優等生ドM姫騎士と根暗爆乳魔族少女の戦いがヌルいので、300年生きた魔王の俺が両方快楽堕ちさせて支配する 作:オオテン
――2限目の授業が始まった直後。
(あれ、黒樹さんがいない?)
いつの間にか、黒樹さんが教室から消えていた。具合でも悪くなって、保健室に行ったのだろうか。
(どうしたんだろう。朝はあんなに元気そうだったのに)
言ってくれれば付き添ったのに、と思いながら、私は板書に向き直った。
「それでは先日の続きを――柊木さん、お願いできますか?」
「はい」
先生から指示され、私は席を立つ。
黒板に答えを書き込み、「正解です、さすがですね」と先生から褒められ、クラスの皆から「相変わらず柊木さんはカンペキだね」とひそひそ話を聞きながら、席に戻る。
私にとってはいつもの光景。
優等生らしく振る舞う――それは、常に意識していることだった。
だが、今日の私はどこか落ち着かなかった。
その原因は、やはり黒樹さんの存在だろうと思った。
だから、授業が終わるとすぐ、私は教室を出ようとした。
「あれ、柊木さん? どこ行くの?」
「ちょっと保健室に。もしかしたら、黒樹さんがいるかと思って」
「え……?」
私を呼び止めたクラスメイトの女子生徒が、微妙な表情を浮かべた。周囲の女子と顔を見合わせている。
「ねえ、黒樹さんと仲良くするのはやめておいたほうがいいよ」
「どうして?」
「どうしてって、なんかあの子、何を考えてるかわかんないところがあるじゃん」
怖いよ、と他の女子もうなずく。
――そんなことないよ。見た目で判断するのはよくないよ、皆。黒樹さんはいい子だよ!
……と、私は口にできなかった。
クラスメイトの視線が、評価が、変わるのが怖かったからだ。
代わりに、優等生らしくこう答えた。
「本当に具合が悪かったら、誰かが様子を見に行った方がいいわ。だから、クラス委員長の私が行ってこようと思って」
「あ、そうだったんだ」
「そっか。そうだよね、さすが委員長」
「あんま無理しないでね」
私の言葉に、どこかホッとしたように言うクラスメイトたち。私は「ありがとう」とにこやかに微笑み、踵を返した。
嘘はつけない。
嘘はついていない。
でも、擬態は上手くなった。
(私が目指す理想の姿って、これでよかったのかな)
保健室へと向かう途中でも、何人かから親しげに声をかけられる。それらに如才なく応じながら、私は胸の奥にしこりのようなモヤモヤを抱えた。
保健室に到着する。
「失礼し――」
(ん……?)
扉に手をかけた瞬間、違和感を覚える。
(気のせいよね)
「失礼します。2年の柊木です。黒樹さん、いますか?」
声をかけ、保健室に入る。
「……先生?」
病院の診察室にあるような机に、養護教諭の先生がいた。皆から、『サナ先生』と慕われている、優しくて綺麗な女性だ。
「サナ先生!?」
その先生が、だらんと両腕を垂れ下げたまま、机に突っ伏していたのだ。
「先生、先生! 大丈夫ですか、先生!」
私は駆け寄った。そのとき、ぱしゃりと水たまりを踏んだ。
白いリノリウムの床に、水たまりができていた。すらりとしたサナ先生の足を伝って、次から次に水が滴って、ぴちゃぴちゃと音を立てている。
……水? 本当に?
サナ先生から、まるでサウナ上がりのような濃密な汗の匂いが立ち上っていた。どこか、甘い。嗅いでいるとくらくらする。
サナ先生の肩に手を当て、軽く揺すった。
ほぼ同時に、ぱちゃちゃっと水音が響いた。
先生の身体が、とても熱い。触ってわかった。かすかに痙攣もしてる。
耳を澄ませば、水音に混じって先生の吐息混じりの声が聞こえてきた。
「……んぁ♡」
(…………っ!!)
かっと耳と頬が熱くなる。無意識に、私は自分の下腹部を押さえていた。
(もしかして先生……興奮して、イってる……?)
じゃあ、床に広がっているこの水は、愛液?
――ごくり。
私は唾を飲み込んだ。
なんて、あられもない姿だろう。
良家のお嬢様のように凜としていたサナ先生が、こんなにだらしなく喘ぎながら、痙攣しながら、
ああ。
すごく。
気持ちよさそう……。
「……だめ。だめだめ。今はそんなことを考えてる場合じゃない」
私は煩悩を振り払い、サナ先生の名前を呼びかけながら揺すった。
しかし、口を半開きにして断続的に喘いでいるだけで、呼びかけに反応はなかった。
完全にトリップしている。
「いったい、誰がこんなことを――」
「ああっ!♡ んはっ♡」
別のところから、声。
はっきりとわかる喘ぎ。
肌を叩く、少し湿った響きの音。
(この……声は……)
錆び付いた扉のように、ぎこちなく首を巡らせる。
保健室の一角、カーテンで仕切られたベッドに、うっすらと人影が透けて見える。
私は恐る恐るベッドに近づいた。自分の息が荒くなっていることに、あとになって気づいた。
カーテンに手をかけ、大きく深呼吸。
そして、一気にカーテンを開けた。
「――遅かったな、聖光騎士」
「……!」
ベッドの上にいたのは、黒づくめの仮面男と、その男に後ろから犯されて喘いでいる、制服姿の黒樹さんだった。