キスの夜から、数日が経っていた。
関係は変わってしまったのに、日常は意外なほど普通に続いていた。朝はいつも通り悠貴を起こし、学校では適度な距離を保ち、夜は両親がいる前で「仲の良い姉弟」を演じていた。ただ、二人きりになると、視線の熱が明らかに違う。触れ方の距離が、少しずつ短くなっているのを、私は自覚していた。
その日は放課後、私だけが早めに帰宅した。陸上部の練習が軽めだったからだ。洗濯物を取り込もうと洗面所に入り、干してあった衣類を一つずつ外していく。悠貴の制服のワイシャツ、自分のブラウス、それから下着類。
指が止まった。
自分の下着が、一枚足りない。
確か昨日、洗濯カゴに入れて洗ったはずだ。白いレースのついた、お気に入りの一枚。干した記憶もある。なのに、ない。
ハンガーを一枚ずつ確認する。タオルの陰、他の衣類に紛れていないか、洗濯カゴの底まで覗き込む。それでも、見当たらない。
「……おかしい」
声が小さく裏返った。落としたのか。風で飛んだのか。それとも——。
頭に、悠貴の顔が浮かんだ。
私の名前を呼びながら自分を慰めていた悠貴。キスの後、私の体を欲しがるような目をしていた悠貴。もしかして、と思った瞬間、胸の奥がざわりと熱くなった。怒りより先に、別の感情が込み上げてくる。
「……まさか」
否定するように呟いてみるが、可能性は低くなかった。私はもう一度、干してあった場所を確認し、それでも見つからなかったものを、ゆっくりと受け止めた。
悠貴が、私の下着を持っていった。
その想像だけで、耳が熱くなる。下腹部が、くすぐったように疼いた。
悠貴が帰ってきたのは、夕方近くだった。
「ただいまー」
玄関の声を聞いた瞬間、私はリビングで彼を待ち、できるだけ落ち着いた声で言った。
「悠貴。ちょっと部屋、いい?」
悠貴が首を傾げながらついてくる。自分の部屋に入り、ドアを閉めてから、私は彼を見た。わざとらしく冷静を装いながら、内心はすでにざわついていた。
「私の下着、知らない?」
悠貴の表情が、明らかに強ばった。目が泳ぎ、唇がわずかに開く。喉が鳴る音が、静かな部屋に小さく響いた。
「……え?」
「洗濯に出しておいたのに、一枚無いの。白いレースの。昨日干したはずなのに」
沈黙が落ちる。悠貴は視線を床に落とし、しばらくして小さく息を吐いた。肩がすくんでいる。
「……ごめん」
「持っていったのね」
「うん」
素直に認めた。予想以上に早口で、私は逆に言葉を失った。悠貴は顔を上げないまま、続ける。声が少し掠れていた。
「もう、我慢できなくて。お姉ちゃんの匂いが……したくて。キスしてから、頭がおかしくなりそうで。夜になると、どうしても思い出しちゃって……」
その言葉が、胸に深く沈んだ。怒らなければいけないのに、声が出ない。悠貴の耳が赤くなっているのが見えて、私の中でも熱が広がっていく。彼が私の下着を握りしめ、顔を埋め、私の名前を呼びながら自分を慰めていた場面が、鮮やかに想像できた。
「……馬鹿ね」
「ごめん。返す。すぐ返すから。もうしない」
「もう、そんなことしないで」
私はそう言って、一度息を整えた。悠貴が真摯に謝っている横顔を見ていると、自分でも驚くほど冷静な声が出た。なのに、心臓は激しく鳴っている。
「我慢できないなら……言いなさい」
悠貴が顔を上げる。驚いたように目を見開いている。
「え?」
「私が、…してあげるから」
自分で言って、自分で驚いた。こんな提案をするなんて。でも、口にした瞬間、どこかで納得していた。悠貴が私を想って自分を慰めているなら、直接触れてあげた方が——いい。そう思ってしまった自分が、はっきりとそこにいた。サバサバしたつもりが、中身はすでに欲しがっていた。
悠貴の目が大きく見開かれる。次の瞬間、その目が熱を帯びた。喉が再び鳴る。
「……本当に?」
「嘘言わないわよ。ただし、条件がある」
「何?」
「まずお風呂入りなさい。綺麗にしてから。で、部屋で待ってて。私が行くから」
悠貴は一瞬だけ戸惑った顔をしたあと、こくりと頷いた。嬉しさを隠しきれない目をしている。唇が小さく緩んで、子供みたいに安堵した表情になるのが、妙に愛おしかった。私はわざとらしく溜息をつき、彼の額を軽く小突いた。
「縋りつかない。すぐ行くから」
「うん……ありがとう、お姉ちゃん」
その声が、妙に甘くて、私の腹の奥がきゅっと鳴った。
お風呂に入りながら、私は自分の提案を反芻していた。
湯船に浸かり、体を洗っている手が、いつもより丁寧になる。悠貴のものを、直接触る。熱くて、硬くて、私の手の中で脈打つものを。想像しただけで、秘部が熱を持ち始めた。自分でも呆れる。清楚に振る舞っているつもりが、中身はこんなにも貪欲だった。指先で自分の胸を洗うとき、すでに乳首が硬くなっているのに気づいて、小さく息を詰めた。
体を拭き、薄い部屋着に着替える。鏡に映った自分の顔は、少し紅潮していた。深呼吸を一度して、廊下に出る。悠貴の部屋の前で立ち止まり、小さくノックした。心臓の音が、ドア越しに聞こえてしまいそうだった。
「……入るわよ」
「うん」
中は薄暗く、電気は間接照明だけがついていた。悠貴はベッドの端に座り、まだ髪が少し湿ったまま、私を待っていた。私を見る目が、すでに熱い。ズボンの上からでも、膨らんでいるのがわかる。
「……来た」
「ええ」
ドアを閉めて、近づく。悠貴が立ち上がりかけたのを、私は手で制した。
「座ったままでいい。動かないで」
「……わかった」
私が膝をつくと、悠貴の呼吸が明らかに変わった。近い。石鹸の匂いと、雄の熱が混じった匂いがする。私はためらいながら、その膨らみに指先を触れた。
「ん……」
悠貴が小さく喘ぐ。熱が、布越しに伝わってくる。硬く張り詰めた感触。私はジッパーをゆっくりと下ろし、下着の中に手を滑らせた。生の感触が、掌に広がる。熱くて、硬くて、すでに先端が湿っていた。血管の脈打ちが、指に直接伝わる。
「……大きい」
思わず本音が漏れる。悠貴が羞恥に耳を赤くしながら、私を見下ろしていた。目が潤んでいる。
「お姉ちゃんの手……気持ちいい。熱い……」
「まだ、何もしてないのに」
私はゆっくりと、彼のものを露出させた。初めて見る、悠貴の性器。青白く浮いた血管と、先走りで光る先端。少し上を向いて、私の方を主張しているみたいだった。匂いが、鼻先をくすぐる。甘くて、少し塩気のある、雄の匂い。私はごくりと喉を鳴らし、指を巻き付けた。
熱い。脈打っている。思っていたより重みがある。
上下に動かしてみる。悠貴の腰が、びくんと跳ねた。
「あっ……ん、お姉ちゃん……そこ……」
「声、出しすぎない。両親に聞こえるわよ」
そう言いながらも、私の手は止まらない。ゆっくりとしたピストン。時々、先端を親指で擦る。先走りが糸を引いて、指の間に絡みつく。悠貴の表情が、だんだん崩れていく。普段の生意気な顔が、快楽に溶けていく様が、妙に愛おしかった。眉を寄せて、唇を半開きにして、私の手の動きを見つめている。
「もっと、強く……して。お願い……」
「わがまま言わないの」
それでも、言われた通りに少し力を込める。くちゅ、くちゅ、と水音が立ち始めた。先走りが増えて、手が滑る。私はもう片方の手で彼の膝を支えながら、視線を上げた。悠貴が私を見ている。目が、完全に欲望で濡れていた。
「キス……して。お姉ちゃん……」
「……はいはい」
上半身を起こし、彼の唇を塞ぐ。舌が絡み、唾液の音が混じる。その間も、手は止めない。悠貴の喘ぎが、口の中に直接流れ込んでくる。腰が、私の手に合わせて小さく突き上げてくる。熱が、どんどん強くなっていく。
「んっ……悠貴の、熱い……脈打ってる……」
「お姉ちゃんのせいだよ……こんなに……硬くなって……」
言葉を交わす余裕もなく、動きが速くなる。悠貴の腰が、私の手に合わせて突き上げてくる。もう限界が近いのがわかった。先端が膨らみ、脈打ちが激しくなる。
「出る……お姉ちゃん、出るよ……もう……」
「いいわ。出して。全部、手の中に出して」
最後に強く握りしめ、先端を集中して擦る。悠貴が大きく体を反らし、低くうめいた。熱い精液が、勢いよく私の手と洋服に飛んだ。びゅる、びゅる、と脈打つたびに、白い液体が溢れてくる。量が多い。熱い。私は最後の一滴まで、丁寧に搾り取った。指の間から精液が垂れて、床に落ちる音がした。
部屋に、甘い匂いが充満する。悠貴が肩で息をしながら、ぼんやりと私を見ていた。目がとろんとして、いつもより幼く見える。
「……お姉ちゃん。大丈夫? ……してあげてないのに」
心配そうな目。私は微笑んで、近くにあったティッシュで手を拭いた。精液のついたティッシュを、そっと握りしめる。まだ熱い。
「大丈夫。私は何もしてないもの」
嘘だった。下半身はすでにぐちゃぐちゃに濡れていて、立っているのもやっとだった。下着が肌に張り付き、歩くだけで擦れてしまう。でも、それを言う余裕はなかった。
「休んでなさい。明日は普通にね」
「……うん。ありがとう、お姉ちゃん。大好き」
私はそれだけ言って、部屋を出た。ドアを閉めた瞬間、膝ががくがくと震えた。握ったティッシュから、精液の匂いが立ち上ってくる。
自室に戻ると、すぐにドアに鍵をかけた。
壁に背中を預け、握っていたティッシュを見る。悠貴の精液が、半透明に染みている。まだ少し温かい。匂いを嗅いでしまい、頭がくらくらした。さっきまで、この精液は悠貴の中で私を想って作られていた。私の手の中で、脈打ちながら溢れ出してきたもの。そう思うと、下腹部が耐えられないほど疼いた。
ベッドに倒れ込み、部屋着を乱暴にまくり上げる。下着を脱ぎ捨てると、すでに愛液で太腿が濡れ、シーツに小さな染みができていた。秘部を指で開くと、糸を引くほどとろけている。私は精液のついたティッシュを、熱い割れ目に押し当てた。
「んっ……!」
冷たくなりかけた精液の感触と、独特の匂い。それを自分の熱で溶かすように、ゆっくりと擦る。クリトリスに押し当て、円を描く。くちゅ、という音が立つ。悠貴のものを扱っていた手が、今度は自分を慰める。精液が愛液と混ざり、ぬるぬるとした感触が指に絡みつく。
「悠貴……悠貴の……熱いの……」
声が漏れ、腰が浮く。ティッシュを指に巻き、そのまま中に沈めた。精液と愛液が混ざり、くちゅくちゅと卑猥な音を立てる。さっき悠貴が私の手の中で脈打っていた感覚を、今度は自分の内側で再現しようとする。指を二本、三本と増やし、激しく掻き回す。精液の匂いを嗅ぎながら、キスの感触も、手コキ中の悠貴の喘ぎも、全部を同時に思い出す。
「はあっ……ん、だめ……なのに……悠貴の精液……入ってる……!」
腰が勝手に動き、指を迎えに来る。クリトリスを親指で押し潰すように刺激しながら、奥を掻き回す。快感がすぐに頂点へ駆け上がった。頭の中が白く弾けそうになる。
「出る……また、悠貴の……精液で……!」
体が大きく跳ね、潮を吹きそうな勢いで絶頂する。内側が痙攣し、ティッシュを強く締め付けた。腰が止まるのを知らずに震え、長い余韻に飲み込まれる。愛液と精液が混じったものが、太ももを伝ってシーツに落ちる音がした。
しばらくして、脱力した体で天井を見つめた。手のひらに残る精液の感触と、自分の愛液の匂い。もう、後戻りはできないところまで来てしまったのだと、はっきり自覚した。
それでも——嫌じゃなかった。
私は濡れたティッシュを握ったまま、目を閉じた。 悠貴の熱が、まだ指に残っていた。