あれから、数日が経った。
放課後の校門を出ると、秋の陽射しが斜めに差し込んでいた。制服の袖を少し捲り上げながら、私は隣を歩く悠貴の横顔をそっと見た。部活で少し日焼けした肌に、髪が軽く揺れている。いつもの帰り道。なのに、足取りが以前より軽い気がした。
「お姉ちゃん、今日遅かったね」
悠貴が少し前かがみになって、私の顔を覗き込む。
「陸上部のミーティングが長引いただけよ。悠貴こそ、サッカー部は?」
「俺は早めに切り上げた。お姉ちゃんと帰りたかったから」
無邪気に言われて、私は小さく息を吐いた。以前なら軽くたしなめたところを、今日は自然と口元が緩む。
「そう。じゃあ、特別に一緒に帰ってあげようか」
「やった。お姉ちゃん優しい」
「調子に乗らないの。たまたまよ」
言いながらも、声のトーンは柔らかかった。悠貴が嬉しそうに並んで歩く姿を見ていると、胸の奥がじんわり温かくなる。
あの夜から、私は何度も同じことを考えていた。
初めて、悠貴を受け入れた夜。ゴム越しでも熱くて、硬くて、血の繋がった弟が私の中で動いているという事実が、快楽と一緒に背徳感を強く煽った。事後、悠貴が「これからも入れていい?」と聞いてきたとき、私は「考えとく」としか言えなかった。
それから数日。夜、一人で布団に入ると、体の奥が彼の形を思い出して疼いた。指で触れるたび、あの夜の感触が蘇る。悠貴の甘い声、汗ばんだ肌、中を埋め尽くされる圧迫感。清楚に見られている自分が、実の弟を欲しがっている。その矛盾に、最初は少しだけ悩んだ。
でも、悩んでも体は正直だった。
朝、顔を合わせるだけで胸がざわつく。夕食のとき、膝が触れそうになると息が浅くなる。悠貴が「お姉ちゃん」と呼ぶ声が、以前より甘く聞こえる。性欲が強い自分を、ずっと抑え込んできたつもりだった。彼氏がいた頃も、どこかで「これくらいが普通」と自分に言い聞かせていた。でも悠貴となら、我慢する理由が見つからなかった。
もう、戻れない。
だったら、楽しもう。
その結論に達したのは、一昨日の夜だった。悠貴の部屋で、また彼を手で抜いてあげたあと、私は彼の髪を撫でながら静かに思った。罪悪感は残る。でも、それ以上に、この関係が愛おしい。甘くて、熱くて、誰にも言えない秘密を二人で抱えているこの感覚が、嫌いじゃなかった。
だから今日は、少しだけ表情を緩めて歩いている。
「ねえ、悠貴」
「ん?」
「……今日、お母さん在宅でしょ」
「うん。お父さんは遅いって言ってた」
「わかってるわ。だから、今日は……静かに、ね」
私はわざとぼかして言った。悠貴が目を細めて、にやっと笑う。その笑顔が、子供っぽくて、でもどこか色気を帯びているのが、また厄介だった。
「お姉ちゃん、今日はずるい。そんな言い方したら、俺我慢できなくなる」
「自分で何とかして。私は知らないわよ」
「ひどい。お姉ちゃんのせいなのに」
「ふふ……まあ、あとで考えてあげる」
家に着くと、玄関で靴を揃える音がした。母がリビングから顔を出す。
「おかえり。今日は早いのね」
「部活、早めに終わったから」
「夕飯、六時半でいい? お肉炒めにするわ」
「はーい。助かる」
いつものやりとり。私はバッグを下ろして二階に上がり、制服を私服に着替えた。部屋のドアを閉めた瞬間、背後でノックがする。
「お姉ちゃん」
「入っていいわよ」
悠貴が入ってきて、ドアを背に閉めた。私服のまま、少し息が上がっている。目が合うと、彼はすぐに近づいてきて、私の腰に手を回した。
「今日、いい?」
低い声。甘えと熱が混じっている。
「……お母さんがいるのよ。ばれたら大変よ」
「知ってる。だから、静かに。お願い。お姉ちゃんの声、我慢できる?」
「悠貴こそ、我慢しなさい」
私ももう、拒否する気はなかった。吹っ切れてからの数日で、体は彼を受け入れる準備ができている。むしろ、待ちきれないくらいに。
「鍵、かけて」
悠貴がすぐさま鍵を回す音がした。私は彼の首に腕を回し、自分から唇を重ねた。最初は浅く、すぐに深く。舌が絡むと、悠貴が小さく喉を鳴らす。いつものキスなのに、今日は私の方が少し積極的だった。舌を深く入れて、ゆっくりと絡め取る。悠貴の息が熱く混じる。
「ん……お姉ちゃん、今日積極的……嬉しい」
「うるさいわね。……でも、嬉しいの?」
「うん。すごく」
言いながら、悠貴が私のシャツの裾に手を入れて、直接肌に触れた。温かい掌が腰を撫で、背中をゆっくりと辿る。私も彼のシャツのボタンを一つずつ外していく。鎖骨が見えると、そこに軽く唇を落とした。
「ん……くすぐったい」
「我慢して。私もされてるんだから」
悠貴が笑いながら、私のブラの上から胸を包み込む。指がカップの縁を辿り、中に滑り込んで乳首を優しく摘まむ。甘い刺激が下腹部に落ちて、私は小さく息を詰めた。
「んっ……悠貴、そこ……」
「敏感だね。お姉ちゃんのここ、好き」
ブラのホックを外されると、胸が解放される。すぐに顔を埋められ、舌で乳首を転がされる。反対の胸も手で丁寧に扱われて、私の膝ががくがくした。悠貴は片方を吸い、もう片方を指で摘まみながら、交互に責めてくる。舌の先で小さく弾かれ、強く吸われるたびに、甘い電流が腰に走った。
「あっ……んっ……悠貴……優しいのね、今日」
「お姉ちゃんが優しくしてくれるから。返しなんだよ」
「生意気……」
言いながらも、私は彼のズボンのベルトに手をかけた。外して、ジッパーを下ろす。中から熱いものが飛び出すと、すでに先走りで濡れていた。私は膝をついて、根本を優しく握る。
「先に、してあげる。今日はゆっくりでいい?」
「うん。……お願い」
舌で先端をゆっくりと舐める。円を描くように、裏側の弱いところを丁寧に。悠貴が低く喘いで、指を私の髪に絡めた。口に含み、頬を凹ませて吸う。くぽ、くぽ、と卑猥な音が部屋に響く。私はわざと音を立てて、彼の反応を楽しんだ。根本まで深く咥え込み、喉の奥で締め付けると、悠貴の腰がびくんと跳ねる。
「んっ……お姉ちゃん……今日は入れたいから……あんまりすると出ちゃうよ……」
「わかってるわ。でも、少しは我慢して。私だって、我慢してるんだから」
一度口を離し、舌で全体を舐め上げる。青筋を辿るように、ゆっくりと。悠貴の息が熱く荒くなるのを見て、私は満足そうに微笑んだ。
「お姉ちゃん、ずるい。顔、そんなにして……」
「何が?」
「エロい。……大好き」
私は彼をベッドに押し倒し、自分もその上に跨がった。残りの服を互いに脱ぎ合い、全裸になる。湯上がりではないのに、肌がほのかに赤い。悠貴の手が私の太腿を撫で、内側をゆっくりと開く。指が割れ目を割り開き、クリトリスを優しく撫でた。
「くちゅ……もうこんなに濡れてる」
「悠貴のせいよ。……触らないで、すぐイきそう」
「いいよ。イかせてあげる。そのあと、入れて」
指が一本、ゆっくりと沈む。中を優しく掻き回され、すぐに二本になる。深く、しかし丁寧に動かされる。親指でクリトリスを圧迫されながら、中を抉られると、私は枕に顔を埋めて声を殺した。
「んっ……あっ……そこ……悠貴、上手……」
「お姉ちゃんの中、熱いよ。柔らかくて……吸ってくる」
指の動きが速くなる。水音がくちゅくちゅと立つ。私は腰を彼の手に押し付けて、自分から求めた。このまま指で果ててしまいそうなところを、あえて我慢する。
「もう、いい。入れて。……お願い」
「本当に? お姉ちゃんから言うの、初めてだね」
「うるさいわよ。……優しくしてね」
悠貴が枕元からコンドームの包みを取り出す。手が一瞬だけ震えている。私が一緒に丁寧に装着してあげる。ゴムの感触が、熱い肉を覆う。
「入れて」
私は自分で彼のものを導き、ゆっくりと腰を沈めた。先端が入り口を押し開き、中に滑り込んでくる。異物感と熱。前より、体が素直に受け入れているのがわかった。根元まで埋めたとき、私は小さく息を吐いた。
「……全部、入った」
「うん。お姉ちゃんの中、すごく熱い……絡みついてくる……」
悠貴が私の腰を支えながら、上を向いて私を見る。目がとろんとしていて、愛おしさが溢れていた。私はゆっくりと腰を動かし始めた。上下に、円を描くように。中を擦られる感触が、甘い電流になって広がる。
「あっ……んっ……悠貴……角度、いい……」
「ここ? もっと深くする?」
「ええ……んあっ……ゆっくりで……」
悠貴が下から優しく突き上げてくる。水音がくちゅくちゅと立つ。母親が下にいると思うと、背徳感が快楽を倍増させた。でも、以前のような重い罪悪感は薄れていた。今は、ただこの感覚を味わいたかった。
「お姉ちゃん……好き。中、締め付けてくる……気持ちいい」
「悠貴の方が……んっ……深いわ……上手よ……」
「お姉ちゃんが感じてくれるから。もっとしたくなる」
腰の動きが少しずつ速くなる。私は彼の胸に手をついて、自分から沈み込んだ。子宮の入り口を突かれるたびに、視界が白く弾けそうになる。悠貴が上体を起こして、私の乳首を口に含んだ。吸いながら下から突き上げられ、クリトリスに圧がかかる。
「もう……いきそう……悠貴……」
「一緒に……お姉ちゃん……声、我慢して……」
そのときだった。
廊下から、足音が聞こえた。
母のスリッパの音。二階に上がってくる。
私と悠貴の動きが、同時に止まった。繋がったまま、息を殺す。心臓の音が耳の中で轟いていた。中で、悠貴のものがびくびくと脈打っている。私も内側を収縮させてしまって、悠貴が苦しそうに眉を寄せた。
「……今、着替えてるから。ちょっと待ってて」
私はできるだけ穏やかな声で答えた。声が上ずっていないことを祈る。
「そう。じゃ、降りてきたらリビングに来て。洗濯物、畳んでもらいたくて」
「わかったわ。すぐ行くから」
足音が遠ざかる。私たちはしばらく、繋がったまま動けなかった。安堵と、残った興奮が混ざって、体が小刻みに震える。
「……危なかったわね」
「うん……でも、お姉ちゃんの中、今すごく締め付けてる……出そう」
悠貴が小さく腰を動かした。その刺激に、私は思わず声を抑えきれず、彼の肩に顔を埋めた。
「んっ……だめ……今はまだ……」
「もう少しだけ。お願い。お姉ちゃんも、いきそうでしょ」
拒否できなかった。私も限界だった。静かに、しかし深く腰を重ね合う。水音を立てないように、ゆっくりと。母親が下にいる緊張が、かえって快感を鋭くした。悠貴の息が耳にかかり、私も甘い吐息を漏らしながら、頂点へ駆け上がる。
「いく……悠貴っ……中で、感じる……」
「お姉ちゃん……!」
悠貴が大きく腰を押し当て、体を硬直させた。コンドームの中で、熱いものが勢いよく脈打つのがわかる。量が多い。私も同時に激しく痙攣し、彼のものを強く締め付けた。長い絶頂の余韻の中で、私たちは汗ばんだ体を密着させたまま、激しく息をしていた。心臓の音が、互いの胸に伝わってくる。
しばらくして、悠貴がゆっくりと抜く。くちゅ、という音がして、ゴムの先端が精液で膨らんでいる。彼はそれを慎重に外し、ティッシュに包んで捨てた。
「……本当に、危なかった」
「ええ。次はもっと気をつけましょう。お母さん、鋭いんだから」
そう言いながらも、声に棘はなかった。むしろ、安堵と満足で体がだるい。悠貴が私の体をタオルで優しく拭いてくれる。太腿の内側に残った愛液まで、丁寧に。
「お姉ちゃん、今日はずっと優しかった」
「……吹っ切れたのよ。悩んでも仕方ないって決めたから」
「え?」
「もう、戻らないでしょ。だったら、楽しんだ方がいいわ。悠貴も、嫌いじゃないんでしょう?」
悠貴が目を丸くして、それから満面の笑みを浮かべた。子供みたいな、でもどこか大人びた笑顔。
「大好きだよ。お姉ちゃん。本当に」
「知ってるわ。私も……まあ、嫌いじゃない」
いつもの返事。でも今日は、言葉の奥に確かな温度があった。
私たちは急いで服を着て、部屋の痕跡を消した。シーツのしわを伸ばし、窓を少し開けて匂いを飛ばす。私がリビングに降りると、母が洗濯物のカゴを持って待っていた。
「遅くなってごめんね。着替えてたら時間がかかって」
「いいわよ。これ、畳んでおいてくれる? 私、夕飯の続きするから」
「うん。任せて」
普通の会話。普通の午後。なのに、体の芯はまだ悠貴の熱を覚えている。ソファに座って洗濯物を畳みながら、二階から聞こえてくる悠貴の気配に、私は小さく口の端を緩めた。
夕飯のときも、目が合うたびに胸がくすっと熱くなった。母が「今日はよく食べるわね」と笑っている横で、悠貴が私の膝に軽く足を触れさせてくる。拒まない。むしろ、その小さな接触を、私は受け入れていた。
夜、再び二人きりになったとき、悠貴が私の部屋にそっと入ってきた。
「お姉ちゃん」
「何?」
「これからも、こうしていい? 日常の中で、静かに」
「……ええ。ただし、ばれたら終わりよ。絶対に気をつけること」
「うん。約束する。お姉ちゃんが楽しんでくれるなら、俺は何でも我慢する」
「ふふ……欲張りね」
悠貴が私の手を握る。その手が、温かくて、少し汗ばんでいる。私は指を絡めながら、窓の外の夜空を見た。
もう、悩まない。
清楚に見られる自分も、性欲の強い自分も、どちらも私だ。そして、実の弟を愛してしまっているこの気持ちも、今は大切にしたかった。
甘くて、背徳的で、でも確かな温度を持った日常が、これから始まろうとしていた。
悠貴の親指が、私の手の甲を優しく撫でる。その感触が、さっきまで私の中を掻き回していた熱と重なって、また小さく下腹部が疼いた。
私は彼の肩に頭を預けて、静かに目を閉じた。
「おやすみ、悠貴」
「おやすみ、お姉ちゃん。大好きだよ」
「……私も、好きよ」
初めて、素直にそう返した夜だった。