TSしたボクの事務的ご奉仕が魔王軍で評価されすぎている 作:ぷに凝
魔王様が帰投なさってしばらくの間は、平和な時間が流れた。
初日こそ酷い目に遭わされて、個室の中で一晩中蹂躙されてしまったし。なんなら起きてからも“可愛いから”という理由で追い討ちされてしまったけど。
そこから解放されてからは、真っ当な書類仕事に時間を割けた。
ペンを走らせている最中に精液でインクが滲むことも、舌先でペニスを刺激しながら押印を押すこともなかった。
素晴らしき日々だ。
「……?」
あれ? なにか。
股の間に違和感が……。
──ずちゅんッ。
「お゛っ……!?」
ガクガクガクッッ
ガタンッ
腰が跳ね上がり、座っていた椅子が音を立てて倒れた。
衝撃が机を揺らしてペンが地面に落ちる。
体が地面に投げ出され、飛んだインクの飛沫が書類を汚すが、そんなことを気にしている余裕はなかった。
床の上で体を無様に痙攣させながら、頭の中が混乱で埋め尽くされた。
一体、何が……。
ずちゅっ、どちゅっ、ばちゅっ、ずちゅんっ。
「おっ、おぉ゛っ!? なに、ご、れぇ……っ!?」
下腹部が異様な快楽に支配され、体が海老反りにのけ反って腰がガクガクと震える。
下着にシミを作りながら、ボクはあっけなく絶頂していた。
「なん、でっ……」
ボクは今、部屋に一人だ。周囲に他に誰もいない。
服も脱いでいないし、そもそも今の姿勢はそうなるように出来ていない。
だけど、間違いない確信として言えることが一つあった。
ボクは今、多分。
「挿れられ、てっ……!?」
ペニスを挿入されている。
服も脱いでない、一人きりの部屋で。
犯されている。
どちゅんっ、ぱちゅんっ、ずぷんっ。
音は聞こえないし、姿も見えない。
だけどこの感触は、確実に犯されてる。
まるで、オナホみたいに乱雑な……。
「……オナホ」
そう、そうだ。
確か前世の……日本のエロ漫画のファンタジーアイテムの一つとして“魔法のオナホ ”というものがあった。
オナホの内部構造が元になった女性と共有されていて、オナホを使われるとその感覚がダイレクトに伝わるという。
アホみたいな設定考える人もいるんだな、としか前世で考えてなかったソレが。
「……使われて、るぅッ!?」
ビクンッ!!
お腹の奥深くまで挿入された感触と共に、体が跳ねて視界がグルンとホワイトアウトする。
キー……ンという耳鳴りと共に、快楽のあまり意識が飛びかけたことを理解した。
ダメだ。今気絶したりしたらダメだ。
もし本当に魔法のオナホがあるんだとして、それを使われているのだと仮定して。
このペニスの持ち主は、今のボクの状況を知らない。
気絶しても、やめてくれたりはしないんだ。
元の持ち主を探して、やめさせるしか。
「方法は……ない……!」
ボクはプルプルと内股になりながら、机に手をかけてゆっくりと立ち上がった。
その間も、見えないペニスは無遠慮にボクの子宮を突き続けている。少しでも気を抜けば足から崩れ落ちてしまいそうになる。
なるほど。
これは、凶悪だ。
こちらからは向こうにやめさせる手段がない状況で、一方的に犯される感覚だけを押し付けられる。
ボクはオナホの所有者を見つけないと対抗手段がないのに、向こうはいつでもボクをおもちゃみたいに扱うことができる。
とんでもない凶器だ。絶対に回収しなくては。
「ふっ、うぅっ……」
部屋の外に出て、壁に寄りかかりながら生まれたての子鹿のようになりながら歩く。
犯人が誰か……アタリはついている。
仮にその人が犯人じゃなかったとしても、きっと何らかの形で関与はしているはずだ。
魔法のオナホなんてマジックアイテムを作れる人は、“彼女”以外存在しないのだから。
それにしても。
「この、ピストン……なんだか、違和感が」
最初は不意打ちを喰らったせいで、気付かなかったけど。
今、ボクの中を犯しているピストンの動きは、どこか機械的なことに気づいた。
当たり前だが、セックスの際は男性も快感を感じるし人によって動き方も違う。
早くなったり、遅くなったり、奥に押しつけたまましばらく止まったり……とにかく一定のスピードということはない。
だけどこのピストンは、あまりに規則的だ。
……今までの経験からこの違和感に気づいたというのは、少し、というか大分不服ではあるけど。
もしかしたら、このペニスの持ち主は人間じゃ……。
グチュっ。
「ひゃっ、ぁんっ!?」
そんな風に、規則的な動きだと油断していたからだろうか。
ボクは突然膣内を掻き分けるようにして訪れた甘い感触に、反射的に声を出してしまった。
慌てて口を押さえる。
「こ、れ……指、入れられ……!? んぅっ!」
ついさっきまでとは打って変わって。
明らかに、誰かの細い指の感触が膣内で暴れていた。
ペニス以外でも、感覚は共有されるのか。
「ふーッ……ふーッ……」
口を抑え、声が漏れ出ないように細心の注意を払いながら廊下を進む。
いつもは何の気なしに歩いているただの廊下が、今は途方もなく長い。
一歩一歩進むごとに、甘い疼きが電撃のように体を駆け巡っていた。
こんな状態じゃ、僅かな刺激ですら致命傷に……。
「お。メルアンか」
そして、悪い予感は現実となり。
廊下の曲がり角から一人の見知った影が姿を現した。
「……ブルタン、様」
「? どうした。そんな死にかけのゴブリンみてぇな悲壮な面は」
「いえ……」
最悪だ。
よりにもよって、ブルタン様に出会ってしまった。
ブルタン様は鼻がいい。
それも、女性の匂いの変化には敏感だ。
「……ん? この甘い匂いは……」
今すぐ、この場を離れないと。
「ブルタン様。申し訳ありませんが、急いでおりますので……」
「待て、メルアン」
顔を俯かせ、なんとか足早にその場を立ち去ろうとしたボクの手が。
ブルタン様の太い腕に掴まれた。
「!!」
たったそれだけのことで、声を漏らしそうになってしまう。
「お前から、熟れた果実みたいに甘い匂いがする」
すんすんと鼻を鳴らすブルタン様の息遣いが、うなじをくすぐる。
「これはな、発情期のメスオークとおんなじ匂いだ」
いつの間にか。
ボクの心臓は、ドクドクと早鐘を打っていた。
今すぐこの腕を振り解いて離れないといけないのに、それが出来ない。抵抗する素振りを見せれば返って怪しまれてしまう。
今の体の状態がバレたら、絶対離してもらえない。
ただでさえ、少し触られただけで体が反応してしまいそうなくらい敏感なのに。
これに加えてブルタン様の相手までしたら、絶対おかしくなってしまう。
「お前……興奮してるのか?」
グイッと腕を引っ張られて、ボクはブルタン様の腕の中に収まってしまった。
「あ、はぁっ、んっ……!」
その刺激に耐えきれず。
腹から押し出されるように、抑えていた声が漏れ出てしまった。
しまった、と思うと同時にブルタン様の目が血走っていく。
今の声は、どう聞いてもボクが感じていることを裏付ける証拠となってしまった。
「そんなに俺様に、犯してほしいのか」
ゴツゴツして、大きいブルタン様の手が。
ボクの下半身へと伸びていく。
だめ、だめだ。
絶対、触られちゃだめなのに。
そんなことされたら、壊れちゃうのに。
これ、もう。
死──
「あらメルちゃんじゃない♡ こんなところにいたのね?」
するり、と体がブルタン様の腕の間を抜けた。
「……リリィ様?」
「探したのよ? 早くシヴァちゃんのところに行きましょう?」
気づけばボクは。
サキュバス軍のリリィ様に腕を組まれ、ブルタン様から引き剥がされていました。
困惑しながら彼女の顔を見ると、彼女がアイコンタクトで何かを伝えてきていました。
意味は全く伝わりませんでしたが、多分“ここは話を合わせて”みたいなことを言いたそうな気配を感じたので従います。
「は? なっ……おい待てリリィ!」
「ほら早く♡」
背後で叫ぶブルタン様の声を置き去りに。
ボクとリリィ様は廊下をひた走った。
「ふぅ〜……危なかったわねぇ、メルちゃん」
「リリィ様……ありがとうございます」
ブルタン様のお姿が見えなくなった所で、ボクたちは足を止めた。
リリィ様は「全然♡」と言って魅力的に笑った。
「メルちゃんは数少ない魔王軍のお友達だもの。困ってたら助けてあげるのは当然よ♡」
「リリィ様……」
あぁ。
彼女はなんと素晴らしい女性なのだろう。
格好はやばいけど、それにさえ目を瞑れば本当に理想的な女性だ。格好はやばいけど。
「メルちゃん、こっちこっち。シヴァ団長のところに連れて行ってあげる」
「あ、助かります」
リリィ様に手招きされるままに着いていく。
彼女に案内してもらえるなら、楽に目的地へと辿り着けそうだ。
折よくお腹の奥の感触も消えている。今のうちだ。
「それにしても、大変だったわねぇメルちゃん? 歩くのも辛かったんじゃない?」
「えぇ、本当に死ぬかと思いました……」
「それでも自分で動こうとするなんて、メルちゃんは偉くて立派ねぇ♡」
「いえ、そんなことは……」
前を歩くリリィ様に苦笑して答えながら。
ふと、とある疑問が頭に浮かんだ。
「リリィ様……もしかしてあなたは、ボクに何が起きているか」
と、続けようとして。
その先は言葉にならなかった。
「──」
口がなにか、粘膜質の黒いモノで覆われて声が塞がれる。
身体中に触手のようなものがまとわりついて、背後に向かって引きずられる。
それは突然のことで、防御どころか反応することもままならない一瞬のこと。
その一瞬の間、こちらに振り返ったリリィ様の表情と言葉だけが記憶に残った。
「だからぁ、メルちゃんはここでおしまい。じゃあね?」
体が後ろに向かって、猛烈に引きずられてていく。
「薄汚い泥棒猫さん」
意識が闇に囚われて。
消えた。