TSしたボクの事務的ご奉仕が魔王軍で評価されすぎている 作:ぷに凝
サキュバス軍は魔王軍きっての出世頭だ、と皮肉混じりに言う者は多い。
それら全てが美しく産まれることができなかった無価値な者たちの妬み、嫉み、卑屈の声で聞く価値がない。
「美しくもない女に、何の価値があるのかしら?」
リリィ・ヴァレンタインにとって、容貌とは生きる者にとっての価値の全てだ。
美しくあれば、どのように内面が醜くとも許されて、愛される。
逆に醜ければ、聖人君子であろうともその内面を評価されることすらない。
それが世の理というもの。
リリィのみならず、多くの者にとって醜悪な見目の者は視界に入れたくもないゴミ同然だ。
故に、サキュバス軍が魔王軍の中で最も優れていることなど、皮肉でもなんでもなく単なる事実だ。
リリィ含めて、彼女たちは魔族の中でも最も美しい女のみで構成されているのだから。
唯一の不満は、醜く汚い男たちの夜の相手を務めなければいけないことだろうか。
サキュバスの本分ではあるが、この美しい身体を下らない男なんかのために分け与えなければいけないのは気が滅入る。
「魔王様くらいの格があれば、考えてもいいけどねぇ♡」
魔王エンデニルト。
普段はローブで素顔を隠しているが、ある時リリィは部下を動かして魔王の弱みを握ろうとした際、彼の素顔を写した写真を入手することができた。
美しかった。
女性としての美を体現した存在は言うまでもなくこのリリィ・ヴァレンタインだが、こと男性として……否、もはや生物としての美の極地と言っていいほどの、
この世で最も美しいのがリリィなら、その次を名乗らせてあげてもいい。
もし彼が懇願するなら、リリィは彼が自身の伴侶となることを許すだろう。なにせリリィが一瞬とはいえ見惚れるほどの美しさを、その男は持っていたのだから。
そうと決まれば行動は早く、手始めにリリィは魔王の側近の一人であるオージェスから籠絡してパイプを得ようと動き出した。
しかしオージェスも、その他の軍団長たちも、魔王に対して突然態度が変わったリリィを訝しげにあしらうだけで全く取り合わない。
美しくもない有象無象の分際で、傲慢なことだと呆れてしまう。
醜い者は心まで醜いと言うのは本当らしい。きっとリリィに嫉妬して、話すだけで自尊心がへし折れてしまうのだろう。可哀想に。
仕方ないので、面倒だが本人に直接取り合おうか……と考えていた矢先。
魔王がただの雑務係の女を自室に招いた、という信じられない報が届いた。
その女は魔王軍に入隊したというのに、サキュバス軍にも入らず書類整理や掃除といった雑務ばかりやっていた女だ。
魔王軍では女は珍しいので認知はしていたが、その実態を知ってすぐに興味を失った相手。
リリィに媚びへつらうなら、奴隷にしてあげてもいい。立ち向かうなら羽虫として潰してあげる。愚かにも並び立とうとするなら全身を醜い肉の塊にして原型も残さない。
その女はいずれの存在でもなかったので、視界に入れる価値すらないと判断しただけだ。
それなのに。
その女は、魔王の寵愛を受けるに飽き足らず、他の軍団長とも深い関係を持っていると噂されている。
穢らわしい。汚らしい。愚かしい。驕っている。色情魔め。醜い売女が。
こんな女に騙されるほど魔王の目は節穴だったのかと、心底失望したものだ。
けれど、彼は美しい。どんな欠点があろうと、その一点だけでリリィの寵愛を受けるに値する。
全てを許そう。その美しさに免じて。
だが、あの女は美しくない。
貧相な身体。卑しい身分。誰彼構わず身体を許す頭の軽さ。
どれを取っても、彼に相応しくない。
故にリリィは決意した。
あの女を、メルアンを。
必ずや地獄に叩き落とすと。
*
「〜♪」
リリィは上機嫌だった。
サキュバス軍軍団長、シヴァの実験室からくすねた……否、この世の全ては美しきリリィの所有物なので、シヴァに貸し出していた物品。
“まじっくてんが”とかいう魔道具の性能は想像以上だった。
特製の媚薬を塗り、腰振り人形に当てがうだけであのお澄まし顔のメルアンが涙目になってまともに歩けなくなっていたのだから。
軍団長とは名ばかりの。部屋にこもって出てこない陰気な女だと思っていたが、少しは役立つものを作れる知恵があるようだ。
「それにしても……」
あのメルアンの顔。
「ふふっ……♡」
思い出すだけで笑いがこみ上げてくる。
全くもって無様。あの売女に相応しい醜態と言える。
本当ならその姿を直接魔王の目に晒してやりたかったが、その前にブルタン軍団長と出くわしてしまったので計画を変更。
あの醜い豚男は、時として体臭だけで相手の不調を見破ることがある。
メルアンを抱きすくめたのも、何か異常が起きていることに気づきかけていたからのようだった。
醜い豚のくせに、変な所で勘がいい。豚らしいとも言えるが。
仕方なく、メルアンの痴態を魔王に見せて失望させる前に奴を“終着点”送りにした。
どこかスッキリしない決着だが、これでもうメルアンはおしまいだ。もう2度とリリィの前に姿を見せることはないだろう。
これで、魔王の心を乱す羽虫は消えた。自然と彼の視線は、世界で最も美しいリリィに向けられることになる。
「あぁ、どうしようかしら♡」
あの美しい顔で、愛を囁かれて……リリィを世界一の美姫として扱うのだ。
他の雑魚雄とブス女どもは、それをこの世の至上の愛と崇め、絵画にも残されてしまったりして。
ああ、困った。リリィは芸術として後世に残ってしまう。この美しさが未来永劫保存されてしまう。
“伝説の美男美女の彫像”とか言われてしまうのだわ。
「美しすぎるのって……罪ね」
リリィは、なんと悪い女なのだろうか。
吐くため息すら美しいなんて。
「さて、早速私の魔王様の元へ行かなくては……」
「おい、リリィ」
一歩を踏み出した瞬間。
リリィの背後から豚の鳴き真似に似た……事実、豚の鳴き真似そのものの声が聞こえて舌打ちしそうになった。
「……何でしょうかぁ♡ ブルタン様♡」
オーク軍軍団長、ブルタン。
汚物揃いの軍団長どもの中でも、最も醜悪な男。
こんな汚物が本来、リリィという至高の美に話しかけることさえ許されないのだが。
一応、立場上は“上司”に当たるため、丁寧に対応しなければならない。
何の用かは知らないが、もうすぐリリィは魔王の寵愛を受けて権力の頂点に座るのだ。
こんな家畜のために腹を立てる必要は……。
「リリィ、お前今から俺の部屋に来て、奉仕しろ」
「……」
今、なんと言われた?
その汚物同然の臭い口から、なんという言葉をリリィに浴びせかけた?
「……申し訳ありませんが、ブルタン様。今は少々折りが悪く……」
反射的に目の前の豚を口汚く罵ってしまいそうになったが、なんとか堪えて建前を述べる。
魔王軍の女は、兵や将への性奉仕をするのが一番の仕事。
だが、決して拒否権がないわけではない。正当な理由があり、上官からの許しがあれば本人の意思が尊重される。
それこそ、メルアンのような奴隷同然の下っ端の身分でもない限り。
ブルタンはあくまで、オーク軍の軍団長だ。
サキュバス軍の所属であるリリィに奉仕を強制することはできない。
残念だったな、ゴミ豚め──。
「お前の上司の命令だ。シヴァがやらせろっつったんだ」
「……はい?」
シヴァ、様が?
この、リリィに?
……ブルタン様に奉仕しろ、と?
「本当はメルアンにしかできない奉仕をしてもらう予定だったのだが……代わりに、お前にやってもらうことにした」
冗談じゃない。
「リリィ。今からお前の体にあるありとあらゆる穴を──」
ふざけるな。
そんな馬鹿な話が通るわけがあるか。
「“72時間”。不眠不休で犯す」
「……は?」
……このブタ野郎は何を言っている?
72、時間?
丸3日間??
あの地獄のように過酷な、オークの交尾を???
しょ、正気じゃない。
「そんなの……耐えられる女がこの世にいるわけ……」
「はっ。サキュバスのくせに情けないな。メルアンはこともなげにやってのけたぞ」
「メ、メルアンが……!?」
「まぁ俺も驚いたがな。ローテーションも組まず一人で俺の相手を三日三晩続ける女など前代未聞だ」
ブルタンがそう言って自嘲げに笑う。
当然だ。
オークの……それも魔王軍軍団長という体力バカの男の夜伽を、たった一人でこなしたのだとしたら。
それは魔族を超えている。怪物の類だ。
「三日目の夜に全身体液まみれのまま言い放ったあいつの言葉が、今でも忘れられん」
ブルタン様はまるで懐かしむかのように、威圧感ある双眸を細めて言った。
「“流石にお腹空きましたね”。ってな」
背筋がぞわりと震えた。
「……イカれてるわ」
そして理解する。
こんな役目、あの女以外にとっては拷問でしかない。
ブルタンがメルアンばかり抱いていたのは、それ以外の女には耐えられないから。
それなら、なぜメルアンがやる予定だった仕事が、リリィに振られているのか。
まさか。
「一度でも気絶すれば最初からやり直しだ。拒否権はない」
全部、バレて……?
ズルッ、とブルタンがズボンを下ろし。ソレが白日の元に晒される。
「さぁ、楽しませてもらおう」
目を背けたくなるほどグロテスクで、醜悪で、汚らしい。
黒ずみ異臭を放つペニスが、リリィに向けられ。
抑えていた感情が、決壊した。
「そんなクッサいチンポをッ! 美しい私に向けるなァッ!!」