」

 

「ああ……」

 

「わたくしたちも、そうなのでしょうね」

 

「……ダイヤ?」

 

「先生が教師をお辞めになることを、わたくしは寂しく思っています。ですが、先生には先生の人生がございます」

 

「……」

 

「今日、先生のお話をたくさん伺いました。ご家族のこと、昔のこと、これからのこと……」

 

ダイヤは俺に向き直った。

 

「まだ知らないことも、きっとたくさんあるのでしょう」

 

「そうだな……俺も君のことを、まだ全部知っているわけじゃない」

 

「ええ。ですから……」

 

彼女は一歩、俺に近づいた。

 

「もう議論の必要はありませんわね……」

 

「……ダイヤ」

 

「わたくしは、先生のことをもっと知りたい。それだけですわ」

 

「……俺もだよ」

 

ダイヤはそっと目を閉じた。

 

俺は彼女の肩に手を添え、ゆっくりと顔を近づけた。

 

チュッ♡

 

唇が重なった。

 

ほんの短いキスだった。

 

離れると、ダイヤは頬を赤く染めながら、幸せそうに微笑んでいた。

 

「……先生」

 

「ん?」

 

「今日は、本当にありがとうございました」

 

「こちらこそ。楽しかったよ、ダイヤ」

 

俺たちは再び窓の向こうを眺めた。

 

青い空、青い海。

 

……ああ、そういえば。

 

「ダイヤ」

 

「はい?」

 

「μ'sやAqoursのみんなに似合う、ガンダムシリーズのコスプレって何だろうな?」

 

「…………はい?」

 

「いや、ふと思ってね。ダイヤならハマーン・カーンとか似合いそうだし、果南はノーベルガンダム……いや、あれはモビルファイターか。鞠莉はクワトロ大尉のサングラスなんてどうだろう」

 

「せ、先生!? どうして突然ガンダムのお話になるのですか!?」

 

「千歌はガンダムの主人公っぽいし、曜はパイロットスーツが似合いそうだな……」

 

「もう! せっかくいい雰囲気でしたのに!」

 

「はははは!」

 

「まったく……先生という方は……」

 

ダイヤは呆れたようにため息をついた。

 

けれど、その口元には笑みが浮かんでいた。

 

「……それで、わたくしは本当に、そのハマーンという方が似合うのですか?」

 

「ああ。ものすごく似合うと思うよ」

 

「……どのような女性なのです?」

 

「それを説明すると、ちょっと長くなるんだが……」

 

「……では、帰り道に聞かせてくださいませ」

 

「喜んで!」

 

こうして、黒澤ダイヤとのデートは幕を閉じた。

 

……と思っていたのか?読者の諸君……!

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