※この作品はR-18です。

【R-18G】命散るとき、花は咲く――ファイアーエムブレム無惨   作:無為庵閑人

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王家簒奪第5話~簒奪の後

 意識を取り戻したとき。

 青空が見えた。

 そこは、街の中だった。

 だが、普通の街角ではない。市場の近くだが、柵で囲まれているエリア。常に血生臭いにおいの漂う場所。つまりは刑場だ。

 ミネルバを見る群衆がいる。彼らの目の色に宿っているのは、失望、好奇、好色、侮蔑、憎悪、落胆。ミネルバはどちらかと言えば国民や一般の兵士に人気のある王女だった。勇敢であり、公正であったからだ。彼女の性急な軍制改革も国民の支持が基盤になっていた。だが、今彼女に向けられる視線にはあらゆる悪意がない交ぜになっており、今まで向けられたことのないものだった。

 そして、ミネルバは全裸だった。産後の少したるんだ腹、出産前の美しい桃色から変色した茶色の乳首と乳輪、あふれ出る母乳、手入れをしていないため少しモジャモジャになった陰毛の生えた股間。そういったものが、群衆に丸見えだった。男たちの多くは、ニヤニヤとしている。絵心のある者は全裸の彼女を絵に写していた。

 恥ずかしいところが全て見られている。せめて秘部と乳首だけは隠そうとしても手が動かない。手足は荒縄で十字架に拘束されていた。

 ミネルバは自分が磔刑にされることを悟った。磔刑は重度の反逆者に執行されるわけだが……。

「これより反逆者の処刑を行う」

「反逆者!?」

 ミネルバは唯一自由に動かせる首を動かし、法務官を見る。

 刑場の役人が「罪状」を読み上げる。帝国に対する反乱疑惑、白騎士団の蜂起、マルス王子との内通。今更蒸し返される「罪状」――それらは1の事実に9の虚偽を交えたものだったが――の数々。

 そして。

「一つ。不貞の罪。ミネルバは王妃でありながら、他の5人の男と誼を通じ、あろうことか肉体関係まで持った。これは国王陛下に対する最大級の不敬であり、反逆である」

 ミネルバは仰天した。もはや、事実でもない。王妃とは名ばかりで、妊娠出産もあって半ば監禁状態だったのに不貞とは。

 よく見ると、5つの男の生首が刑場で晒されていた。どの顔も見覚えがない。おそらく、別の死刑囚や盗賊、蛮族などを適当に間男としてでっち上げたのだろう。

「一つ。兄との近親相姦。ミネルバは密かに兄ミシェイルと体の関係を持っていた。これは獣にも劣る行為である」

 ミシェイルと寝たという、ありえない悪徳まで付け加えられていた。「違う」と、叫ぶこともできた。だが、ミネルバにはできなかった。こうなってはどんな否定の言葉も届かない。そしてなにより、ミネルバが兄のことを慕っていたことそのものは事実だったからだ。

 だが、これが観客の侮蔑をさらに強めた。兵士たちが制止するのにも関わらず、群衆がミネルバに向けて石を投げ始めた。

「よって、余はミネルバから王妃の地位を剥奪し、反逆者・不義の者として磔刑に処す」

 投石と罵詈雑言の中、役人の判決文朗読が終わる。万雷という表現すら生ぬるい罵声のおかげで、判決文の終わりの方を聞き取るのは困難だった。リュッケが右手を上げて処刑開始の宣言する。すると、ミネルバの前に槍を持った二人の兵士が立った。その頃には、投石が刑の執行の邪魔になるので、まだ石を投げようとする者たちは兵たちによって強引に押さえつけられた。

 そのせいか、しんとした静寂が訪れる。

 それを破ったのは、意外にもミネルバだった。

「待って!!! せめて、あの子に!! 最期にあの子を!!」

 いやだ。

 死にたくない。死にたくない! 死にたくない!!

 赤い竜騎士の二つ名と共に戦場を駆けていたとき、死の恐怖は全くなかった。だが、今は違う。大切な娘と別れる悲しさ、娘を一人前にするまで育てることのできない無念、娘の将来を見守ることのできない不安などが一挙にこみあげてくる。

「バカな。赤子とはいえ、処刑の様子を見せられるわけがなかろう」

 リュッケが鼻で笑う。確かに、彼にしては正論ではある。

「あの子は! あの子だけは助けてあげて! あの子はあなたの娘でもあるのよ!」

「安心しろ。あれも儂の子だというのは承知しておるさ。殺したりはせんよ。使い道は色々とあるでのぉ。では、妻よ。さらばだ」

 リュッケの右手が、再び上がる。すると、二人の兵士が、槍をミネルバの脇腹へ狙いを定める。

「執行」

 宣言と共に槍が、ミネルバの胴を貫いた。

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 耳をつんざくような断末魔が刑場はもとより街に響き渡る。槍は容赦なくミネルバの身体を何度も貫く。その都度、凄まじい悲鳴を上げていたが、それもやがて弱々しくなり、ついに無言の肉塊となった。

 かくして白騎士団もこれをもって無惨な終焉をむかえたのだった。

 

 普通、磔の場合、7日晒した後で遺体を焼却・廃棄するのが習わしだ。だが、ミネルバの遺体はその日の夕刻には磔台から降ろされてどこかに運ばれた。

 ミネルバの死から半年後。国王の寝室で、リュッケとマリアがまた、子作りに励んでいた。少し前に一児を出産したマリアの体は「ロリ巨乳」という言葉がぴったりだ。顔付きは少女のままでありながらも肉付きが良くなっている。その姿がリュッケの好みに合っていたのだろう。それに身体の相性も良かったのか、今までの女たちとは違う扱いを受けていた。現に、出産後の方がマリアと子作りをすることが増えた。

 寝室の壁には、その日の朝に運ばれたばかりの剥製が飾られた。

「ふふふふふ。姉たちに見られながらするのはどうだ。興奮するだろう」

 そう。

 剥製はミネルバだった。上半身裸で、処刑当時のまま、たるんだ腹も茶色に色素沈着した乳輪など経産婦特有の体の特徴も残ったままだった。

 

「ああん。姉様やパオラたちに見られながら、リュッケ様にファックされてるぅぅぅぅぅ。姉様! マリアのドスケベ種付けセックスの様子をずっと見ててくださいませぇぇぇ。マケドニア王家の血筋は私が繋ぎますからぁぁぁ」

 リュッケが揶揄したように、ミネルバの剥製の虚ろな水晶製義眼と三姉妹の髑髏の前で、マリアは王女というよりも商売女のように聞くに堪えない淫らな言葉を紡ぎ、獣のような喘ぎ声を上げていた。おそらく、次の子を孕むのも時間の問題だろう。

 マリアは若かったうえに多産の体質だったのか、短い間に都合8人の子を授かった。しかし、元々リュッケは無能で、クーデターが成功したのもアカネイア帝国がバックにいたからだ。おそらく、リュッケだけではマトモに反乱も統率できなかっただろう。リュッケの晩年には、前妻の子と考えなしに産ませたマリアの子同士で跡継ぎ争いがおこり、それが大規模な内乱となった。さらにリュッケの子を名乗る者があちらこちらから出てくる始末で、後継者争いは泥沼化した。加えて、彼自身が老いて認知能力が著しく低下した。正気とは思えない判断を下して近臣達も従わなくなり、全く対応不能となったリュッケは内乱の最中、病の床についた。にも関わらず誰も世話をする者もなく、とうとう餓死してしまった。

 王位や領地の相続に夢中な子どもたちと、彼らの後ろにいる佞臣・奸臣たちは父王の葬儀すら行わなかった。3年後に内乱が一段落した頃、リュッケはようやく埋葬される有様だった。その間、王の死体はずっと寝室に放置されていたせいで葬儀の頃には完全に白骨化しており、私室は埃まみれの蟲の巣と化していた。なお、いつの間にかペガサス三姉妹の髑髏とミネルバの剥製は消えていた。以後、これらがどうなったのかは誰も知らない。太后となったマリアも行方知れずとなった。乱のさなかに元の修道院に逃れて一生を過ごしたとも、密かにどこかの下女になったとも、飛竜の谷に逃れたが谷の蛮族もしくは飛竜に殺されたとも、暗黒司祭ガーネフに拉致されたとも噂されている。

 結局、内乱はアカネイア帝国の直接介入を招いた。マケドニア王は一応いるが、その上にアカネイアの総督が君臨することとなり、マケドニアは実質的な植民地となった。元々豊かとはいえないマケドニアの地は帝国からの収奪で、ますます荒廃していった。

 一方、ミネルバの子は成長して一通りの王族としての教養を身に着けた後で奴隷身分へと落とされた。もちろん、奴隷は奴隷でも性奴隷なので、娼館行きである。ただ、母親譲りのタフさもあってか娼婦につきものの性病に侵されることもなく、またミネルバによく似た美人だった。そのため、20歳になると帝国の城下町・ノルダへ高級娼婦として送られ、歓楽街のスターのような存在となった。そして、ミネルバ譲りの豪胆さとリュッケに少しだけ似た小狡さがあったのか、後年には遣り手婆となり高級娼館の経営をするようになった。老境に至る頃には複数の高級娼館を営むノルダの顔役として歓楽街を仕切り、88歳まで生きたという。

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