個性:色欲 作:HEROはHとEROでできている
ネオンの明かり。人々の喧噪。星々を隠すほどの光を発するビル群が立ち並ぶ街。
そんなビル群の中の1つ、他よりも一際大きなビルの最上階。夜景が窓を照らす部屋の中、数人は眠れるだろうベッドの上に2人の男女がいた。
1人は10歳の少年。一切の混じりけの無い白い髪に、空のような青い瞳。美しい顔をしており、曝け出された肉体には筋肉が薄っすらと着いていた。年齢よりも少しだけ大人びているように見える彼は、背中を包み込むように柔らかいベッドの上で仰向けに寝転んでいる。
もう一人は12歳の少女。普段は二つの団子状に纏めている腰まで届く金の髪。黄色い瞳と縦長の瞳孔。陶磁のように白い肌はほんのりと赤く染まり、一糸まとわぬ肌には珠のような汗を流して大きく膨らんだ胸からくびれへ、そして下腹部を伝って"繋がる"少年の腹へと落ちていく。
そんな少女がいるのは、ベッドの上で寝ころぶ少年の腰の上。膝をベッドへと着け、胎の中に少年を受け入れながら慈しむように腰を動かしていた。
「あ、はぁ……あいと、くん、んっ……きもちいぃ?」
彼女はまるで母のような笑みを浮かべながら、少年──
そんな彼女の下にいる愛人は甘く、しかしどこか鉄の匂いを漂わせる彼女の動きに限界を感じながらも、彼女の細く柔らかい手のひらを握りながら口を開いた。
「うん、気持ちいいよ、ヒミコねえ」
彼女──
そんなヒミコの笑みに愛人の胸は高鳴り、彼女の胎に収まる自身のモノが限界を迎えそうになる。
ヒミコは胎に収まるモノの限界、或いは彼の表情から読み取ったのか、腰の動きを速め始めた。徐々に愛人の限界が近づいていく。
「ヒミコねえ、出ちゃいそう」
繋いだ手のひらをギュッと握り、限界を迎えたことをヒミコへと報告する。すると彼女は繋いでいた手を離し、上半身を倒して顔を近づけると彼の唇を上から塞いだ。
腰の動きを止めて、愛おしそうに手のひらを彼の頬へと添える。口唇を割りながら舌を入れて彼の舌を絡め取り、愛人も負けじとヒミコの背中に手を回して抱きしめ、次第にお互いがお互いを求めるように舌を絡ませ始めた。
淫猥な香り、水音。外の喧噪すら聞こえない高層階で、2人きりの幸せを分かち合う。
大きな窓から月明かりが差し込み、まるでスポットライトを当てるかのように2人を照らした。
どちらからともなく唇を離し、月明りに照らされるお互いへ見惚れたように時が止まる。
数秒、或いは数十秒。見つめ合っていた2人の中で、一番初めに口を開いたのはヒミコの方だった。
彼女は自身の下腹部へと指を触れさせ、優しく撫でながら呟く。
「あいとくん。ココにいっぱい、出してください。わたし、あなたの子供、産みたいです」
自身の胎へと入るモノを上から撫でるように。あるいは孕んだ未来を想像するように。彼女は自身の腹を見ながら幸せそうにそう言った。
"母"になることを決めた少女。愛しい"男"の子供を孕むと決めた少女の覚悟に、愛人の心は燃え上がる。しかしその前に聞かなければならないことがあった。
「……いいの? 本当に」
愛人が彼女、ヒミコと出会った時、彼女は"普通"に囚われていた。作られた笑みしか見せず、自身の衝動を押し殺す。"親"に押し付けられた"普通"によって、彼女は押しつぶされかけていた。
そんな彼女が、12歳で子供を孕むという"異常"を自ら受け入れようとしている。本当にいいのか? そう思った質問は、彼女の頬を膨らませるだけだった。
「むぅ。……もちろんいいに決まってます」
怒らせてしまった、と愛人が謝罪の言葉を口にしようとした時、彼女の頬がしぼんで笑みが浮かんだ。そして過去を思い返すように天井を見上げて話し始める。
「私の笑顔をカァイイって言ってくれた愛人君だから。私が"普通"だって言ってくれたあなただから。好きな人になるより、隣に居たいって思えたのは初めてだから」
ヒミコは胸の前で祈るように手を組み、まるでシスターのように愛人を見つめた。崇める神のように、恋焦がれるように。彼女は愛人の瞳を見つめて、"普通"のカァイイ笑顔を浮かべる。
「だから愛人君。私と子供、作ろ? 私の事、お嫁さんにして?」
彼女の想い。彼女の覚悟。全てを受け取った愛人は、丸くて柔らかい臀部を手で掴んだ。彼女の臀部が手の形に沈み込み、彼女の笑みが深くなる。そんな笑みを見ながら、愛人は彼女を下から突き上げた。
「んっ」
ヒミコの胸が愛人の動きに併せて揺れ動き、甘い嬌声が口から漏れ出る。彼女は臀部を掴む腕を優しく掴み、彼の動きに合わせるように自らも腰を動かし始めた。
愛人が突き上げればヒミコは腰を下ろし、腰を引けばヒミコも腰を浮かしていく。2人が阿吽の呼吸で腰を動かしていると、次第にヒミコの状態から力が抜け始めた。もたれかかるように上体を愛人へと密着させ、頭を抱きかかえるようにしながら大きな胸の間へと愛人の顔へと押し付ける。
谷間へと顔を埋めた愛人はミルクのような安心する匂いを嗅ぎながら、彼女の背中へと腕を回して強く抱きしめた。顔の左右から柔らかな胸が挟み込んでくる。
肌と肌のぶつかる音が鳴り響き、お互いの吐息が混ざり合う。そうして二人は限界を迎え、ほとんど同時に絶頂を迎えた。
ヒミコの身体がびくびくと震え、愛人のモノから子種が最奥へと吐き出される。彼女は脚を伸ばし、愛人の脚を挟み込むように密着させた。
彼女は全身余すところなく密着させながら、最後の一滴まで搾り取るように腰を前後へと動かした。
愛人は柔らかな身体に包まれながら、美しい少女の胎へと子種を吐き出す現状に、とてつもない快感を得ていた。
子種を最奥へと吐き出すほど、身体へ力が漲っていく。頭も徐々に冴え渡り、今ならなんでもできそうだった。
ヒミコは抱きしめていた愛人の顔から手を離し、顔の横に手を着いて上体を少しだけ浮かせる。背中を丸め、彼の顔へと自身の顔を近づけた。吐息が混ざり、笑みが触れあう。
月明りに照らされながら、2人は唇を合わせたのだった。
****
行為を終え、2人はベッドの上で寝ころびながら見つめ合っていた。愛人は左手を、ヒミコは右手の指を絡め合い、一糸まとわぬ姿のまま。
「愛人君、好き。大好きです」
「僕もだよ。ヒミコねえ」
どちらからともなく顔を近づけ触れあうように唇を重ねる。額を合わせて2人で微笑みながら、今の幸せを享受していた。
2人はしばらく触れ合うようなキスを重ねる。そんな中でふと、ヒミコは愛人の頭を撫でながら呟くように囁いた。
「愛人君、君の"個性"、すごいですね」
ヒミコはまるでよくできた子供を褒めるようにそう言った。
愛人の"個性"。それは性行為を重ねるごとにお互いを強化する"個性"。"身体能力"、"個性"、"頭脳"、あらゆるものを強化していく。
ヒミコもその強化を実感したのだろう。愛人による影響を受けたことをとても嬉しそうにしていた。
だが愛人には謝らなければならないことがあった。一人の男として、恋をしてくれている少女へと。
「……ヒミコねえ、ごめん」
「どぉして謝るんですか?」
「だって……俺って惚れっぽいから、ヒミコねえだけを愛してるわけじゃないんだ……」
"個性"は"人格"に影響する。彼女の"個性"は変身。血液を取り込むことで他者へと変身することができる"個性"。その性質上、彼女は"他者へなること"を"愛"だと定義しており、血液にも並々ならぬ興味を示してしまう。
"愛"故に他者を傷つけ、"愛"故に他者へと変身する。
それと同じことが、愛人の"個性"にもあった。
とにかく惚れっぽく、1人だけに愛を注ぐことができない"性質"。どれだけ愛してくれていることが分かっていても、その愛は一人ではなく複数へと向けられてしまう。
故に愛人は分かっていた。未来で必ず、ヒミコねえ以外と関係を持ってしまうことを。
故に謝った。今のうちに。それが"愛する人"を悲しませることだと知っているから。
ヒミコは愛人の言葉を真面目な顔で聞いていた。じっと見つめ、手を繋ぎながら。そして全てを聞き終えた時、彼女は繋いでいた手を離して頭の後ろに手を回した。優しく慰めるように、胸の中へと抱きしめる。
「それが愛人くんだって、私知ってます。だから心配しないで。愛人くんの"愛"はちゃんと、私に届いてるから」
心臓の鼓動。柔らかな身体。囁かれる甘い声に、愛人の心配が溶けていく。自然と彼女の背中へと腕を回し、自らもギュッと抱きしめた。
ヒミコはそんな愛人に笑みを浮かべながら、ゆっくりと瞼を閉じていく。
そうして二人は一糸まとわぬ姿で抱き合いながら、静かに眠りへ着いていくのだった。
"他者になりたい"という愛を持つ少女が、その中で唯一人にだけ"隣に居たい"という愛を持つのっていいと思うんです。